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VTuber 2024.12.29

「この動画がすごい!」2024年振り返り! VTuber・クリエイターの名作&名場面ピックアップ

毎週MoguLiveにて掲載しているシリーズ「この動画がすごい! 今週のおすすめVTuber動画」。2024年も数多くのVTuber・バーチャルタレントによる傑作動画・配信がアップされました。

今回はその中から特に印象的だった動画・配信を、関連動画と一緒に独断と偏見でチョイス。企画系動画・配信から2024年のVTuber界を振り返っていきます。
今までの振り返りはこちら。
「この動画がすごい!」2023年VTuberおすすめ動画を振り返り! – MoguLive
「この動画がすごい!」2022年VTuberおすすめ動画を振り返り! – MoguLive
「この動画がすごい!」2021年VTuberおすすめ動画を振り返り! – MoguLive

「カチカチ山」とかいう和製サウスパーク、いつからヌルくなったのか

毎年VTuber動画を振り返る中で、月ノ美兎の話はどうしても欠かせません。新しいジャンルへの挑戦を色々な角度から続けていて、常にワクワクさせてくれます。

特に今年の「カチカチ山」の動画は斬新でした。やっている事自体は非常に地味です。元はグロテスクだった「カチカチ山」がふんわり優しくなるまでの変遷について片っ端から調べてどのような変化があったのか、図書館で徹底的に調べる、というものです。

これがエンタメとして、そして研究発表として、ものすごく興味深い動画になりました。本人自身が夢中になって調べているからこそ、一次資料を調べる楽しさがダイレクトに視聴者に伝わってきます。

このスタイルは民俗学の面白さを知る入口としても非常に有用で、あまりにもバズったため本人も驚いていたのが印象的でした。月ノ美兎がこだわり続けてきた動画形式でまとめているのも、見やすさのポイントになっています。

【MV】 てんやわんや、夏。 【月ノ美兎 / 笹木咲 / 椎名唯華】

VTuberの曲なのにVTuberが出てこない、というMV表現スタイル自体はだいぶ定着してきたと思いますが「てんやわんや、夏。」はアーティスティックなそういう表現手法とは異なる、悪ノリの極みのような作品として話題になりました。

出てくるのは月ノ美兎笹木咲椎名唯華の3人……の「レゲエの姿(つまり記号的コスプレをしたおじさん)」。3人の男たちが海辺でわちゃわちゃ楽しそうに、けだるそうに、幸せそうに夏を満喫する姿は、正直不気味さはネタとして意図的に入れていると思いますが、どうしようもなくかわいらしく、愛しい映像になりました。

このあたりは月ノ美兎のおもしろ感覚と、「サバエとやったら終わる」などの実写ドラマ・MV映像監督UBUNAの「VTuberと役者両方を見て欲しい」というバランス感がピタッとハマった結果でしょう。

じゃあ面白かったからこのスタイルを他のVTuberがやっていくか、と言われると多分やらなさそうです。労力の割にメリットが少なすぎます。やはり月ノ美兎・笹木咲・椎名唯華だからできる攻め方かもしれません。逆にレゲエの姿3人の続編は、是非見てみたい気がします。クリスマスとかお正月とかをあの3人がキャッキャとやっていたら、ときめいてしまいそうです。

応募総数700名から選ばれた熱狂的なファン達とVRChatで握手会をするぷるる【スタンミ/天鬼ぷるる/切り抜き/VRChat/握手会】

2024年、VRChatは爆発的な進化を遂げました。要因は数多くあるのですが、そのひとつはストリーマーであるスタンミの参入と話題拡大化です。スタンミはVRChatを「変なところ」ではなく「才能の集まる空間」「ユニークな生活ができる場所」と言う切り口で紹介し、それによってHMDまで即買うようなプレイヤーが続出するほどの影響を与えました。

そんな中、天鬼ぷるるの握手会が実施されたとなれば、VRChatユーザーのみならずVTuberファンにはたまらないものがあったはずです。VRの3点トラッキングが使える人オンリー、というハードルの高さの中700人が募集し、40人が選ばれたとのこと。

VTuberと本当の意味で握手ができるのはVR空間だけです。直接会って話している人たちのイキイキした声、天鬼ぷるるの楽しそうな動き!

