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VTuber 2018.11.18

VTuberと教育・音楽・生放送…“様々な切り口”から考える対談 【たまごまご×佐藤ホームズ】

バーチャル名探偵・佐藤ホームズ氏の企画「V色の研究」が先日公開されました。VTuber界隈を様々な切り口から考える対談動画です。

初回は、MoguraVRでVTuberに関する特集などを執筆するライター・たまごまごがゲスト参加。その際の一部を記事としてご紹介します。動画は前編・後編でアップされていますが、今回の記事はそこに含まれない独自の内容となっています(それぞれの動画と今回の記事おれぞれでテーマが異なっているので、どこから見ても大丈夫です)。


佐藤ホームズ氏は「3分でわかる!今週のVTuber界」などの、VTuberに関する話題をまとめる動画や、特定の話題を深堀する動画などを投稿しているVTuberです。Mogura VRへの動画寄稿も行っています。

トピック:VTuberで教育コンテンツは作れるのか?

佐藤ホームズ(以下、ホームズ):

NHK教育(Eテレ)でキャラクターが子供に教える番組を見ていたんですが、これVTuberでやったら面白いんじゃないかなって思うんですよ。

たまごまご(以下、たまご):

今もうあるところだと富士葵あおい’sきっずは見てていいなって思いますね、純子供向け。今は想像以上にYouTubeを子供たちが見ているらしくて、子供向けチャンネルっていっぱいあるんですよね。そしたら童謡動画の再生回数が飛び抜けて多いこととかがあるんですよ。ちっちゃい子って歌の動画は何回も見続けるので。っていうことは、これVTuberやれるんじゃね? みたいな気持ちはあります。

(参考・子供向けちゃんねるチャンネルキッズボンボンTVに参加している東雲めぐ

ホームズ:

心を中高生に戻しての発言なんですけど、人によっては、美少女やイケメンキャラクターに教えてもらったほうがやる気が出ると思うんですよ。

たまご:

ぼくも富士葵に習いたかったですよ!

ホームズ:

音楽の授業、してほしいですね。

たまご:

現時点で、教育的な資料コンテンツを作っているVTuberさんはすでにいると思うんです。それを動画のまんま、教室の中で流すってところから始められるんじゃないかなって。ぼく、元々中学校教員だったんです。その時に、やっぱり聞いてもらいづらいもの、言いづらいものっていっぱいあったんですよ。最近だと花魁由宇霧というVTuberさんがいて、性教育に関して配信と動画を出してるんですね。それがものすごい現実的で勉強になるのと、先生側が口にしづらいところも全部バーチャルであるがゆえに言ってくれるので、教室で流したいなって。

ホームズ:

由宇霧さんも言ってましたが、性教育は禁忌みたいに扱われたりされがちで。大事なことなのになかなかうまく教えられていない。

たまご:

性教育は教える時に、先生の価値観が入りがちだし、説得力の問題とかが難しい。でも、由宇霧さんは自分の体験してきた経験をガンガン言える。これってバーチャルの強みだと思うんですよ。自分の顔を出していないアバターがあるからこそ。

ホームズ:

えらい方、ぜひ由宇霧さんの起用をご一考お願いします(笑)。個人的な願望なんですけど、アイドル部のカルロ・ピノさんに生物の授業を受けたいんですよ。ピノさんの、空想生物を真剣に考察する配信を見て、こんな話をする先生に会いたかった!って思いましたね。

たまご:

あと食虫植物のネアとか。畑のVTuber陽菜とか好きです。陽菜はトマト農家さんが作っているVTuberで、地ならしから収穫から調理まで解説する動画を作ってるんですよ。トマト特化。小学校で流せると思います。

たまご:

教育系のVTuberをやる際の最大のネックが、儲けが出ない、ってとこなのでしょうね。

ホームズ:

そういう教育動画を使う側がお金を払ってくれればいいんですけれども、うーん。

たまご:

ぼくの夢としては、NHKのEテレみたいな感じで、VTuberの教育チャンネルができれば面白いかなーと。一日中つけていたら誰かしらのVTuberが教育番組をやる。ちょっと夢ありませんか?

ホームズ:

入り浸るかもしれませんね。美少女VTuberが微分積分を教えてくれるとか。中高生ターゲットですね。

たまご:

「天才てれびくん」みたいのやってみたいVTuberさんっていると思うんですよ。ポンキッキーズやウゴウゴルーガみたいな。そういう人が集まったら面白いかな……。教師側が授業内容や状況にあわせて姿を変えるのも全然あり。アバター世界の未来を考えたら、バ美肉的な技術がナチュラルになれば可能なんじゃないか?できますよ。

ホームズ:

「バ美肉教師」。本当にやってほしい。

たまご:

インターネット使った塾も増えてますし。だったらアバターどんどん使う世界は、見てみたいかなあ。

ホームズ:

バ美肉っていう単語が強すぎますね……(笑)

VTuberならではの音楽表現

たまご:

VTuberさんの歌動画、ぼくはすごく好きで楽しんでるんです。ホームズさんは聞かれます?

