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イベント情報 2017.11.28

#Inter BEE2017 映像作家がレビューする最新VR機材【360度カメラ編】

11月15-17日、幕張メッセにて映像機器の見本市Inter BEE2017が開催されました。数多くのVR向け360度カメラ機材が出展されており、NOKIAのOZOの撤退もありましたが、印象としては実用レベルのものが増えてきた、というイメージでした。

今回は、これまでさまざまな機材を使い360度撮影を行ってきた全天球映像作家 渡邊課視点でVRカメラのレビューを行い紹介しつつ、「VRと組み合わせて使ったら面白いんじゃないか?」という周辺機材も紹介します。

さてここで、今回のレビューにあたってのルールを先に紹介します。レビューの基準として設定した機材はInsta360 Proです。渡邊課でも普段使っているInsta360 Proをオール3として考えた時に

サイズ感:設置時の三脚含むトータルでのサイズ感。
値段感:販売価格はInsta360Proが45万円くらいなので、そこから高いか安いか。
画質感:見た目の絵の綺麗さ、解像度。
稼働感:取り回しのし易さ、ケーブル類のまとまり具合
運用面:撮影後のデータの取り回しやステッチ作業
アプリ回り:純正アプリの有無とぱっと見の操作し易そうか?

といった観点で機材レビューを行っていきます。


Insta360 Proのサイズ感参考。

今後VR機材を購入を検討している方々の指針となればと思います。

この後でて来る順番は特にランキング形式とはではなく順不同です。
前後編の2回に分けて取り上げる機材一覧は以下の通りです。

前編:360度カメラ編
・Insta360Pro(Shenzhen Arashi Vision)
・roboVR (Blackmagic)よしみカメラ
・Z CAM(ShenzhenImagineVisionTechnology) Entaniya
・KANDAO(Obsidian)Entaniya
・Jaunt ONE 24G Camera IMAGICA

後編:周辺機材
・こんな機材をVRと組み合わせて使用せよ!
水中撮影ケーブル Bi Wireless Line(ルミカショップ)
GITZO カーボンマイクロフォーンブーム (マンフロット)

・立体音響マイク一言紹介
サザン音響 SAMREC 1016 Virtual Pro
3Dio FreeSpaceOmniPro
 ゼンハイザー AMBEO

・BRAX LED Displayの部屋
・双眼鏡型VRビューワ

Insta360 Pro

サイズ感  ★★★☆☆
値段感   ★★★☆☆
画質    ★★★☆☆
稼働感   ★★★☆☆
運用面   ★★★☆☆
アプリ回り ★★★☆☆

まずは基準となるInsta360 Proを評価軸に沿って語ってみます。
販売価格は45万円ほど。画質は最高で2D8K、3D6Kの撮影ができます。解像度を下げた場合は100fpsでの撮影も可能。接近距離は1メートルくらいにしておくのが良い、という印象。
スマートフォンで操作可能ですが、スタンドアローン(単体)での稼働も可能。LANケーブルを繋いでのリモートでの操作も可能で、8Kでの収録中1fpsでのモニタリングができます。重さは1.2キロほどで、ドローンに搭載しての空撮も可能です。

ファンつきなので2時間半の給電しながらの連続稼働を筆者は実践済みで、撮影中にISOを下げたり上げたりもできるすなわち絞り的な使い方もできます。音の同録は厳しめです。外部のマイクを接続するかラインインで使用するのが良さそうです。
バッテリーは差し替え式なので予備バッテリー持って歩けば、1時間ほどの撮影は難なくこなします。またポータブル電源 RAVPowerを使用すれば給電しながらの撮影も可能です。
アプリ周りは純正が充実しており、オプティカルフロー(※)でのステッチ作業を自動で回すことが可能です。元データの吸い出しもできるので、『Autopano』などの編集ソフトでもマニュアルステッチもできます。

※オプティカルフローを用いたステッチングとは映像内の動的なものを画像処理してステッチする方法で。通常のテンプレートを使った固定距離のステッチとは違い、ステッチの境界に入り込んでしまったものを自動マスク処理のように扱うことができる方法です。現状のオプティカルフローを用いたステッチングは苦手とするシーンも見られ完璧とは言い切れなません。日々進歩している技術です。実際にInsta360Proのステッチのソフトウェアも日々アップデートされて書き出し結果が改善されていっている状況です。

筆者の印象としては、スタンドアロンも給電での撮影もオールラウンダー的な取り回しができるカメラです。

さて、このInsta360 Proをオール3と評価した時に他のカメラがどのようなスコアになるのか見ていこうと思います。

 

Z CAM [ShenzhenImagineVisionTechnology](取扱:Entaniya)

サイズ感  ★★★★☆ Insta360Proよりふた回りほど小さく、レンズは4つ
値段感   ★★★☆☆ 40万円くらい
画質    ★★☆☆☆ 最高で6K。立体視映像は撮影できない
稼働感   ★★★★☆
運用面   ★★★☆☆
アプリ回り ★★★☆☆

Z CAMと書いてジーカムと読みます。500mlのペットボトルくらいのサイズ感のカメラです。ボディが小さい分、Insta360Proよりも近い距離での撮影、ステッチが期待できます。至近距離40cmくらいまでは撮影できるとのこと。一体のように見えますが、レンズごとにSDカードを計4枚刺さなくてはなりません。やや手間ですが、吸い出しはLAN経由でまとめて可能で、ファイルのフォルダリングも自動でやってくれます。純正ソフトを使ってのオプティカルフローでのステッチも可能です。連続稼働時間は80分ほどで、ファンレスなので熱の問題が懸念されます。電源を有線で稼働させても連続稼動自体80分が限界の模様。熱落ちはしますが、その時点までのファイルはしっかりと保存される安心設計です。重さは1.2kgとInsta360Proと同程度でした。

ここで使え!


