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VTuber 2019.03.28

国境もバーチャル・リアルもボーダレスに。「直感×アルゴリズム♪」Tacitly 1st AR LIVEレポート

生放送アニメ「直感×アルゴリズム♪」に登場する2人組AIアイドル「Tacitly」のライブ「直感xアルゴリズム♪ Tacitly 1st AR LIVE」が2019年2月16日、横浜のDMM VR THEATERで開催されました。

当日はゲストとしてえのぐ 、東雲めぐちゃん、米米米(マイベイベー)の3組が登場。日本と中国という国境だけでなく、バーチャル・リアルといった生まれの違いすら超えていく本ライブの様子をレポートします。

「直感×アルゴリズム♪」とは

「直感×アルゴリズム♪」はNTTドコモとチャイナモバイル、ミグ文化による日中共同制作の生放送アニメです。2017年8月から第1期、2018年10月から2019年2月まで第2期が配信されていました。


公式サイト より。左がキリンちゃん、右がシーちゃん

日本製AIのKilin(キリン、CV:鈴木みのりさん)と中国製AIのXi(シー、CV:岩井映美里さん 中国語歌唱:シャオ・ウーさん)のふたりからなるユニット「Tacitly」がプロデューサーであるバニーP(CV:劉セイラさん)の元、AIアイドルとして成長していく、というストーリーです。

第2期ではトラブルでキリンちゃんからLinLin(リンリン、CV:法元明菜さん)と呼ばれる人格が登場。シーちゃんがリンリンちゃん、そしてキリンちゃんと共にAIアイドル界の頂点を目指します。

本作の特徴は、日中両国での配信とともに、生で放送されているアニメという点です。冒頭と終わりの部分は予め作ってあるものですが、配信の中心の部分はリアルタイムモーションキャプチャを用いて声優さんが動いた通りにキャラクターが動き、そのまま生で配信されます。さらに、動画配信サイトのコメントやSNSの投稿を踏まえて会話の内容だけでなく、時には物語も変わるというアニメとなっています。

と、作品についての説明はいったん置いておいて、2月16日に開催されたARライブの昼の部の様子をレポートします。

なお、当日のライブの様子はダイジェストでこちらにて公開されています。

生アニメと変わらぬ「Tacitly」にゲスト陣が融け込んでいったARライブ

開演前に登壇したのは、ニッポン放送の吉田尚記アナウンサー。「尻友」(「直感×アルゴリズム♪」のファンのこと)だけでなく、「えのぐみ」(「えのぐ」のファン)、「めぐるーまー」(東雲めぐちゃんのファン)に対しても声をかけ、「世界初の何かが起こる」とこれからのライブへの期待を高めていきました。

暗転しオープニング映像が流れると、「Tacitly 1stライブ、みんないくよー」との声に続いて現れたのはリンリンちゃんとシーちゃんのふたり。まずはハイテンポな楽曲「WA.O.N」と明るくポップな「ミラクルSPARK」を続けて披露しました。

MCではふたりからイメージカラーである青とピンクのコンサートライトを振ってというお願いがあり、ふたりの呼びかけにあわせてそれぞれの色に染まる客席の姿はライブ会場ならではです。


Tacitlyのふたり。左がリンリンちゃん。右がシーちゃん

つづいて、シーちゃんの「みんな、キリンちゃんにも会いたいよね」との声で登場したのは、クラウドにアップロードされたキリンちゃんのデータ。第1期のオープニング楽曲「Sympathy」とエンディング楽曲「記念日」を歌うキリンちゃんにあわせ中国語で歌うシーちゃんも一緒に映し出され、Tacitlyみんなで1st ARライブを盛り上げる様子が見られました。


映像で出演したキリンちゃん(左)のパフォーマンスに合わせるシーちゃん(右)

