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ゲーム・アプリ 2019.06.01

ホロのモフモフが目の前に! 「狼と香辛料VR」体験レポ&原作者・支倉凍砂インタビュー

6月3日、同人サークルSpicy Tailsとジェムドロップ株式会社の共同開発によるVRアニメーション狼と香辛料VRがリリースされます。人気ライトノベル作品「狼と香辛料」の物語をVR化した作品で、リリース当初はOculus Rift/GoやHTC VIVEに対応。今後Oculus QuestやPlayStation VR、Nintendo Switchにも対応予定です。

今回、MoguLiveではリリースに先駆けて「狼と香辛料VR」を体験。また原作者の支倉凍砂氏にインタビューを行い、本作の魅力について語っていただきました。

VRで出会うホロのかわいらしさから目が離せない!

原作の「狼と香辛料」は2006年に発表されたライトノベル作品です。行商人のロレンスと獣耳の少女ホロが、さまざまな街で商いをしながら旅する物語で、本格な経済活動が物語に深く関わってきます。2007年には漫画化・アニメ化が発表され、大人気作品に。原作小説は、2019年1月10日に21巻目となる「狼と香辛料XXI Spring LogIV」が刊行され、累計発行部数は420万部を突破。多くのファンから息長く愛されている作品です。

そんな「狼と香辛料」の魅力のひとつは、ヒロインであるホロの存在。イラストレーターの文倉十氏がデザインした“狼の耳と尻尾を持った少女”は、発表当時から人気のキャラクターに。2018年9月には有名VTuberの「バーチャルのじゃロリ狐娘youtuberおじさん(ねこますさん)」と、VR上でコラボしたことでも話題となりました。

また、貨幣経済が複雑にうごめく中世ヨーロッパ世界のような舞台も印象的で、あの世界で旅をしてみたいと思っていたファンも少なくないはず。今回はVRの世界で、そういった魅力がどのように再現されているのかに注目しながら体験しました。

物語の冒頭。目の前に広がるのは、雨漏りしている薄暗い水車小屋。部屋の内装を見回していると、入口の方から2人の声が近づいてきます。

登場したのは、ロレンスとホロ。こちら側に歩み寄ってきたと思ったら、なんと自分の姿がロレンスと一体化! ホロがイスに座った自分に親しく話しかけてきます。

部屋の中をちょこまかと動きながら、こちらに語りかけてくるホロ。

スクリーンショットでは若干伝わりづらいですが、この写真のシーンでは目と鼻の先ほどの近さで話しかけてくるので、かなりドキッとします。

特に印象的だったのは、ホロの尻尾の動き。モフモフとした毛並みが彼女の動きに合わせてきれいに揺れ動くので、見惚れてしまうはず。

口元から犬歯をのぞかせながら、こちらに微笑んでくれるホロのかわいさは説明不要。ロレンスはいつもこんな至近距離で彼女と接しているのかと驚かされました……。

また部屋の中には、微かに生活感の残る小道具が散らばっています。部屋の中に何が置かれているかを観察するだけでも充分に楽しめるのがポイントです。

物語の中盤には、目の前の景色が一変する特殊な演出もあり、本当に「狼と香辛料」の世界に自分が入ったかのような没入感を体感できます。何より、ホロの一挙手一投足が細やかに再現されるため、小説やアニメとはちがったリアリティが生まれているように感じました。ストーリーに浸るもよし、舞台をあちこち見回すもよし、ホロを凝視し続けるもよし。自在にVR空間の世界を堪能できる作品といえます。

支倉凍砂インタビュー:アニメでも演劇でもない新しい表現“VRアニメ”とは?

「狼と香辛料」の著者である支倉凍砂氏は、これまで、漫画「ビリオネアガール」の原作やノベルゲーム「WORLD END ECONOMiCA」の制作を手がけるなど、幅広く活躍されています。2017年3月には、VRアニメ「Project LUX」をリリース。全編65分以上のマルチエンド式VR長編アニメーションとして、大きな話題を呼びました。

「狼と香辛料VR」は2018年7月に制作が発表され、同年11月に開発資金調達のためのクラウドファンディングを開始。スタートから2時間で800万円もの資金が集まり、目標金額をやすやす超えるという快挙を達成しました。今回は、支倉凍砂氏に「狼の香辛料VR」の開発経緯や魅力についてお聞きしました。

――支倉さんがVR分野に興味を持ったきっかけをお聞かせください。

支倉凍砂氏(以下、支倉):
2013年に、理化学研究所の藤井直敬先生の著書「拡張する脳」(新潮社)を読んだのがVRを知ったきっかけです。その本で「こんな世界があるんだ!」と興味を持って。読んだ後にすぐに理研に連絡して、すぐにVRシステムを体験させてもらいました。

当時は「もしかしたらアニメのような二次元の世界に入れる日が来るのかも!」と期待していたことを覚えています。ただ当時はVR技術が過渡期だったため、スタンダードに扱える機器が少なく、3年ほどは業界の様子全体を眺めていましたね。

――2017年に「Project LUX」を発表されましたが、なぜVR上でドラマ仕立ての作品を出そうと思ったのでしょうか?

支倉:
2016年ごろから一般人でも扱えるようなVR機器が登場し始めたので、自分もこれを使って作品を作ってみたいと考えていました。

当時はVRコンテンツ自体がゲームやアート的な作品がメインで、物語を追えるような作品が少なかったんですね。私としてはバーチャル世界で二次元のキャラクターに会える面白さこそ広まってほしいし、クリエイターたちにもそういう方向性の作品を作ってほしいと思っていたんです。私自身が現実より二次元の世界に行きたいと願う人間なので(笑)。

そこで、自分が先駆者的にジャンルを開拓できればいいなと思って「Project LUX」を制作しました。もう2年前の作品ですが、現在も購入してくれる方々がいるので発表してよかったと思っています。


(「Project LUX」)

――その後「狼と香辛料VR」の開発を発表されましたが、制作の経緯はどのようなものでしたか?

