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Vision Pro 2024.06.25

Apple Vision Proは買った方がいいのか? 基本的な情報&しばらく使ってみて分かったことまとめ

Appleの空間コンピュータApple Vision Proが、6月28日(金)に日本で発売されます。日本国内での価格は599,800円(税込)で、一般的なVRヘッドセットと比べてもかなりの高価格帯となっています。

大きな注目を集めるApple Vision Proですが、本記事では具体的にどんなことができるか、VRヘッドセットとは何が違うのかを解説し、実際に使ってみた感想もあわせて紹介します。

※本記事の情報は、海外現地で購入したApple Vision Proの情報をもとにしており、日本での発売後に変わる場合があります。また、日本国内発売前のApple Vision Proの使用に際しては、総務省へ「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度」に基づく届出申請を行っています。

そもそも、Apple Vision Proとは?

Apple Vision Proは、“空間コンピュータ”というカテゴリの新型デバイスです。

構造そのものはVRヘッドセットと同じで、頭からかぶって、両目のレンズに表示された映像を見ることができます。映し出されるのは、(カメラで取り込んだ)現実空間の映像とバーチャルなモノを合成させたようなパススルー映像です。

目の前にはメニューやコンテンツが浮かんでいるように映り、ヘッドセット右上に取り付けられたデジタルクラウン(つまみ)で“現実の風景の割合”を減少させることが可能。メニューやコンテンツの操作には、ハンドトラッキングやアイトラッキング、音声認識を使用します。

2,300万ピクセルの高精細なディスプレイに加え、空間オーディオを採用しており、映像やコンテンツを高い没入感で楽しめます。

日本国内での価格は599,800円(税込)。オンラインのApple Storeで予約受付を行っています。

何ができる?

従来のMacPCやiPad、iPhoneで体験できたアプリやサービスを、空間内に出現させて体験できます。Safari、Apple TV、ゲーム、メール、FaceTimeなど、MacのPCで可能なことはほぼできると言ってよいでしょう。

その上で、空間ビデオを見たり、ディスプレイを拡張したり、劇場のような3D映画を楽しんだり、MR(ミクスチャーリアリティー)系のコンテンツを楽しめたりします。

空間ビデオとは、3D立体映像の動画コンテンツです。撮影はApple Vision Proだけでなく、iPhone 15 Pro・Pro Maxでも可能で、友人や家族が撮った空間ビデオを観ることもできます。

表示させたディスプレイは複数枚並べることができ、インターネットを多画面で閲覧したり、FaceTimeで通話しながらドキュメントを入力することもできます。マルチデスクトップPCのようにモニターを複数用意することなく、サイズも自由に調整できるのが便利です。

操作方法は?

Apple Vision Proでは、基本操作ではリモコンやコントローラーを使いません。メインとなるのはハンドトラッキングアイトラッキングですが、操作にはコツがいるものの、覚えてしまえば非常にコンパクトな動きですべてをコントロールすることができます。

これまでのVR/ARデバイスのハンドジェスチャーは、腕を上げて目の前で操作する必要がありましたが、Apple Vision Proの下部には各種カメラやセンサーが搭載されており、ひざの位置で十分反応します。

アイトラッキングでは、アイコンを見ている状態のまま指をひざ上でタップするようなジェスチャーをすると選択ができます。どうしてもズレるなと感じたら、設定で再調整したほうがいいでしょう。

Meta Quest 3との大きな違いは?

比較対象としてよく挙げられるのが、VR/MRヘッドセット「Meta Quest 3」。こちらはバーチャル空間上でゲームなどのVRコンテンツを楽しむのが主な使い方で、加えて新機能としてカラーパススルー(MRモード)にも対応しました。

Meta Quest 3はVRヘッドセットの最新デバイスなため、グラフィックの美しさには定評がありますが、それでもディスプレイの解像度は2倍近い差があり、Apple Vision Proの方が圧倒的に美しく高性能です。

一方、ゲーム系コンテンツが充実しているのはMeta Quest 3。MetaストアではQuest 1、Quest 2のときからリリースしてきたコンテンツが揃っており、リズムアクションからFPS まで多用なVRゲームを楽しめるなど、現時点での利点はかなり大きいです。

今後Apple Vision ProでもVRゲームが充実するかもしれませんが、まだ具体的なアナウンスはされていません。

そして何よりも値段です。Meta Quest 3は最低価格で74,800円(税込み)と、価格差は8倍近くあり、購入のしやすさで言えば明らかに軍配が上がります。用途の方向性が違うため一概には言えませんが、それでもバーチャルのコンテンツに興味を持ち始めた方でも手を出しやすいのがMeta Quest 3です。