続いて、バニーPと吉田アナが登壇して始まったのは「包子(パオズ)チャレンジ」。観客が事前に配られたQRコードからアクセスして表示される包子ボタンを押すと……

舞台上にいるTacitlyの2人のところに包子が降ってきて、2人がいかに多く食べるかを競うゲームです……すごい絵だな。


包子チャレンジの様子。左端はコーナー進行の吉田尚記アナウンサー、右端は見守るバニーP

ゲームコーナーで高揚したTacitlyとバニーPの紹介で登場したのは今回のライブのゲストである米米米、えのぐ、東雲めぐちゃんの3組です。米米米はTacitlyの「ASYME DANCE」と自身の「Riceき」、えのぐはTacitlyの「きみがすき」とえのぐの楽曲「ハートのペンキ」、東雲めぐちゃんはTacitlyの「ミラクルSPARK」と自身の「ForYou」といった楽曲を披露しました。


米米米の3人。左から、つや姫ちゃん、ミルキークイーンちゃん、萌えみのりちゃん


えのぐの5人。左から、栗原桜子ちゃん、白藤環ちゃん、日向奈央ちゃん、鈴木あんずちゃん、夏目ハルちゃん


Tacitlyとトークをする東雲めぐちゃん(右端)

Tacitlyのふたりは、えのぐを「先輩」と呼んでいます。(鈴木あんずちゃんと白藤環ちゃんの初お披露は2017年8月11日、「直感×アルゴリズム♪」第1期の初回放映は同年8月17日)。そんな白藤環ちゃんはシーちゃんリンリンちゃんの挨拶用キャッチフレーズを考えてきていて、ふたりにプレゼントしていました(早速夜の部で使われていたようです)。

2018年12月にイベント「Fever Pitch Fes 2nd STAGE@DOCOMO Open House 2018」で電脳少女シロちゃんとともに共演した東雲めぐちゃんとのトークでは、「また会えて嬉しいー」とお互い再会を喜び、お互いが着る制服とアイドル衣装に「私も着てみたいな」とはしゃいでいました。

いっぽうで新米VRアイドルの米米米は、ミルキークイーンちゃんが特技として分身の術を披露。そして時には英語で挨拶をして、Tacitlyの日本語・中国語も含めボーダーレスな舞台になっていました。

ゲストコーナーの後はTacitlyが「Joker’s joke」「涙、はらはら」「フタリセカイ」と立て続けに披露し、生放送アニメのオープニングテーマである「Future Rhythm」でライブを締めました。

もちろんそれでライブが終わるわけでなく、ピンクと青とコンサートライトを振りながら会場に響くアンコールの声に、あらためてふたりが登場。生放送中に尻友の協力で詞が生まれた「SILLY TO MORE!」を会場中の尻友と歌唱し、その姿にシーちゃんは感極まって言葉が詰まってしまっていました。

そして、生放送アニメのエンディングテーマでもあり中国語で我爱你と発音が似ているという「520」を歌い、最後まではしゃぎながら尻友に愛を伝えていました。最後はバニーPも登場して挨拶。「また是非、みんなと一緒にやりたいなと思っています」と再会を誓っていました。

ライブ後には、リンリン役の法元明菜さん、バニーP役の劉セイラさん、シー役の岩井映美里さんが登場。キリン役の鈴木みのりさんやシーの中国語歌唱担当のシャオ・ウーさんのコメント映像も流れ、ストーリーのあれこれや日中同時配信の裏側などを語ってくれました。


舞台に立つ出演者たちと、舞台下でポーズをとる(左から)吉田尚記アナウンサー、リンリン役の法元明菜さん、バニーP役の劉セイラさん、シー役の岩井映美里さん

生アニメとバーチャルタレントの繋がり

「直感×アルゴリズム♪」の前には2014年にNTTドコモ関連のNOTTVほかで配信していた、「みならいディーバ(※生アニメ)」という生アニメがありました。「直感×アルゴリズム♪」は中国のチャイナモバイルに「みならいディーバ(※生アニメ)」を見せたことにより生まれた企画であり、一部スタッフも共通しているため、云わば先輩にあたる作品になります。

