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にじさんじ 2025.03.11

VTuberイベントは推しの「ぬい撮り」を楽しむのがスタンダードになりつつある? “写真”を軸にしたイベントの在り方

「にじぱぺっと ルンルン 在庫」

2年半ぶりに参加した、にじさんじフェスの帰り道。幕張メッセから自宅へと帰る電車に乗るやいなや、真っ先にGoogleを開いて打ち込んだのが、この3つの単語だった。

普段からVTuberのグッズを積極的に買っているわけではなく、持っているアクリルスタンドも片手で数えられる程度。当然、「ぬいぐるみを買う」という発想は浮かんだこともない。そんな成人男性が、「欲しい」と思ってしまったのだ。

るんちょまの、にじぱぺっとを。

「推しぬい」と一緒に楽しむ、年に一度のお祭りイベント

2025年2月21日〜23日の3日間にわたって開催された「にじさんじ 7th Anniversary Festival」(にじさんじフェス2025)。会場に入るやいなや感じられる、文化祭を訪れたかのような高揚感。全体的に年代の幅広さを感じさせられつつも、変わらず10〜20代の若者(特に女性)がメイン層のようだ。

ある人は、推しライバーの色に合わせたコーディネートに身を包み、またある人は、グッズが整然と詰め込まれた痛バッグを肩にかけ、年に一度のお祭りを全身で楽しんでいる。会場の装飾やブースだけでなく、来場者の装いからも感じられる「イベント」の楽しげな雰囲気に、ワクワクせずにはいられない。

そんな、2年半ぶりに参加したにじさんじフェスで、目に見えて「大きく変わった」と感じたことがあった。それが「にじぱぺっと」を所持するファンの多さだ。

より正確には、公式グッズである「にじぱぺっと」や「にじぬい」をはじめとする、「ぬいぐるみ」に分類されるもの。というのも、会場では驚くほどにたくさんの人が「推しぬい」を持参しており、ライバーの等身大パネルやポスター、落書きと一緒に写真を撮って楽しんでいたのだ。


とはいえ、「イベント会場に推しぬいを持ってくる」こと自体は特に珍しいものではなく、ありふれた行動なのかもしれない。にじぱぺっと・にじぬいは共に2022年に販売が始まっており、前回(2023年)のにじさんじフェスで同様の光景が見られていてもおかしくはないからだ。

しかし、たとえそうだとしても、推しぬいを手に持って会場を歩き周っている人の数は、想像以上に多かった。目に入る推しぬいの多さときたら、「会場にいるあいだは常に視界に“ぬい”が映っている」と言っても過言ではないほど。少なくとも自分が訪れた2022年のにじさんじフェスでは、推しぬいを持って会場を歩いている人はまだ少なかったように思う(※いわゆる「痛バッグ」に推しぬいを入れている人はちらほら見かけていた)。

さらに、その「ぬい」を被写体の一部として、会場内のあちらこちらで撮影を楽しんでいる人が多かったことも印象的だった。自分自身を写真に収める形で、推しライバーの等身大パネルと一緒に自撮りをしている人も少なくなかったが、それ以上に「ぬい撮り」を楽しんでいる人たちの姿が目に入った。特にライバーの展示や落書きがあるスポットでは、自撮りよりもぬい撮りをしている人が多かったように感じる。

また、パネルやポスターの前でのぬい撮りは「ファンによる自発的な楽しみ方」と言えるが、公式に「写真を撮って楽しむ」ことを推奨しているスポットも多かった。

ホール外の通路にも「アクリルスタンドジオラマフォトスポット」が設けられていたほか、にじぱぺっとのブース内のフォトスポットにもたくさんの人が足を運んでいた様子。公式からもハッシュタグ「#にじぱぺとにじフェス」でのシェアが促されており、にじぱぺっとが特に前面に押し出されていたようだ。

イベント会場の入り口やライブの前後にぬい撮りをするのではなく、「イベントを一緒に楽しむかのように“ぬい”を持ち歩き、会場内のあちらこちらで写真を撮る」という光景は、これまでのVTuberのイベントではあまり見た記憶がない。少なくとも3年前のにじさんじフェスの時点では、まだ少数派だったはずだ。そのような意味では、「大きな変化」と言えるのではないだろうか。

別のライターに聞いたところ、同じく幕張メッセで開催されたVTuberイベント「hololive SUPER EXPO」では、昨年から(小さいスペースではあるが)「推しぬいの写真を撮れる展示スペース」があったそうで、さらに今年も「推しぬいと一緒に写真を撮る」光景が見られていたようだ。なので、にじさんじフェス特有というわけではなく、このようなイベント会場では当たり前になりつつある光景なのかもしれない。


(ホロライブでも、ずばり「おでかけ」用途であることを謳ったぬいぐるみシリーズ「hololive friends to Go」を2024年から展開している)

VTuberの「推しぬい」文化は、いつ、どのようにして広まった?