ホームズ:

聞きますね。有名どころだと燦鳥ノムさんとか、町田ちまさんとか。ちまさんはインパクトがすごいですね。

たまご:

最近だと花鋏キョウとかは、歌動画中心で活動してますね。

たまご:

今興味があるのが、ときのそらかしこまり天神子兎音アズマリムらがやろうとしている、バーチャル音楽フェス。VRChatでもVRの音楽フェスやってましたね。ああいう音楽フェスがどんどん増えていってほしいなって願っているんですが、最大のハードルの一つが「視聴者にVR機器が必要」って部分かなと。
(参考:バーチャル音楽フェス制作実行委員会

ホームズ:

確かに。VRのライブってやる方もめちゃくちゃ大変でしょうけど、見る方も、何万円もする機器が一台ずついるってのは大変。

たまご:

輝夜月のライブをVRで見たんですけど、やっぱりVRでの体験は、あまりにも特殊で面白い。それを楽しんでたってことは、VR機器持ってた参加者いっぱいいたの? どういうこと!? って。まだちょっとハードル高いじゃないですか。

ホームズ:

まだまだ持っている人は多くはないですよね。もっと言えば、VTuberの手元にもそうそうないですよ。欲しいですもん(笑)。

たまご:

HTC VIVEとかも、お店ではまだまだ普通には売ってないですからね。VIVE自体は数万円くらいからとしても、それに見合うスペックのPCと、部屋の空間がない。

たまご:

現実の音楽ライブに行って音を聞くと、単純に空気の震えとか、バーチャルでは勝てないですよね。今後どうやったら「バーチャルじゃないとできないもの」になるんだろう? って言うのは気になってます。みんなこれだけVTuberの歌に惹かれて、お金かけてやろうとしているってことは、現実の音楽にはできないことがあるわけじゃないですか。どこを求めて、どういう方向に向かっていくんだろう。

ホームズ:

単純にいい歌を作るだけじゃかなわないわけで。そうなると輝夜月ライブみたいな、視覚的な演出と音楽を合わせることになるんじゃないですかね。ライブはビジュアルが大事だと思うので。

たまご:

何か惹かれるからVTuberの歌動画は人気があると思うんですけど、ちょっとぼくの頭の中で整理できてないんですよ。こんなにみんなが作るのも、何か好きになる要素があるからじゃないですか。みんなどこに惹かれたんだろう?

ホームズ:

意外性、とかですかね?バーチャルゴリラさんからあの美声が出る、とか。逆に美少女VTuberが歌も素晴らしい、というのも良いですよね。

たまご:

確かに!普段下ネタ連発するミライアカリが歌うとめっちゃかっこいいのは、きゅんときますね。あっ、そうか、キャラクター性と音楽の絡み合いなのかな?それぞれのVTuberさんに対して抱いているイメージや憧れが、音楽で反映されるのにワクワクするのかもしれない。

たまご:

ぼくがすごいと思ったのが、田中ヒメ・鈴木ヒナのMV。いつもはおちゃらけた彼女たちとのギャップのかっこよさもあるし、動画の視覚的効果も尋常じゃなくかっこいい。YouTubeの広告でたまに流れるんですけど、広告で全部見入ってしまって、ヒメちゃんのチャンネル登録したっていう声がすごく多いんですよね。これはVTuber音楽動画力の勝利だなって。彼女たちの才能が、音楽動画でこそ表現できているのかもしれない。

https://www.youtube.com/watch?v=fxenYOQDXj4

たまご:

音楽動画で言えば、最近バーチャルねこが人気ですけど、ねこさんの音楽ジャンルってアンビエント、チルアウトじゃないですか。まずメジャーでは売れない、マイナージャンル。バーチャルのキャラクターを通じると話題になるんだ! ってのは感じました。

ホームズ:

ポエムコアなんて、ミソシタさんがいなかったら一生知ることがなかったですね(笑)。今は好きでほぼ毎日聞くようにまでなりました。

たまご:

VTuberメジャーデビュー第一弾、一人目、世界初がミソシタですからね。

ホームズ:

一番にメジャーデビュー発表されたのが富士葵さんで、おめでとうって思っていたら、さっそうとミソシタが現れ、デビューも早かった。しかも特典動画が100連発って(笑)。どれもしっかり作られているし。