ニコニコチャンネル「みならいディーバ(※生アニメ)」より

今回のライブでMCを務め、「みならいディーバ(※生アニメ)」の製作総指揮も担当していたニッポン放送の吉田アナウンサーに話を伺うと、当時は生アニメという企画をあげても取締役に「何を言ってるんだ」と怒られるほど概念すらなかったもののようです。しかしモーションキャプチャ(当時はセガ・インタラクティブ社のDL-EDGE)の採用と、登場人物がラジオのような形で話を進行していくという核を作り、放映に結び付けたということです。そして、今の人気があるバーチャルYouTuberにはラジオ的な面白さがあると指摘します。

さらに、生アニメだけではなくその前に生まれた「直球表題ロボットアニメ」などMikuMikuDanceを用いてプレスコ(台詞などを絵にあわせて収録するのではなく先行して収録)を採用し短期間でCGアニメを制作するという流れは、モーションキャプチャの進化にあわせて本作品も含め今も続いています。それらの作品に関わったスタッフは同時に現在のバーチャルタレントの活躍にも携わっているということです。技術だけでなくスタッフの流れからみても、生アニメはバーチャルYouTuberの源流のひとつであるといえるでしょう。

境界を超える覚悟

とはいえ、「直感×アルゴリズム♪」はテレビアニメの文脈から誕生しています。声を担当する声優さんがいて、キャラクターの思い付きではなく脚本でストーリーが展開していきます。(それに対し、同じCGモデルの体でありながら、声と動きを担当する「中の人」などいない!というところから、多くのバーチャルな人格が生まれ、視聴者がそれを認めているというのも面白いところです。)

第1期ではキリンちゃんが日本語、シーちゃんが中国語しかしゃべれない状態で、バニーPがお互いの言葉をしゃべりながら日中同時放送を行いました。第2期では不思議な道具により言語の壁は超えられるようになったけれど、前述した通りキリンちゃんから別の「リンリン」という人格が現れ、シーちゃんがリンリンちゃんを理解していくというストーリーになっています。つまり、「直感×アルゴリズム♪」は自分のまわりの境界(ボーダー)を超え、他者と共に歩いていこうとするというテーマが常にあります。

筆者が「直感×アルゴリズム♪」というアニメに入り込んだのは、以下に示す第2期11話でした。

生放送アニメ 直感xアルゴリズム♪2nd Season   第11話 覚悟【日本語】

リンリンちゃんが消え、シーちゃんも生アニメの場から立ち去ってしまい、画面にはバニーPしかいない状況が生放送で続く場面です。バニーPは視聴者=尻友に対し、シーちゃんをどうやって説得し、Tacitlyをどうしていくかを問い続けます。画面にはバニーPがあげた二択の選択肢が表示されますが、尻友は時にはその二択を超えて、さらによい選択を書き込み、そしてバニーPがそれを読み上げます

アニメである(そしてオープニングとエンディングのアニメは予め作られている)ことから、ここからストーリーが無秩序に動けるとは思えないでしょう。そうであっても、生アニメパートでTacitlyの最善を問い続け答えを見つけようとするバニーPと尻友の姿に、決められたストーリーの中で動くというアニメの境界を超え、視聴者と制作者の間に生きたものにするという「覚悟」を感じました。

