「お台場の建物」と聞いてまず思い浮かべる人も多いだろう、フジテレビの球体展望室「はちたま」。かつてのSF映画に登場するUFOを彷彿とさせるあの銀色の球体が、なんとこの度、火星へと向かう宇宙港へと姿を変える。
2026年4月25日(土)より開催される、『THE SUNSET OF MARS(ザ・サンセットオブマーズ)』。最新のXR技術を駆使して「未来の火星旅行」を現実のものにする、次世代型VRアトラクションだ。
体験者を待ち受けるのは、ロケットでの離陸から始まり、火星の大地をローバーで疾走し、火星特有の「青い夕日」を目の当たりにする、未来の火星ツアー。コントローラー操作ではなく、実際に自分の足で歩いて楽しめる「火星探索」の様子を、本記事ではお届けする。
旅の始まりは「はちたま」25階のチェックインから
『THE SUNSET OF MARS』が開催されるのは、お台場・フジテレビ25階に位置する球体展望室「はちたま」だ。案内に従い、7階の屋上庭園からエレベーターで向かう。
会場に入ったら、まずは入口左手のロッカーに荷物を預ける。本アトラクションは、VR空間を自らの足で歩き回ることのできる「フリーローム型」なので、できるだけ身軽な格好になっておこう。
続いて、チェックインカウンターへ。
ここではタブレット端末を使い、自身のアバター選択と顔写真の撮影、パスコードの設定を行う。パスコードは体験中に撮影した写真をダウンロードする際に必要となるため、覚えやすい8桁の数字を設定しよう。
(会場内で流れていた、発着案内板のような映像。調べてみたところ、THARSIS、ELYSIUM、HELLASはどれも火星にある平原や台地の名称らしい。聞き覚えのある小惑星の名前もある)
「お台場発 火星行き」のツアー体験!いざ『THE SUNSET OF MARS』の世界へ
チェックインカウンターで発券された入場券をスタッフさんに提示したら、VRゴーグル(PICO 4 Ultra Enterprise)を装着する。
ちなみに、本アトラクションはコントローラーを使わないハンドトラッキング操作を採用しているため、VR初心者でも直感的に楽しめるのが特徴だ。眼鏡をかけたままでも無理なく装着できる設計も、多くのユーザーにとって嬉しいポイントだろう。
どうやらこの「火星旅行」は、グループツアーとなっているらしい。筆者を含む4人で一斉にVRゴーグルを装着したら、衝立で囲われた小部屋へ向かう。この時点ではまだ現実世界が見えているのだが、カメラ機能の操作説明を聞き終えると、やがて小部屋の奥の扉が開かれた。
さあ、火星を目指して、出発だ。
(最初に通される小部屋。ここまでは現実世界の屋内が映し出されているが、開いた扉の先は明らかに屋外。ここからは完全にVRの世界を歩いていくことになる)
目の前に広がる東京都心のビル群と、それを照らす夕日の鮮やかさに目を奪われるが、我々の目的地は「火星」である。アナウンスの声に導かれ、歩いてリフトへと移動する。
指定された位置に立ち、目の前のボタンを押すとリフトが上昇するのだが、思いのほか臨場感があってヒヤリとさせられた。というのも、このリフトにはいわゆる「安全柵」がないのだ。足がすくむような高所で、そんな状態でしばらく待機させられるのだから、さすがに怖い。注意事項に「高所恐怖症の方はご注意ください」と記載があったのも納得だ。
グループ全員が操作を完了すると、リフトが横にスライドし、ロケットの内部へと格納される。そのままロケットに搭乗するのだが、そこで驚いたのが、目の前の椅子に「着席」を促されたことだ。
VRゴーグルを装着している自分の目の前には、ご覧の通り、3DCGの「椅子」が映し出されている。おそるおそる手を伸ばしてみると……なんと、そこには確かに、硬い肘掛けの感触があるのだ。
どうやら現実世界にも椅子が用意されていて、そこに座れるようになっているらしい。まさか本当に椅子があるとは思っていなかったのか、同じグループの参加者たちからも口々に驚きの声があがっていた。
さて、全員が着席すると、発射シークエンスがスタートする。
椅子が振動し、壮大な音楽が流れる中、都心の風景がどんどん眼下へと遠ざかっていく。雲を突き抜け、成層圏を突破し、あっという間に宇宙空間へと到達する。
ナビゲーションAIの解説に耳を傾けているうちに、宇宙船は火星に到着。
今度は着陸シークエンスに入り、視界に見えていた火星が徐々に近づいてきて、眼前いっぱいに地表が広がったところで、大気圏に突入。オレンジ色の地表に建造された基地に向けて軌道を調整し、その大地に着陸する一部始終を、特等席で体感することができた。
自分の足で歩いて見て回る、シームレスな火星旅行
基地に到着すると、いよいよ火星探索の始まりだ。この旅行では、火星のいくつかのエリアを巡ることができる。
