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業界動向 2026.01.13

最も売れているのは日本の店舗 スマートグラス「Even G2」注文増で生産能力を3倍に 【CEOインタビュー】

2026年初、米国ラスベガスで開催された世界最大級のテックの展示会CES 2026。AIやロボティクスが中心に語られる中、展示フロアで着実に恒例のカテゴリーになってきたのは、エリアカテゴリーにはなっていないがスマートグラスだろう。要素技術の展示から消費者向け製品、産業向けまで様々な展示が世界中のメーカーから集結していた。

そんな中、白を基調にした小綺麗なブースを構えていたのが中国のスマートグラスメーカーEven Realitiesだ。

スマートグラスには、様々なタイプのデバイスが存在するが、同社が展開するEvenシリーズは、情報提示用の両眼ディスプレイを搭載したスマートグラスだ。マイクを搭載し、カメラ・スピーカーは非搭載。40g未満の軽量を徹底しており、2025年11月に発表したEven G2は1年前にしたEven G1よりもスリム・軽量を実現している。合わせてリング型コントローラー「R1」も発表。その洗練したデザインと高い性能に日本でも評価する声が高まりつつある。

前回の2025年9月のインタビューから半年も経たないが、スマートグラス業界の動きはあまりにも速い。Even G2発表後の状況はどのようになっているのか、今回はCES 2026でEven RealitiesのCEO ウィル・ワン氏にインタビューを行った。

日本からの熱狂的な支持生産体制増強

ーーEven G2を11月に発表してから、市場の反応はいかがですか?
ウィル・ワン氏:非常に良いです。G2は前世代のG1に改良を加えました。AIの全体的な使いやすさや機能、応答性は、目に見える改善がなされています。デバイス自体も軽量化され、より快適になりました。気に入っていただけています。

そして、日本の皆様について。彼らは(我々の製品を)最も愛してくれていると言っても過言ではありません。日本からは本当にポジティブなフィードバックをたくさんいただいています。現在、最も売れている店舗は日本にあります。

ーーJUN GINZAですね。
ワン氏:すごい勢いで売れており、この勢いを維持したいと強く思っています。機能のリクエストも多くいただいています。まだソフトウェアにはいくつかのバグがあり、絶えず修正を行っています。とにかく非常に良い勢いがあると感じています。

ーー生産能力については予想と比較していかがでしたか? 間に合っていますか。
ワン氏:注文数が私たちの予想をはるかに上回るペースで伸びているため、実際に生産能力を拡大しなければなりませんでした。

ローンチ以来、2ヶ月はその対応に追われていましたが、ようやく目処が立ってきました。ローンチ時と比較して、現時点ですでに生産能力を3倍に増やしました。今月(2026年1月)末までには、注文に対して最適な生産能力に達するはずです。そこでバックログ(受注残)のほとんどを解消できる見込みです。ようやくそこまで来ました。

ーーEven Realitiesでは自社工場を持っているのですね。
ワン氏:スマートグラスのサプライチェーンは非常に複雑で、さまざまな工程があります。自社工場を持ちつつ、同時に複数の異なる工場とも連携しています。前工程については他の工場と協力していますが、最終的な組み立て工程は広州にある自社工場で行っています。

そして、レンズについては自社工場で製造しています。スマートグラスのブランドで、自社工場でレンズを製造しているのは、おそらく私たちだけでしょう。他の多くのスマートグラスブランドは、パートナー企業と一緒にレンズを作っていますから。

私たちがレンズの自社製造にこだわる理由は、Even G2にとって最高のレンズを作れるのが私たち自身だと感じているからです。表示を伴うスマートグラスではバランスの取り方が従来のレンズとは異なるため、レンズの設計も独自である必要があります。従来のレンズメーカーに任せるよりも、自分たちで作るほうが良いものができると考えたのです。

ーーこのCES2026の会場には多くのスマートグラスが出展されています。
ワン氏:世の中には多くのスマートグラスが出回っていますが、その多くは、まだ十分に磨き上げられていないと感じています。たまにかけて楽しむ分には良いのですが、毎日実際に使うとなると話は別です。仕事で毎日使いたいとなれば、本当に信頼できるものでなければなりません。