現在はオリジナル3Dモデルがある天鬼ぷるるですが、このときは様々な既存モデルの改変を組み合わせたもの(改変OKなもの)でした。規約によってはそれでも問題なくVTuber活動できる場合がありますので、これもまたVTuberをやる人によっては可能性の一端が見えたと思います。

VTuberファンはVTuberに会いたい。VTuberも動きしゃべるファンの熱意を感じられる。握手会やライブは今後のVTuberの可能性を大きく広げそうです。「はがし」がVRだと簡単にできるのはスタンミ配信ならではの面白さでした。

【制作費15万】VTuberロボ作ってみた【DIY】

先程の天鬼ぷるるの握手会がVRでの発展だとしたら、こちらはリアルでの握手会。ピーキーハイカーズの実写企画は、思い切り力技なのが楽しいエンタメ動画です。アルピナ(本体?)が入る骨格を用意してビニールシートで覆い、その中にキャリブレーションできる空間を用意してパソコンと機器を設置。アルピナがロボ(人力)を押しながら移動して、ディスプレイに映ったVTuberと接触できる、というシステムです。

どうやったらVTuberとより近づくことができるのか、という例として、面白おかしく動画では作っていますが、これはリアル側での接触としてはかなり可能性が広がりそうな内容。歌手のAdoが箱の中で握手会を行ったように、キャラクター性を維持しつつ「存在する」というのを感じられることはファンの悲願でもあります。特にハイタッチをしたときのドキドキ感は、ファン側も、VTuber側もかなりの手応えで「楽しかった!」と感動を述べています。握手会をVR側で実施するか、リアルで実施するかを考える際のヒントになる動画なのは間違いないです。

【前編】「投げ銭させてくれ!」歌声を聞いた審査員たちが大絶賛!そして元声優の応募者に示された輝く道筋とは!?【秋風あこ】[2人目] VTuber登龍門

現在VTuberで、企業所属に対して興味のある人には、全部の回を見てほしいのが「VTuber登龍門」シリーズ。公開オーディションを行い、そこで「商業的にタレントとして所属してもらう意味があるか」「本人のこれからのためになるか」をシビアにジャッジする動画です。
審査員は「にじさんじ」運営のいちから株式会社(現・ANYCOLOR株式会社)のCEO、岩永太貴、キズナアイの共同原案者・松田純治、輝夜月の発案者・田中良典など、VTuber文化初期を支えたそうそうたる面々です。一切の妥協はありません。

商業タレントとしてVTuberをバックアップする意義を考えての面接なので、質問内容や視線はめちゃくちゃ厳しいです。中には不合格の人も出てくるので、VTuber全体が好きな人には少々胸が痛む内容かもしれませんが、理不尽さはないので納得もできるはずです。

決してVTuberを商品としてしか観ていない番組でもありません。オーディションに来た人たちのあり方を真剣に受け止めて、どう伸ばしていくのがよいのか、客観的にどう見えているのか、その人にとっての良いあり方はなんなのかをきちんと考えて語りかけています。受かっても落ちても、参加者には確実にプラスな要素があるはずです。

この番組で満点を取った秋風あこは、秋桜しゅおとして第一号デビューし、活動を開始しました。ボーカルで審査員を唸らせた彼女の今後は期待大です。

にじGTAが良かったという話をします 木緒ラジオ【56】

VTuberの配信や動画を、VTuberとして紹介・評論する、という点でとても優れていたのが、ラノベ作家、グラフィックデザイナーの木緒なちのこの配信でした。

現在に至るまで、ゲーム内の職業・キャラクターとしてロールプレイをすることで群像劇を生み出すストリーマーGTA(グランドセフトオート)が大人気です。それをにじさんじやホロライブは箱で実施できる利点を活かし、今年は大いに話題になりました。

それをファン目線でどっぷり楽しみつつ、俯瞰して分析・チェックしたうえで、どこが魅力なのか、なぜ面白いのか、どう見るとより楽しめるのかを紹介しています。

VTuberの動画や配信は、れっきとした作品です。良い部分についてどんどん評価されて話題が広がっていってしかるべきでしょう。とはいえ特にストリーマーGTAなどは多すぎて収集がつかない部分があります。そのためにストリーマーGTAについて評論の立場を担っているのが切り抜き動画でした。多くの参加者が切り抜き動画を見返す配信を行っていたのも印象的でした。

それとは別に、木緒なちのように魅力を言語化して伝えるYouTuber・VTuberの存在は、文化を語り継ぎ形として残す存在としてとても大きいです。

【LIVE】アメリカ大統領選・開票速報!勝敗のポイントを徹底解説!