支倉:
実際の制作は2018年5月から1年ほどでしたね。私の仕事はシナリオ執筆とスタッフさんを集めるのがメインでした。モデラーさんや演者さんなどは前作から引き続き同じ方に担当していただいて、システムに関してはジェムドロップさんにこちらからお声を掛けさせてもらいました。

「Project LUX」の制作を経験したおかげで、VR業界のどこにお声がけすればいいのか、ある程度分かるようになっていたので、人集めに関しては比較的スムーズにできましたね。

――2018年11月にクラウドファンディングを実施されますが、始めた目的はどういったものでしたか?

支倉:
もちろん開発のための資金集めが必要だったこともありますが、お祭り感覚で参加してもらえればいいなと思っていました。まだVR業界自体が成熟していないので、技術の発展に期待を寄せる人たちは多いんですよね。そういった人たちと楽しく盛り上がれば、作品が完成したときも、より喜んでもらえるのではないかと。

――制作が決まった時点で、システム開発を担当したジェムドロップとはどのような打ち合わせがありましたか?

支倉:
もともとジェムドロップさんは同人ゲームの開発サポートやVRゲームの開発に携わっていた経歴がある会社さんだったので、「Project LUX」のような作品を作りたいと話を持ちかけた時もすぐにコンセプトを理解してくれました。打ち合わせのときは“VRらしさをアピールするために3D的な演出を取り入れたい”という打診をしましたね。今回の作品では、そうした演出が一部で見られるようになっています。

――今回、小屋の中に雨が漏れてきたり、焚き木の火が辺りをぼんやり照らしたりといった細かな演出が色々なところに施されているのが印象的でした。

支倉:
あれはジェムドロップさんの背景スタッフさんが本当に力を入れてくれました。私個人のお気に入りポイントは、ホロの尻尾の質感ですね。CGアニメーターの榊原さん(※榊原圭介氏)が直接入力で細かく動くように作ってくれたんです。どんなポーズでもリアルな動きになっていて、非常に素晴らしかったですね。また服装が瞬時に入れ替わるシーンの演出も、こちらの意見を汲み取ってもらえていて、とてもうれしかったです。


(ロレンスも夢中になるホロの尻尾)

――物語の世界をVRに再現するのは難しい点もあるように思いますが、今作では苦労されたことはありましたか?

支倉:
今作はそういった苦労はあまりありませんでしたね。イメージボードをイラストレーターのよー清水さんに描いてもらったり、アニメ作品の美術を参考にしてもらったりしたので、世界観づくりに関してはスタッフともかなり共有できていたと思います。その点でも今回は、スタッフの方に恵まれたという印象です。

――VRアニメ作品ならではの特徴はどういった点にあると思いますか?

支倉:
アニメのように細かなカットシーンがあまりないので、キャラクターの動きが流れるようなアクションになる点は特徴的だと思います。動き自体は演劇に近いのですが、現実のものと雰囲気は大きく異なりますね。そういう意味でVRアニメは、演劇ともアニメともいえない第3の新たな表現といえるかもしれません。また視聴者の側は自由に視点を動かせるので、二次元に入ったかのような臨場感を味わえます。こういった魅力がどんどん広まってくれればいいと思っています。

――VRコンテンツに関して、今後どのような方向に発展していくと考えていますか?

支倉:
おそらくVR業界は今後「ソードアート・オンライン」のようなMMORPGを理想として、世界観をリアルに体感できる方向に進化していくと思います。例えば「狼と香辛料」の街を荷馬車で旅して、貨幣やアイテムを別の世界観の作品に持ち越せるようになったら面白いですよね。

また現状ハードウェアの都合上、VR世界で可能な演出はかなり制限されているのですが、よりリアルで幻想的な演出ができるようになるのを期待しています。個人的には、巨大な建造物が自由に動くような作品を作ってみたいですね。

VRアニメに関しては、アニメ業界の人たちに「狼と香辛料VR」のようなやり方が浸透すれば、より面白い方向に進化するのではと思っています。CG専門アニメーションの会社が続々参加するようになれば、想像もしなかったブレイクスルーが起こるでしょうね。

VRアニメというフォーマットは他のVRコンテンツに比べて「何を楽しめばいいのか」が分かりやすいので、視聴者の側も安心して視聴できると思います。今回のような作品がますます増えてくれることを願っています。(了)

 

ソフト情報

タイトル

狼と香辛料VR

発売日

Oculus Store(Go、Rift)、Steam:2019年6月3日
Oculus Store(Quest)、PlayStation 4、Nintendo Switch:2019年夏予定

価格

Oculus Store、Steam:2,570円(税込)
PlayStation 4、Nintendo Switch:未定

対応プラットフォーム

Oculus Store、Steam、PlayStation 4、Nintendo Switch

対応デバイス

Oculus Store:Oculus Go、Oculus Quest、Oculus Rift
Steam:Oculus Rift、HTC VIVE
PlayStation 4:PlayStation VR
Nintendo Switch:Nintendo Labo: VR Kit

購入・詳細ページ

Steam版はこちら

公式Webサイト

http://spicy-tails.net/saw-vr/

企画・シナリオ

支倉 凍砂

開発

ジェムドロップ株式会社

配信元

Oculus Store、Steam:Spicy Tails
PlayStation 4、Nintendo Switch:ジェムドロップ株式会社

 

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