私たちがやりたいのは、本当に毎日使えるものを作ることです。日々の仕事で使えるツールであることを確実にしたいのです。Even G2はまだ全ての人向けというよりは、プロフェッショナルなビジネスパーソン向けです。ビジネスにおけるプロフェッショナルな会話をサポートできる道具です。このグラスを購入される方の多くは、ジャーナリストや投資家のように、仕事で多くの人と話し、コミュニケーションをとる方々です。彼らにとってはEven G2が本当に役に立つでしょう。

ーーその点が他のスマートグラスとの大きな違いだとお考えですか。
ワン氏:提供価値という観点での違いの一つです。しかし、デザインや内部のテクノロジー、エンジニアリング能力という点でも、私たちは競合他社よりもはるかに進んでいると思います。私たちのチームは、優れたエレクトロニクス製品を作る経験が豊富です。

光学エンジニアリングに関しても、群を抜いて先進的です。他のウェーブガイド技術や他のグラスと比較しても、Even G2の光学系は優れていると自信を持っています。最高の商品、最高の体験をお届けしたいと考えています。

ーーすでに多くの競合製品が登場し競争が激化する中で、他社製品とさらに差別化するための計画はありますか?
ワン氏:一つは光学エンジニアリングです。市場で最高レベルの光学系を提供できるように継続的に投資を続けていきます。クリアでシャープなディスプレイ、そしてこれほど小型・軽量で消費電力が低いものは他にはないというレベルを目指し、常に最前線に立ち続けます。

もう一つ、機能面においては、プロフェッショナルな設定や会話により焦点を当てていきます。特に、より高性能なものにしていくつもりです。会議や聴衆の前で話すシーン、多言語環境において、Even G2は最高のパフォーマンスを発揮するはずです。そのために、LLMのトレーニングやアルゴリズムなど背後のソフトウェア開発にも多額の投資を行っています。

プロトタイプではなく信頼できる完成品を届ける

ーー光学部品のスペックについて、鮮明さなどで何か目標にしている水準はありますか?
ワン氏:世代ごとに光学ソリューションは向上していきます。当然、解像度は高くなりますし、将来的にはカラーディスプレイになり、あらゆる機能が搭載されるでしょう。しかし、それには段階が必要です。私たちは、良質な品質を保ちながら一番乗りすることを目指しています。

ーーディスプレイ一つとってもも様々な選択肢がありますね。
ワン氏:私たちは、製品を世に出す時には、確実に信頼できる体験が実現できると伝えたいのです。(※1)良いバッテリー寿命、良い画質、そのすべてです。だからこそ、私たちのデバイスはバランスが良いと評価いただけるのだと思います。

(※1)編集注:ARグラス、スマートグラスで頻繁に見受けられる「誇大気味な動画や宣伝」に対して、決してそのような消費者の期待を裏切ることを自分たちはしたくないという意思表明の表れの意図が含まれている。

コンセプトモデルを作るのはそれほど難しくありません。カメラ付きで、カラーディスプレイで、あれもこれも付いたスマートグラスのプロトタイプを作ろうと思えば、それは難しくないのです。しかし、人々が毎日使える、本当に成熟したデバイスを作るのは全く別の話です。

スマホのような進化速度と買い替えサイクルへの対応

ーースマートグラスの業界の動きが加速し、年々変化しています。このスピードについていきながら、既存ユーザーに対してはどのように対応しますか?
ワン氏:私たちがしっかり取り組まなければならないことだと思っています。「G1を買ったばかりなのに、なぜもうG2が出るのか」というお客様の声もいただいてますし、今後G3、G4、G5でも同様のことが起きるでしょう。それはもうこの業界の性質です。

現在は、スマートフォンで例えるとiPhone 4が出たばかりの頃のような初期段階に似ています。iPhone 5は全くの別物になり、iPhone 6もまた完全に異なりました。そうなると毎年買い替えたくなるものですが、結局のところ、必ずしもそうする必要はありません。

同じで、Even G1は現在でも、日常的に使える十分な能力を持ったデバイスです。現在もG1を毎日使用しているユーザーはたくさんいます。もちろん、本当にアップグレードしたいと思えば可能ですし、最新の機能を手に入れられます。しかし顧客としては、自分のペースでアップグレードすれば良いのです。毎年最新モデルに買い替えたい人もいれば、1つ飛ばしで「1の次は3、その次は5を買おう、2と4はスキップしよう」と考える人もいるでしょう。自分に合った方法を選べば良いのです。