順番としては、展望スポットでオレンジ色の地表を見渡した後、探索拠点であるマーズベースで火星について学ぶ。そして最後に待ち受けているのが、火星の空に沈む“青いサンセット”を見届ける体験だ。
ここからは自由に動けるので、サクサク回ってもいいし、気になる展示をじっくり見てもいい。ただし、次のエリアに移動すると前のエリアには戻れないため、まずはエリア内にあるものを一通りチェックしておこう。
(着陸地点に佇む、いかにもな「火星人」の像。近づくとH.G.ウェルズの『宇宙戦争』にまつわる解説文を読める。奥に見えるのが移動用ローバーだ)
(走行するローバーの上から撮影。足元が揺れるわけではないが思いのほか臨場感があり、同じグループ内の参加者たちからは口々に歓声があがっていた)
(タイトルロゴが浮かぶ展望スポット。自撮りモードにして記念撮影を忘れずに)
(自撮りモードでの撮影はこんな感じ(※顔の部分は編集しています)。タイマー機能があるので、ピースもできる)
(地球・火星・月の天体模型。天体ごとに異なる重力が設定されていて、地球を持って投げると想像通りの挙動で落ちるが、火星と月を投げると、若干浮かぶように飛んでいく)
(マーズベースは、ちょっとした博物館のような展示エリア。火星の基礎知識を学べる)
(火星の極冠(北極や南極)から切り出した氷。アイスピックで砕く体験ができる。奥のプラントに近づくと、火星の食事事情についての解説を読める)
(何かがでてきた! ……なんだかすごく、見覚えのある顔ですぞ~?)
展示物の数自体は、決して多くはない。しかし、一つひとつに自らの足で歩み寄り、間近で観察する必要があるため、じっくりと向き合っていると時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。個々の展示においても、「持つ」「触れる」「砕く」といった能動的な身体動作を伴う体験が多く、知的好奇心や触覚的な楽しさを刺激されるものばかりだった。
また、これは後で振り返って気づかされたことだが、ここまでの体験のすべてが「火星旅行」という一つの大きな流れとして、極めてシームレスに構成されていた。途中で没入感が途切れたり、物足りなさを感じたりする隙が一切ないのである。
「未来の火星旅行」という設定ならば、超高速の輸送手段やワープシステムのようなSF的なギミックがあってもおかしくはないし、VRでならば、それも容易に表現できる。にもかかわらず、本アトラクションでは、そのような要素はまったくと言っていいほど見かけなかった。
現代の乗り物と地続きにあるようなローバーに乗り込んで移動し、その乗降の際にも、VRでありがちな「暗転・明転」による場面転換の演出は挿入されない。そういえば、大気圏突入のシーンですらそうだった。
VRヘッドセットを装着して最初の扉をくぐり、ロケットに搭乗し、火星の地を巡って、最後にゴーグルを外すその瞬間まで、「演出としてのカット」は一度も存在しなかったはずだ。
ひとまとまりの「体験」として、継ぎ目のない火星旅行を堪能してきたからこそ、訪れるクライマックスは圧巻の一言に尽きる。本イベントのタイトルにもなっている、火星の空に沈む“青いサンセット”を、移動するローバーの車窓から見届ける体験だ。
ここではあえて、その光景を収めた写真は掲載しない。ぜひ会場に足を運び、自身の目でその色を捉え、味わってほしい。地球の「青い空と赤い夕日」を遠景に眺める場面から始まり、火星の「赤い空と青い夕日」を見届けて終わる。その鮮烈な対比の美しさにも感じ入ってしまう、満足感の高いアトラクションだった。
フリーローム型VRの没入感をさらに強める、「座る」という身体動作
『THE SUNSET OF MARS』の最大の特徴は、製作を担当した株式会社ABAL独自のXRプラットフォーム「Scape」を採用している点にある。
この技術により、限られた会場面積をVR内で10〜20倍もの広大な空間へと拡張。さらに、最大100人が同時に体験できるという大規模な運用を実現している。
これは、同社が2025年に手掛けたVRホラーアトラクション『戦慄迷宮:迷』と同じシステムだ。同イベントは東京タワーで20,000人以上を動員し、その後全国ツアーを開催。現在はお台場のダイバーシティ東京 プラザ6階にて、6月14日までの期間限定で体験できる。
「火星旅行」と「廃病院の調査」という舞台とジャンルの違いこそあるものの、今回の『THE SUNSET OF MARS』も、全体の流れやシステム、体験の質は『戦慄迷宮:迷』と共通点が多い。
顔写真を使ったアバターシステムや、自撮りもできるカメラ機能。体験中は他の参加者の存在を感じつつ、友達と言葉を交わしながら、自分の足で歩き回ることができる。体験後は撮った写真をダウンロードし、SNSで思い出をシェアする楽しみも健在だ。
他方で、『戦慄迷宮:迷』との違いを挙げるなら、「数十人が同時に限られた空間を歩き回るVR体験」としての快適性が向上していた印象がある。
