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VR動画 2017.12.23

【インタビュー】SODに訊く・前編「VR男優という特殊なジャンルが生まれている」

ビデオデッキ、インターネットが流行した時、そこには“エロ”があったように、VRでもアダルトコンテンツが静かな人気を集めています。国内最大のVRアダルトコンテンツプラットフォーム「DMM VR動画」は、初年度売上が20億円を超えたことをMogura VRへのインタビューで明かし、VRコンテンツによる事業でも幸先の良いスタートを切っています。

では、プラットフォームにコンテンツを提供するメーカー側は、これまでに一体どのような工夫を行い、アダルトVRコンテンツを制作してきたのでしょうか。AVメーカー大手でVRコンテンツも積極的に制作するSODクリエイト株式会社の制作部プロデューサーの金井陽平氏、プロモーション部のA氏(仮名)にアダルトVR制作の裏側から今後の展開について聞きました。

海外からの観光客もSOD VRのためにビデオ個室に来る

──ソフト・オン・デマンド(SOD)さんは、個室ビデオ店「SOD VR」と配信用のアダルトVR作品を制作されています。まずは店舗での取り組みについてお話を聞きたいのですが、店舗に来店されるお客様は、やはりVRHMDを持っていない方であったり、初めてVR体験される方が多いのでしょうか?

A氏(以下、敬称略):

「SOD VR」に来られるお客様は「VRは初めて」という方が多い印象です。また、秋葉原にある店舗には海外のお客様も多く来られます。

──海外の方が個室ビデオに来られるのですか……?地域ではどの辺りの方々が来られるのでしょうか。

A:

海外の方は、中国、香港、台湾といったアジア圏からの方々が多いですね。日本に観光で来られた皆さんです。

──アジアの観光客には「SOD VR」が知られていると……。

A:

日本に観光で来られる、特に中国の方々は、写真をSNSに投稿することも多いので(笑)。SNSを通して「SOD VR」の存在を知った方が多いようですね。

金井陽平氏(以下、敬称略):

元々、中国や香港、台湾ではSODが有名というのもあるかなと。現地メディアでも「SOD VR」が取り上げられたようですし。

──日本だけでなく海外メディアでも取り上げられたのですか。たしかに日本のAVは海外でも人気があります。

金井:

特に台湾ではSODの名前を出すだけで「おおおぉぉーーー!」と言われるくらい人気があるんですよ(笑)。おそらく街に「SOD」と書いてある看板を見つけると面白くなってしまい、つい写真を撮ってしまうというのもあると思います。

VRゴーグル選びで挫折する人々がいる

──なるほど。先ほどのお答えで「VRは初めて」という方が多いとのことでしたが、今はスマホでもVRのアダルト動画を見れると思います。やはりまだスマホVRは一般に知られていないということなのでしょうか。

A:

スマホでVR体験できるというのがまだ知られていないというのもあるのかもしれませんが、「初めてのVR」という方の中にはスマホにVRコンテンツをダウンロードしている方もいらっしゃいました。では、なぜ「VRは初めて」なのかというと、どのVRゴーグルを買えば良いのか迷ってしまい、結局VR動画をダウンロードしたけど、VRは未体験だと。VRに興味はあるけれども未体験という方もいます。

──VRゴーグルがネックになるのですか。

金井:

そのようです。実際に店舗でVR体験したお客様にヒアリング調査をしたのですが、Amazonなどでたくさんの多種多様なVRゴーグルが販売されている現状で、お客様はどれを買えば良いのか迷ってしまい、もう面倒だから「VRを諦めた」という方もいるという調査結果が出ました。

A:

他には、数万円以上の高価なVRヘッドマウントディスプレイしか知らないので、VR未体験という方もいました。

金井:

あと調査でお客様から多く回答を頂いたのが「VRゴーグルを装着してさらにヘッドホンしてAVを見るのは、独身か鍵付きの自分の部屋を持って無いとできないよ」というものでした。

──その指摘は分かります。視覚と聴覚がAVの世界に没入していると、家族がいる家庭では厳しいところがありますよね。

金井:

その点、個室なら誰にも気兼ねなくVRを楽しめるということなのです。お仕事の休憩時間や合間の時間を上手に利用されている方も多いようです。

──なるほどです。「SOD VR」もオープン当初は数時間待ちというくらい大人気でした。今、一番人気のあるお店では月に何人くらいの方がVR体験をされるのでしょうか。

A:

一番大きい店舗でVRを見にくるお客様は月に約9,000人です。

──月に9,000人がVR体験されるというのは良い数値なのでしょうか。また、VR体験は新規のお客様が多いのでしょうか。

A:

月に9,000人のお客様が来店されるのは、これは良い数値です。特に来店者数自体が減っていた店舗がVRを導入したことで、客足を回復させているケースもあり、VR導入で非常に良い効果が出ています。実績が出てきているので、それに伴って店舗へのVR導入が進んでいます。都市型以外の郊外の店舗にも導入が進んでいますよ。郊外の店舗では一体型のVRヘッドマウントディスプレイだと、VRを導入しやすいですね。また、VR体験者の新規/既存顧客の割合は、半分半分といったところです。

──新規が50%ということは、リピーターが50%もいるということですよね。

A:

そうですね。リピーターになって頂ける要因として、もちろんVRにご満足頂けたというのもありますが、私たちもVR向けの作品を毎月新作をリリースしているというのも理由として挙げられると思います。

