戦慄迷宮
それは、“世界最長・史上最恐クラスのお化け屋敷”として知られる、富士急ハイランドのホラーアトラクション。これまでに530万人もの来館者を恐怖に陥れてきたあの廃病院へと通じる扉が、この夏、東京タワーで開かれました。
その名も、「戦慄迷宮:迷(めい)」
VRヘッドセットを装着し、実際に自分の足で歩きながらバーチャルの廃病院を探索する、体験型ホラーアトラクションです。
「リアルさながらの臨場感と没入感を味わえるVR」と「最恐のお化け屋敷」のコラボレーションということで、気になっている人も多いのではないでしょうか。今回はこの「戦慄迷宮:迷」をラストまで体験した感想と、その魅力を紹介します。
※一部、体験のネタバレが含まれます。まっさらな状態でホラーに挑戦したい方は先に公式サイトでチケットをご購入ください。
全長1kmの廃病院を探索する、まったく新しい「戦慄迷宮」
https://www.youtube.com/watch?v=CnCQT9uuOv8
東京タワーで8月31日まで開催中のVRホラーアトラクション「戦慄迷宮:迷」。まず大前提として、本アトラクションは「戦慄迷宮のVR版」ではありません。
富士急ハイランドの戦慄迷宮の世界観をベースとして、新たなオリジナルストーリーが描かれるのが、この「戦慄迷宮:迷」。なので、本家・戦慄迷宮をすでに体験している人は「新作」として新鮮な気持ちで臨めますし、逆に未体験の人も知識不要で楽しめます。
本アトラクションの最大の特徴は、「自分の足で歩いて探索するVRホラー」であること。
VRヘッドセットを装着し、入口から先へ歩を進めると、そこはもう廃病院の中。両手に持って操作するタイプのコントローラーは使わず、自分の足を動かして広大な空間を探索しなければならない、「歩けるVRホラー」なのです。
さらに驚いたのが、本アトラクションで探索できる空間の広さ。
富士急ハイランドの戦慄迷宮と言えば、「全長900m」という、お化け屋敷の中でも頭一つ抜けた広大さも特徴の1つです。では、東京タワーの「戦慄迷宮:迷」の広さはどうなのかと言えば……なんと、全長1km。本家と同じかそれ以上の規模のお化け屋敷となっているのです。
「東京タワーの地下って、そんなに広い空間があるの!?」と疑問に感じた方もいるかもしれませんが、その解説についてはまた後ほど。まずは「戦慄迷宮:迷」の内容と、実際に体験した感想を紹介します。
「戦慄迷宮:迷」のストーリー
2025年春、東京タワーVRアトラクションを設営していたスタッフが行方不明になるという事件が起きた。警察が捜査に乗り出すが、現場からは何の手がかりも得られないまま捜査は難航。唯一の手がかりである設営時に起動していたVRゴーグルを再起動させたことで事態は一変する。そこには、予定されていたVRアトラクションはなく、仮想空間に広がっていたのは、日本で一番有名なお化け屋敷「戦慄迷宮」だった。
時を同じくして、一人の霊媒師が東京タワーに訪れる。霊媒師は戦慄迷宮の侵食はさらに拡大すると語り、解呪をおこなうために仮想世界の戦慄迷宮へと向かうが、スタッフと同じく行方不明となる。続く超常的な事件になす術もない警察は、その捜査・解決を超常的な事件を扱う民間機関「(有)怪異対策機構」に依頼をする。 「(有)怪異対策機構」は怪異の調査を独自の技術ノウハウを持ち調査人材を広く一般から募集することで知られている。
『戦慄迷宮:迷』と名付けられたこの事案の調査、果たしてその先には何があるのだろうか…。そして、富士急ハイランドにある戦慄迷宮は本当は一体何なのか。迷宮の入り口はもう開いている。
いざ、仮想現実の戦慄迷宮の世界へ!
「戦慄迷宮:迷」への入口は、東京タワー1階の右手に向かうと見えてきます。階段を降りたら、まずは「怪異対策機構」の調査員としてエントリーを行いましょう。
タブレット画面の指示にしたがって、「アバタータイプの選択」「顔写真の撮影」「8桁のコードの設定」を順に進めていきます。ちなみに、1階のグッズ売り場であらかじめ「怪異対策機構」のTシャツを買った人は、特別なアバターの姿で遊ぶこともできるそうです。

(続いて、写真撮影。体験中に自撮りをする際に、撮影した顔写真が反映されます)

