リアルとバーチャルの両面をアプローチするVTuberが徐々に増加していますが、2024年になってその動きが加速しています。また、グループとしてその方針を打ち出すケースも相次いでいます。
今年の4月、キズナアイさんを輩出したActiv8は、VTuberグループ「SHOWCASE」を発表しました。SHOWCASEは「バーチャル×リアル」という2つのライバー活動を行うグループで、5月現在4名のライバーが所属しています。
その活動スタイルとして、配信後の自分のリアルな姿を映したり、生配信に自分の姿とVTuberの姿を同時に映しています。SHOWCASE運営チームは、リアルな姿でも活動するからこそ、VTuberの裏側も積極的に見せることができ、それがVTuber活動への理解に繋がると信じていると、考えを述べています。
Brave groupも同様のコンセプトのグループとして「Vlash(ブラッシュ)」を運営しており、5月には新メンバー4人を発表。バーチャルとリアルの両軸で活動しており、RED° TOKYO TOWERで3次元の姿の先行公開イベントを開催します。
新規グループだけでなく、既存のVTuberの中でも似たような動きが。KAMITSUBAKI STUDIOのバーチャルシンガーの花譜さんは、新プロジェクト「廻花(かいか)」を始動。花譜さんとは別軸の、シンガーソングライターとしての一面にフォーカスしたプロジェクトとなっており、ライブではLEDに投影されたシルエット姿で初登場しました。
グループだけではありません。例えば個人VTuberの天羽しろっぷさんは数々の身バレエピソードで人気ですが、自身も積極的にリアルの姿でショート動画を投稿しており、アース製薬や紀文といった企業との実写コラボを実現しています。
これら、リアルとバーチャルの両面をアプローチする動きは、特段センセーショナルなものではなく、以前より見られる流れです。2019年以降、はんなま系VTuberとして活動していたナギナミ、リアルボディに顔だけアバターを実装したおめがシスターズ、リアル姿のアーティスト活動を宣言した奏みみさん、近年手や上半身などを映しながらの配信が増えているあおぎり高校など、枚挙にいとまがありません。大手VTuber事務所のホロライブでも、料理配信などで身体の一部を露出するかたちで配信が行われています。
(声優・今井麻美さんのバーチャルの姿のお披露目配信)
(元モーニング娘。の後藤真希さんのバーチャルライブ)
こうした現象の加速化の背景にあるのは、リアルタレントとバーチャルタレントの境界線が薄らいできたことが挙げられます。タレントや声優などリアルの姿をすでに知られている方が、後発的にアバターの姿を発表するケースも増えていることから、視聴者が違和感を持たなくなっていきました。また、VTuberの活動の主流が動画からライブ配信やショート動画に切り替わり、本人のひととなりに注目が集まっている面も考えられます。
VTuberの黎明期では、リアルの姿を出すのはタブーとして捉える視聴者も多く見られましたが、VTuberが一般に浸透し始めた現在は、ひとつの表現として受け止められている印象です。とは言え、にじさんじのように姿を積極的に出さない方針のグループや個人VTuberの数も多く、あくまで表現の幅の一例として捉えたほうが良いでしょう。
スマホゲームやメタバースなどでアバターをカジュアルに使用する層が徐々に増え、リアルとバーチャルの境目を特に気にせずに活動する配信者が増えている2024年。この流れから、また新たな予期せぬ活動スタイルが生まれる日も遠くないのかもしれません。
(参考)Activ8、Brave group プレスリリース