そもそも、「推しぬい」「ぬい活」という文化は、ここ数年で急速に盛り上がってきたものだ。

株式会社SHIBUYA109エンタテイメントが2025年1月に実施した「Z世代のぬい活に関する実態調査」(15~24歳の女性507名を対象)によれば、「ぬい活」の経験について、8割以上が経験しており、そのうち経験者限定の調査では「バッグにつける」(59.4%)、次いで「日常的に持ち歩いたり、お出かけしたりする」(39.4%)、「モノや景色と一緒に写真撮影する」(37.9%)という使い道をしているという。また、同調査によれば、“2023年の後半ごろからぬいぐるみをバッグにつけて楽しんでいる若者が徐々に増えている”ことを、SHIBUYA109渋谷店の館内ヒアリングでも観測していたそうだ。

もちろん「ぬい」を普段から身につける文化は過去から長くあるものだが、2023年頃から『もっとかわいくできる! 推しぬい 理想の「お顔」「髪型」つくりかた』(メイツ出版)や、『とにかく顔がかわいい推しぬいの作り方』(扶桑社)といった「推しぬい」にフィーチャーした本が続々と刊行されており、若い世代に急速に拡大しつつある状況だ。書籍だけではない。YouTubeでも、推しぬいの制作方法を紹介する「PiyoPicco ぴよぴっこ」チャンネルが大きな人気を獲得している。アニメやゲームなど、さまざまなメディアで「自分だけの推しぬいが欲しい」といった気持ちを多くのファンが抱くようになり、その流行がVTuber文化にも波及してきたと予想できる。

2022年のにじさんじフェスの会場ではまだ「推しぬい」の存在が少数派だったことを思い返すと、このような「ぬい活」の流行と、VTuberファンのあいだで「推しぬい」の文化が広がっていったタイミングは、だいたい合致する。2023年後半から2024年にかけて、世間的な「ぬい」の流行と並行して、VTuberの推しぬいを手にするファンが増加した。それが、今回のにじさんじフェスの光景に繋がった。そう考えても良さそうだ。

おそらく、「こういうきっかけで、VTuberファンが推しぬいを手にするようになった」という、何かエポックメイキングな出来事があったわけではない。2022年に登場した「にじぬい」や「hololive friends」に後押しされて、じわじわと普及していった――そう考えるのが妥当だろう(※いずれも公式のぬいぐるみシリーズとして、2022年に販売開始)。

ぬい撮りデビューはスペイン村!? コラボ2年目に登場した、現地調達可能な「ンゴぬい」

他方で、2023年から2024年にかけての普及途上ならではの変化が垣間見える、「VTuber×推しぬい」の具体例がまったくないわけではない。そのひとつが、にじさんじの周央サンゴさんが志摩スペイン村のバーチャルアンバサダー(広報大使)に就任した、コラボレーションイベントだ。

VTuber発のコンテンツツーリズムの事例として取り上げられることも多く、NHKや全国紙でも取り上げられるほど話題になったこのイベント。2023年2〜4月に開催され、期間中は前年比約1.9倍もの人が訪れる大成功を収めた。翌年には壱百満天原サロメさんも加わり、2~5月にかけて「志摩スペインサロメンゴ村」と題して再コラボも行われている。

ここで注目してほしいのが、その「コラボグッズ」のラインナップだ。定番のアクリルスタンドやキーホルダーは言うまでもないが、2024年に新作として追加され、大きな話題となったグッズがある。そう、「ぬいぐるみ」だ。

当時のニュース映像やXの投稿を見ると、2023年の初コラボの際にも「ぬい」を連れているファンは一定数いたようだ。しかし、翌2024年のコラボの様子も確認してみると、「ぬい」を連れている人の数が明らかに激増していることがわかる。それもそのはずだ。なんと言っても、“現地調達”ができるのだから。

