「行けるものなら行ってみたい」と思う一方で、遠くて酸素がない上に、特殊な訓練も積まないといけないらしい――そんな一部の限られた人だけが行ける「宇宙」は、普通に生きていたら憧れるだけの特別な場所です。
いつかの未来、ロケットに乗って旅行気分で月に出かけることができたらどれほど素敵でしょうか……。
今すぐできます。VRならね!!!!
憧れるなら体験だけでも! と、今回向かった先は「Space Travelium TeNQ(スペーストラベリウムテンキュー)」です。東京都内で酸素もたっぷり、特殊な訓練は必要ありません。
「Space Travelium TeNQ」は、2024年11月に東京ドームシティにオープンしました。“宇宙旅行”をテーマに、展示やリアルな月旅行が楽しめるVRを体験することができます。何度か耳にしたことはあったものの、今回が初めての訪問となりました。
地球に住んでいる以上は身近な存在であるはずの「宇宙」なのに、一体どんな内容なのか想像がつかない! 難しい展示で楽しめなかったらどうしよう……実はそんな不安がありましたが、心配は一切不要です。大人も子どもも楽しく学べること間違いなしの、まさに「宇宙エンターテインメント施設」でした。
今回はVRに限らず、「Space Travelium TeNQ」の施設全体を体験取材してきました。写真満載のレポートをお届けします!
そもそも「宇宙エンタメ施設」とは?
公式サイトに記された「宇宙エンタメ施設」の文字。宇宙にまつわる様々なものが楽しめそうですが、実際にどんな場所なのか気になりますよね。まずは、「Space Travelium TeNQ」の施設について紹介します。
施設は10のエリアに分かれており、特に展示エリアはターミナルそのもの! 宇宙港を思わせる空間には、テーマである“宇宙旅行”をリアルに楽しむための工夫が散りばめられています。
宇宙への旅は「エントランス」からはじまっていた
チケットカウンターを抜けて、いざ入場!ここから宇宙への旅が始まります。
「スペースターミナル」で宇宙を知ろう
エントランスを抜けると「Space Travel Center」の文字が。頭上にはゲート案内の看板が光ります。ここは、宇宙港内にあるトラベルセンターをモチーフにした場所のようです。
行き先の情報を調べておくことは、旅行を楽しむ秘訣ですよね。「スペースターミナル」には、宇宙にまつわる基礎知識や未来の宇宙旅行についての展示があり、月への出発に向けた事前情報を知ることができます。決まった順路はなく、フロアを自由に歩いて好きな展示から楽しめるのがポイントです。
特徴的なのは「見るだけ」の展示ではないということです。詳しい見どころは後述しますが、「Space Travelium TeNQ」では施設全体を通じて「手で触れる・耳で聴く・鼻で嗅ぐ」など、感覚を活用した体験型の展示が多く見られます。
太陽系の天体上での重力の違いを荷物の重さによって体験できる展示
展示の中には、「カスタムテンキュートラベルブック」のコーナーも。フロアの随所に設置されたカードの中から興味があるものを選び、自分だけの「旅のしおり」が作れるというもの。展示を回りながら、このあと出発する宇宙旅行へのイメージを膨らませるキーアイテムになっています。
顔写真を撮影してVR用のアバターを作成!?
