日々クオリティの高い作品がアップされ続けている、VTuber(バーチャルユーチューバー)や、バーチャルクリエイターの動画。その中から独断と偏見で「この動画は是非見て欲しい」というものをご紹介。特にユニークな作品や技術力や企画力の高い作品、時事性のある作品などをさらに深掘りし、今のVTuberの面白さ、頑張り、才能をキャッチしていきます!
ダーツで刺さった国の飯を作れ!サンドイッチ編!
様々な体当たり企画や食べ物ネタで、身近なものに挑戦する面白さを見せてくれるミミック。今回はサンドイッチ。世界地図にダーツを投げ、当たった地域のサンドイッチを実際に作って食べてみる、という好奇心をそそる内容です。
本で読むだけでも相当面白そうな内容ですが、やはり実際に作って食べてレポートしてくれるというのがミミックの実行力のすごさ。まずそんな作り方はしないだろうという調理法も見せてくれます。食べ物に対するレポートの忖度のなさも、ミミックならではです。
「もう一回やってほしい」企画として、人気だった「3日間拾ったレシートのものしか食べられない」にもう一度挑戦する動画もアップしています。
このシリーズの面白いところは、何が当たるかのワクワクもあるのですが、地域ごとのゴミ拾い動画としてもかなりよくできていることです。場所も葛西臨海公園、代々木公園、木場公園、平和の森公園、駒場野公園など、バラバラだからこそ地域性がよく見えてきます。
どの地域ではどんなゴミが捨てられているのか、レシートはどのくらい落ちていて、何が多いのか、などを実地研究している動画、とも取ることができて非常に興味深いです。ものすごくゴミが捨てられている地域もあれば、全く落ちていない地域もあり、レシートは意外と落ちておらず、中には高級なものを食べたあとのものもある。建築物や居住環境とゴミは関係あるのか無いのか……など、やり続けたら社会学的な発見がありそうにすら見えます。大変な企画ですが、実施できるのはやはりミミックのスタイルならではなので、是非またチャレンジしてみてほしいところです。
司、無音、クイズにて。
企画動画を頻繁にアップしているMonsterZ MATE。今回は、彼らのやっている内容クイズ・ゲームスタイルの企画がどういうベクトルのものなのか、企画内容からオチまであまりにもきれいにまとまっていて見ごたえがあるのでご紹介します。
MonsterZ MATEのふたり、佐藤ホームズ、歌衣メイカの4人が、天開司のために、ジェスチャー動画を制作。その動画の音をミュートにしてなんと言っているか当てる、というめちゃくちゃなクイズを出しました。
当然ですがジェスチャーと声が一致するとは限らないので、何を言っているかわかるよしもありません。ところがすさまじい推理力で天開司が序盤正解を続けます。ここが考察の鋭さに驚かされるパート、第一パートです。普通にすごいです。
ところがそのあとからがカオスに。絶対当たらないようなクイズが連発されていきます。天開司は怒りと同時に絶望のどん底に。
この企画の鋭い部分は、まずネタを作ることに力を惜しんでいないこと。動画は10本も用意されています。次にそのクイズの順番がとても練られていること。天開司がこう考えるだろうから、そこでこの質問を出す、という心理戦がしっかりエンタメとして行われています。そして最後に、ただ天開司を苛立たせるのではなく、ちゃんとオチを付けてファンが見てもほっとできる内容になっていること。そのままイライラオチでも面白いんですが、ここは男たちの仁義と友情。見せてくれてありがとうという気持ちになる展開が待っています。
音楽動画も、普段のトーク動画も楽しませてくれるエンターテイナーMonsterZ MATE。企画動画では、レギュラーメンバー、ゲスト、そしてスタッフの藤木さん、編集さんまで含めて、テレビ番組のワンコーナーのような、短い時間の中でちゃんとカタルシスのある娯楽番組として、必ず毎回まとまっているのが、MonsterZ MATEのすごいところです。友達同士でだらだらしているようなゆるさが魅力ですが、それはきちんとパッケージングされているからこそです。
【不知火舞へ備えろ】絶対知っておいて欲しいセンシティブライン #切り抜き【SF6 マスターザンギエフ】
普段はTwitchで配信しており、切り抜き動画がYouTubeで人気なクマ=チャン・ダヨ。言葉のチョイスがうまく、面白い短い切り抜きが連発されるほど、撮れ高満載なユニークな存在です。イラストを描いたりゲームをしたりする中でのトークのテンポのよさと視点の鋭さと、エンタメ性のある演出をいれた編集技術力の高さで、Xの短い動画でも頻繁にバズっています。
普段クマ=チャン・ダヨはザンギエフを愛用し「ストリートファイター6」に励んでいるのですが、新キャラにコラボキャラ不知火舞が登場することについて視聴者のコメントを拾い、そこからTwitchの場合の、セクシー系のNGラインについてかなり具体的に語っています。
クマのイラストを用いながら、上半身下半身ともに、どうならOKで、どうなるとNGかを紹介。かなり細かく具体的に語っています。
またゲームキャラとアバターの違いについても線引を解説。「スト6」のセクシーキャラが今まで問題なかった理由も語っています。
加えて同じアバターやキャラクターでも映し方によってNGになるパターンも紹介しています。自身の友人がそういう経験をした、という事実にのっとった話なので、今回の話の信憑性はものすごく高いです。
これらの話題を、機転を利かせてクマがりんごをもっているイラストで全部説明してしまうあたりに、発想の柔軟さと配信のうまさが感じられます。必要な説明部分はすごくわかりやすく、エンタメとしておもしろ要素もちゃんと盛り込んでいるのも見事。さらに切り抜きでは、編集で画面にメリハリが出ていて飽きさせません。その見やすさゆえに、あらゆるBAN対策に悩んでいる人に、おすすめをしやすい動画です。
