2024年11月、配信プラットフォーム「Twitch」が、Metaとのコラボレーション企画を実施。有名ストリーマーのスタンミ(スタンミじゃぱん)とSHAKAが、Metaの新型VR/MRヘッドセットMeta Quest 3SのVRゲームを体験する企画が配信された。
TwitchとMetaのコラボレーションは今回が初ではないものの、企画は大きな注目を集めた。それには、今年メタバースプラットフォーム「VRChat」を活用した生放送で数々のドラマを生み出したストリーマー・スタンミが起用されたことが背景にある。両企業が現在のVR・メタバースの盛り上がりを認識し、おそらく意図して企画した点は見逃せないところだ。
また、Twitchでは現在VTuber文化が非常に隆盛となっている。赤見かるびや天鬼ぷるるなど、Twitchを起点に活動し、そのまま急成長し続けるVTuberが増えており、新たな才能発掘の現場としても、ユーザーからは注目されている状況だ。
こうしたメタバース・VTuberの盛り上がりについて、Twitch公式はどのような見解を持ち、今後どのような施策を考えているのか、Twitch ブランド・パートナーシップ・スタジオマネージャーGemma Battenbough氏に、国内外での事例を紹介してもらいつつ、詳しい話をうかがった。
Gemma Battenbough氏プロフィール
Twitch ブランド・パートナーシップ・スタジオマネージャー。日本を含むアジアパシフィック全体、ヨーロッパ圏のマネジメントを担当。企業パートナーとTwitchストリーマーコミュニティ双方を連携させ、企画を進行する取組に従事。今回の日本でのTwitch×Metaのコラボレーションの企画進行を担当している。
Twitchがメタバースを活用した配信に注目する理由
——Meta社とのコラボレーションはどういった経緯で実現したものでしょうか?
Gemma Battenbough氏(以下Gemma氏):
今回のコラボレーションはMeta社から「新製品のMeta Quest 3S」の認知を高めるための施策として、アプローチをいただき、実現しました。我々としては、手ごろな価格でバーチャルリアリティの世界を体験できるデバイスを、非常にエキサイティングなかたちでアピールし、広めていきたいと考えていましたので、クリエイティブチームで案を練りまして、TwitchでMeta Quest 3Sを活かすようなかたちで今回の施策案を作成しました。
今回は、日本でも配信者として人気のSHAKAさんとスタンミさんをお呼びして「The Walking Dead: Saints & Sinners」と「ブレイゼンブレイズ」の2タイトルを、まずはシングルプレイ(一方が体験し、もう一方が解説に回る形式)で配信し、その後ファンも参加してのマルチプレイで、3対3の試合を実施しました。これによって、Meta Quest 3Sがシングルからマルチまで、色んなゲームを体験できることを伝えられたと思います。
実は3年前にも、おふたりにMeta Questの体験コラボレーションに協力いただき、その際も非常に盛り上がったのですが、今回もVRの面白い体験を視聴者の方に届けられたのではないかと思っています。
——SHAKAさんとスタンミさんの起用は、その3年前のコラボがきっかけで実施されたのでしょうか?
Gemma氏:
もちろん3年前のコラボレーションがきっかけの一つではありますが、今回のコラボの理由としては、おふたりの相性がとても良く、ケミストリーを起こしやすかったことが大きいと感じています。また、スタンミさんがVRに対する情熱を最近より高めてくださって、VRChat配信を積極的に行われています。そういったところが、主な起用理由となります。
——今回のMetaとのコラボは非常に盛り上がっていましたね。
Gemma氏:
今回のコラボ直後、「ブレイゼンブレイズ」が、世界で最も視聴されているゲームの13番目に選ばれるなど、視聴者のエンゲージメントが非常に高かったと言えます。「自分も参加したい」と思ったユーザーがこれほど多く見られたというのは、我々にとっても非常に良い指標になりました。
——先ほど、お話にもあったように、Twitchでは、スタンミさんの配信をきっかけに、日頃よりメタバース内での活動を配信するストリーマーの姿が散見されるようになりました。こういったムーブメントについてはどのように捉えていますか?
