一体型VRヘッドセットVive Focus向けに、音楽と色彩のコラボレーションを楽しむMRコンテンツ「Beat Reality」がリリースされています。
Enea Le Fons氏とAnthony “SkarredGhost” Vitillo氏の共同開発であるこのアプリは、音楽に合わせて周りの景色の色や明るさを変え、現実世界に重ねて映し出します。たとえばパーカッション・ミュージックをかけると、周りの景色は生き生きとし、まるで全てがビートするネオンフィラメントのように見えます。
メディアVRScoutは開発者の1人であるAnthony Vitillo氏にメールインタビューを行い、開発中に直面した壁や、他の開発者へのヒントを聴いています。本記事ではその一部を紹介します。
Beat Realityは「革新的で持ち運びできるディスコ」
ーMRについて詳しくない人へ、「Beat Reality」をどのように説明しますか?
- VITILLO氏:
- Beat Reality」は、家やオフィス、どこにいようと、世界をあなたのダンスフロアに変えるMR体験です。ステレオのスイッチを入れ、ボリュームを上げ、Vive Focusを装着してBeat Realityを起動するーこれで、まるでディスコにいるように音楽を楽しめます。このコンテンツは周囲の実際の様子を映し出しますが、音楽のリズムに合わせて修正されています。目に見える景色と、耳にする音楽を融合する体験です。
ー友人や家族には「Beat Reality」をどのように勧めますか?
- VITILLO氏:
- 「革新的で持ち運びできるディスコだ」と言います。音楽を楽しむ新しい方法です。
ーあなたがMRアプリを作るのは初めてではないですよね。過去のプロジェクトからは何を学びましたか?
- VITILLO氏:
- これまでにImmotionarというスタートアップを立ち上げましたが、失敗しました。これはKinectを使って全身のVRを目指したものです。製品は称賛を受け、賞も受賞しました。しかし失敗したのです。原因は多くありますが、その1つは開発に時間がかかりすぎたために、人々が購入への興味を失ってしまったということがあります。
- こから得た教訓は、小さく始め、小規模のアプリやアイディアを世に出してみる、そしてユーザーのフィードバックを受けて修正する、ということです。もしうまくいかなければ、すぐにやめるのです。出来るだけ早く失敗すること。特にVRのように、成功することが難しい分野においては重要です。
ー「Beat Reality」の着想に至った経緯は?
- VITILLO氏:
- アイディアを実際に出したのはEnea Le Fons氏です。(中略)彼はクリエイティブで、いつも沢山のアイディアを持っていました。またアングラダンスミュージックが大好きで、ジャム・セッションをしたりDJセットを揃えたりしていました。そしてある日、彼は私に、音楽のリズムに合った世界を見られたらクールだろう、というアイディアを話したのです。
将来的には他のヘッドセットへ移植も
ーこのアプリを、Oculus QuestやMirage Soloといったヘッドセットに移植する予定はありますか?
- VITILLO氏:
- 恐らく。グーグルがDaydreamのプラットフォームをMRアプリ向けに開放していることや、OculusがQuestでMRモードを検討していることを聞いています。(中略)
我々は、直ちに他のヘッドセットへ移植することは考えていません。今はVive Focusのユーザーからフィードバックを受けることに注力している段階です。
ーVive Focus向けのコンテンツを開発する上で、一番の難関は何でしたか?
- VITILLO氏:
- ほとんど全く資料がなかったことです。問題があった時にグーグルで検索すると、いつも見つかる検索結果は自分のブログだけでした。中国語でバイドゥを検索できればまだ良かったかもしれませんが、私の中国語レベルはそこまで達していません。
ー読者に知ってほしい「Beat Reality」の隠れた特長はありますか?
- VITILLO氏:
- アップデートで新しい2つのモードを追加しています。ピクセルビジョンと、マトリックスのようなアスキービジョンです。何分間かプレイすると、この2つの素晴らしいモードへのロックを解除することができます
- VITILLO氏:
- また気づいている人が少ない機能として、アプリ内で写真やGIFアニメーションを撮影できるという点があります!デバイスをPCに繋げればダウンロードが可能で、友人と、またSNS上でシェアすることも出来ます。
開発者へ、ルールを破れ
ー「Beat Reality」開発から学んだことで、他の開発者に教えたいことは何ですか?
- VITILLO氏:
- 決まりを破れ、とアドバイスしたいです。これは私が好きなことで、開発者向けキットを手にして最初に考えたのは、「どうすれば、これを使ってやってはいけないとされているものを作れるだろう?」ということでした。そしてその実現のためにがむしゃらに取り組みました。
Vive Focusを使い、自分のUnity内の作業をヘッドセットへリアルタイムに映すユニティのプラグインを作りました。Vive Focus向けのARも作りました。そして今、MRアプリ(Beat Reality)を開発しています。
- この他、Vive Focusのジェスチャー開発者向けキットのベータ版で実験を行っています。すでにルールを破って、Vive Focusでセルフィーを撮る機能も開発しました。
ミスター・プレジデント(HTC中国の代表 Alvin Wang Graylin氏)は私の作品を見た時、.こう言いました。「素晴らしい。でもこれはあなたの頭の中にあるべきもので、手の中にあるものじゃない!」
- Eneaのような天才とパートナーを組んでいた私は、お金を稼ぐために普通のことをやるのも大事だとわかっていました。しかし、自分の「フリータイム」を使って特別なことを成し遂げるのも、VR技術を進めるためには重要なことです。
- だから私はこうアドバイスします。毎週いくらかの時間を、ルールを破ってこれまでと違うことをするために使いましょう。そしてその成果を、コミュニティで共有しましょう。(中略)ルールを破るためにはクリエイティブな解決方法が必要で、多くのトライアンドエラーを繰り返すことになります。そして、物事を進めるために多くの努力をしなくてはならないでしょう。(中略)
- もし最終的にその取組が不可能なことだと判明しても、或いは成功したとしても、大きな満足感を得られます。
(参考)VRScout
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