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イベント情報 2015.11.08

【座談会レポ】芸術にVRを活用してどのような気付きがあったのか?『ISLAND IS ISLANDS』(後編)

東京・東雲で展示されているVR作品『ISLAND IS ISLANDS』。 10月29日(木)、この作品の制作に関わったアーティストたちによる座談会が行われました。ファッションデザイナー中里周子氏、写真家の小林健太氏、PsychicVR Labのメンバーらが、アートにおけるVRの活用についての話で盛り上がりました。

体験内容は前編をお読みください

image02左から、PhychicVR Lab代表の山口征浩氏。メディアアーティストのゴッドスコーピオン氏(Phychic VR Lab)。ファッションデザイナーの中里周子氏。写真家の小林健太氏。エンジニアの佐藤豪氏(Phychic VR Lab)。司会を務めた八幡純和氏(Phychic VR Lab)(以下、敬称略)

ファッションデザイナー、写真家、VR開発スタジオのコラボレーション

八幡

今回の作品は、どういったコンセプトだったのでしょうか。

小林

太平洋に島を作るミディアムフォレスト氏という架空のアーティストをテーマにした展示です。狭い通路を抜けた先にある部屋が、ミディアムフォレスト氏の頭の中で、彼の頭の中にあるスタジオ、アトリエというイメージです。通路は、彼の脳と現実を繋いでいます。今回VRで見る事のできるコンテンツは、太平洋に浮かんでいる彼のつくった島々をめぐる景色作品となっています。

ゴッドスコーピオン

技術的には、ファッションデザイナーの中里さんが制作したミニチュアをフォトスキャンという技術で写真から3次元のオブジェクトに起こしました。このミニチュアをVR空間内で巨大化し、島として見せています。今回、ファッションデザイナー、写真家、VR開発スタジオという異なるジャンルによって1つの作品の制作を行いました。

八幡

今回、様々な分野に関わるアーティストが1つの作品を制作するという意味でも珍しい形です。最初はどういうきっかけだったんですか?

小林

そもそもは、僕と中里さんが2人展をやる事が決まったのがきっかけです。2人ともアート以外に共通していることとして、ソロではなくコミュニティで活動しているということでした。 僕とゴッドスコーピオン氏は、同じシェアハウスに住んでいる事もあり、普段から周りのコミュニティと一緒にアートを制作しています。そのため、展示でそれぞれの作品を並べるだけではなく、Phychic VRも含めて3つのコミュニティで1つの作品を制作したら、新しいものが生まれるのではないかと思いました。振り返ってみると、全体として、ひとつの作品にまとめあげることができたと思っています。

体験が面白くても、被るまでが急過ぎる

八幡

VRの体験だけではなく、穴を通るとか、そこに至るまでに様々な仕掛けがされていますよね。全体構成はどのようにつくられたのでしょうか?

佐藤

以前、Gear VRで360度映像を見るというコンテンツを制作して展示した際、Gear VRをポンと置いておいてあるだけでは何もインパクトがないと感じました。特にアートな展示で、急にテクノロジー的なものがポンと置いてあるだけでは違和感しかありません。体験が面白くても、被るまでが急過ぎるのだと思います。今回の展示は、VRコンテンツの外側・内側の両方に配慮した設計をしています。

ゴッドスコーピオン

両側の空間の扱い方に気を付けて制作しています。どちらの空間でも、スケール感を重要視して制作しました。

中里

自分がつくったミニチュア作品のスケールが凄く大きくなって、島になってしまうのは夢のような事ですよね。VRはそれを叶えてくれます。そもそも今までは、どんな事を考えても技術面などの制約で結局できない事なので、「こんな事もできるんだ!」という意味で感激しました

山口

個人的には、自分でつくった島に行きたいというのがあります。船や飛行機に乗って自分でつくった島に行くなど、現実にも起こりえない事ができるのがVRですよね。

image01

小林

VRでの今回の制作経験は、自分の中に「スケール感」という言葉が新しいキーワードとして追加されるぐらいのインパクトを持っていました。ポートレート写真などを大きく引き伸ばすと、美術的に面白いと言われています。しかし、これではギャラリーの中に入るぐらいという制限がかかってしまいます。VRを使えばきりのないスケール感を体験できるところが面白いと感じています。

現実とVRの世界をばっさりと分けない

八幡

「しゃがんで入って寝転んでみる」という一連の流れが良かったと、体験していただいた方からのフィードバックを頂いています。ゴーグルにもバンドがついていないなど、細かな部分にも工夫されていますよね。

中里

最初にOculusのバンドを見た時、これはファッショナブルではないなと思いました。「テクノロジーを体験しているんです。」という空気感がありました。人が身につけた時にどのように見えるかという観点が、ファッションデザインには欠かせません。私の参加意義もここにあると感じています。

image00
今回の展示用にラバーを取り外したお洒落なOculus Rift。ゴーグルを被るという行為の不自然さをなくし、VR体験に入りやすいように工夫がされている。

小林

ゴーグルに関しても言える事ですが、展示にて最も注意したのは、現実とVRの世界をばっさりと分けないということです。

山口

いろいろな制限を取り払うことができるVRなのに、現実の制限をあえていれているところが面白いところです。例えば、このコンテンツ内では空の時間を現実時間と同期しているので、昼間に星を見たいと思っていても、夜まで待たなければ見る事ができません。

ゴッドスコーピオン

船も遊覧し続けているところですね。その時々によって、VR内の事象がランダムに変化するので、体験する人々の体験の仕方がバラバラになっています。夜の日が沈む時間のエモーショナルさをつくるという意味でも凄く面白いですね。

八幡

今後はどうしますか?

小林

一緒に共同制作した経験を元に、また新しいコンテンツをつくる出発点にしたいですね!!

この『ISLAND IS ISLANDS』は、12月12日まで東京・東雲のギャラリーで展示されています。

■展示概要
中里周子 + 小林健太 feat. Psychic VR Lab「ISLAND IS ISLANDS」
会期:2015年10月14日(水)ー 12月12日(土)11:00-19:00 日月祝休廊
会場:G/P gallery Shinonome (東京都江東区東雲2-9-13 TOLOT2F)

関連記事:【体験レポ】あのDeep Dreamを世間に広めたチームがおくるVR×DJのダンスイベント『Spatial Jockey』

(リンク)
・G/Pギャラリーによる本展示詳細
http://gptokyo.jp/archives/2552

・写真家 小林健太氏公式サイト
http://kentacobayashi.com/
・ファッションデザイナー 中里周子氏公式サイト
http://www.norikonakazato.com/
・Psychic VR Lab公式サイト
http://psychic-vr-lab.com/


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