【original animation】Adventure’s 99 ( Full ver. )
九九(ichijiku Q)が3分ほどのショートアニメーションをアップしています。九九はVSingerとして活動しており、普段は歌動画を頻繁に作っています。今回の音楽は作詞作曲・編曲・MIXすべて九九によるものです。
子どものころ憧れたシンガー。それを目指して旅に出る、九九と思われる女の子。旅は楽しいことでいっぱいですが、そうそううまくいかないこともあります。困難もある中、彼女は音符を手にし、その後アリーナ会場のステージへと向かいます……。
台詞がないので、見た人が自分なりに推測するのが楽しい作品です。たとえば途中の冒険は、九九と思われる少女の頑張りの道のりだとすると、それぞれのカットで何が表現されているのか考えるのも面白いでしょう。加えてタイトルの通り九九のAdventureとして描くことで、アニメーションとしての動きの楽しさがしっかり生かされています。
ヒロインが表情豊かではつらつとしていて、のびのびとよく動くのもあって、冒険譚アニメとして非常に高いクオリティです。歌詞は多すぎず、しかしポイントごとにアニメとシンクロしてピタリとハマるようになっているのも見事です。透き通るようなボイスが、淡い色のアニメーションにぴったり。このアニメーションの後どうなるのかも、想像したくなります。
アニメーションを見て九九のことが気になった方は、是非オリジナル曲やカバー曲のMVをチェックしてみてください。いい意味で、彼女の歌の力強さ、ボーカル表現の幅に驚かされるはずです。と同時に、アニメーションで描かれていたスピリットは、どの作品でもちゃんと貫かれているのにも気付かされるはずです。
『正常の才も塞翁がウマ』/ 桜樹みりあ(Official Music Video)
桜樹みりあのアップした新曲は、左右から聞こえてくるギターサウンドの絡み合いが心地いいポップチューン。リズミカルな楽曲を作っているのは「アイドルマスターシャイニーカラーズ」や「ラブライブ!スーパースター!!」にも楽曲提供をしている清田直人です。
曲とイラストが持つ独特のPOPさは、桜樹みりあというVTuberの生き方や戦い方をとてもよく表現しているように感じられます。桜樹みりあの歌声の持つ底しれぬパワーと、その根源のひとつとして存在する「カワイイ」がうまくマッチし、軽快かつエネルギッシュな作品になっています。
全体的に歌がうまいというのはもちろんとして、今回の曲は「正常です」の「です」など、濁点音にかなりのこだわりを持って歌っているように感じられました。一方でパンチの効いたがなりボイスはしっかり尖っており、聞く人の心をぎゅっと掴んできます。それほどまでにパワフルだけれども、ちゃんとキュートでPOPにまとまっている、今後のキラーチューン候補になりそうな作品です。
トリッキーでハイセンスなPSYQUI楽曲をガーリーに歌い上げた「ハイリー・センシティブ・ハート」、まお猫楽曲とデフォルメアニメーションが楽しい「無問題コンティニュー」など、桜樹みりあはオリジナル曲をアップしています。彼女の元気さ・タフさ・かわいらしさがぎゅっと詰まっており、作品における自己表現にしっかりとした軸があるのも魅力的です。
ヲルフェ – 【カリソメ・デ・スウィング】
VRパフォーマーとしてVRCでダンスを披露したり動画をアップしているyoikamiと、VR音楽狼ウルフェンによるユニット・ヲルフェ。アップされた新曲は、スウィングのリズムが心地よい、甘くて苦い作品です。
VRCなどのメタバースは、人と人が交流するのが楽しいSNSです。だからこそうまれる愛情もあるし、別れもあります。ときに滑稽です。この一筋縄ではいかない人生が入り交じる感覚を、大人びたビートに乗せて披露しています。
「マテリアルエラーになった髪の毛」など、VRCあるあるが盛り込まれているので、経験者ならニヤリとするポイントは多めでしょう。またR&Bが恋愛を歌うのと同じノリで「お砂糖(固定の相手と深く仲良くなること)」「お塩(破局・お別れすること)」についても歌っており「「お塩ラッシュ」は見ないふり?平和だね」とチクリと刺す歌詞もあります。
メタバースならではのブルースを感じさせてくれるアーティストとして、今後の活躍に期待ができそうです。
Os-宇宙人 / covered by 魔界ノりりむ
魔界ノりりむが新作として「Os-宇宙人」のカバーMVをアップしました。以前もこの曲をMVとしてアップしていたのですが、今回はリメイク。以前の作品は見られなくなっていますが、やはり魔界ノりりむ自体の活動の積み重ねもあって、歌声だけではない成長を感じたファンがコメント欄に多く見られました。
デビュー時は10歳だった魔界ノりりむ。その後13歳になってから、13歳を続けているVTuberです。彼女は今回のMVで、幼さと無邪気さは強くあるものの、少し受け入れて愛を見直し許容できる心の幅ができたような、大人になっていない大人感を歌声の中で感じさせてくれました。
この曲自体がディスコミュニケーションを抱えながらも「あなたのことが好き」と歌う作品です。思春期のねじれを含んだ歌詞と不思議なメロディは、あまりにも魔界ノりりむという存在にぴったり。以前アップされたときから、魔界ノりりむのテーマ曲なんじゃないかと感じさせるくらいにマッチしていました。
VTuberが普段避けがちな恋バナを積極的にしたり、頑張るリスナー女子に寄り添ったり、時折病み・闇を漂わせたり、13歳ならではの不安定な子どもっぽさで無邪気感を爆発させたりと、彼女ならではのスタイルはなかなかに希少。現在男女問わず多くの人を、加速度的に魅了している真っ最中です。
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