旅野そらの出現に衝撃を受けた人は多かったようで、彼女の話題はSNSで一気にバズりました。扱っているのは、VTuberが触れるにはなかなかアンタッチャブルな政治の話題です。

とはいえ話しているVTuberが元戦場カメラマンとなると話は別です。あらゆる現場を自身の目で見て肌で感じてきたからこそ語れる言葉の重みたるや。世界の政治情勢をしっかり調べているため、一つの情報の視点としてかなり参考になります。

また情報の提示の仕方がうまく、何も知らない人でもわかるように言葉選びされています。スライドが項目ごとに丁寧にわけられている下準備の丁寧さも魅力で、画面を見ればとりあえずわかる、というくらい忙しい人にも親切です。

そのうえ語りがめちゃくちゃにうまいです。具体的な事例をあげながら、できるだけフラットに、それでいて言うべきところはばしばし言うスタンスでトークしています。

なにより、楽しそうなので政治に興味がわいてきます。アメリカ大統領選の配信も大ボリュームなのですが、衆院選総選挙は7時間ぶっつづけで全都道府県解説するという凄まじさを見せつけてくれました。

ニュースに対する解説配信は緊急速報的なスピード感もあります。視点を増やしてくれるVTuberとして、今後注目したいチャンネルのひとつです。

【#shortsV座談会】YouTube shortsの天才達が大集合!?【犬山たまき/兎鞠まり/甘狼このみ/七海うらら/春日部つくし/瀬兎一也/字ぴろぱる】

2024年のVTuber業界を知るうえで欠かせないのがYouTube shortsの存在。犬山たまきが行ったこの配信では、YouTube shortsで成功した面々を集め、どのような気遣いで活動をしているのかを赤裸々に話してもらう、極めて貴重な内容。今後YouTubeで活動をする人にとっては、非常に役立つ話題だらけの配信です。

何がきっかけではじめたか、という話題からスタートして、どれぐらいの時間で作ることができるのか、どんなshortsがバズったのか、そして伸びるためにはどういうテクニックを使っているのかが明かされています。無料で聴いてもいいのかと驚かされるほどの情報満載です。

現状を観ていると2025年もおそらくshortsの勢いは加速していくと思われるので、参考資料としてチェックするのをおすすめします。

【#Vtuber偉人会】本日の偉人は電脳少女シロさんです【天開司/Vtuber】

VTuberが話題になった2017年後半から、もうすでに7年。VTuberはサブカルチャーからメジャーカルチャーまで上り詰めてきています。天開司の「#VTuber偉人会」はまさに、VTuberの歴史に名を刻んだ存在を呼んで話を聴く、歴史的資料価値のある番組としてスタートしました。

初回の電脳少女シロの年表が圧巻。載せきれなくて「他イベント多数」と書かざるを得ないほどの日単位の仕事量の多さです。今VTuberがあらゆるところで話題になったのは、彼女のような開拓者が頑張り続けていたからなのを強く感じさせられます。

インターネット上の歴史は、データが消された瞬間に消滅する儚さがあります。VTuberも自身の動画が消えたら、存在を証明するものがありません。けれどもこの試みのように、偉業をインタビュー形式にすることで体系化し残すことができるのは、とても重要な作業のはずです。これができるのは、VTuberの歴史を個人で走ってきた天開司ならではでしょう。
次回はぽんぽことピーナッツくんとのこと。こちらも最初期のメンバーです。

【#スクールオブチューブ夏期集中講座】1時間目『民俗学』遅刻も試験も何にもない!VTuberによる楽しく学ぶ夜の民俗学!!【#諸星めぐる #Vtuber】

2024年はいわゆる「学術系VTuber」「特化型VTuber」が個々の活動を深めると同時に、横のつながりが一層強くなった時期でもありました。その例のひとつとして諸星めぐるらが行った「#スクールオブチューブ」があります。

これは学校と同じで時間割が用意されており、時限ごとに専門VTuberが授業を行う、というリレー形式の企画。春期夏期秋期で行われています。

すべての授業でジャンルが違うので、本当に学校に通っているような楽しさがあります。それぞれのVTuberもこの日にあわせた特別授業を行うため、各々のVTuberの魅力を発見しやすいのも特徴的。普段見ていなかった他のVTuberに触れるきっかけとしての機能はかなり大きいです。
すべての授業が面白いので、一覧の中から興味のある科目をチェックするもよし、当日と同じように一日授業を再現するもよしの、楽しい企画になっています。

ビビデバ / 星街すいせい(official)

今やVTuberファン以外でも、TikTokなどで誰もが知る名曲となった1億再生の作品、星街すいせいの作品「ビビデバ」は2024年の曲でした。おそらく一過性のものではなく、今後長くVTuberの曲として語り継がれるキラーチューンになること間違いなしでしょう。

というのもこの曲は構造が非常によくできているからです。アニメと実写の混ざったMVでは、VTuberが求めていたものだったはずのシンデレラをやめてぶん投げています。元々星街すいせいの活動スタンスがお姫様ではなく、自ら掴み取る王子様になりたい、というものがあったので、それが映像として描かれたことになります。これは彼女のファン、彼女に憧れていたVTuberなど多くの人にとって、衝撃と納得の瞬間でした。彼女はVTuberを、チヤホヤされるキャラクターから、表現するアーティストへとブレイクスルーします。

