2020年のカンヌ国際映画祭のXR部門に日本から唯一入選
日本VR界に逸材が現れました。2020年のカンヌ国際映画祭のXR部門「Cannes XR 2020」VEER FUTURE AWARDに日本から唯一入選した「MOWB」のクリエイター油原和記さんです。
油原さんは東京藝術大学大学院映像科アニメーション専攻に在籍している学生で、今注目のVRクリエイター。「MOWB」はへその緒で結ばれた、母娘の物語です。へその緒を通じて、母が娘に命を分け与えることによって母は次第に小さくなり、娘は大きく育ち、やがて母になります。
この子宮回帰のような神話体験が手描きのアニメーションで表現されています。冒頭の苦しみながら命を形成していく母の姿や、母の存在が消えていくシーンは切なくなって涙がこぼれそうになります。
悲しみを乗り越えて娘が母親になっていく姿を見ると、与えてもらった命を大切に生きていかなければと思いました。
オススメのポイント
1. へその緒を使った巧みな視線誘導
おへそから母親の胎内の世界を覗くような感じになるのですが、母と娘は1本のへその緒で繋がれており、母のエネルギーをもらって娘がスクスク育っていく様子が見られます。さらにへその緒の繋がれている先に目線を向けることによって、ユーザーは迷うことなく物語を追うことができます。
2. 流れるようなシーン転換
視線誘導が巧みなことに加えて、シーン転換に関しても物語を止めることなく非常に自然で、流れるようです。冒頭からエンディングまで1曲の音楽を聞いているようにスムーズに物語が展開されるのでMOWBの世界に没入していけます。
3. 独創的な世界観と手描きアニメーション
驚くべきはUnityなどを使わず、手描きでVR用のアニメーションを作成していることです。手で描かれているからなのか、作者の独特な世界観が増しているように感じました。
ユーザーは今まで体験したことのない360度に広がる独創的な美しい世界へ連れて行かれます。海辺のブランコのシーンやステンドグラスのシーンはまるで絵本やアートブックに入ったような素晴らしい空間を体験できます。
1人の若い日本のクリエイターが、時間と労力をかけて作りあげたこの大作をぜひ一度は体験してもらいたいです。
作品データ
タイトル |
MOWB |
ジャンル |
アニメーション |
監督 |
油原和記 |
制作年 |
2019年 |
本編尺 |
13分42秒 |
制作国 |
日本 |
体験可能な場所 |
Trailer
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