展示を観た後は、「スタンバイルーム」へ移動します。月へ旅立つ準備として、チケットの発券と同時に「VRアバター」の作成ができます。宇宙旅行はVRでの体験となるため、注意事項の確認や手荷物の預け入れも忘れないようにしましょう。
宇宙港らしい様相のチェックインカウンターで、モニター画面の指示に沿ってチケットの発券を行います。その際、顔写真を撮る工程があるのですが、どうしてそうなっているか分かるでしょうか……? 実は、撮影した顔写真がVRアバターに反映されて「まるで自分が宇宙服を着ているようなアバター」で月へ旅立つことができるのです。
宇宙服のデザインは4種類(右下は車椅子用アバター)から選べます
準備ができたら、「ソラベルライン」から出発です! スタッフの指示のもとVRヘッドセットを着用すると、チェックインカウンターで作成したアバター姿に早変わり。いよいよVR宇宙旅行が始まります。
これまでにない臨場感! VR宇宙旅行「THE MOON CRUISE」
お待ちかねのVR宇宙旅行!VRと言えど、やはり旅行は思い切り楽しみたいところです。
さて、ここでどんな体験ができるのかと言えば……かなりリアルな月旅行です。実際に広い空間を自分の足で歩き回りながら体験できるフリーローミングという形式になっているため、立体映像を鑑賞するだけのタイプとは没入感が全く違います。コントローラーを使わず両手だけで操作できるハンドトラッキング方式のため、VRの操作に慣れてない人でも大丈夫。さらに、テーマパークさながらの臨場感を味わえる工夫が凝らされています。
まず、VRヘッドセットを付けてエリアへ入ると、大きなロケットがお出迎え! ロケットに搭乗して月へ向かいます。視界にはいつでも起動できるカメラボタンがあり、好きなタイミングで写真撮影が可能です。インカメラへの切り替えもできるので、自撮りもできちゃいます。
ロケットの座席に座って……(この際、実際に座った体勢になります)
ロケットが出発すると、音と座席の振動で本当に機体が動いているかのような臨場感に包まれます。同時に乗り込んだ搭乗員からも「キャー!」という声が上がります。視界に広がる地上の景色はぐんぐん遠ざかり、あっという間に宇宙へ到達します。
着陸船の扉を通って降り立つと、広大な月面の景色が!遠くに見える地球は非日常で、「宇宙からはこんな風に見えるのか」と実感します。
月面には、ギャラリーや体験コンテンツがあります。月の重力を体験できる乗り物(ルナホバー)や、地球をバックに記念撮影できるフォトスポットも! まさに宇宙旅行です。
ローバーに乗って月面基地へ移動。
近未来な雰囲気たっぷりの基地では、月にまつわる展示が並びます。観るだけではなく、VR上で自分の手を使う体験型の展示もありました。
他にも月面基地では、大きなクレーターを眺めたり「アポロ計画」で印象深いアメリカ国旗の立つスポットを横切ったりできます。
どんなに楽しい旅行でも、名残惜しくも帰らないといけません。ローバーへ乗り込み、帰還するためのロケットまで移動します。移動中には、なんと月面日食が……! 地球からの視点とは違う、太陽と地球が重なる貴重な瞬間を体験することができます。赤く染まる幻想的な月面の景色は、きっと生きているうちにここでしか見られないかもしれません。
帰り道の寂しさもありますが、実際の月旅行では実現し得ないだろう滞在時間と充実ぶりに、バーチャルで体験できたことへの感謝がこみ上げます。
全体で20分ほど体験し、大満足の宇宙旅行となりました! 月にまつわる展示で知識を深められるだけでなく、月から地球を眺める視界の新鮮さや月面を歩き回れる自由さには、終始感動するばかりでした。慣れない環境でもあったので「またじっくり来たい……!」と思えるのも、旅行らしくて良かったです。
一緒に月へ行った搭乗員たちの様子から、2人以上で体験すると旅行らしさをより楽しめそうです。複数人ならお互いのアバターに映し出された顔を見合ったり、フォトスポットで並んで記念撮影もできるでしょう。撮影した写真はQRコードからダウンロードすることができるので、思い出もばっちり残せます。次に月へ旅立つ時には、友人を連れてロケットに乗り込みたいと思います!
※VRは7歳未満のお子様は体験できません。その他の注意事項等は公式サイトにてご確認ください。
ゲーム感覚で遊んで学べる「体験型」展示
VR宇宙旅行の他にも、おすすめしたいポイントをご紹介します。メインの展示エリアである「スペースターミナル」では、ゲーム感覚で楽しめるコンテンツが3つありました。
①プラネットデザイナー
大きなモニターに映し出された惑星系は、なんと来場者がデザインしたもの。手元にあるタブレットで、お絵描き感覚で星をデザインしてモニターに映すことができます。デザインした星にはランダムで名前がつけられ、宇宙にまつわるコラムも読めます。作った星は一定期間モニターに表示されるほか、複数人で同時にプレイできるので、家族や友達と一緒にオリジナルの惑星系を作るとより楽しめそうです。
オムライスのイメージでしたが、真っ赤な顔の星になってしまいました……
広報担当さんと2人で「プラネットデザイナー」に挑戦してみたところ、生まれた2つの星はそれぞれ「恒星」と「惑星」になり、それらについて知識を深めることができました。遊びながら自然と学べるので、親子連れにもおすすめしたい展示です!
