2024年10月にCanonから発売されたRFマウントレンズ「RF-S7.8mm F4 STM DUAL」は、3D映像を撮影するための2眼レンズだ。価格は7万7,000円と、決して財布に優しいレンズではないが、右目用・左目用の映像をふたつ同時に撮影でき、それらを統合すれば、立体的に見える映像、いわゆる「空間ビデオ」を生み出せる。
さらに、空間コンピュータ「Apple Vision Pro」などのデバイス用のフォーマットにも書き出し可能であり、従来の一般的なビデオとは違った“記録”ができる点が大きな特徴と言えるだろう。今回、Mogura VR編集部では、このレンズを入手できたので、実際に撮影からデバイスへのアップロードまで試してみた(※今回の手順は、立体写真である「空間フォト」には対応していません)。
撮影に至るまでに立ちはだかる壁の数々
先に注意から入ろう。この「RF-S7.8mm F4 STM DUAL」は、単に購入しただけでは、すぐに利用できないと考えたほうがいい。そもそも対応するミラーレスカメラは「EOS R7」であり、セットでの購入が必要。また、4K60fpsの動画撮影を想定する場合、ハイエンド機体専用のSDカードも必要となる(編集部ではこちらを購入)。また、長時間の撮影を想定した場合は、高速充電かつ大容量のモバイルバッテリーやケーブルも必要となるだろう。特に、屋外での撮影を想定する場合には、相応の準備が必要であると覚悟したほうが良さそうだ。また、Apple Visio Pro向けの映像フォーマットに変換する場合は、「EOS VR Utility」というアプリのインストールと有料館員登録(月額500円)が必要となる。さらに、撮影したデータの直接編集には、「EOS VR Plugin for Adobe Premiere Pro」(有償)も必須であり、これらを列挙するだけでも、初心者が気軽に手を出せるものではないことが分かるだろう。
もう一点、現時点では「空間ビデオ」「空間フォト」の撮影方法や編集テクニックについて、一般ユーザーでも理解できる便利なマニュアルなどはまとまっていない。ひとつひとつを手探りしながら、解決していく胆力も必要になると言えそうだ。
とにかく撮影してみる
カメラを起動すると画面には、ふたつの映像が映る。2眼レンズなので当然だが、撮影時には、どちらを見ればいいのか戸惑うはず。この時点で従来のビデオの撮影とは感覚が変わってくる。
それぞれの画面は正方形のため、撮影されたものは横長にはならないようだ(撮影後にトリミングが必要になる)。また、「RF-S7.8mm F4 STM DUAL」は接写に向いているレンズとされているので、撮りたい対象をあらかじめ決めておいたほうがよい。漫然と部屋や景色を映すよりも、活発に動き回るヒト・モノがあったほうが立体感がより浮き立つ。
ただし、あまりにモノに接近して撮影すると、立体感がことさら強調されて見にくい印象になる。体感的には30cm以上は離れて使うことをおすすめしたい。
「EOS VR Utility」で、Apple Vision Pro向けフォーマットに変換
撮影後は「EOS VR Utility」にデータをアップロードして、Apple Vision Pro向けの空間ビデオに変換する。方法自体はシンプルで、画像右上の「3D Spatial」を選択して、エクスポートを押して変換作業を実行するだけ。細かい編集作業はこのアプリではできないが、シンプルに「サッと撮影してVision Pro用に出す」だけなら、このアプリを介すだけで完了する。基本的に撮影したデータはとても重いサイズとなるが、10秒前後の動画であれば、エクスポートには数分もかからなかった。
Apple Vision Proで試してみた
さて、実際にApple Vision Proに変換した映像データを送信してみたが、残念ながらMoguLiveのメディアでは、その立体感を、そのまま表示できないことをご容赦いただきたい。下記の動画はあくまでどのような撮影をしたのかの参考程度にしてほしい。
(目の前でApple Vision Proを触る様子。空間ビデオに変換後に見ると、手の輪郭が非常に立体的に、画面から浮き出ているように感じられる。)
(ぬいぐるみを接写。冒頭モノに近すぎるため立体感が目立ちすぎて見にくい映像になっていた。後半は部屋の奥行きを含めて、立体感が分かる)
上記ふたつの「空間ビデオ」データをApple Vision Proに転送し、どのように見えるかを試してみた。
まず驚いた。映像の奥行き、立体感がとても際立っている。シャープに感じられるといえば良いだろうか。著者は、これまでiPhone 16シリーズで空間ビデオを撮影していたが、それらのデータと比較してみると、まだまだiPhoneの方が平面ののっぺりとした映像に思えてしまうほど。初見の人に「RF-S7.8mm F4 STM DUAL」で撮影した「空間ビデオ」を見せた方が、おそらく「空間ビデオとはこういうことか」と認識してもらえるように思えた。
ちなみに、VR/MRヘッドセットMeta Quest 3も空間ビデオに対応しているため、試しにアップロードして見てみたところ、映像を見ることはできた。主にディスプレイの解像度の問題でApple Vision Proで見た時ほどの感動は無かったが、それでも手軽に閲覧できるメリットは大きい。
まだまだテストをはじめたばかりのため、はっきりとしたことは言えないが、おそらく「RF-S7.8mm F4 STM DUAL」を使って撮影する場合、ある程度の手振れや光源の位置にも注意したほうが良いかもしれない。iPhone 16で撮影したビデオと比較すると、比較的焦点の当たっているポイントが分かりにくく、映像自体の陰影がハッキリしている印象だったからだ。前述のとおり、「空間ビデオ」の撮影テクニックは未だまとまったものがないので、今後少しずつノウハウが分かってくることになるかもしれない。
MoguLive編集部では今後も「RF-S7.8mm F4 STM DUAL」の使い方を手探りしていきたい。
撮影協力:冨澤倖之介