もちろん、この事例だけで「このような変化があるから、2024年にVTuberの推しぬい文化が普及した」と断言するわけではない。1回目のコラボの成功を経て「今回はぬいぐるみも作ろう」と判断した可能性も十分あるし、先ほども書いたように、2023年の時点で推しぬいを持参しているファンは少なからずいたからだ(※ちなみに、推しぬいとは別の話になるが、スペイン村では2023年7月に「チュロスぬいぐるみ」が発売され話題になっている)。

しかし同時に、ハッシュタグ「#志摩スペインサロメンゴ村」で当時の様子を振り返ってみると、興味深い投稿も多く目に入る。「初めてぬい撮りをした」「ぬいと観光するのが楽しい」「ぬい撮りの魅力を知った」など、このイベントで“ぬいデビュー”を果たした人が思いのほか多いのだ。

考えてみれば、スペイン村のようなテーマパークは、絶好のぬい撮りスポットだと言える。噴水や花壇、スペインの街並みはどこもフォトスポットになるし、スペイン村公式ブログでも“ぬいぐるみと一緒にお散歩しながらの写真”を提案している。それに、サンゴさんのファンからすれば、そもそもスペイン村全体が「聖地」のようなものだ。園内で推しの足跡を辿りつつ、そこにコラボ関連のパネルやアトラクションまで設置されているので、ぬい撮りデビューには最高の環境が整っていたと言っても過言ではないだろう。

ぬいデビューした人のその後の呟きも追いかけてみたところ、スペイン村きっかけで「ぬい」の魅力に目覚め、継続して趣味として楽しんでいる人も散見された。このコラボ自体は「VTuber×推しぬい」文化の普及途上で行われた数あるイベントのひとつに過ぎないかもしれないが、少なくとも一部のファンにとっては、「ぬい」の魅力を知るきっかけとなったことは間違いなさそうだ。

ぬい撮りのハードルを下げてくれる、2024年に流行ったミーム

また、直接的な要因ではないが、2024年にミーム化した「〇〇、△△だよ。△△、〇〇だよ」構文は、VTuber×ぬい撮り(アクスタ撮影)の広がりを感じさせる流行だったと言えるかもしれない。

https://x.com/femme_fatale777/status/1835864293319102757

もともとは俳優のアクリルスタンドを使った流行だったようだが(※さらに遡れば、2010年代にはぬい撮り界隈で使われていた表現である、との指摘も)、その構文をもとにした投稿に対して、VTuberのファム・ファタルさんが上記の引用リポストをしたことが話題に。「VTuber本人がアクスタ目線で挨拶をする」という構図におもしろさを感じた人が多かったのか、同様のポストをするファンと、それに答えるVTuberのやり取りが定番になった。

発端はアクスタではあるものの、現在はVTuberの「ぬい」を使った同様の投稿も少なくない様子。このミームに乗っかることによって、VTuberファンのあいだで「アクスタや“ぬい”を持ち歩く」あるいは「ぬい撮りをする」ことのハードルを少なからず下げる一因となった、という見方もできるのかもしれない。

「ぬい」を添えることで浮かび上がる、自分だけの唯一無二の思い出

当初は数ある「グッズ」のひとつに過ぎなかったはずが、最近はそれをメインにしたコーナーや企画まで展開されるようになった、VTuberのぬいぐるみ。

にじさんじフェスやhololive SUPER EXPOだけでなく、年末年始には「hololive friends factory」と題したイベントもSHIBUYA TSUTAYAで開催。また、一部の配信プラットフォームではぬいぐるみの製作権を賭けたランキングイベントも定期的に行われており、個人で活動するVTuberにとっても「ぬい化」は目指す目標のひとつとなっている。

では、「VTuber×推しぬい」という文化の需要はどこにあるのだろう? そのポイントは「その場所で、自分にしか撮れない記録を、思い出として残す」ことにあるのではないだろうか。

現地会場まで足を運び、そこでしか見られない展示を、写真に撮って記録する。それは「自分で撮る」という行為も含んだイベント体験になるが、写真単体で見るとそれは、「誰でも撮れる写真」だと捉えることもできる。画角や切り取り方の違いはあるかもしれないが、ひとたびSNSに投稿してしまえば、それは等しく「展示物の写真」になってしまうからだ。

