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VTuber 2018.11.04

私はいかにして“美少女VTuber”になったか――あるゲーム作家の「バ美肉」録

はじめまして。普段はゲーム制作を行なっているカナヲです。

突然ですが、つい最近、バーチャル美少女としてVTuberデビューしました。

私はもともとYouTubeの動画を日常的に見ていたのですが、作業用BGMがわりに人気VTuberの動画を見ていたら、いつの間にかVTuberというジャンルそのものにハマっていました。

とくに衝撃を受けたのは、「バ美肉おじさん」としてはもはやおなじみの魔王マグロナちゃん。いわゆる中の人のおじさんとしての人格はそのままに、声や喋り方が自然なかわいい女の子になっているその様は、まるで“クラスの気さくな女子”のようでひそかな憧れです。

そんな中、たまたまVカツをHTC Viveで動かす機会があり、そこで「自分でもやってみたい」と明確に思ってしまいました。地獄の始まりです。

しかし思えば、これまでやってきたフリーゲーム制作にしろVTuberにしろ、手探りで自分の好きなものを好きなように表現するという点には通じるものがあると思うので、そこが興味を惹かれた理由かもしれません。

この記事では、私のようにある日突然「VTuberになりたい!」と思ってしまった方々のため、「カナヲがどうやって美少女になったのか」を共有したいと思います。これからデビューを考えている方はぜひ、一例として参考にしてみてください。

VTuberになるために、なにが必要か?

VTuberとして活動していくには、大きく分けて、「肉体」「手段」「声」が必要になります。

「肉体」とはバーチャル世界における見た目そのもの。2Dイラスト、3Dモデルと、選択肢はいろいろあります。3Dモデルは自力で作れずとも、「Vカツ」や「VRoid」をはじめとしたツールを使い、キャラメイク感覚で作ることもできます。

次に「手段」とは、肉体をどうやって動かすかということです。2Dイラストであれば、イラストを動かす「Live2D」や、中の人の顔の動きを認識する「FaceRig」「webカメラ」といったツールが必要になるでしょう。3Dモデルであれば、VRデバイスやそれなりのスペックのPCが必要です。

そして最後に「声」です。アバターが美少女・中身が男性であっても、地声のまま活動をしている方は多く存在します。その場合に必要なのはマイクくらいですが、声も美少女になりたいのならばボイスチェンジャーが必要になります。

では私が上記の「肉体」「手段」「声」からそれぞれなにを選び、なにを用意したかをひとつずつ掘り下げていきましょう。

肉体

私は一度「Vカツ」というソフトで作ったアバターを動かしたことがあったので、Vカツを使って肉体を作ることにしました。

しかし、せっかく自分の第二の肉体を作るのだから、イメージにはこだわりたい……。ということで、まずはイラストで自由にイメージを固め、それをVカツで再現するという形を取ることにしました。

できました。これから私はこの美少女になります。そしてこれを……

こんな感じにしてみました。既存パーツの組み合わせなので、顔つきや細かい画風の再現度には限界がありますが、服装などはなかなかうまく再現できたのではないでしょうか。こだわりポイントとしては……


身長設定を低くし、また手足の長さも微調整することでより小柄な女の子にしました。5.5〜6頭身を目指しています。

既存の前髪だと好みの外ハネ感を再現できなかったので、外ハネ部分はアクセサリ「ちょびあほ毛」のサイズと角度を調整してそれっぽく見せました。なんちゃって前髪です。

ミリタリーコートという服装は存在しなかったので、制服カテゴリにあるアウター「うさ耳パーカー」に迷彩柄をつけ、袖にアクセサリ「拘束バンド」を重ねることでそれっぽくしました。細部のデザインが違っても大まかなシルエットや特徴さえ再現できれば十分だと感じます。

トマトの髪飾りは「髪留め」と「テントウムシ」の色とサイズを調整して再現。
リボンは、実はトップスカテゴリのほうで設定できるにはできるのですが、そちらにはシャツのボタンをきっちり閉めた時用のリボンしかありません。今回はリボンのつけかたをルーズにしたかったので、アクセサリカテゴリのほうで「ロイヤルリボン」を設定し、位置を調整しています。

このあたりでしょうか。
アクセサリは色はもちろん、位置やサイズもかなりいじることができるので、オリジナリティを上げたいならこだわってみるのもいいかと思います。

余談ですが、私はどうやら自分の「好みの美少女」と「なりたい美少女」には微妙な違いがあるようです。自分がかわいいと思う女の子になりたいと思いつつも、いわゆる「嫁」にしたい女の子になりたいわけではないというこの感覚、わかる方はいるでしょうか……。

そのほか、Vカツの使い方の詳細情報などは、下記記事にまとめています。

手段

さて、今回はVカツで作った3Dモデルを自由に動かすことが目的なので、「それなりのPC」と「VRデバイス」が必要です。

私はちょうど今まで使っていたゲーミングPCが古くなってきていたこともあり、思い切って「VR Ready」という「VRがおおむね快適に楽しめるスペックであるという認定がされた」PCを新調し、同時にVRデバイスである「HTC Vive」を購入してしまいました。参考までに、PCのスペックも載せておきます。

