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VR動画 2016.08.21

全天球撮影の奥深さとは?THETAを使った360度映像制作を体験

8月10日(水)、桑沢デザイン研究所にて特別講座 映像制作『渡邊課 課長と行く!全天球映像の冒険』が行われました。

登壇したのは、「快速東京」や「レ・ロマネスク」のライブ映像、写真家の古賀学さんと手掛けた「水中ニーソ」など、360度見回せる全天球映像作品を世に送り出す映像制作チームの「渡邊課」です。セミナーとワークショップで構成された講義で、VRと360度カメラを取り巻く状況の解説。全天球撮影の手軽さや面白さを体験しました。

渡邊課

そもそもVRとは?

渡邊課 渡邊徹氏は、まずVRという言葉の意味について整理しました。VRは仮想現実と日本語で訳されますが、Virtual という言葉を「仮想」と訳すのは間違いではないかという考え方を紹介。本来の意味は、「現実を別の力で再現するという意味」だと解説しました。本来より「仮の」「偽の」といったニュアンスを必要以上に持ってしまう日本語訳に疑問があると言います。その他、VRと並び称されるAR、MR、SRについての解説を行いました。

渡邊課

その後、VRの利用事例を紹介。世界的アーティスト、ビョークによるVRの取組やパレスチナ自治区ガザの現状を360度写真で体験できる「THE GAZA WAR MAP」等を紹介しました。その中で、今後の将来を見据えた映像として「HYPER-REALITY」を紹介しました。

この映像が描くのは、VR技術の発達によってバーチャルとリアルの境界が曖昧になった未来の世界。街を歩いている本人は、ゴーグルをかけている設定です。AR用のマーカーに対して、ゴーグルのセンサーが反応。様々な情報が目の前に流れます。

現実世界では、ARマーカーのみ
渡邊課

ゴーグルを掛けると、情報が錯綜します。マーカーに対して、情報が載っています。
渡邊課

「こうなってくると、情報量が多すぎる。将来こういう空間のためのデザインも必要になると思います。」と渡邊氏は語りました。

VR体験とその撮影方法

実写のVR作品を既に数多く制作している渡邊課。本講座ではVR体験会も行いました。ここで、最も参加者の評判が良かったコンテンツが、「恵比寿ガーデンプレイスジャンプ」。ドローンと360度カメラを使用して撮影されたもの。恵比寿ガーデンプレイスのビルの真横を上空200mまで一気に飛び上がる体験ができます。

渡邊課

参加者が体験をしていると、普通に立っていられなかったり、空を飛んでいるかのように手を広げたりと没入感の高いコンテンツです。このコンテンツについて、「ただ草原でドローンを飛ばしても、怖くありません。見慣れている高いビルなどの高さの目安があるからこそ、高さや恐怖がリアルに体験できる」と言います。

こういった実写コンテンツの制作に欠かせないのが、360度カメラ。

渡邊課

360度カメラには様々な種類がありますが、それぞれのカメラの特性、メリットやデメリットを考慮しながら撮影を行っていると言います。例えばプロフェッショナルの全天球撮影で使用されるGoPro複数台(画面左上)での撮影にもデメリットがあります。それは、撮影時に手軽にプレビューを確認できないこと。1つ1つのカメラからデータを吸い出して確認するだけで30分は掛かってしまうと言います。

一方で、RICOH THETAやGear 360はプレビューを見てモニタリングしながら撮影することができます。全天球撮影自体の問題点としては、通常のカメラができるような勢いの良い”ヨリ”ができません。渡邊氏は「これでは物足りない。全天球の撮影方法はまだ確立されているわけではありません。」と語りました。渡邊課では案件毎にチャレンジを行っており、全天球でタイポグラフィのモーショングラフィックスやテニスボール視点からの撮影など、この分野の開拓に取り組んでいます。

渡邊課

ワークショップ

今回の講座では、トークの後、RICOH THETAを使って映像制作をするワークショップが行われました。参加者がチームに分かれて制作が行われました。

紙と鉛筆を使いながらアイデア出しを行っている様子
渡邊課

参加者には、通常のVRのイベントに比べて女性の比率がとても高いところが印象的。デザイン系の学生やネット動画のクリエイター。広告系ディレクターや音楽会社の方等の様々な参加者が集まりました。アイデア出しの結果、筆者が参加したチームではTHETAに帽子を被せたり、眼鏡を取り付けるという斬新なアイデアが出ました。他のチームでは、あんぱんの上にTHETAを挿してあんぱん視点を実現。THETAに触れた事の無かった参加者が、新しい表現方法を模索している様子は予想外な事ばかり。刺激的な時間でした。

THETAに帽子を被せている様子
渡邊課

眼鏡を掛けてみた様子
渡邊課

下を向くと体が見えないため、眼鏡をかけた透明人間になったような効果が得られました。こういった複数人で行う協力型の制作では、しばしば活躍できる人とそうでない人が分かれてしまいます。360度カメラは、空間全てを記録するため、それぞれが主体的になれるというところも強みだと感じました。

渡邊課

撮影した4枚の画像を繋ぎ合わせて、動画を制作しました。編集作業は渡邊課 越後龍一氏によるもの。参加者が編集の様子を目の前で見る事ができました。今回は使用しませんでしたが、普段全天球撮影の編集をする場合には、『SkyBox Studio』というプラグインが便利とのこと。

渡邊課

最後に、制作した作品を参加者全員で鑑賞。短時間でしたが、アイデアを全天球映像作品にまとめることができました。渡邊氏は、「今日をきっかけに、VR作品のつくり手になってくれたら嬉しい」とコメント。仲間と一緒に制作をするのは楽しい。そして、THETAで作品をつくることは意外と簡単だということが伝わるイベントとなりました。VRだからといって敷居が高いわけではありません。現在ではさまざまなカメラやウェブサービスの登場により、全天球コンテンツ制作の敷居はむしろ下がっています。


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