(最後に8桁のコードを入力。体験後、撮影した写真をダウンロードするのに使います)
コード入力まで終えると「調査申請書」が発券されるので、QRコードを入場時にスタッフさんに読み取ってもらいましょう。
この調査申請書は体験終了後にも使うので、うっかり捨ててしまわないようにご注意ください。迷宮を無事に脱出した後にQRコードを読み取ると、体験中に撮影した写真を見られる「フォトアルバム」のページへアクセスできます。写真はダウンロードしてSNSに投稿することも可能です。
ロッカーに荷物を預けて、スタッフさんの案内でVRヘッドセットを装着したら、いざ「戦慄迷宮:迷」の世界へ。
装着時には現実世界の景色とスタッフさんの姿が見えていましたが、入口のほうへ歩いて向かうと……そこはもう、戦慄迷宮の世界。目の前に表示される対策機構スタッフの指示にしたがって、廃病院の内部へと向かいます。
体験中に手を使って行う動作は、「ライトで照らす」「写真を撮る」「扉を開く」の3つだけ。空間内の物体を手にしたり、複雑なパネル操作をしたり、武器で攻撃をしたり、といった要素はありません。
「① 右手を向けるとその先が照らされる」「② 右手を握ると写真が撮れる」「③ 黄色に光っている扉の持ち手やエレベーターのボタンを押すと、扉が開く」という、3点だけ覚えておけばOKです。移動はもちろん、自分の両足で行います。

(院内はとにかく暗いので、右手を向けて周囲を照らしながら進みます)

(怪しいものや怪異を見つけたら、すかさず右手を握って撮影!)

(引き戸の持ち手の部分が光っている扉は、開けて入ることができます。それ以外の部屋には入れません)
ちなみに写真撮影に関しては、インカメラにして自撮りをすることもできます。正直、暗いし怖いし不気味だし怪異を見つけなきゃだしで筆者はそれどころではなかったのですが、余裕があれば記念撮影もしておきましょう。

(富士山?を背景にパシャリ。顔が黒いのは、編集で筆者が普段使っているアバターを埋め込んでいるからです。怪異ではありません)
慣れてくると意外と楽しい!?「怪異を撮影する」という目的が生み出す高揚感
さて、肝心の「お化け屋敷としてどうだったのか」という部分ですが……「もちろん恐怖心もあったが、高揚感も感じられて楽しかった」というのが、筆者個人の素直な感想です。
まず、「廃病院」という空間のリアリティは想像以上でした。
目の前に映し出されている薄暗い空間を本当に歩いているような感覚がありましたし、ヘッドセットを装着している時と体験後に外した後とでは、体感温度がいくらか変わったように錯覚したほど。
部屋の奥で何かが蠢く音や、液体が滴る音、耳元で囁かれる声なども、しっかりと「空間」を伝わって聞こえているような感覚がありました。しかも実際に音が聞こえたほうに振り向くと、その方向に“いる”わけです。わかっていても怖いものは怖いですし、驚いて声をあげてしまった回数も5回や10回では済みませんでした。
一方で、廃病院の中で出会う個々の「怪異」の怖さレベルに関しては、想像よりも控えめだったかもしれません。
いわゆる「大音量の絶叫ボイスに合わせて、目の前にグロいビジュアルの顔がどーん!」というような、インパクト重視のジャンプスケアは少なかった印象です。驚いて体がビクッとなる場面は何度もありましたが、少なからず前兆があるので心構えがしやすかったですし、視界を覆うようなびっくり要素も控えめだったように思います。
ビジュアル面でも「生々しさ」や「グロさ」というよりは、「いつの間にかいる」「静かにじわじわと脅かしに来る」「空間そのものの雰囲気の怖さ」といった、和ホラー的な要素が色濃く感じられました。言い換えれば、「うっすらとした恐怖感が常に付きまとっている」ような体験になるので、そのようなタイプのホラーが好きな人には刺さるでしょうし、逆にホラー耐性がない人には、雰囲気だけでもかなり怖く感じられるはずです。
また、その「うっすらとした恐怖心」を高めるのに一役買っていたのが、「歩けるVRホラー」という体験です。この要素は、ホラーゲームや通常のVRホラーとは明確に異なる体験でした。
コントローラー操作ならトリガーを押し込むだけで移動できますが、このVRアトラクションでは、自分の足で歩いて見に行かなければなりません。「歩いて向かう」という身体感覚が伴うことによって、通常のVRホラーにはない恐怖心が感じられていたように思います。
とはいえ、そもそもリアルのお化け屋敷は「自分の足で歩く」ものなので、「自分の足で歩いて探索するVRホラーだから、臨場感と没入感がすごかった」と言うのも、ちょっと変な話かもしれません。どちらかと言えば、「リアルのお化け屋敷さながらの臨場感を、リアルでは実現困難なVRならではの表現と一緒に味わえる」と書いたほうが適切でしょうか。