言葉も生まれも超えて

バーチャルな人格がライブを行うこと、そして実在の人物と共演することは今ではそこまで珍しいことではありません。しかしながら今回のライブでは

・Tacitlyの2人とバニーPは「アニメ」の発展系としての「生アニメ」という形をとっていて、声(と動き)を担当する声優さんがいる
・えのぐの5人はバーチャルな世界で活躍するタレント
・米米米のつや姫ちゃん、ミルキークイーンちゃん、萌えみのりちゃんの3人は、それぞれ九重あいちゃん、尾車Rいのりちゃん、鳴戸うららちゃんというVRタレントの3人が演じている
・東雲めぐちゃんはバーチャルSHOWROOMERとして活躍
・MCを務めた吉田アナは生身の体での出演(なお、4月から21歳のバーチャルボディを持つ「一翔剣」として自身のラジオの配信やバーチャルタレントとのMC業をこなしていくとのこと。参考:#よっぴーvTuber計画 )

と、それぞれみなさんがリアル・バーチャルの関係性が異なる形で存在していて、そうした方々が同じ舞台にて共演をしていました。

「直感×アルゴリズム♪」自体が、日本と中国を股にかけ配信され、アニメや楽曲でも日本語と中国語が飛び交う作品でした。さらに今回のARライブでは米米米のミルキークイーンちゃんの英語も混じっています。言語だけでなく、劇中でもキリンちゃんは「キリン」ちゃんと「リンリン」ちゃんという人格を入れ替えることができ、今回のライブでもメインは「リンリン」ちゃんでありながら、クラウドに上げられた「キリン」ちゃんとも共演をしています。

というように今回のARライブでは、言語、人格、どこまでがリアルでどこまでがバーチャルかといった「生まれ」、それらがここまでいろいろ混ざり合っています。どこを基準とすればいいのか、そういったことを考えようとしたのですが、




みんなが仲良くしていればそれでいいじゃん!

NTTドコモの制作プロデューサーである副島義貴さんは、5年前の「みならいディーバ(※生アニメ)」の時は生アニメはもちろん、コラボする相手もVTuberの概念すらなかったと述べていました。それに対し今回の「直感×アルゴリズム♪」では、生アニメでAIアイドルが活躍するという企画も立ちあがり、そしてこのようにさまざまなタレントと一緒にARライブが開催されました。

当日出演したゲストも、イベント後のそれぞれの配信やTwitterで本ライブの感想を述べ、今後の交流も期待していたようです。日本と中国をボーダレスにしたTacitlyのふたりが、何がバーチャルで何がリアルなのか、そういったものもボーダレスにしてくれた、そう感じた今回のARライブでした。

生アニメが終わっても……

生アニメとしての「直感×アルゴリズム♪」(第2期)は2月に終わってしまいましたが、毎週バーチャルキャスト内にて「直感アルゴリズム出張版 麟麟家-LinLin HOUSE-」が配信されていて、さらに4月中にパワーアップした形でリニューアルするそうです。

また、4/28(日)には「尻友感謝祭2019」が新宿ロフトプラスワンにて開催されます。

生放送アニメ「直感×アルゴリズム 2nd Season」全17話終了記念トークイベントとして「尻友感謝祭2019」を開催します。日本・中国の尻友の皆さまへの感謝を込めて制作に関わっている福原プロデューサー、坪田監督をはじめ制作スタッフ陣と尻友の皆さまのアットホームな交流会です。ここでしか聞けない直感よもやま話や、尻友の皆さまから作品に対する感想や意見などこの機会に是非尻友の皆さまの”生”の声を聞かせてください!

司会:福原慶匡 総合プロデューサー
出演者:坪田塁 監督、各セクションスタッフ、プロデューサー、技術者、音楽クリエイター等予定

詳しくはこちらをご覧ください。
http://project-algorhythm.com/special/2019/02/special1.php

と、彼女らの活動はまだまだ続いていくようです!

<関連リンク>
直感×アルゴリズム♪ 公式サイト
ニコニコチャンネル 直感×アルゴリズム♪
『直感xアルゴリズム♪』Tacitly 1st AR LIVEダイジェスト@DMM VR THEATER YOKOHAMA

©NTT DOCOMO, INC. ©MIGU Co., Ltd. ©Gugenka® ©岩本町芸能社 ©pulse ©Miracle Pro Inc.


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