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VR動画 2021.07.17

【VR映画ガイド第57回】冒頭からずっと落下し続けるVRアニメとは?

シュールでウィットに富んだVRアニメーション

「Gravity VR」は足元に地面がない、存在するすべてのものが永遠に落下し続ける超現実的な世界を舞台にした作品です。家、服、車など全てが落ちていき、そして体験者も落ちていきます。この不思議な場所で、驚くほど平凡に生活を送っている2人の老兄弟に出会います。彼らの孤独でゆっくりとした日常が、ある日を境に大きく変わってしまう様子が描かれています。

ブラジルでアニメーションを中心として様々な映像アート作品を制作してきたAmir Admoni監督と、ペルーで15年以上テレビの作家を務めてきたFabito Rychter監督という長年フレーム映像作品を作り続けてきた2人がVRに初挑戦したのがこの作品です。

Amir Admoni監督は初めてVR体験した時からVR作品のアイデアばかりを考え、最終的にはVR製作会社「Delirium XR」を設立しています。

世界中で評価が高い「Dear Angelica」や「Arden’s Wake」などの多くの作品を繰り返し体験し、何千ものアイデアを考え、最終的に「Gravity VR」はスクリーン用の短編3D映画として作っていた「Gravity」を元に制作されています。

オススメのポイント

1. VRならでは!? あり得ないシチュエーション

VRは今はもう存在しない過去の場所にタイムスリップしたり、虫よりも小さくなって、巨大な昆虫を眺めたり、普段では出来ないことを体験することができます。「Gravity VR」では冒頭からずっと落ち続けます。

しかも自分がどこからどこに落ちているのか、シチュエーションが何も説明がなく落ちているので、最初は戸惑います。しばらく経つと、画面の奥の方から冷蔵庫に座った半裸の老人と、縄で繋がれた裸の老人兄弟2人が落ちているのが見えてきます。

彼らは優雅にお茶を飲もうとしたり(お茶がうまくコップに入らなくて飲めないのですが)、チェスをしようとしたり、何もセリフがない無言の状態で、このおかしな環境を当たり前のように生活している2人の姿が興味深く、ずっと見ていたくなります。

2. デザインされた映像表現

作品は全編、モノクロの世界です。世界の背景は白に近い薄いグレーの中、黒色の老兄弟と白い冷蔵庫、飛び回る家具や食器もモノクロですごくデザインされた世界観です。

360度を詳細に絵で埋めているわけではないですが、家具や食器が手前や奥に、360度描くことによって空間を感じさせることに成功しています。

計算してデザインされている感じがして見ていて心地が良い映像になっています。

3. 深いテーマ

なぜこの不思議な物語を描こうと思ったのか、この作品は何を訴えているのか、体験しただけではすぐにはわかりませんでした。しかしAmir Admoni監督がこのようなことを語っています。

「この物語は“二極化”、“対話の欠如”、“和解不能な相違”と言うのがテーマになっています。生涯共にしてきた2人の兄弟が、現在の状況、近い将来の状況、そして彼らが何をすべきかについて全く異なる見解を持っています。雑音の多い混沌とした世界では、相手の話をきちんと聞くことができません。2人とも自分の意見に固執し、それだけで一緒に暮らすことに耐えられなくなってしまうのです。この話は、今、多くの国の人々にとって、かなり身近なものになっているのではないでしょうか?」

このコメントを読んで、最後の兄弟の選択の意味がよく理解できました。皆さんもこの言葉を胸に閉まって体験していただければと思います。

作品データ

タイトル

Gravity VR

ジャンル

アニメーション

監督

Fabito Rychter, Amir Admoni

制作年

2020年

本編尺

約15分

制作国

ブラジル、ペルー

視聴が可能な場所

VIVEPORT:
https://www.viveport.com/812c8ce2-f2a1-4f7c-a521-44721ab872f7

Trailer

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