スペック比較表

Apple Vision Pro Meta Quest 3
ディスプレイ解像度
※解像度が高いほど、グラフィックが鮮明になり、リアルな映像体験ができます。
2,300万ピクセル 約911万ピクセル
片目2064 × 2208
(1218 PPI、25 PPD)
リフレッシュレート
※数値が高いほど、映像が滑らかになり、細かな動きまで確認しやすくなります。
90Hz、96Hz、100Hz 72Hz、80Hz、90Hz、120Hz
視野角(FOV度)
※視野角が広いほど、見られる映像の範囲が広がります。
約90度 110度(水平)/96度(垂直)
レンズの種類
※種類によって見え方に違いがあります。
パンケーキレンズ
※パンケーキのように薄いレンズ
パンケーキレンズ
※パンケーキのように薄いレンズ
瞳孔間距離(IPD)
※左目と右目の瞳孔の離れている距離を表します。
51〜75 mm
ボタンを押して自動調整
53〜75mm
ダイヤルで自動調整可能
チップセット
※ゲームやアプリが快適に動作するかに関わります。
Apple M2チップ
Apple R1チップ
Snapdragon XR2 Gen2

実際に使って見た感想は?

Apple Vision Proの実物を触ってみてまず思ったのは、Meta Quest 3で使われているMRとは、全くの別物という点でした。Meta Quest 3の場合、アップデートでより鮮明になってきてはいますが、現実をそのまま映し出せるほどの解像度には至っていません。しかし、Apple Vision Proはかなり綺麗で、SF映像作品でよく描かれているようなCGとリアル映像の融合が実現できていると感じました。

また、操作感が自然であるところも見逃せません。Apple Vision Proはコンテンツが本当に現実の目の前にあって、それを自分の手で触れて操作する感覚があり、操作に慣れた後は違和感を感じませんでした。Meta Quest 3のハンドジェスチャーはまだ未完成であると感じる場面が多いため、その差は歴然でした。慣れてくると、目と指で操作すること自体が楽になっていき、操作がサクサクと進む快適なデバイスであると感じられました。

重さに関してはVRヘッドセットと大きく変わりませんが、普段使いするコンピューターと考えると、まだまだ重い印象です。使っているうちに慣れる面はあり、「パズリングプレイス」のようなパズルゲームを集中して遊んだりといったことも可能でしたが、日常で長時間使うなら、やはりもう少し軽くて小さいほうが良いと思いました。

気になったのはバッテリー。Apple Vision Proにはバッテリーが内蔵されていないため、作業には外付けの専用バッテリーが必須です。しかし、これを接続したままの使用は、不用意に落とすリスクが高く、細心の注意をしなければいけないのが弱点となっています。また、起動時間は一般的な使用だと最大2時間で、VRヘッドセットとあまり変わらず、長時間の作業には有線接続が必要となってしまいます。

コンテンツ量に関してはまだまだ少なく、リリース直後にできることが限られてしまう点は注意したほうがいいでしょう。Appleの力の入れようからも、アプリが増えていくことは確実で、日本向けのアプリも徐々に増えています。しかし、SteamやMetaストアで販売されているような本格的なVRゲームが参戦するかは不明で、今の段階だとそういった用途で買うのは向いてないように思えます。(一応SteamVRのゲームはALVRでプレイ可能

おすすめのアプリ

恐竜たちとの遭遇

最初から内蔵されているデモアプリ。数分の短い映像ながら、現実に恐竜たちが手が届くほどの距離に現れたかのような迫力ある映像を体験でき、Apple Vision Proのポテンシャルをすぐに理解できる内容となっています。

パズリングプレイス

バラバラのピースになった歴史的な建造物を組み立てていく立体パズルゲーム。パススルーが高解像度かつハンドトラッキング操作のApple Vision Proとの相性は抜群です。「自分の手でピースをつまんで、他のピースと繋げる」というシンプルな操作なはずなのに、ついつい時間を忘れて遊んでしまいます。このアプリでハンドトラッキング操作に慣れてから、他のゲームやアプリに触ってみるのも良いと思います。

Disney +

「Disney +」で配信されている映画やドラマを視聴できるのはもちろんですが、本アプリの大きなポイントは「3D映画を3Dで見られる」点です。「スター・ウォーズ」や「アベンジャーズ」、「アバター」などの大作映画も、片目4Kの解像度と立体視で大迫力の映像体験ができます。

空間ビデオ

Apple Vision Proでは、奥行きのあるように見える写真&動画である通称「空間ビデオ」を、そのままに観賞できます。空間ビデオ自体は、iPhone 15 Proなどのデバイスで撮影できますが、これまでは現状撮影したデータを「そのまま」に観賞する方法がありませんでした。実際に観てみると、とにかく、質が良く、写真以上に、その当時の思い出がより立体的に蘇るような気持ちになります。将来的には、立体的な奥行きのある「空間ビデオ」が大切な記憶を保存するための重要なコンテンツになりえるため、今のうちに、大量に撮影しておくのもおすすめです。

