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VTuber 2021.05.03

VTuberに欠かせない「背景」はどのように作られる? 制作者に聞いてみた

バーチャル空間を表現する「背景」は、VTuberの動画や生放送に欠かせないもののひとつ。VTuberが今どこにいて、どんな状況にあるのかを分かりやく視聴者に伝えてくれます。

自分が撮影した写真をもとにしたり、フリー素材サイトから引用したりといった手軽な方法もありますが、より世界観を引き立たせるために専門のクリエイターに依頼するケースも多いようです。


乙女おとさんの背景)

イラストレーターの歯車ラプトさんは、そんなVTuber用の「背景」を制作する一人。VTuberからの依頼を受け付けるようになって2年、現在も制作を続けられています。今回は歯車さんに「背景」の作り方やその魅力をお聞きしました。

歯車ラプトさんインタビュー


多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後、ゲーム開発会社のグラフィッカーを経て独立。 現在フリーのイラストレーターとして活動中。 背景美術を中心にイラスト制作をしており、趣味ではSFやファンタジーをテーマにした絵を多数制作。 2019年からはVTuberとしても活動。代表作品に「ゼロマキナ」、「流星ワールドアクター」など。

——VTuberの「背景」を制作するようになった経緯はどのようなものでしょうか?

歯車ラプト:

私がVTuberになったとき、活動方針や放送レイアウトなどを学ぶためにいろいろなVTuberさんの生放送を見ていた時期があったのですが、その時見て回っていた方々の背景が「和室ならこの背景」、「女性の部屋ならこの背景」と、有名どころのフリー背景を使用している方が多く、個人的にキャラクターは違うのに背景が同じもので外から見ていた印象が同じ世界観に見えてしまっていた事がありました。

この時にふと「専用背景が欲しい人って実は多いのではないか?」と思い「あなた専用の世界観背景を受注制作するとしたら、ご依頼したいという方はどれくらいるでしょうか?」というツイートをVtuberさんに向けてTwitterで発信してみました。

そうしましたら、想定していた以上に反応がありまして「これは需要が大きい分野だ」と確信いたしまして、お仕事として受注するようになりました。

——これまで「背景」のお仕事は何本ほどお引き受けされているでしょうか?

歯車ラプト:

普段、イラストレーターとしてADVゲームなどの背景も沢山制作させていただいておりまして、それらを含めると、かなりの枚数になるのですが、こと「VTuber用の専用背景」ということに絞るのであれば、2021年4月現在で、36件。未発表・予約も含めると45件程になります。

——実際に「背景」を制作する際に使用しているソフトやツールはどういったものでしょうか? また、下書き~仕上げに至るまでの普段の作業はどのようにされていますか?

歯車ラプト:

屋外と屋内で制作方法が変わるのですが、基本的には屋内のご依頼が多いのでそちらのご説明をいたします。

まず、3D制作ソフトのMAYAで側を組み上げます。ベッド・チェスト・椅子などなど小物を制作し、配置してレンダリングを行い1枚絵を作ります。これが「ラフ」となります。ここでご依頼者に構図やモチーフの形状を確認していただき、問題なければレンダリングした画像をPhotoshopに持っていき、オーバーペイントを行い清書していきます。光やエフェクトなどは清書の段階で描き加えております。

——VTuber側からはどういった内容で注文されることが多いでしょうか?

歯車ラプト:

多いのは「生放送などで使用する自分のお部屋が欲しい」という物です。それ以外にもMVで使用する背景や待機画面などで使う背景のご依頼もありました。


栗山やんみさんの背景)


和崎あこさんの背景)

——VTuberの「背景」を作るにあたって、特に気を付けていることや心がけていることをお聞かせください。

歯車ラプト:

私が一番意識している点は「世界観」です。
VTuberさんは十人十色、それぞれ独自の世界観を持っております。

現代からファンタジー・SFなど…その方が「そこに居る」と自然に思っていただけるような背景を制作できるよう心がけております。

——これまでの「背景」のお仕事のなかで特に印象深かったことは何でしょうか?

歯車ラプト:

印象深かったといいますか、今現在もなのですが…何よりも受注開始してから2年間、途切れることなくご依頼を頂けているということです。加えて、リピーターの方もおりまして新衣装が出るのに合わせて新しい背景が欲しいと何回も私にご依頼してくださることがとっても嬉しいです。

——最後に今後のお仕事の予定や活動の目標などありましたらお聞かせください。

歯車ラプト:

普段はADVゲームや各種企画のコンセプトアートなど、背景美術を中心にお仕事させていただいておりまして、それらのお仕事と同時並行でこのバーチャル建築士としてのVTuber背景イラスト制作の受注を行っております。

今後やってみたいお仕事は、いろいろありまして「小説の装画」や「ボードゲームのパッケージ・コンポーネント制作」など、デジタルではなくアナログで手に取って見れるものの背景イラストなども担当してみたいと思っております。

VTuberの背景イラストについては開始当初は「10件行けばいいかな」くらいの気持ちだったのですが、こうして沢山のご依頼を頂いているため、今では「目指せ100件」を目標に頑張っております。

——ありがとうございました。

歯車ラプトさんの手掛けた「バーチャル背景」はこちらのサイトにまとめられています。

(参考)公式サイト


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