(明らかに何かが起こりそうな廊下の奥に、トリガーに添えた指をくいっと動かして向かうか、自分の両足を動かして踏み出すか。この違いは大きいと改めて実感しました)
他方でおもしろかったのが、自分の足で歩いての探索に慣れてくる頃には、ある種の楽しさも感じられるようになっていたこと。
当初はおそるおそる探索していたのですが、「何が起こるのかわからないから怖い」という恐怖心と同時に、「何が起こるのかわからないから楽しみ」という高揚感も、途中からは感じられていたように思います。
筆者個人は決してホラーが得意というわけではないのですが(むしろ子供の頃から苦手で避けてきたタイプの人間です)、このアトラクションでは、不思議と徐々に楽しさを感じるようになっていた。その理由を自分なりに考えてみたのですが、「『怪異を撮影する』という目的があったから」という結論に至りました。

(「うわっ!」と声をあげて驚きつつも、とっさに右手を向けてパシャリ。しっかりと怪異の姿を収めた写真が撮れると、ちょっとした達成感があります)
不気味な廃病院でただ恐怖に怯えるだけの受け身の体験ではなく、「怪異を写真に収める」という能動的な目的があったこと。その目的の存在が、少なからず恐怖心を和らげることに繋がっていたのではないか。そう思います。
実際、途中からは「シャッターを押せたのに、うまく撮れなかった……!」と悔しがる余裕も出てきていましたし、「次はどんな怪異を撮れるんだろう」とワクワクしていた部分もありました。体験後にQRコードを読み込むことで見られるフォトアルバムには「撮影した怪異」の数も記載されているので、コンプリートを目指す楽しみもあります。
ただし、そのような余裕があったのも、中盤までのこと。
物語も佳境に差し掛かる終盤には、それまで「うわっ」とか「おぉ」とか「そうきたかー」などとまだ余裕のありそうなリアクションをしていた筆者が、結構な声量でビビる体験が待ち受けていました。あまり書くとネタバレになりますが、「そう来るか!?」と本気で驚いた演出もあり、VR好きとしても体験してよかったと感じています。
ほどほどのマイルドさもありつつ、しっかりと怖がらせるところでは怖がらせてくる。戦慄迷宮ファンはもちろん、普段からVRに親しんでいる人や、逆にVR経験が少ない人にもおすすめしたい。そう感じる体験となりました。

(1階へとたどり着き、かなりの恐怖体験でもあった調査を終えてようやく外へ。人によっては、この景色に見覚えがあるかもしれません)
(※補足として、この手の「歩くVR」は通常のVR体験と比べて「VR酔いしにくい」というメリットもあります。筆者自身、暗い閉所のVR空間では酔ってしまうことも多いのですが、今回は約30分間の体験中、まったく気分が悪くなることはありませんでした)
全長1km、最大50人が同時体験できるVRアトラクション
もう一点、「戦慄迷宮:迷」の特徴として改めて説明しておきたいのが、「全長1km」という空間の広大さです。
当然、東京タワーの地下にそれだけの空間が広がっているわけではありません。プレスリリースによれば、アトラクションを制作した株式会社ABAL独自のXRエンターテインメントプラットフォームによって、限られた物理空間を全長約1kmに及ぶ仮想迷宮へと拡張しているそうです。
しかもこの「戦慄迷宮:迷」に同時に入って体験できる人数は、なんと最大約50人。グループで入場して一緒に探索することもできますし、1人での参加ももちろんOKです。
体験中のストーリーは参加者ごとに個別に進行しますが、グループで入った場合に限り、同じタイミングで怪異が現れるのを見られます。そのため、別の参加者(グループ)同士では「それぞれが違う場所を歩いて、違う怪異を見ている」という状態になるのですが、参加者たちが実際に歩いているのは、スペースの限られた物理空間。当然、探索中に他の参加者とすれ違うことがあります。
限られたスペースに数十人もいれば他の人とぶつかりそうなものですが、そこもしっかりと考慮されています。グループ外の参加者は黒い人影の形で表示され、歩いている場所もリアルタイムで反映されるため、気をつけていればそうそうぶつかることはありません。

