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VRChat 2022.09.07

モスバーガーはなぜVRChatに出店したのか? 月面でフォカッチャを焼きながら聞いてみた

モスバーガーの新商品「月見フォカッチャ」の発売に合わせて、「美少女戦士セーラームーン」を起用したTVCMや、音楽プロジェクト「Midnight Grand Orchestra」とのタイアップなど、様々なプロモーションが展開されています。

その一つが、ソーシャルVR「VRChat」上にオープンした、モスバーガー初の仮想店舗「モスバーガー ON THE MOON」です。9月6日(火)には、「モスバーガー ON THE MOON」にてメタバース記者会見も開催。「月見フォカッチャ」や各種プロモーション施策、そして「月見フォカッチャ」を作る体験の紹介が行われました。

MoguLive編集部は今回、モスバーガーのメタバース記者会見に参加。モスバーガーのメタバース進出の背景に迫りつつ、公開されたばかりの「モスバーガー ON THE MOON」の様子をお伝えしていきます。

月面のモスバーガーで新商品を作り、ウサギを探してみよう


「モスバーガー ON THE MOON」の入口は、月面に着陸した宇宙船の中です。宇宙船から降りると、現地にいたスタッフのウサギが道案内をしてくれました。

案内された先にあったのが、仮想店舗「モスバーガー ON THE MOON」。背後に映る地球が壮大な、モスバーガー初の月面店舗です。


月面店舗は、モスバーガーの実店舗を模して外装・内装がデザインされています。モデルになった店舗は特にないとのことですが、木目の暖かなカウンターを見ると「モスに来たわ」という気分になる人は多いはずです。


キッチンでは「月見フォカッチャ」「枝豆コーンフライ」「モスシェイク バニラ」「ももジンジャーエール」を作ることができます。調理ギミックはかなり本格的。「月見フォカッチャ」は全部で7つの工程を要する、本物さながらの調理が要求されます。

出来上がったものは自由に持って歩くことができます。現実で「月見フォカッチャ」が発売されるのは9月14日(水)なので、一足早く「月見フォカッチャ食べたよ!」と自慢できます!

ちなみに、出来上がったフードメニューは「ちょっとずつ食べる」ことができます。手に持って一口一口味わう体験ができるでしょう。

店舗の向かい側には大きなステージが設けられています。動画プレイヤーも設置されているので、「月見フォカッチャ」を食べながらみんなで好きな動画を見たり、大きな円形ステージを使ったライブパフォーマンスができそうです。


見逃せないのが、ワールド内にあちこちいるNPCのウサギたち。店内で「月見フォカッチャ」を食べているウサギもいれば、モスバーガーの配置業務に勤しんでいるウサギも見られます。


配達に勤しむウサギたちは、地図を眺めた後に地球へ向けて猛スピードで飛び立っていく子もいれば、店の裏手で配達するはずの「月見フォカッチャ」を食べちゃっている子もいるなど、個性豊か。彼らの愛らしい動きもチェックしてみてください。

月面での記者会見で「月見商戦参入」のねらいを聞く

メタバース記者会見には、株式会社モスフードサービスの上席執行役員 マーケティング本部長の安藤芳徳氏と、マーケティング本部 商品開発部長の濱崎真一郎氏が登壇。司会は、バーチャルMC・アナウンサーの一翔剣さんが担当しました。

安藤氏から「月見フォカッチャ」と「モスバーガー ON THE MOON」についてマーケティング面でのプレゼンテーションがありました。「堅苦しい話はナシにしましょう!」と、リラックスした雰囲気です。

実は、モスバーガーのメインの利用者層は「30代〜40代の男性」であり、この客層を拡大するため「30代〜40代の女性」と「若年層」へリーチをかけるべく、新しい商品の展開を模索していたとのこと。またモスバーガーはこれまで、いわゆる「月見商戦」に参加していなかった国内ファストフードチェーンでした。過去にはファストフードチェーンのファンから「なぜモスバーガーだけ月見商品がないのか」という問い合わせが来ることもあったそう。

新たな客層開拓と、長年の客の要望に応えるべく、2022年に満を持して「月見フォカッチャ」で「月見商戦」に参加を決めたとのことです。


その上で、「月見フォカッチャ」を目的の客層へリーチするべく打ったプロモーションが、「美少女戦士セーラームーン」とのコラボCMと、VTuber・星街すいせいさんと音楽プロデューサー・TAKU INOUEさんの音楽プロジェクト「Midnight Grand Orchestra」とのタイアップです。

「美少女戦士セーラームーン」とのコラボCMは、名台詞「月にかわっておしおきよ!」をもじった「月見にかわって、おいしいよ」をキーフレーズとし、「30代〜40代の女性」へのリーチとワクワク感を提供することが目的となります。コラボCMはTVだけでなく、Webでも放送が予定されているとのことです。

一方、「Midnight Grand Orchestra」のタイアップは若年層へのリーチと、近年普及しつつあるネット注文への訴求がねらいとなります。数多く存在するVTuberの中から星街すいせいさんに白羽の矢が立った理由を尋ねると、「月見」というイメージから早期に候補に挙がったと回答。楽曲展開もお願いしたいということから、「Midnight Grand Orchestra」とのタイアップに踏み切ったとのことです。