(『戦慄迷宮:迷』では、他の参加者の姿が黒い人影で表示される。足元には円形に光るリングも表示されているが、薄暗い廃病院では若干見えにくい)
というのも、他の参加者の姿が黒い影のように表示される『戦慄迷宮:迷』では、周囲の人とぶつかってしまう場面が何度かあった(※)。一度でも接触があると、「ぶつからないように気をつけよう」という意識が自然と働き、没入感を削いでしまう可能性がある。
その点、今回は他の参加者の姿が視認しやすく、位置が大幅にズレて見えるような場面もなかった。むしろ「大勢で火星の観光ツアーに来ている」と思えるような臨場感があり、目の前の火星の風景と、そこでの体験に自然と没入できていた実感がある。
(※とはいえ『戦慄迷宮:迷』の場合、「他の参加者の視認性を高めると『ホラー』としての恐怖感を削ぎかねない」というジャンル面での都合もあるので、バランスが難しそうではある)
(『THE SUNSET OF MARS』では、同じグループ内のメンバーは写真右&中央のような顔写真付きのアバターで、それ以外の参加者は写真左のような水色の半透明の姿で表示される)
「没入感」という点では、五感に直接訴えかけてくる要素が序盤に用意されていたことも、特筆すべきポイントかもしれない。「ロケットの座席に座る」という、あの体験だ。
これは若干のネタバレになるが、『戦慄迷宮:迷』では、終盤に「椅子に座る」ように指示されるシーンがある。VRヘッドセット越しに見えている、3DCGに過ぎないはずの椅子に手を伸ばすと、確かに椅子の感触があり、そこに座ることができるのだ。
筆者は当時、その初めての体験にいたく感激すると同時に、その後の展開に心底から恐怖させられた記憶がある。『THE SUNSET OF MARS』では、その「座る」という象徴的な体験が早々に登場したことで、「こんな序盤に!?」と面食らってしまったわけだ。
しかも今回は、振動と轟音付きである。「触って、座る」だけでなく、「触って、座って、めっちゃ揺れる」という体験に、文字通り全身を揺さぶられ、感激してしまった格好だ。そのような意味では、この「アトラクションの序盤に身体動作を伴う体験をさせる」という構成は、非常に効果的だったと言わざるを得ない。
「VRヘッドセット越しに3DCGを見ている(実際には存在しない)」という認識を、「現実と同じように座れる椅子がある」とその身でもって体感させることで、VR空間への没入度を一気に高める。事実、筆者と同じグループで参加していた1人は、うっかり移動用ローバーの手すりに寄り掛かろうとして、軽くよろめいてしまっていたほどだった。
現実に存在はしているが、人間が足を運ぶのは困難な世界。そんな宇宙や惑星を舞台にしたVRコンテンツは数多く、VR機器さえあれば自宅でも体験できる。筆者も普段、VRChatの宇宙系のワールドで遊ぶことがあるが、『THE SUNSET OF MARS』での体験は、決して自宅では味わえないものだった。
いまだ人類が成し得ていない、「自らの足で火星を歩く」という夢の体験。最新の自由歩行型VRとして一見の価値があるのは言わずもがな、カップルにも、親子連れにも、幅広い層におすすめできるイベントだ。何より、純粋に「宇宙が好き!」という人にこそ、ぜひ体験してほしい。
ゴールデンウィークのお出かけ先として、青いサンセットが映える「火星」はいかがだろうか。
『THE SUNSET OF MARS』開催概要
| 開催期間 | 2026年4月25日(土)〜6月28日(日)
※以下の日程は、土日祝の営業時間となります。 |
| 営業時間 | 平日 11:00〜19:00 / 土日祝 10:00〜19:00(最終受付18:30) |
| 開催場所 | フジテレビ球体展望室「はちたま」 (東京都港区台場2丁目4−8 フジテレビ 25 階) |
| 料金(平日) | 大人 3,700円 / 18歳以下 2,300円(税込) |
| 料金(土日祝) | 大人 4,200円 / 18歳以下 2,800円(税込) |
| チケット購入 | https://thesunsetofmars.abal.jp/release
※以下の日程は、土日祝のチケット料金となります。 ※前売りチケットは時間指定となっております。 ※会場で当日券もお買い求め頂けますが、前売りチケットの売れ行き次第で、入場をお待ち頂いたり、購入出来ない場合もございます。事前にチケットを購入することを強くお勧めいたします。 |
| 対応言語 | 日本語・英語 |
| 年齢・身長制限 | 7歳以下および身長110cm以下は体験不可。12歳以下は保護者の同意書が必要 |
| 所要時間 | 30分程度 |
| 主催 | THE SUNSET OF MARS製作委員会 |
© THE SUNSET OF MARS 製作委員会























