2025年5月末に大阪で「ポケモンGO Fest 2025」が開催された。ARゲーム「ポケモンGO」で年1回、全世界3都市で開催されている大規模なリアルイベントだ。
「ポケモンGO」は、スタートから9年が経過してなおアクティブユーザーを誇る。スタートから一貫して運営してきたのはユニコーン企業にまで成長したスタートアップNiantic だ。なお、2025年3月には、Nianticがゲーム部門を売却し、「ポケモンGO」は大手ゲーム会社スコープリーの運営となることが発表された。
初回の「ポケモンGO Fest」が開催されたのは2019年のこと。今では、4日間のイベントに40万人以上(2024年・仙台)が参加し、街中を世界から集まったユーザーが歩き回る。開催都市への経済効果は約73億円とも試算されており、単一のゲームのイベントとしては、とんでもない規模だ。
筆者は1ユーザーとして毎年このお祭りに参加している。今回はスタートアップとしてのNianticにとっては、これまでの集大成となる「ポケモンGO Fest」。そのレポートと担当者のインタビューから、リアルとバーチャルの融合を舞台にした世界最大規模のイベントを紐解いていく。
9年の時を経て成長した「ポケGO」
まず現時点の「ポケモンGO」について紹介しておこう。
ポケモンGOは、現実世界を歩きながらポケモンを捕まえていく位置情報ゲームだ。原則は変わっていないが、9年の間にそのゲーム性は複雑になった。
大きな変更点はやはり「リモートシステム」だろう。新型コロナウイルスによって外出できない間に生まれ、、歩き回らずに貴重な強いポケモンと戦い、集められるようになった。例えば「キョダイマックス」では、同時に40人のオンライン参加での戦闘を楽しめる。その分、攻略の難易度は上昇。これまでのレイドバトルでは、数人が集まれば大概のポケモンは倒すことができたが、「キョダイマックス」ポケモンは20人くらいが必要となる。
一方、「ルート」や「スタンプラリー」など、現実空間を歩き回らないとできない要素も続々と増加していった。。きわめつけとなっているのは「ロケーション背景」で、指定されたスポットで特定のポケモンを捕まえたときにのみ付与される仕様となっている。それ以前も、全国各地のさまざまな観光スポットを巡ってポケモンを集めるユーザーは多かったが、最近ではそういった行動もゲーム内のミッションとしてあらかじめ組み込まれているのだ。

(スタンプラリー。まだ全世界で万博会場と、ポケモンGO Fest 2025大阪会場でしか提供されていない)
このようにさまざまな機能が次々と追加されると、当然ながら1人だけでプレイするのは非効率となってくる。であれば、ユーザー同士で協力し合って情報をシェアできる方が良い。そのため、ユーザーのコミュニティが発達。NianticのARゲーム全般のコミュニティアプリ「Campfire」では、目的を同じくするユーザーが繋がって、さまざまなミッションをこなしている。
もちろん、AR機能の拡張も進んだ。複数のポケモンを同じ空間に表示させて一緒に撮影できたり、相棒のポケモンを呼び出してコミュニケーションをとったりといったことが可能となった。目の前には存在しないポケモンを感じ、声を聞き、一緒に歩き、写真を撮る。「ポケモンGO」のプレイヤーは常にポケモンの世界を現実世界と重ね合わせて見ているのだ。そういった意味で、このゲームは、世界最大のARコンテンツと言える。
バーチャル×リアルを売りにしたゲームの“リアル”イベント
そんな日頃から現実世界を舞台にした「ポケモンGO」のリアルイベントというのは、逆に設計が難しいのではないだろうか。ここからは「ポケGO Fest 2025」について、NainticでポケモンGOのアジア太平洋地域のライブイベントを統括している三宅那月氏のインタビューも合わせてお送りする。
最近のポケGo Festは、舞台となる都市の広域エリアと特定の公園の2つのパートに分けて開催される。今回の大阪では、大阪の都市部と万博記念公園の2箇所。公園パートは4日間のうちの午前か午後のみで参加可能なチケットが販売されるため、ユーザーは大阪の都市部を周遊しながら、時間となれば公園に移動し、メインイベントに挑戦することになる。
「ポケモンGO」のユーザーは、老若男女かなり幅広いユーザーが参加していることも特徴的だ。Go Festでもその多様なユーザー層は見て取れる。ベビーカーを押している親子、友達同士で参加している小学生、気合十分な装いで相談しながら歩いているシニアのグループ。

(筆者も4歳の息子と、義理の兄・小学生の甥・姪の5人で参加。)
会場には、やりこんでいるヘビーユーザーも、カジュアルに楽しんでいるライトユーザーも集まっている。ゲームという性質上、イベントの中でできるゲーム性をどこまで追求するのかも課題になる。
「分かりやすさ」「世界観」「ユーザーフレンドリー」
「プロダクトチームの方でやりたいこと、提供したいことがたくさんあって、最初はそもそも割と盛り込みすぎることが多い印象です。一方でイベントとしては、ある程度分かりやすさを追求しています」(三宅氏)。