そして同じく若年層へのリーチとして、「モスバーガー ON THE MOON」のオープンと、9月14日(水)から9月16日(金)にかけての期間限定で、モスバーガーの一部店頭で行われるメタバース体験が企画されました。渋谷の3店舗が選出されたのは、若者が集まる街にあり、ある程度の面積を持つ店舗であるから、とのことです。

濱崎氏からは、「月見フォカッチャ」を始めとした新商品についてのプレゼンテーションが行われました。「月見フォカッチャ」は、季節定番の「バーベキューフォカッチャ」の派生として今回登場しますが、原型である「バーベキューフォカッチャ」もボリュームアップや味の調整も行われたと紹介されました。


また、ドリンクメニューの「ももジンジャーエール」、デザートの「ひんやりドルチェカップ いちごムース」も紹介されました。どちらもおいしそうな新商品ですが、「ももジンジャーエール」は雹害などで流通に出せない福島県産の桃の活用、「ひんやりドルチェカップ いちごムース」は3大アレルゲンの不使用や動物性原料不使用など、味だけでない付加価値もプッシュされた商品として紹介されました。

的確な商品プレゼンテーションを行った濱崎氏も、最後には「ぜひ食べてください!」とフランクにコメントするなど、一企業の記者会見とは思えない砕けた雰囲気でした。アバターなどによって距離感が自然と近くなる、「VRChat」の特性がよく出ていたように筆者は感じました。

なぜモスバーガーはVRChatに参入したのか?

ではなぜ、モスバーガーはいまメタバースに参入したのか? もう少し深掘りする形で、安藤氏にお話しいただきました。

まず、モスバーガーとしてはもともとVR・メタバース参入の計画があったわけではなく、「月見フォカッチャ」で「月見商戦」へ参戦するにあたり、「月見」というイメージから様々なプロモーションを模索したのが発端とのこと。「お月見といえば月、月といえば月面、月面といえば仮想空間……」という連想から、非日常的空間も生み出せるメタバースへ店舗を作ることになったとのことです。

また、アパレル業界などとは違い、食品業界は「バーチャル」から距離のある業界である、という点も挙げました。今回のメタバース進出は「これを機にチャレンジしてみよう」という思いから行われたものの、モスバーガーが近くにない地域にもモスバーガーの体験を届け、ゆくゆくはリアルのモスバーガーにつなげていくという「バーチャルからリアルへの転換」にも挑みたいと語りました。

数あるプラットフォームから「VRChat」が選定されたのは、「熱量の高いクリエイターが数多くいる」と紹介されたことがきっかけだそう。モスバーガーとしても、熱量の高い人たちとコミュニケーションするのが最善と考えたとのことです。実際「モスバーガー ON THE MOON」は、参加クリエイターたちのアイデアがフル投入されており、その意味でも「お客様とともに作り上げていく」というモスバーガーの方向性と合致したのだとか。

一方で、「メタバースでは飲食物は実際に食べられない」「現物をどうやってお客様のもとに届けるか」という課題も挙げていました。現実の店舗での体験会開催に踏み切ったのも、「メタバースで体験してから実際に食べてもらう」という流れを生み出したかったからとのことです。

「モスバーガー ON THE MOON」は、9月6日(火)の日中に実施された一般報道陣向けの記者会見でも体験会が開かれました。報道陣の関心は、「何万食目標か」よりも、「なぜメタバースへ進出するのか」の方が強かったらしく、体験会もかなりの好評だったとのことです。初動で大きな手応えを感じたことから、「今回の参入はいい流れだったと思う」「今後も様々な展開を行いたい」と安藤氏は意欲を見せていました。

月面に企業メタバース進出の「王道」あり

「モスバーガー ON THE MOON」には「VRChat」コミュニティの人々が多く携わっています。ワールド制作やモデリングはVR蕎麦屋タナベさん、イカめしさん、なまのなまこさんが担当。BGMはK.ᴗ.(Ambientflow)さんとやまみーさんが、ウサギのモーションを「カソウ舞踏団」のyoikamiさんが、安藤氏と濱崎氏の3Dモデルをがそさんが……など、第一線で活躍しているクリエイターが多数参加しています。

さらに、記者会見の「VRChat」現地スタッフとして、コミュニティの人たちが多数参加。「大黒屋O-To-san」にて販売されているアバター「うさぎ」を纏(まと)ったアバターワーカーは、来場者の案内や厨房調理など、多くの仕事に従事していました。インフルエンサーとして招かれた人も多く、「モスバーガーとコミュニティでともに作り上げた」と言っても過言ではありません。

昨年話題となった日産自動車公式VRChatワールド「NISSAN CROSSING」は、コミュニティと協働する形でワールド制作やプロモーションが行われました。これによってコミュニティに日産自動車の名前が浸透することとなり、メタバース新車発表会といった後続の展開につながっています。

「モスバーガー ON THE MOON」もまた、コミュニティの熱意によって今後のさらなる展開が期待できるワールドになりそうです。そのような流れで企業のメタバース進出の「王道」が生まれているといってよいでしょう。

「モスバーガー ON THE MOON」は、9月6日(火)にパブリックで公開されました。現在、誰でも無料で入場できます。月面のモスバーガー店舗で新商品を作る、唯一無二の体験をしてみてください!

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