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VRヘッドセット 2024.06.14

【コラム】「日本では部屋が狭いからVRができない」←これは本当なのか?

VRをこれから始めようとする方にとって、大きな懸念点のひとつとなっているのがスペースの確保です。よくある言説として、「欧米圏と比較して、日本は部屋が狭いので、VRに向いていない」といったものがあり、購入を躊躇(ちゅうちょ)するケースも少なくないと思われます。しかしこの言説は、はたして本当でしょうか?


※Meta Quest 3公式イメージ画像で映されている部屋。これほどの広さが必要なら、プレイ環境の確保は難しそうですが……?

VRデバイス企業は何と言っているか?

Meta社の公式X(旧Twitter)アカウントによる公式見解によれば、4畳半(2.7m×2.7m)あればプレイできるそうです。

これはおそらく、アクションやリズムゲームなど、両手を伸ばして、壁にぶつからない距離のことを言っていると思われます。こちらのRPキャンペーン(VR/MRデモイベント「四畳半MIYASHITA PARK by Meta Quest 3」)で特集されているゲームラインナップであれば、アルティメット スイングゴルフ」「SOUL COVENANTなどが、特にスペースの確保が必要になりそうなタイトルです。腕を大きく振る必要があっても、4畳半あればプレイできるという見解なのだと思います。

なお、Meta Quest 3の公式サイトだと、歩行モードの推奨スペースは2m×2mとの記載もあり、2.7mより狭くてもプレイは可能だそうです。

そもそも椅子に座ったままでも十分使える

上記のキャンペーンではYoutube VRもっと!ねこあつめなどもライナップされていますが、そもそもこれらのタイトルは、椅子に座ったままでも十分VRを楽しめます。


YouTube Meta Questのプレイヤーモード紹介動画より)

Questシリーズの場合、「歩行モード」「静止モード」という2種類の境界線が用意されています。空間内を自由に移動できる移動モードに対し、立ったまま移動しない、または椅子に座ってプレイする前提なのが静止モードです。


YouTube「 PS VR2のセットアップとヒント」より)

また、PlayStation VR2の場合、2m×2m以上のプレイエリアが必要な「ルームスケール」の他にも、1m×1mの範囲で座ってプレイする「シーテッド」、1m×1mの範囲で立ってプレイする「スタンディング」があります(PSVRの2プレイエリアを変更する方法)。現状リリースされているラインナップのなかに、2m以上をグルグルと歩き回るタイプのゲームは無いと言っても過言ではないと思います。

座ってのプレイに適しているのは、「YouTube VR」「Prime Video VRなどの動画鑑賞、オフィスワークアプリのImmersedなどです。これらは特に移動が必要なく、ゆったりと座りながら楽しんだり作業したりできます。他にも、Google Earthのような地図旅行、Homestar VRのような星座鑑賞など、周囲を見ることに特化したタイプのアプリはたくさんあります。

実はソーシャルVR「VRChat」も、座ったままの最低限のコントローラー操作だけでほぼ利用可能です。VRChatの「立つモード」でプレイすれば、座ったままでも立ったままと同じ視点で操作できます。もちろんフルトラッキングで自由に動きを表現したい場合、それなりのスペースが必要となりますが、会話でのコミュニケーションやワールドを見て回るのは座ったままでも十分です。

一軒家の場合

この記事のライターの場合、記事執筆のためによく一軒家のホールでMeta Quest 3を使ってアプリのレビューをしていますが(家族の生活スペースの関係でリビングなどは使っていません)、実際に動ける広さは2.1m×2.1mほどと、Meta社が推奨する2.7mを下回っているものの、プレイするのにほとんど問題ありません。というのも、大きく動き回らないタイトルなら、腕を伸ばした左右と正面にある程度の広さがあれば良いからです。

例えばBeat SaberPistol Whipのようなリズムゲームをプレイする場合は、その場からあまり歩かないため、ものにぶつからずにプレイできます。ただし、ゲームによっては360度向きを変えるものもあるので、そういったものはMeta社推奨の広さを確保したほうが良いでしょう。

ちなみに、スペース中に障害物があっても、ちゃんと最初の設定でそれを避けるように地面に範囲を描けば、コントローラーが近づくとシールドが安全な範囲を教えてくれます。しかし、ぶつかるリスクはありますし、シールドが頻繁に現れると没入感が損なわれるので、できる限り障害物を片付けたほうが良いと思います。

アパートメントの場合

MoguLive編集者(ゆりいか)の場合、アパートのリビングと仕事場のデスクの2箇所がVRをプレイ可能な環境です。上記のワークデスクの前では、PCと無線接続して「VRChat」や「Immersed」などを利用しています。この場合は静止モードよりも狭いスペースでも問題はなく、コントローラーの扱いも最低限の動きで済みます。激しく動くタイプのVRコンテンツを遊ばないのであれば、この使い方でも十分だと思います。

リビングは現在、1歳児のプレイルームと化しており、机やソファを撤去しているので、ある程度スペースがあります。深夜、赤子が寝静まったあとに、コソコソとプレイするというかたちで、上記のスペースを利用しています。ちなみに、このプレイスペースは2畳半ほど。Meta社の推奨する4畳半の半分程ではありますが、それでもリズムゲームや格闘ゲームを遊ぶうえで困ることはあまりありません。ただし、ある程度歩いて動き回ることを想定したVRゲームの場合は、少し難儀する印象です。最近ではMeta Quest 3のMRモードを搭載したコンテンツが増えつつあるので、プレイエリアを確認するのに、わざわざデバイスを外す必要がないので、アクション系のゲームが遊びやすくなりました。

現在の環境で遊んでいて気づいたのは「広いスペースの確保」以上に「床に何も落ちていないand低い机や椅子が置かれていないスペースの確保」が必要ではないかということです。つまり、狭い空間であっても、整理整頓が日頃から整ってさえいれば……とは思いますが、それは自分も課題を感じているところですので、ここではこれ以上深堀りはしません。

まとめ:何のアプリを使いたいかで必要なスペースは変わる

・動画視聴、鑑賞、オフィスワーク、VRChatなどは座ったままでもプレイ可能。
・リズムアクションなど、その場からあまり動かないものは、そこまで広いスペースを使用しない。
・360度動き回る必要のあるものは、縦横2m〜2.7mのスペースが欲しい。

「日本は部屋が狭いので、VRに向いていない」という認識は、激しく動き回るタイプのVRゲームをメインで遊びたい人にとっては決して間違ったものではありませんが、現状人気のコンテンツは座ったままでもプレイできるようなモードが備わっていたり、そもそも動き回る必要のないコンテンツも多くあり、ほとんど問題にならないと思います。

よく動くVRゲームを遊ぶ際は、そのゲームがどれほど動くかちゃんと確認したうえで、自分の部屋で遊べるか考えたほうが良いでしょう。日本のアパートの1部屋の広さでも十分なスペースではありますが、むしろ家具などの障害物に悩まされるかもしれないので、VRを遊べるような部屋のレイアウトを考慮することが大切です。

また、「どうしても広いスペースを歩き回りながら激しいVRゲームを遊びたい」というかたは、VRコンテンツの揃った体験施設を訪れてみるのもおすすめです。例えば「東京ジョイポリス ZERO LATENCY VR」では、フリーローム型といわれる自由に歩き回れるタイプのVRゲームを体験できます。

自分がどんなコンテンツを楽しみたいか考え、安全な範囲でVRをぜひ楽しんでください。


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