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Vision Pro 2026.05.02

Apple Vision Proの“ライブ収録”に特化した撮影機材「URSA Cine Immersive 100G」は、映像制作の現場をどのように変える?

4月にラスベガスで開催された、世界最大級の放送・映像機器展示会「NAB Show 2026」。このイベントで数々の新製品を発表したBlackmagic Design社が、東京と大阪で国内向けの説明会を開催しました。

Blackmagic Designといえば、最先端のビデオ編集製品を開発し、長年にわたってポストプロダクション業界で圧倒的な支持を集めている企業です。「動画編集ソフトのDaVinci Resolveを開発している会社」と聞けば、ピンと来る方も多いのではないでしょうか。

今回のメディア・代理店向け説明会では、オーディオポストプロダクションソフトウェア「Fairlight Live」をはじめとする多種多様な新製品が紹介されました。

本記事では、、Apple Vision Pro向けコンテンツ制作の核となる「Blackmagic URSA Cine Immersive 100G」と、大幅なアップデートを遂げた「DaVinci Resolve 21」の2つに絞って、周辺情報も補足しつつレポートします。

【Blackmagic URSA Cine Immersive 100G】イマーシブ制作をリアルタイムの領域へ

Blackmagic Designが2024年に発表した、世界初の業務用イマーシブ・カメラ「Blackmagic URSA Cine Immersive」。一般的な1眼レンズとは違い、2眼レンズの構成になっているのが大きな特徴で、これにより広範囲の映像を撮影できるだけでなく、その空間の距離と奥行きを記録できます。この機材で撮影したデータは、立体的な映像を映し出せる様々なデバイスに出力可能ですが、なかでもAppleの空間コンピュータ「Apple Vision Pro」の映像フォーマット「Apple Immersive Video」の撮影に特化しています。

Apple Immersive Videoは、180度の視野角を持つ立体視可能なビデオフォーマットです。360度自由に見回せるVR動画(360度動画)とは異なり、2次元のビデオ映像が3次元になったかのような映像(空間ビデオ)を視聴できます。映像の見られる範囲に制限はありますが、その分、自分が様々な世界に身体ごと連れていかれ、その場でしか得られないような感動を追体験できます。

実際、映像現場ではこのイマ―シブ・カメラの実装がすでにはじまっています。特にスポーツや音楽ライブ、大自然の撮影などとの相性が良く、Apple Vision Proでも、ロックバンド・メタリカのLiveや、アメリカ海軍の軍事演習、ヤンキーススタジアムの舞台裏など、様々な映像が公開されています。

また、レアル・マドリードのドキュメンタリーが2026年に公開予定のほか、NASAのアルテミスIIの打ち上げの撮影にもURSA Cine Immersiveが使用されるなど、活用の幅はますます広がっています。

日本でも、実証実験的に撮影が行われており、著者もアイドルグループのMVをApple Immersive Videoで体験した際には、肌や服の質感までわかる解像度の高さに驚かされました。

そんなApple Immersive Videoの撮影に特化したこのシリーズに、今回新たに加わったのが「Blackmagic URSA Cine Immersive 100G」です。

本製品は、Apple Immersive Videoを用いた「ライブ制作」に対応した世界初のイマーシブ・シネマカメラです。これまでVision Proで撮影されていたものは、すでに収録されていたものがほとんどでしたが、この機材の登場で、いよいよライブへの活用も期待できそうです。

デュアル8K×8K RGBWセンサーを搭載し、16ストップの広大なダイナミックレンジを実現。高フレームレート撮影時でも、没入感を損なわないリッチな発色を維持できるよう最適化されています。

その名の通り、100G Ethernetポートを標準搭載している点もポイントです。

8Kを超える超高解像度のイマーシブ映像は、データ量が膨大なため、これまではワークフローのボトルネックになりがちでした。本製品では100G Ethernetを採用することで、重厚なデータのリアルタイム伝送を実現しています。