キーワードは「分かりやすさ」のようだ。その言葉通り、ゲーム内のミッションはかなりシンプルで、マイペースに進められる内容だ。ものすごい速さでこなして、貴重なポケモンを集めにいってもいいし、ゆっくり歩きながらこなして行っても良い。
特に最近は「開発チームとの連携で、ゲーム内のロードマップとライブイベントの世界観が連動できるようになってきました」(三宅氏)という。ただのファンイベントではなく、普段のゲームプレイがさらに楽しくなるようなイベントにするといった工夫が特徴的だ。
また、現実のイベントなのに、目の前のスマホに夢中になっているだけでは、せっかくの景色を楽しむことはできない。2025年の大阪ではこれまでよりも、「フォトスポットや周辺企画に力を入れた」という。
確かに会場にはいたるところにイベントの世界観を象徴した大掛かりなフォトスポットがあった。
「ポケモンGOは、ポケモンの世界に自分が入るという体験をしていただくゲームです。今まではトレーディングエリアと呼ばれるテント、もしくは机のコーナーがあって、それとは別に世界観を表す飾りやオブジェを設置していました。今回はハビタット(※生息地)の世界観を表すオブジェの中にトレーディングエリアを設けることで、全部が一つの世界観だと伝わるようにしてみました」(三宅氏)
他にも子連れの参加者に向けては2024年の「ワイルドエリア福岡」以来、「キッズエリア」を設置。株式会社ポケモンが子供向けのグッズを触れる場所を展開するなど、ゲームを遊ぶだけではない、「リアルイベントの充実度を上げる」工夫が散りばめられていた。
「子供さんってそんなに長距離歩けないし、途中で疲れてしまいます。一方、(休憩所的に設けている)チームラウンジはどうしてもいろんな方がいて、大人の方々もいて、遠慮しなきゃいけない部分もあったりします。子供連れの方にも安心してお休みいただける場所を作りたかったのです」(三宅氏)。今後も子連れのユーザーにもフレンドリーなイベントを目指していく、と決意を語っていた。
通信環境整備が最優先課題「土俵がないとゲーム自体が成り立たない」
しかし、このイベントはネックとなるポイントもある。毎年の最大の課題は通信だ。
参加者のスマートフォンが常にネットに繋がり、速度が安定していなければ、ゲームの中のイベントはスムーズに進められない。しかし、人が密集しているところでは通信が遅くなったり、進行が止まってしまう可能性もある。毎年ユーザーの不満として最も多いのは通信環境についてだろう。
これを解決するためにNianticは毎年対策を講じてきた。
「ポケGo Festの運営において最も重要なのは通信環境の確保です。ポケモンGOのイベントは、音楽フェスやスポーツフェスと違って、通信環境という土俵がないと、そもそもイベント自体が成り立たなくなります。そのため、事前に会場を歩き回って実際に確認しています。通信環境の悪い場所はそもそも会場の候補地になりません。そして、数ヶ月前から通信各社と話をして、人の導線を考えながら、移動基地局の場所、そしてアンテナをどの角度に向けるかまで具体的な相談をして備えてきました。」(三宅氏)
具体的に数えたわけではないが、2024年の仙台開催に比べると移動基地局の数は多かったように思える。
また、三宅氏は「チケットの販売数も公園の面積だけでなく、通信環境を担保できるかで決めています。通信環境があまりにも逼迫してしまうような、あるいは落ちてしまうようなチケット数は絶対に売らないんです」と語る。リアルとバーチャルを同時に体験する長時間のイベントだからこそ、そういった数々の調整が重要になってくるわけだ。
親会社が変更後も変わらない「むしろパワーアップする」
2025年のポケGO Festは、全世界のユーザーが参加できるバーチャルな「グローバル」の開催が2025年6月28日、29日である。記事公開時点では全ての開催が終わっていないため、経済効果などの推計にはさらに時間がかかるが、その勢いは衰えている気がしない。
一方で運営を担当しているNianticは買収され、新たなフェーズに入る。ゲームの運営だけでなく、ライブイベントについてもどのような影響があるのか気になるところだ。
「チームは一緒、私の上司も一緒だし、私を含めチームを率いてる人も一緒という状態なので、基本的に内容が大きく変わる予定は今のところありません。」(三宅氏)。
ポケGOのチームもライブイベントのチームもそのまま移管するとのことだ。
「ご心配されてる方々いらっしゃるかもしれませんが、少なくとも現時点では大丈夫だと思います。」むしろもっとパワーアップしていくつもりなので、ご期待ください。より多くの方々に、なるべく今までお届けできていなかった地域の方々にも、いわゆるリアルイベントをご体験いただけるような機会を設けられたらいいなと考えています。」(三宅氏)
バーチャルとリアルを同時に楽しめるライブイベントの設計。パワーアップするというこれからのポケGOのイベントも必見だ。
©2025 Niantic, Inc. ©2025 Pokémon. ©2025 Nintendo / Creatures Inc. / GAME FREAK inc.