ボディが小さい分狭い場所での撮影に向いている。控え室や密接感のあるコンテンツに向いていると思います。

Obsidian R HighResolution[KANDAO](取扱:Entaniya)

サイズ感  ★★★★☆ 筐体は平たく小さくレンズは6つ
値段感   ★★☆☆☆ 100万円くらい
画質    ★★★★☆ 最高で8Kの立体視
稼働感   ★★★★☆ サイズ感、データの取り回しもかなり良さそう
運用面   ★★★☆☆
アプリ回り ★★★☆☆

Insta360 Proをスペックで若干上回ってるモデルです。3Dの8Kを撮影できるのは現時点で高スペック。サイズ感・ケーブル周り含めて、取り回しも良さそうでした。一点難点をあげるとしたら、こちらもファンレスなので。最長連続稼働時間が1時間ほどのため、連続稼働時間を伸ばすにはファンをつけるなど物理的に冷やす工夫が必要です短い時間の撮影であれば、価格とも見合うという印象を受けました。
こちらも、カメラごとにSDカードをさす必要があるものの、LANケーブルでのまとめての吸い出しが可能です。音の収録はカメラ毎にしているが、スペーシャルではないとのこと。見た目がおしゃれなのもポイントです。
このカメラは他にも、ラインナップとしてHighSpeed(ハイスピード)モデルObdivision Sがあります。そちらのモデルは4K3D120fps/6K3D60fpsでの撮影が可能です。動きの速いものを撮影したい場合、例えばスポーツ、動物や格闘技などはObdivision Sを選ぶのが良いかと思います。

ここで使え!

こちらもコンパクトな印象でハイスピードモデルがあることを考えると動きの激しいコンテンツ、スポーツや格闘技などで使用するのが適していると考えられます。

ROBO VR (取扱:よしみカメラ)

サイズ感  ★☆☆☆☆ 三脚含めてかなりのスペースを取る
値段感   ★☆☆☆☆ 280万円運用面もPCのスペックもかなり要求
画質    ★★☆☆☆ 最高で6K
稼働感   ★★☆☆☆
運用面   ★★☆☆☆
アプリ回り ★☆☆☆☆

基本的には複数カメラを繋いだリグをケーブル一本で取り回せるようにしているカメラで、全体的にサイズ感はかなり大型です。値段は280万円。Blackmagic Micro Studio Camera 4KにIZUGAR MKX22のレンズを搭載し4台で構成したものです。4Kの高品質配信ができるというのが売り。収録はそれぞれのカメラを4Kで録画すれば6Kでの動画出力が可能とのこと。

Insta360 Proに対してのアドバンテージは少ないものの、ブラックマジック品質の映像製作ができるのが売り。ただ、ちょっと値段が高めで、取り回しが大変そうだなという印象。
純正のアプリ周りはなく、Voysys VR Producer(http://www.pixela.co.jp/biz/arvr/voysys/)を使っての配信のデモをしていました。

ここで使え!

ライティングをバッチリ決めたスタジオでの全天球配信。

Jaunt ONE 24G Camera (所有:IMAGICA 取扱:Photoron)

サイズ感  ★☆☆☆☆ バスケットボールより大きい
値段感   ★☆☆☆☆ 1350万円。買う場合はPhotoronから
画質    ★★★★★ 最高で8K3D
稼働感   ★★☆☆☆ 巨大だがケーブルは一本化
運用面   ★☆☆☆☆
アプリ回り ★★★★☆

まさかこんなところでお目にかかるとは思ってませんでしたが。日本にはまだ1台しかない(IMAGICA所有)という360度カメラJaunt ONE。存在感ありすぎの見た目は24台のカメラが一体化してます。SDも一台につき1枚という仕様。データは一括で吸い出してフォルダリング可能です。

ステッチを行うにはJaunt ONEのクラウドにアップロードする必要があります。4K60P 1分300ドル。8K60P 30秒 300ドルという従量課金制。ただし、IMAGICAの担当者によるとステッチ精度は折り紙つきのクオリティで仕上がるとのことです。ファンレスでの稼働だが、「熱落ちはしたことがない」(IMAGICA担当者談)。ソフト周りがMacOSにしか対応しておらず、パソコンが古い場合は動作が落ちてしまうことも多く、最新版のMacBookProを使っているとのことでした。

かなり使用の制限はあるものの、画への攻め方はかなり柔軟にできそうな印象でした。カメラ毎にISO/EV/EXPOSUREの設定をフレキシブルに変えて行くことができるので、明暗の強いシーンなどでもしっかりと撮影することができる。

ここで使え!

森の中のシチュエーションで一方向から強い光がきているなどの印象的なシーンが作れそうです。シネマライクな光の中に身を投じるような体験ができたら旅行行かなくていいんじゃないかと思えるかもしれません。

まとめ

さて、いかがでしたでしょうか。Proユースの観点でレビューをしてみましたが。個人的に一番惹かれているのはKANDAOのObsidianです。使用する際のサイズ感やスマートさと、何よりプロダクトとしての仕立ての良さが気に入りました。撮影する被写体への威圧感も少なく、女の子ウケが良さそう。可愛い見た目なので。(自然な表情取るためにも…結構これ重要?)

後編では周辺機材をレポートします。

渡邊課では実写ベースのVRのお仕事をしております。ぜひ是非ご相談ください。

後編はこちら
#Inter BEE2017 映像作家がレビューする最新VR機材【周辺機材編】


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