──今は店舗だと全部で何作品ほど揃っているのでしょうか。

A:

110作品程です。

──110タイトル……。

A:

今はSODクリエイトで毎月新作20本程を撮影しています。そこから店舗に入ってくる新作は毎月6本程という体制ですね。

今、SODではVR女優・VR男優・VR監督、様々なジャンルが生まれている

──最近のソフト・オン・デマンドさんの新作だとVR専門の女優さんの作品もありますよね。

金井:

香坂紗梨さんですね。彼女はVR専門の女優さんです

──VR専属の女優さんというのは、とても面白いなと思いました。

金井:

私たちは、これからどんどん新しいことをしようという取組の一環です。先ほども言いましたが、現実にある問題で「VRゴーグル選びで挫折」した方々がいます。でも、通常のDVDや配信などでは見られない、VRでしか見られない女優さんがいれば、そしてその女優さんの人気に火が付けば、もうVRで見るしか無いですよね。「VR体験の面倒さに挫折しそう人」に、VRを最初の1回を体験してもらうための起爆剤として、VR専門女優さんがいたら面白いのではと考えた次第です。

──それは確かに面白い発想ですね。

金井:

VR専属の女優さんの話題に関連してなのですが、実は今、AV男優のジャンルにVR男優という特殊なものが出てきているんですよ。

──VR男優ですか……。VR男優というのは一体どういう方々なのでしょうか。

金井:

VR男優って変な話だと思いますよね(笑)。まず、VRでは視聴者が本当に女優さんと行為をしているように感じられるように、男優と視聴者自身がの体をリンクさせて合わせるような作品がほとんどです。

──例えばVRゴーグルで下を見ると自分の体が映っているように男優さんが見えるものですよね。

金井:

そうです。そういう画を撮るためには、男優さんの顔の位置にカメラを置かなければいけません。すると男優さんは、自分の顔が映ってもいけないですし、カメラに顔が当たると撮影の邪魔になります。顔をひねってカメラに当たらないポジションをキープしつつ、自分の体は通常の真っ直ぐな体勢でいなければいけません。

──キツそうな体勢ですね。

金井:

さらに顔をひねっていると、視角的に女優さんが見れない状態になるのですね。非常に厳しい体勢をキープしなければいけない、しかし女優さんは見ることができない。そのような状況下で男優さんは興奮状態をキープして行為を成立させなければいけないのです。VR男優は空想で興奮状態を長い時間キープしなければいけない訳です。これはもうある意味特殊技能です。しかも、視聴者の方の没入感、現実感を上げるために、カメラに加えてマイクも顔の近くにあります。

──マイクが顔の近くにあるということは、男優さんの声を拾ってしまう訳ですね。

金井:

その通りです。しかもSODの作品はバイノーラル録音(※)をしています。行為の最中に男優さんがつい「ハアハア」と声を漏らしてしまうと、作品を見ている人はいきなり自分の耳元で男の「ハアハア」という声が聞こえてきてしまうのです。これをやってしまうと作品のレビューで、物凄く怒られてしまいます。

※音場を含めて再現するステレオ録音方式の1つ。通常の録音よりもその場にいるような臨場感を与えることができる。

──確かにVR体験中に、いきなり自分でない男性の「ハアハア」という声が耳元で聞こえたら、没入感どころではないですね。

金井:

しかも、男優さんが勝手に体を動かしてしまうと、それも視聴者からしたら「自分は体を動かしていないのに勝手に体が動いたので没入感が削がれた」と、レビューで厳しいご指摘を頂戴してしまいます。つまりVR男優は、顔をひねった厳しい姿勢、女優さんが見れない状態、小さい声でも漏らしてはいけない上、体を動かしてもいけないという厳しい状況下で興奮状態を長時間キープするという、普通のAV男優とは異なる特殊な技能を有している訳です。今、SODではVR作品で普段のAV男優とは違うこういった方々、VR男優を使っています。人数が多くいるわけでもないですし、育成にも取り組んでいます。

DVDが出始めた頃のような現象と熱気

──VR女優がいて、VR男優がいて、ということであれば、VR監督もいるのでしょうか。

金井:

SOD社内の監督で、VR作品を撮影したことがあるのは7名です。SODの外部の監督を含めると、これまでに約15名の監督でVR作品を制作しています。SODのVRチームに所属していてVR作品をメインとする監督、通常の作品に加えてVRも撮影するという監督がいます。監督は、VRというジャンルに自分から興味を持った方もいれば、私たちから「VR撮ってみませんか」と誘う形で集まった方もいます。

──内部に7名もVRを撮影できる監督がいるのですね。これからVR作品を撮影する監督は増やされるのでしょうか。

金井:

昔のDVD初期の頃は「この監督の作品だから」という理由で購入される方も多かったのですが、今の時代は監督ではなく女優さんを理由で購入される方が多いです。そういう時代の中、VRでは「監督買い」という面白い現象が起こっています。例えば、SODのアダルトVR監督の矢澤レシーブ監督にはすでにファンが付いていて、新しいVR作品を出すと、すぐに売れるという現象が起こっています。最近だと矢澤レシーブ監督の他に、森川圭監督、まちるだ監督も人気です。VRの撮影が難しい分、通常の作品よりも監督の個性が反映されるという傾向があります。そういう傾向もありますので、SODでは、アダルトVR監督をこれからどんどん増やしていきたいと思っています。

インタビュー後編に続きます。


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