またサビのダンスはちょっと難しくかつ踊りが映えるいい具合の振り付けになっています。これがYouTubeShortsやTikTokにピタッとはまり、サビの部分が凄まじい勢いで多くの人の間に広がりました。しぐれういの「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」や「うい麦畑でつかまえて」、花譜の「ゲシュタルト」、HIMEHINAの「愛包ダンスホール」などがダンス動画文化にピタリとはまったように(もちろん制作者側が「踊ってみた」が出ることを意図していたのかどうかはわかりませんが)との相性も戦略として完璧でした。

星街すいせいのパワフルな歌声は、待つだけじゃないVTuberの音楽シーンを2024年に切り拓き、今後も旗印としてこの曲は掲げられ続けそうです。

【3D一発撮りで演奏してみた】情熱大陸 / 葉加瀬太郎【鈴木勝, セラフ・ダズルガーデン, エリー・コニファー/にじさんじ 】

鈴木勝セラフ・ダズルガーデンエリー・コニファーの3人がアップした「情熱大陸」一発撮り演奏動画は、ANYCOLORの技術力の凄まじさ、バーチャル演奏の可能性を見せた一本でした。一発撮りということは演奏中の3D破綻がほとんどない、ということでもあります。

楽器演奏は指の動かし方、楽器の位置トラッキング、タイムラグなど何年か前までは3Dの鬼門中の鬼門でしたところがこれを見るとほぼ演奏が成立しているどころか、どこで力を入れているかまでわかるレベルに達しました。

3人のように演奏に力を入れているVTuberには福音のような動画です。企業のこのレベルの技術はもちろんまだ誰もができるものではありません。しかし壁を超えているのであれば、次第に個人レベルでも可能になっていく期待ができます。

3人の演奏技術はとても高く練習も重ねていたこともあり、3Dで見せたいと以前から語っていました。その夢が叶った一本です。加えてフルート、バイオリン、ピアノと動きの捉え方が全部バラバラだというのも見どころのひとつ。可能性は広がるばかりです。

【全部自分の声で】Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts (Covered by ころねぽち)

「全部自分」を得意とするころねぽちの傑作の一つがこちら。今年は「Bling-Bang-Bang-Born」が大ブームで「歌ってみた」動画もあらゆるアイデアを詰め込んでアップされていましたが、ころねぽちの全パート自分の声での再現は、元の曲を再編してオリジナル作品に仕上げたと言っても過言ではない音楽性と、それを楽しく見せてくれるキュートな歌声で最高のエンタメ作品になりました。

注目したいのは全員が歌だけでなく動きもバラバラだということ。ところどころ入る歌詞にあわせて個々のころねぽちが生きて動いています。ただ音楽として聞かせるだけでなく、難度も観たくなるだけの要素がたんまりと詰め込まれているのは、エンタメ精神の為せる技です。

【歌ってみた】君が飛び降りるのならば!【ホロライブ/大空スバル】

7月2日の誕生日配信にあわせて大空スバルがアップしたこのカバー作品は、アイドルでありタレントであり、なによりみんなと寄り添う配信者・VTuberとしての彼女が歌うことに大きな意味のある、特別な作品だったように思えます。

この原曲は、飛び降り自殺をするひとりの相手に向かって歌う歌です。元のMVのアニメーションにかなり寄せた映像になっています。大空スバルは「君が飛び降りるのならば 笑って一緒に飛び降りる」と「大事な君」であるスバ友(ファン)に向かって明るく楽しく力強く、優しく熱唱します。

この強烈なファンへの愛の告白を、インフルエンサーとしてのVTuber・大空スバルが歌ったことで、曲のメッセージ性がとてつもなくアップしました。

ある意味原曲の一人称キャラクターと彼女のスーパーポジティブな性格がマッチしているからこその選曲、というのはあったと思います。でもそれだけではとても歌えないような、ものすごくセンシティブな内容の歌です。ファンの多い人が歌うと影響力が大きいのも予想ができる、発表に覚悟のいる歌です。しかも誕生日を「祝ってもらう」という感謝の歌ではなく、ファンひとりひとりに寄り添い救う、博愛の歌です。

これに対しては衝撃的だったという反応が寄せられていました。学生の青春ロック感がよく似合うという声も出ていました。大空スバルにそうさせるなんてありえないからそれなら絶対飛び降りるなんてできないという、生きる決意の声も出ていました。VTuberのような、バーチャルな形で人の生活に刺さる活動をしている人は、人の心を救う可能性があるはずだと信じさせてくれる一作になりました。

他にもカバーしている人の多い曲ですが、2022年の健屋花那バージョンもかなりキャラクター性と感情の乗せ方が別ベクトルで心を揺さぶってくるので、おすすめしておきます。


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