(他の参加者の存在を示す、黒い人影。これだけだと可視性が悪いようにも見えますが、足元には円形に光るリングも表示されているため、声や気配とあわせてすぐに気づけます)
少し話がそれますが、この「他の参加者を人影で表示する」というシステムも、おもしろく感じたポイントの1つです。
良くも悪くも「廃病院」という世界観に馴染んでいるビジュアルなので、正直、最初は若干の不気味さを感じていました。しかも参加者はそれぞれ別のルートを進行しているため、お互いが思いもよらぬ場所から出てくることもあります。急に横の壁から出てきた時は、思わず「うわっ」と声を出して驚いてしまったくらいです。
ですが、そうやって周囲の人を認識していたのも最初だけ。慣れてくる頃には「あっ、どうぞどうぞ」「どうもどうも」などと、お互いに声を掛け合いながらすれ違うようになっていました。特に自分の場合は1人で参加していたため、彼らとのやり取りに「人間」の存在を感じて安心感を覚えていた部分もあったかもしれません。

(体験終了後にスタッフさんの許可を得て見せてもらった、“現実”側の戦慄迷宮。あとで調べたところ、東京タワーの「タワーホールB(400㎡)」を使っているようです)
夏の“涼しい”お出かけスポットとして、VRアトラクションはいかが?
ホラーに不慣れなこともあり、それなりに緊張して臨んだ「戦慄迷宮:迷」でしたが、終わってみれば大満足。隅々まで探索するべく1人で歩き回るのもおもしろかったですし、友達や家族と行っても間違いなく楽しめるホラーアトラクションだと感じました。
ちなみに1階のグッズ売り場では、「ホラーは苦手だけど体験はしてみたい」という人向けに怪異の出現頻度が下がる「戦慄除けのお札(ミニステッカー)」が用意されています。また、海外のお客さん向けに英語対応もしているそうで、幅広い層に向けた配慮がされている印象も受けました。
ただでさえ暑い日が続くこの季節、涼しい屋内で、友達や家族と一緒に、体を動かしながらの没入体験を楽しめる――。そう考えると、夏休みのお出かけ先の選択肢の1つとして、VRアトラクションはそれなりに魅力的に映ります。特に体の芯から冷えるような“涼しさ”を味わいたい人は、東京タワーの地下1階へと赴いてみてはいかがでしょうか。
「戦慄迷宮:迷」への扉は、8月31日までの期間限定で開かれています。対象年齢は7歳以上。その他の詳細とチケットは公式サイトをご確認ください。
「戦慄迷宮:迷」開催情報
| 開催日時 | 2025年7月19日(土)~8月31日(日) |
| 営業時間 | 11:00~20:00(最終受付 19:15) |
| 開催場所 | 東京タワーフットタウン地下1階 タワーホールB |
| チケットサイト | https://x.gd/Hd4EN |
| 対応言語 | 日本語・英語 |
| 料金 | 平日:大人 ¥2,750 (税込) / 18歳以下 ¥2,200 (税込) 土日祝:大人 ¥3,300(税込) / 18歳以下 ¥2,750 (税込) (※グッズ購入のみは入場無料) |
| 所要時間 | 30分程度 |
| 主催表記 | 主催:株式会社ABAL・株式会社フジテレビジョン 原案:富士急ハイランド(戦慄迷宮) 協力:(株)TOKYO TOWER |
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……ところで、東京タワーから帰宅し、この記事の大枠を書き終えたあたりのタイミングで、ふと気がついたのですが。
「戦慄迷宮:迷」のVR体験中に撮影した写真が記録された、フォトアルバム。
「1ページ8枚の写真が13ページ……だいたい100枚撮った計算になるのかー」「初見で30以上の怪異を撮影できたのはなかなかの記録なのでは?」などと考えながら見返していたところ、小さな違和感を覚えまして。
2枚だけ、色味の違う写真があるような……?
いや、色味どころか、明らかに解像度が違う。どう見てもVRの廃病院の中ではないし、体験中に撮った覚えもない。VRヘッドセットの誤作動か何かで、デバイスの正面部分に付いている、現実世界側の外部カメラが作動したのでしょうか。
気になってダウンロードしてみると、たしかにそれは、体験後に見学させてもらった物理空間のスペースを撮った写真のよう。
左に写っている人は自分と同じようにVRヘッドセットを装着していますし、右手を前に出してライトで照らすような動作をしています。となればやはり、何かの拍子で外部カメラが作動し、現実世界側を撮影してしまったものだろうな、と思った……のですが。
よく見たら右奥の人、VRヘッドセットをしてなくないですか……?
え……?

















