4月末にシリコンバレーで開催されたSVVR EXPO 2016では、VRに盛り上がるまっただ中で各種展示と様々なセッションが行われました。
イベントのスポンサーにはVRヘッドマウントディスプレイのメーカーであるOculusやHTCが名を連ねていました。その中で、同じくスポンサーとなっていたVRシステム「OSVR」。
今回の記事ではOSVRの最新事情をお伝えします。なお、筆者は1月にCESにて展示されているバージョンを体験していますが、そこからの変更点やRazerのMichael Lee氏が行ったセッションで語られた内容などを紹介します。
OSVRはオープンソース
OSVRは、オープンソース・バーチャルリアリティ(Open Soulrce Virtual Reality)の略。VRを体験する際に必要となる、ハードウェアとソフトウェア両方を、参加しているサードパーティが自由にデザインすることが可能なVRシステム、です。
Michael Lee氏はOSVRの目的として、「VRデバイスは今後も様々なものが登場するが、デバイスごとにSDKがある状態は開発者にとって困難。一つのプラットフォームが存在しておくことで、将来的に周辺機器の対応なども含め非常に効率的に行うことができるようになる」としています。
OSVRの取り組みには、既にハードウェア、ゲームエンジン、入力機器、ソフトウェアメーカーなど様々な企業・団体が賛同し、参加しています。
また、参加する組織の種類に条件はないため、研究所や大学等も参加しやすいのが特徴的とのこと。
全ての参加組織を合わせると310以上の組織が参加しているとのこと。その最たるものがつい最近参加が表明されたPCメーカーのAcerです。
OSVRのハードウェアの基本形OSVR HDK
オープンソースとはいっても何かベースとなるものが必要となります。Razerは、OSVRのハードウェアの基本セットとしてHDK(Hacker Dev Kit)と呼ばれるモデルを発売しています。
価格は299.99ドル(約3.3万円)とPCに接続するVRHMDとしては比較的手頃な値段です。RazerはこのHDKを開発者向けに販売しており、「自由に改造をするための基本セット」と位置づけています。
以前の記事でも掲載したスペック表を再掲しておきます。
OSVR | Oculus Rift DK2 | Oculus Rift 製品版 | |
ディスプレイ | 1920×1080 有機EL | 1920×1080 有機EL | 1080×1200×2 有機EL |
フレームレート | 60Hz | 75Hz | 90Hz |
視野角(FOV) | 100° | 110° | 110° |
トラッキング |
頭、位置 |
頭、位置 |
頭、位置 |
価格 (日本での価格) |
299.99ドル (未発売) |
350ドル (425ドル) |
599ドル (94,600円) |
なおこのスペックはHDKのハードウェア性能を示しているものです。ソフトウェアとしてのOSVRはよりずっとハイエンドなデバイスでも対応できるものです。例えば、リフレッシュレートはHDKは60Hzですが、システムとしては最大240Hzまで対応可能となっています。
なお、Razerは最近HDKを改良しバージョン1.4をリリースしています。装着感の向上やレンズの歪みの是正などが図られ、HDKも着実に進化しています。展示ブースでは、Crytek社が作成したデモを体験。GDCでCrytek社のブースでOculus Rift製品版で展示していたものと同じデモでした。性能的にも体験としてもOculus Rift製品版には適いませんが、Oculus Riftの開発者版DK2程度の実力はあるものです。眼鏡をはずして使用しますが、Gear VRのようにピント調整が可能なため、問題はありません。
1月に感じたバージョン1.3の歪みはかなり改善され気にならないレベルになりました。一方で、瞳孔間距離(IPD)の調整機構が存在しないため、視界の中央に縦線があるのが気になってしまったのが心残りでした。
Razerの担当によると、IPD調整機能に関しては今後の課題として取り組みたいとのこと。また、開発用機材ではあるが、一般消費者でも扱いやすいようなものにしていきたく、日本での発売も視野にいれているのことです。
進化を続けるソフトウェア
ハードウェアの基本セットであるHDKが進化を続けているように、OSVRのソフトウェアも進化を続けています。
上記は全て英語のためわかりにくいですが、ソフトウェアの方向性を示したスライド。ポジショントラッキングやフィードバックを返す機構であるハプティクス、アイトラッキングやARなどソフトウェア面でも様々な機能を統合しつつあります。
現在、一般発売(日本未発売)されているOSVRのデバイスはこのHDKのみですが、今後AcerのVRデバイスなどよりスペックの高いモデルが登場する可能性があり、引き続き注目したいところです。