Gemma氏:
おっしゃるとおり、スタンミさんの配信に多くの人が影響を受けたことで、メタバース、VRChatの配信カテゴリはこれまで以上に盛り上がっています。こうした流れについては、Twitch公式としても、日本での成長を目指していく上で、強い興味を持っています。実のところ、Twitchの日本コミュニティ全体は昨年から46%成長しておりまして、世界各国と比較しても、日本が一番成長が早い傾向にあります。それというのも、日本のユーザーの皆さんがとてもクリエイティビティが高く、VTuberやVRユーザーの動きが活発なことが影響していると考えています。そのため、我々としてもメタバースを活用した配信は(盛り上がるように)注力しています。
——一方で、海外を含めて、どれほどのストリーマーが、どれくらいメタバースを親しみ、配信しているのか全体感を掴みにくいところがあります。これまでのTwitch全体では、どれほど盛り上がっているのでしょうか? 手応えをお聞かせください。
Gemma氏:
日本以外でもメタバースの盛り上がりは感じられます。ひとつ、アメリカでの例をあげますと、Twitchで、フォートナイトを活用し「The Glitch(グリッチ)」というユニバース(※クリエイティブモードで作成されたオリジナルワールドのこと)を公開しました。そのユニバースのなかで、ユーザーの方々がTwitchの配信を同時視聴したり、フレンドと一緒に遊んだりといったことが起きています。それがTwitchのブロードキャストとメタバースのインタラクションの融合した事例として挙げられます。
VTuberコミュニティを盛り上げるために
——Twitchには数多くのVTuberが長時間のストリーミング配信をしており、非常に大きな盛り上がりをみせています。英語圏のVTuberも活況で、続々と新しい企画が生まれている印象です。現在の、TwitchでのVTuberの盛り上がりについてどのように捉えていますか?
Gemma氏:
おっしゃるとおり、VTuberカルチャーは日本を問わず世界的に拡大している状況にあります。VTuber配信では全般的に実験的なテクノロジーを活用した取り組みが(メタバース利用やAI活用なども含めて)多く見られています。またTwitchのスタジオを利用しての出演や収録という機会もふえてきていますね。ただ、VTuberの配信は、やはり日本が世界をけん引している立場にあります。日本の漫画やソフトカルチャーアートといった背景があるからこそ、VTuberカルチャーが伸びやすい傾向にあるのではないかと考えています。
——Twitchとしては、このVTuberカルチャーをどのように盛り上げたいとお考えでしょうか?
Gemma氏:
まず、現状活躍されている方のサポートが重要です。Twitchで活躍する代表的なVTuberとして、赤見かるびさん、猫麦とろろさん、夢野あかりさん等がいらっしゃいますが、彼女たちがどんどん活躍できるようにしていき、さらに、収益を得られるような環境を構築していきます。また、彼女たちが活躍することで「自分たちもVTuberをやってみたい」と考えるユーザーが増えるといった、良い影響も出てくると思いますので、そういったところもサポートしていきたいと思っています。スタンミさんがTwitchのなかで「VRChat」というカテゴリを確率したように、我々も「VTuber」というカテゴリをしっかりと支えていきます。
——Gemmaさんから、赤見かるびさんなど具体的なVTuberのお名前が出てきたのには驚きました。
Gemma氏:
ありがとうございます(笑)。
——日本国外で活躍するVTuber事例については具体的にどのようなものがありますか?