しかし企業としては、速い製品ペースを維持する必要があります。常に業界の最前線にいることを確実にするために、アップグレードしなければなりません。私たちはすでにG3(Even G2の次のモデル)に取り組んでいますし、今後数年で4、5と出していく予定です。毎年、CESのたびに、最高の製品を世に出せるようにしていきます。

ーーワンさんはAppleで働いていたとのことですが、既存ユーザーへの取組としてAppleの下取り(Trade-in)プログラムは良い仕組みですよね。
ワン氏:あれは本当に良いアイデアだと思います。将来的には私たちも検討するつもりです。イテレーション(新製品の投入サイクル)が増えてくれば、既存のお客様に向けてより多くのプログラムを提供する予定です。

今回Even G2を発表した際は、既存のお客様に279ドル(国内価格は税込41,800円)「R1」(リング型コントローラー)を無料で提供しました。かなり大きな割引です。

ーーリングのアプローチは非常に新しくて面白いですよね。ただ、購入する際はサイズが重要です。ECでリングを注文する際、まずサイズを確認して、その後に注文するのは少し手間がかかります。(※2)
ワン氏:リングを購入される方の多くがグラスも一緒に購入しますものね。リングだけを買ってグラスを買わないことは稀です。

現時点では(オペレーションを改善しており)まずサイズキットとグラスを一緒に発送するようにしています。そうすれば、お客様はすでにグラスを手に入れて遊ぶことができますし、その間にサイズを測って私たちに教えていただければ、後からリングが届くという仕組みです。

(※2)編集注:発表時点にEven G2とR1を同時購入すると、指の太さに最適なR1のサイズを測るための「サイズキット」が事前に送付され、サイズキットを使って測ったサイズに基づいて適切なサイズのR1がグラスと一緒に発送される流れだった。

テック愛好家から一般層への普及フェーズ

ーー今、スマートグラスの市場は初期段階だとおっしゃいました。これはブーム、つまり多くの企業が淘汰されていくような状況だと思いますか? それともこのまま需要が爆発的に伸びていくのでしょうか。
ワン氏:まさに転換点に差し掛かっていると思います。まだマスの市場になったとは言えません。まだ多くの人がスマートグラスの存在を知りませんから。マス市場への普及を推進する必要があり、始まりつつあると思います。

私たちの販売数を見ても、毎日より多くの人々が興味を持ち始めているのが分かります。いわゆるテックの好きな人たちだけでなく、一般の人々です。ブランドやカテゴリーを本当に成長させたいのであれば、私たち(※3)のようなテック愛好家だけに売っていてはダメです(笑)一般の人々が、日々の生活の中で実際に使うようにならなければなりません。

※3 編集注:ワン氏自身と筆者のこと

ーーでは、市場の成長が停滞する可能性は……?
ワン氏:成長が遅くなることはないと思います。今はまだ初期段階で、数字を見てもすぐに伸びていくでしょう。最終的には、ほぼ全員がスマートグラスを1つは持つようになり、スマートフォンと同じくらいの市場規模になると思いますが、私たちはまだそこから程遠い場所にいます。

ですから、今後数年で成長が止まったり鈍化したりするとは思いません。競争は激化するでしょうが、市場規模自体もはるかに大きくなるはずです。

スマートグラス界のテスラを目指して

ーーEven Realitiesとして、達成したいことは何ですか?
ワン氏:私たちは、スマートグラス業界の絶対的なパイオニアになりたいと思っています。スマートグラスにおける最高の体験を定義し、人々がスマートグラスについて考えるとき、唯一思い浮かべるブランドになりたいのです。それが私たちのやりたいことです。

AIについて話すときにOpenAIを思い浮かべたり、EV(電気自動車)について話すときにテスラを思い浮かべたりするように、スマートグラスについて話すときはEven Realitiesを思い浮かべてもらいたいのです。

ーーまさに業界の代名詞になるために重要な要素は何でしょうか?
ワン氏:間違いなく、イノベーション(革新)し続けることです。体験を定義し、カテゴリーを定義するために。そして、可能な限り最高の製品を、可能な限り早く世に出すことです。それが唯一の方法です。

今はまだ、少数の人たちがEven Realitiesのスマートグラスは良いと分かっている段階です。私たちは製品を磨き続け、より多くの人々に広めていく必要があります。そうすれば、人々は日常的に使い始め、口コミが広がり、製品について語り合うようになり、トップ・オブ・マインド(まず想起させる)存在になれるはずです。

ーーありがとうございました。


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