たまご:

既存のポップジャンルにVTuberが飛び込むのも面白いんですが、VTuberは話題が広がっているきっかけになりうるインディーズの場だとも思うので、期待したいかな。特にクラブ系は強そうですね。夢追翔ぴろぱるのバーチャルセッションや即興演奏も、可能性がありそう。

たまご:

ぼくVRChatのクラブワールドとか、輝夜月ライブでも思ったんですけど、人がいっぱいいるけど「そばにいない」っていいなって思ったんですよ。狭くない!ライブ会場って汗臭いじゃないですか。押されない、っていいなって(笑)。

ホームズ:

まっすぐ立つのが大変ですよね。もみくちゃにされるのがライブだって考える方もいらっしゃいますけど、それで敬遠している層を引き込めるのは大きいですね。

たまご:

若い頃はモッシュ楽しかったけど、年取ってきたらしんどくて。バーチャルはいいな……(笑)

生放送かぶり問題、みんなどうしてる?

ホームズ:

たまごまごさんは二窓、三窓以上しますか?

たまご:

しません! 最初は頑張ったんですけど、全然集中できない。ぼく編集された動画見るのがすごい好きなんですよ。だから動画に時間をとって、生放送はアーカイブにしようって決めました……って表向き言ってきたんですが、やっぱ見に行っちゃいますね。しょうがないよ、会いたいもん。

ホームズ:

そうなんですよ。映像もコメントも同じ内容なんですけど、ライブとアーカイブじゃ全然違うんですよね。

たまご:

ホームズさんは、結構箱推しとかで忙しいんじゃないですか?

ホームズ:

そうですね。アイドル部はまだ推しやすい箱なので全て追ってます。あと天開司さんは垂れ流すタイプなので、作業BGMみたいに聞いてますね。落ち着く声の系統の方なので、聞き心地がいい。

たまご:

あー、そういう需要もあるのか。確かにぼくも深夜に渋谷ハジメとか、静凛とかとかは、そこにいる、っていう安心感があるので、垂れ流したりしますね。あの3人はいつ寝ているんだろう…(笑)

ホームズ:

深夜起きた時に、大体誰か1人はやっているので(笑)。実家のような安心感はありますね。特に叶くんはいつ寝ているんだろう……。全部見ようとするとキリがないですね。

たまご:

深夜じゃなくても、ゴールデンタイムはきびしいですね。

ホームズ:

YouTuberの脇のチャンネル登録一覧が、いつも生放送告知のマークですごいことになっていて…….。

たまご:

ユーザーローカルとかで見ると、こんなにやってるの!?みたいなびっくり感。ギルザレンIII世が、10窓以上していたとおっしゃってましたが、今ユーザーローカルさんの21時からの配信数見たら、20超えてますね。

ホームズ:

どうしてもそうなると、ライブで見るかアーカイブで見るかの取捨選択は必要になってしまう。この前の具体例でいうと、物述有栖さんの3Dお披露目と、輝夜月さんの生放送がかぶっていたことがあって、これはどうしようもない!と思って二窓していました。

たまご:

三窓以上ってされます?

ホームズ:

三窓はさすがに…天開司やRKS(編注・にじさんじの、静凛、叶、渋谷ハジメの深夜配信3人組。通称「龍角散」)周りを含めたら、三窓はたまーにします。けどやっぱり内容が頭に入る量は1窓と比べるべくもないので、なるべくなら一窓にしています。

たまご:

ぶっちゃけ複窓をしてYouTubeを見るっていうのは、異常なことだと思います(笑)。それをやっている方がいっぱいいるくらいに、VTuberファンは夢中だってのが興味深い。とはいえ本当にそんなにやっている人がいるのかなあ? 数字が見えない。Twitter見ていると「しているよ」って人を多々みますが、どのくらいの割合なんだろう。

ホームズ:

今度アンケートとってみますか。仮に10%だったとしても、10%もいるの!? ですからね。アイドル部ばかりは…ぼくの優先順位でアイドル部が高いだけですね(笑)。

たまご:

花京院ちえりが石ころがしてるときは絶対見る、みたいなのはあります。最優先事項みたいな。

ホームズ:

ぼくも神楽すずさんはマストで見ますね。最近神楽すずさんは20年前くらいのマリオパーティを配信しているんですけど、余すところなく見どころなんですね。もはや一字一句聞き逃がせない、くらいまできていて。

たまご:

かつて神楽すずさんがアップランドの真の清楚と呼ばれていたのはなんだったのか……あっ、今のは失言です!カットで。

ホームズ:

今のはカットしません!清楚ですし、清楚ですからね。

たまご:

あ、あ、そうですね(笑)。ぼくは本間ひまわり「ドンキーコングで死んだらバナナを一口食べる」って配信が、もうかわいくて仕方なくて。内容が深いというわけでは決してないけれども、癒やされたい、が強くて見ていました。

ホームズ:

「ちょっとひねった、ひと味違う配信」は見に行きたくなりますね。

たまご:

OD(おなえどし)組みたいにがっちり企画を組む人と、日々配信をやっていくこと自体に意味があるって方と、分かれてきた感はありますね。企画メインなのか継続性メインなのか。因幡はねるとかは継続性を保ちながら、企画も練っているから本当にすごい。

ホームズ:

その上でクオリティをちゃんと保っているっていうのが、尊敬せざるを得ない。学力テストとか物凄かったですね。

たまご:

これはすごい自己満足なんですけど……いろんなVTuberさんがかぶっちゃってしんどいときは、とりあえず窓を開いて音は消して、視聴者数1増やしておこう、ってのはやります。たかが1だけど……あとからアーカイブ見るから……って。

ホームズ:

やりますね。サイレント複窓は結構。

たまご:

一時間なり30分なり、張り付いて見ているってそもそもすごいと思うんですよ。

ホームズ:

一時間でも長い方ですよね。

たまご:

最近だとGEMS COMPANYの子たちが30分区切り。あれはすごく見やすい。箱の場合短いのは大事だなって。物足りないのもあるけれども。

ホームズ:

アイドル部の配信リレーも、一時間と区切ってくれていますね。あとこれはVTuber側の対策なんですけど、生放送まとめ動画をこまめに作るとか。

たまご:

作るの大変でしょうけど、10分まとめみたいのがあると、新しいファンは増えやすい気はしますね。一時間の配信動画がずらっと並んでいると、新規にはちとしんどいかも。

ホームズ:

見るっていうより、取り掛かるかーとなって、躊躇してしまうので。ギル様しか見られませんね。

たまご:

例えばニコニコ動画は、最初期はあれもこれもチェックしようって人もいたかもしれないですが、今はそんな事考えている人は絶対いないはず。VTuberは今同時配信数10って、微妙に人生かければ手が届きそうって感じてしまう。そこが怖い。これが一時間に「この時間500やってますよー」とかだったら、取捨選択ははなから無いし、あれもこれもっていう気がそもそも起きないと思う。そういう過渡期かなって。

ホームズ:

なるほど、逆にもうちょっと増えたら楽になるのかも。

たまご:

YouTubeはまだいいです。アーカイブが残るから。他の媒体は厳しいときもあって……。

ホームズ:

アーカイブ機能を、ぜひとも!

たまご:

配信プラットフォームが増えるのはすごくいいことだと思うんですよ。その人にあったプラットフォームがあるし、見る層の幅も広がる。特にIRIAMのシステムは本当に美しくて感動しました。端末側でアバターを動かすので、革命的なほど画質がきれいで。ただいかんせん、やはりアーカイブ機能がないのが……となると、見なきゃみたいに追い立てられるのが辛い。

ホームズ:

義務感になってしまいそうで、そこがちょっと怖いんですよね。

たまご:

人間コンプリート欲求あるじゃないですか。おさえておきたいものがあるのに見逃してしまうと、喪失感が半端じゃない(笑)。

ホームズ:

いやー、RPGとかでアイテム取り逃してずっと後悔しますもん。一度しか行けないダンジョンで取り忘れたらずっと引きずる。そのためにもう一周するのかとか考えたり。

たまご:

やってる側もアーカイブを残さないところでやるっていうからには、重要な発表をするつもりは無いと信じてますが、これは……プラットフォームさんにはぜひご検討いただければと思う部分です。

ホームズ:

ですね……アーカイブ機能にいくらかかるのかわかりませんが。

たまご:

OPENRECみたいに、お金払ったら後から見られるよってなるのなら、全然払うんですけどね。

ホームズ:

ですね、お金でどうにかなるんであれば。リアルの世界には精神と時の部屋はないですからね。

たまご:

17Liveなんかは、配信は聞き捨てが当たり前だから、それにのっとっているのかなって気はするんです。それってコレクター欲求の強いオタク思考と、軽く話しかける公開ボイスチャット感覚のギャップなのかなー、と思ってみてはいます。

ホームズ:

コンプリート欲求は、ねえ。

たまご:

特に社会人は、絶対悩んでいる人はたくさんいるので、なにかしらの変化はあってほしい。ただ、こうやってどんどん幅が広がり続けて、ブームとして追っかける対象じゃなく、当たり前になっていってほしいというのはあります。

ホームズ:

ブームを文化に。そういう意味でupd8の理念は共感できるし、応援したいですね。

(終)


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