もちろん、その写真にも「記録」や「個人的な体験」としての価値はある。しかし、「思い出」としての強度は低い。抵抗がない人なら自撮りをするかもしれないが、あくまでもメインの被写体は「推しと関係のある展示物」であり――等身大パネルと並んで撮るならばともかく――「自分」が映る必要性はそこまで高くはない。

とはいえ、せっかくのリアルイベントなのだから、1枚1枚が思い出になるような写真を残したい。展示物の写真や、会場で撮るちょっとした写真も、単なる「記録」としてではなく、自分だけの「思い出」として残すには、いったいどうすればいいのだろう――。

そこで、推しの「ぬい」である。

ただ単に「推しの展示物を撮る」のではなく、「推しの展示物に、自分がいつも一緒に過ごしている推しぬいを添えて撮る」。そうすることで、その写真の「思い出」としての強度が増す。唯一無二の写真になる。なぜなら、展示物は誰が撮っても基本的には同じようにしか映らないが、「自分の推しぬい」は、その人だけのものだからだ。しかも「ぬい」なら、公式グッズであっても、好きな服やアクセサリーで着飾って個性を出すことができる。

あるいは、日常的に推しぬいと一緒に外出している人だったら、「推し本人が出演するイベント会場に“ぬい”を連れて行く」という体験それ自体が、特別なお出かけのように感じられるかもしれない。普段とは違う服を着せて行こうと考えたり、会場で会った友達の推しぬいと一緒に並べて写真を撮ったり、用意されているフォトスポット以外でも良い写真を撮れる場所がないか探したりと、楽しみ方もさまざまだ。

普通に撮れば「記録」にしかならない写真も、そこに推しぬいを添えてあげるだけで、その人だけの「思い出」になる。それこそが、推しぬいをイベント会場に連れて行って一緒に写真を撮ることの、一番の魅力であり楽しさなのではないだろうか。

改めて今回のにじさんじフェスに関して言えば、前半に書いたような無数のフォトスポットが用意されていたし、公式からもぬい撮り(にじぱぺっと)が推奨されていた。周囲を見渡せば、大勢のにじさんじファンが個性豊かな推しぬいを連れていて、思い思いに撮影を楽しんでいた。もしかしたら、人目を気にすることなく推しぬいと一緒にイベントを巡れることも、ファンからすると嬉しいポイントなのかもしれない。

そうやって楽しそうにしているファンのみなさんの姿を見てしまったら、そりゃあ感化もされようというもの。ここまで長々と書いてしまったが、るんちょまのにじぱぺっとを所望せずにはいられなかった冒頭の成人男性の気持ちが、少しは伝わっただろうか。

残念ながら在庫は見つからなかったものの、次回のにじさんじフェスでは、自分も推しぬいを連れて歩いているかもしれない。あるいはにじさんじに限らず、推しVTuberの「ぬい」を持ち歩くようになっているかもしれない。そういえば自分も昔、手のひらサイズのフィギュア(リボルテック ダンボーミニ)と一緒に旅行を楽しんでいた時期があった。その延長線上に「ぬい」が現れたと考えれば、何も不思議なことではないように思う。

それに、本記事では「VTuberイベントでのぬい撮り」をテーマに書いてきたが、前述のスペイン村やアクスタ構文の事例がそうであるように、ぬい撮り・ぬい活それ自体は日常的な趣味でもある。YouTubeではにじぱぺっとの開封動画やVlogも見かけるし、Xでは「#にじぬいといっしょ」「#にじぬいが見られるタグ」「#にじさんじ手芸部」などのハッシュタグを使った交流も行われているようだ。

大手グループ以外でも「ぬい」を販売するVTuberは増えているため、リアルイベントに限らず、ぬい撮りを楽しんでいるファンの姿を見る機会もきっと増えていくことだろう。正直、自分とは無縁の世界だと考えていたのが、にじさんじフェスでの楽しげな光景を見て、この文化自体にも興味が芽生えてきた。るんちょまのにじぱぺっとを手に入れ、自分もその景色の一部に加わる日を楽しみにしつつ、「VTuber×推しぬい」という新たな文化を追いかけていきたい。


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