グラフィックボード

GTX1080Ti

CPU

Intel Core i7-8086K

メモリ

16GB

OS

Windows10 Home 64bit

バーチャル美少女になるために新しく用意したのは、大きくはこのPCとViveくらいです。安い買い物ではないので、ここは参考にはならない点かと思いますが、金額としてはPCがおよそ30万弱、Viveがおよそ7万弱と、なかなか笑えない金額になってしまいました。

しかし、これらがあれば、先ほどの「Vカツ」で作ったアバターを自由に動かすことができますし、VTuberになるなら必要になってくる動画編集作業でも役に立ってくれるはずです。ゲームもばっちり遊べる・作れるので、今後数年の先行投資と考えました。

※編集部注:
「Vカツ」を使ってVTuberになるだけなら、Vカツ公式の必要スペックとしては、グラフィックボード要件が「NVIDIA GTX 970・GTX 1060以上」となっているので、価格帯に応じて下記のVR対応PCページなど見てみるとよいかもしれません。

・G-GEAR 「VIVE Ready PC」シリーズ(PCメーカー、ツクモの場合)
https://www.tsukumo.co.jp/bto/pc/vr/vive/

・VR Ready 認定ゲームパソコン(ドスパラの場合)
https://www.dospara.co.jp/5shopping/search.php?cate=tg13&tc=635

ちなみに私は自宅の仕事部屋にそのままViveのベースステーションを配置しましたが、スペース的には2m×1.5mの最低ラインぎりぎりでした。また、その際にはベースステーションをうまく部屋の対角線上に置くために、片方はカーテンレールの上、片方はつっぱり棒を購入してそこに括りつけました。ちょうどよくベースステーションを設置する場所がなくとも、スタンドや縦置き用のつっぱり棒があれば大丈夫です。

とはいえ、普通はポンとハイスペックPCを用意することはできませんし、「HTC Vive」や「Oculus Rift」といったVRデバイスもまだまだ高価です。3Dモデルを使いたいけれど、もっと手軽に始めたい……という方は、スマホアプリ版の「Vカツ」や「カスタムキャスト」などを使うことによって、スマホだけで肉体を用意することもできるでしょう。


ここまでで肉体の準備が整いました。
先ほども書きましたが、私は基本的に魔王マグロナちゃんに憧れる形でのバーチャル受肉になりますので、「見た目は美少女、声はおじさんのまま」では少し理想と違います。ここはかの有名なボイスチェンジャー恋声を使ってみることにしましょう。

恋声は無料でダウンロードすることができますし、名だたる「バ美肉おじさん」の先人の方々も、最初は恋声からスタートしたという例が多いようです。

私が恋声を使うとどんな声になったかについては、後に紹介する私の動画を見ていただければと思います。私自身まだ恋声での修行期間が浅く、とても恋声の使い方をレクチャーできるような立場ではないので、細かくは割愛しますが……

・ピッチとフォルマントは100%に近ければ近いほど自然な声になる
・ただ恋声を通して地声で喋れば女性のボイスになるわけではない
・裏声、もしくはそれに近い声がいい
・喋り方、音の抑揚そのものも女性ボイスらしさに大きく影響する

このあたりは基礎知識として私も意識しました。
参考までに、私の設定も載せておきます。

ピッチが122%、フォルマントが130%の設定で、ここ以外はいじっていません。ピッチ、フォルマントともに130%あたりを超えると声が不自然になっていくと言われているので、かなりギリギリの数値ですね。

私もまだまだ満足いく声を出せていませんが、満足いく声を出せるまでずっと裏で練習していてはいつまでたっても活動が始まりません。最低限自分が許せるラインにさしかかれたら、あとはたくさん楽しく喋っていく中で少しずつ鍛えていくのがいいと思います。私も頑張ります。

完成!

こんな感じの軌跡を辿った私が作った動画がこちらになります。

無事、「バーチャル美少女」としてVTuberデビューすることができました!

録画や編集など、「動画」を作るまでにはまだ必要なことはありますが、これらに関しては私も素人同然ですのでここでは割愛させていただきます。ぜひインターネットでわかりやすい講座などを探してみてください。むしろ私に教えてください。

理想の姿になった後、なにをするかはあなた次第です。自分とは異なるキャラクターを生み出してもいいですし、自分の第二のアバターとして使うのもいいでしょう。活動に関しても、動画投稿やライブ配信以外にも、まだまだたくさんの手段があると思います。

おわりに

最初にもちらりと触れましたが、私はこの自由な表現手段にはフリーゲームの制作と似たなにかを感じました。現実に縛られず、自分だけの世界を自由に形作ることは本当に楽しいことです。

VRの技術そのものはまだまだ発展途上で、これからもどんどん便利に、身近になっていくものだと思います。しかし発展途上だからこそ、不完全だからこそ、手の届く身近なものに感じられて面白いのだとも思います。この感覚はきっと、技術が成熟したらもう味わうことはできないでしょう。

みなさんもぜひ、私といっしょに手探りで、自由なバーチャル世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。


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