②船外活動ミッション
「宇宙船の破損を修復する」という船外活動を体験できるコンテンツです。ハンドトラッキングを活用し、ミッションをこなします。手を伸ばすと、モニター画面には実際の手に合わせて動くハンドアバターが表示されます。画面内で道具を掴み、修復を行うのは大人でも少しコツがいる難易度です。ミッションをクリアするとランクが表示され、ゲーム感覚で船外活動を体験することができます。
普段からVRに親しんでいる身として、ハンドトラッキングを活用した体験型展示に思わずテンションが上がりました……! 展示の様子を見ていると、小さい子でもスムーズにプレイできているようです。ハンドトラッキングの直感的な操作感が、「なんだろう?」と興味を持った瞬間を逃さない工夫に繋がっているようです。
③ジタバタグラビティ
ゲーム感覚で楽しめる展示として「ジタバタグラビティ」も見逃せません。モニター前に踏み台が並ぶこちらでは、最大2人で体験できます。台の上で足踏みをすると、モニター内のアバターが上に動きます。各ステージは太陽系でお馴染みの星になっており、それぞれの重力に応じてアバターの動きやすさが変わります。地球に比べて重力の小さい火星では少しの足踏みでアバターが上がり過ぎてしまったり、重力の大きい木星では思い切り足踏みをしないとアバターを動かすことができません。
足踏みで操作することによって、全身で重力の大小を体感できるのが特徴です。実際にプレイしてみると、なかなか難しい……というか、軽いスポーツになっていませんか!? 最終的に、重力が大きい「太陽」ではどんなに頑張って足踏みをしても歯が立ちませんでした。
期間限定! 企画展示エリアもお見逃しなく
期間限定の企画展示が楽しめるエリアもありました。取材時には、第一回目の企画展示となる「レゴⓇスペース展 in TeNQ」(2025年5月18日まで)が開催されていました。3〜6ヶ月ごとに入れ替わるという展示内容は、TeNQならではの切り口できっと興味を惹かれるはずです。
VRエリア以外にも!ラウンジやショップも充実
VRエリア以外にもラウンジや企画展示エリア、ショップも充実しています。VR宇宙旅行から帰還した先にあるのは、「ラウンジQ」です。慣れないVR体験の後に一息つけるスペースとして、本棚やパズル・占いなどのコンテンツが並びます。カフェも併設されているので、飲み物や軽食を片手に、月旅行の思い出を振り返るのにぴったりです!
宇宙や星をテーマにしたドリンクやフードメニューは写真映えも抜群!
楽しい思い出を持ち帰るために、お土産もチェックしたいところ。ミュージアムストア「TeNQ 宇宙ストア」では、宇宙をテーマにしたグッズが取り揃えられています。特に、充実した宇宙食コーナーは必見です。宇宙食にまつわる展示もあったので、実際に手に取れるとなると、つい買って食べてみたくなります。
楽しむコツは「勇気」にあり!? TeNQを遊び尽くす為に
ご紹介したように「Space Travelium TeNQ」では、見るだけにとどまらない体験型展示やフリーローミングでのVR体験が特徴です。その自由度の高さゆえに、「次に何をしたら良いのだろう?」と立ち止まる瞬間があるかもしれません。特に、VRは日常での体験とは異なるため、最初から全てのコンテンツを観るのは至難の業です。
そんな「Space Travelium TeNQ」を思いきり楽しむコツは、ズバリ「勇気」です!
順路の決まっていない展示では、まず勇気を出して動いてみましょう! 手で触れ、耳で聴いて、鼻で嗅ぐ……どれも自主的に動かないことには体験し得ないものばかりです。VR宇宙旅行では、見渡す限りの暗く広い景色に圧倒されてしまうかもしれません。そこで、勇気をもって「未知なる宇宙を探索する気持ち」で臨むと、意外な発見や楽しみ方に気付けるはずです。感覚を活用した様々な体験を経て、TeNQを後にする頃には「本当に旅行を楽しんだかのような充実感」に包まれていることでしょう。
徹底体験レポートと言いつつ、今回紹介した見どころは一部に過ぎません……実際に足を運んでみないことには、「宇宙」が秘めるコンテンツ力は体験できないでしょう。「Space Travelium TeNQ」は「ちょっと宇宙までお出かけしよう」が叶う場所です。ぜひ一度、『夢の宇宙旅行』へ出かけてみてはいかがでしょうか!