拡張ディスプレイ

Apple Vision ProとMacのPCを接続し、PCの画面を空間内に表示できる機能。最新のmacのOSであれば利用可能です。4K画質ではっきりとした映像を見られるため、細かな文字も読みやすいのが特徴。ノートPCであっても、大画面で作業できます。使ってみると、作業が非常にはかどります。入手したら、まず試したい機能のひとつです。

接続方法も簡単で、ログイン中のApple IDが同一で同じWi-Fiに繫がっていれば、Apple Vision Proを装着しながらMacの画面をじっと見つめるだけでOK。

 

Immersed

バーチャルデスクトップ環境を構築できるアプリです。上記の「拡張ディスプレイ」と機能自体は非常に似ていますが、PMacだけでなく、Windows、Linuxにも対応しているのが大きなポイント。無料版だと最大3枚、有料版だと最大5枚までディスプレイを配置できます。

ひとりで作業するだけでなく、フレンドを複数人ルームに招待可能です。ディスプレイのサイズや画面の湾曲度合いなども調整可能。キーボードの入力操作でも大きなラグを感じることがなく、非常に使い勝手の良いアプリです。

そうは言っても高すぎる! どんな人が購入を検討すべきか?

先述のとおり、Meta Quest 3と比較した上で、ディスプレイの美しさや操作性の良さについて紹介しましたが、そもそも廉価で気軽に入手しやすいQuest 3と比較することは、この高額なデバイスの購入を検討するにあたって、十分に適切とは言えません。「Apple Vision Pro」は599,800円(税込)という高級デバイスであるため「Meta Quest 3」より性能が優れているという点は、すでに保証されていると言っても過言ではないからです。

では、このデバイスが599,800円(税込)を支払ってまで購入をおすすめできるデバイスなのかと言えば、誰にでもおすすめできるものではないと思っています。デバイスの目的や用途が、あらかじめはっきりしている人には勧められますが、「とりあえず買ってみよう」といった気軽なモチベーションで購入すると失敗したと感じる可能性もあります。例えば、アプリやサービスを制作したいというクリエイター・開発者などは、「Apple Vision Proで何が実現可能なのか」を先んじて確かめるために購入するのはアリだと思いますが、未だアプリやサービスが充実しているとは言えない現状では、そもそも「使い道を探す」ところからのスタートになるため、キラーアプリの登場を待つか、あるいは廉価版の登場を待ってからの検討でも遅くはないと思います。

ただし、現時点でも購入を検討しても良いという一般ユーザーのケースが、大きく2つあります。ひとつは、家にPCの作業環境をつくることができないケース。部屋の狭さや周囲の環境の事情により、家に大型のPCをどうしても設置できないという方は、Apple Vision Pro一台で済ませるという方法があります。また、出張や日常の移動が多く、どこでも手軽に作業環境を構築したいという方も検討してよいと思います。

もうひとつは、自宅にApple Vision Proと同額程度の高級なプロジェクター、ホームシアターの購入を考えているケースです。上記で紹介したように、高画質な映像を鑑賞できる、場所を選ばずにスクリーンを設置できる等、映像コンテンツとは非常に相性の良いデバイスであると言えます。いつでも、どんな場所でもホームシアターを体験できるデバイスということに魅力を感じるのであれば、一度体験する価値はあると思います。

これは個人的な感想も込めますが、仕事でデバイスを普段使いをしていると、少しずつ「Apple Vision Proで実現できること」の幅が広がっていくのを感じられ、今後どのようなアプリがリリースされるのかを待つのが、シンプルに楽しみになりました。これも、デバイスが出たばかりの黎明期でしか体験できない感動のひとつであると思います。

まとめ

Apple Vision Proは60万円という高価格で、現状ではまだ用途が少ないという課題があり、一般的なユーザーが購入するハードルはかなり高めです。それらを承知した上で、下記のような方なら、購入を検討していいかもしれません。

・大型のディスプレイ+PCを購入しようと考えているが、部屋の置き場所などに悩んでいる人。もしくは、どこにでもその環境を持ち歩きたい人。
・高級なホームシアター系のプロジェクターなどの購入を検討している人。
・Appleの出すものに全幅の信頼を寄せており、Appleの粋を集めた最新技術に触れたい人。
・開発者やクリエイター

購入を迷っている人は……

日本でも発売日の6月28日(金)に合わせて、日本のApple Store直営店で一対一のパーソナルデモが体験可能になります。デモへの参加は公式サイトから予約受付が必要です。

https://www.apple.com/jp/apple-vision-pro/


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