この登場したばかりの「URSA Cine Immersive 100G」ですが、実はすでに現場の撮影に使用されています。アメリカのバスケットボールリーグ「NBA」の一部の試合が、空間ビデオとして、アプリで配信されたのです(※日本では残念ながら未公開)。カメラは、スコアラーズテーブル、ゴール下、アリーナの高部、選手の入場通路など、様々なところに設置され、それぞれの視点の映像を楽しめる形となっています。

つまり、客席からの俯瞰映像だけではなく、選手や関係者しかこれまで見られなかったポイントから、現場の様子を見られることになったのです。しかも、生放送! この映像スタイルが、今後バスケだけでなく、様々な「現場」に導入されるとなるとどうでしょうか……。スポーツ選手の伝説的なシーンを特別な視点から目撃できるのはもちろん、あたかもその場にいる人達と感動を分かち合えるような、これまでにない没入感のある体験が可能になるかもしれません。

【DaVinci Resolve 21】動画編集ソフト上で「写真」の編集&管理が可能に

ハリウッド映画やテレビ番組の制作現場で標準的に採用されている「DaVinci Resolve」。

近年はYouTuberなどの個人クリエイターにとっても定番のツールとなっていますが、今回のバージョン21における最大のトピックは、新たに追加された「フォト」ページです。

これまでもDaVinci Resolveを用いてRAW現像を行うユーザーは存在しましたが、今回正式に「静止画編集」に特化したページが新設されました。説明会の担当者も「毎年のアップデートの中でも、ページそのものが追加されるのは非常に大きな変化」と語っています。

このフォトページでは、スチル画像を読み込んで一括管理し、動画と同じ感覚で編集することが可能です。

既存の「カラー」ページと連携した高度な色調補正はもちろん、任意のエフェクトもシームレスに適用できます。大量の写真を効率よく管理するためのレーティングやソート機能も完備されています。

特筆すべきは、その処理速度です。

説明会では「書き出しの速さに驚いた」というユーザーの声が紹介されました。従来の静止画編集ソフトでは500枚の書き出しに約8分かかっていた作業が、DaVinci Resolveではわずか30秒で完了したといいます。

動画編集ソフト特有の強力なレンダリングエンジンを活用し、何百・何千枚もの高解像度写真をストレスなく扱える点は、フォトグラファーにとっても大きな武器になるでしょう。

また、フォトページ以外では、AIツールのアップデートも見逃せません。従来の30種類から40種類へと拡充され、新たに追加された機能は多岐にわたります。

指定した位置にピントを合わせてリアルなボケを再現する「CineFocus」や、動画を高解像度化する「UltraSharpened」、人物の顔のシミ・年齢・パーツ・形状を調整できる補正機能、そしてメディアを自動解析して特定の人物や場所を瞬時に検索できる「IntelliSearch」など、実用性の高いツールが揃っています。

なお、これらのAI機能はすべてローカル環境で動作するため、外部サーバーにデータを送る必要がありません。機密性の高いプロジェクトでも安心して使用できる点を、説明会では特に強調していました。

ちなみに、以下は今回のアップデートで追加された機能ではありませんが、DaVinci Resolveの「Fusion」ページは以前から3Dのワークスペースに対応しており、シネマライクなVFXやモーショングラフィックスを作成できます。

複数のイメージを3D空間内でレイヤー化・結合できるほか、実写の登場人物を3Dシーン内に自然に配置するといった高度なコンポジットも可能。

2Dテキストをそのまま3D化したり、Mayaや3D Studio Maxから3Dモデルもしくは3Dシーン全体を読み込んだり、3Dシーンにライティングやシェーディングを追加したり、XRコンテンツに馴染むハイクオリティな3Dロゴやインフォグラフィックも制作できます。

今回の説明会では多種多様な新製品が披露されましたが、それらは決して単なる「スペック向上」という言葉で片付けられるものではありません。

本記事で紹介した2製品が示すように、ハードウェアとソフトウェアが表裏一体となって進化を遂げていくことで、クリエイターの想像力は加速し、これまでにない表現の可能性がどんどん膨らんでいくはずです。映像制作の現場がどう変わっていくのか、その最前線から目が離せません。

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