Gemma氏:
ふたつほど特徴的な事例をあげますと、ひとつはアメリカで実施されたケロッグ社のPR施策です。ケロッグの人気キャラクター「トニー・ザ・タイガー」がVTuber化し、ファンとコミュニケーションをとるといった試みがありました。もうひとつは、オーストラリアのAHMという保険商品を提供する企業の施策で、Pandaというストリーマーが自身のペルソナとブランドの個性を融合させたVTuberキャラクターを作成して、商品を紹介するといった試みがありました。先ほど、日本がVTuberカルチャーをけん引しているという話をしましたが、このように日本以外でもVTuber文化は盛り上がっている状況にあります。
——Twitchでは、今年に入ってVTuberの衣装や活動内容について、コミュニティガイドライン違反例を具体的に記載したページを公開しました。このガイドラインページを共有した目的はどういったものでしょうか?(※今年の10月に、VTuberの性的描写、年齢記載、服装に関するペナルティが明記された。詳細は下記の記事を参照)
Gemma氏:
弊社の全般的な回答としては、Twitchはコミュニティというものを非常に重視しておりまして、どのようなユーザーの方によっても温かくなじめるような環境を構築したいという思いからのガイドライン策定でした。もちろんVTuberの方々も我々の重要なコミュニティの一員と考えておりまして、生身の人間と同様に、ひとつのアイデンティティがあると考えています。ただ、より具体的な事例についてはこの場では差し控えさせていただき、ご意見がございましたら、弊社のトラスト&セーフティチームの方からお応えさせていただきたいと思っております。
——日本においてのTwitchでは、(他のプラットフォームから有名人が流入してくるというケース以上に)最初からTwitchでデビューして一躍ネットの人気ストリーマーになるという事例が多く見られる印象です。どのような要因で、数多くの人気ストリーマーが生まれるような環境になっているとお考えでしょうか?
Gemma氏:
Twitchのユニークなところは、コミュニティに非常にフォーカスしているところです。ライブ配信はもちろんですが、チャットやプレイモーメント(※動画のクリップ切り抜き機能)、ユーザー参加型のゲームなど様々なインタラクションを用意している点にあると思っています。またストリーマーの配信時間が長いことで、ストリーマーとユーザーが非常に強い社会的な関係性を築きやすく、友達のような絆の生まれるケースもあります。また、視聴者が興味のあるストリーマーを見つけやすいことから、自分の所属したいコミュニティ、仲間が増えていくという点も大きいと思っています。ストリーマーの方々のなかにも、大きく活躍されるようになった後も「コミュニティから離れたくない」という思いが強いのではないかと思います。そういった観点でもTwitchを長く愛用される方が多いと推測しています。
※Twitchでの具体的なコミュニティ形成については、下記のインタビュー記事に詳しい。
——先の質問は私が日本のコミュニティを観察していての感想ですが、国外でもコミュニティ重視の傾向は大きいのでしょうか?
Gemma氏:
基本的にはコミュニティを重視した運用を行っていますが、それぞれの国によって違いがあることは確かです。例えば、スペインなどでは元々TVで活躍していたジャーナリストやタレントの方々が活躍しているという傾向があります。もともとスポーツ系のジャーナリストの方々が、話術に秀でている方が持ち味を活かしながら、若い方との交流を目的に配信をされていますね。なので、地域ごとに特色はあると言えます。
——Twitchでは、ストリーマーとユーザー同士のつながりだけではなく、ストリーマー同士の距離が近いといったケースも多い印象です。そのため、複数人でのコラボ企画が起きやすく、深い交流も行われているように感じます。これも、Twitchの積極的なコミュニティ運営が影響しているのでしょうか?
Gemma氏:
おっしゃるとおりです。Twitchではストリーマー同士がサポートし合う文化があり、情報共有しあったり、一緒に仕事をこなすといった姿も見られます。実際にTwitchコンなどを実施すると、世界中のストリーマーたちが他のストリーマーたちと会えるのを楽しみにしていますね。
——ありがとうございます。最後の質問です。TwitchがVTuber・ストリーマーの配信を盛り上げるために現在考えている施策や方針などがありましたら、お聞かせください。
Gemma氏:
たくさんのアイデアがあります(笑)。ひとつ日本での事例で例を挙げるとすれば「音楽」ジャンルの強化です。TwitchではDJ配信や自作の音楽製作する配信などを行う方も多いので、著作権上の課題などを解決していくことで、より自由に音楽を楽しめる環境づくりをしていきたいと考えています。
——ありがとうございました。


