9月12日(木)新型VR/MRヘッドセット「PICO 4 Ultra」とトラッキング用デバイス「PICOモーショントラッカー」が、日本で初お披露目された。日本での公式発売日は、9月20日。価格は89,800円(税込)。PICOモーショントラッカーは、11,800円(税込)となる。
情報解禁当日、都内で実施された発表会では、関係者によるデバイスの性能紹介と体験会が実施された。記事では、その模様の中から特に注目すべき点を紹介する。
「PICO 4 Ultra」は複合現実の第一歩
「PICO 4 Ultra」の発表にあたって真っ先にアピールされたのがMR(Mixed Reality)モードの実装だった。
MRは、現実に見えているモノとバーチャルなモノが混合しているかのような表現のことで、これまでMeta社のMeta Quest 3、AppleのApple Vision Pro(※Appleは別途“空間コンピュータ”という名称を使用している)などが実装し、さまざまなゲームや体験型コンテンツを生み出している。
前機にあたる「PICO 4」でも、現実の色合いの景色をヘッドセット越しに見ること自体はできていたが、そこにバーチャルなコンテンツを重ね合わせるといった表現までは達成できていなかった。PICO Director of ARAC RegionのAllen An氏は「PICO 4 Ultra」を“複合現実の第一歩”と紹介。プロダクトマネージャーのNixon Hu氏は、MRモードのために独自の環境認識技術が導入されたデバイスであることをアピールした。

(ユーザーの動きを捉えるための4つの環境追跡カメラ、3200万画素のカラー透視カメラ、映像に立体感をもたらすiToF深度センサーカメラを搭載。800万画素のカラーパススルー機能を搭載している。)
(PICOが独自開発した技術として紹介された「リアルタイムマッピング」「環境認知」「スペースアンカー」)
バーチャルな物体を現実の環境に配置しているかのように見せる「スペースアンカー」などが紹介され、イメージ映像では、人間の頭部にバーチャルな被り物を装着させたような姿が映されていた。映像を見る限りでは、人とバーチャルなオブジェクトの融合に明確な破綻などは見られなかった印象だ。
ハードウェアの性能はMeta Quest 3に近いものに
「PICO 4 Ultra」のデバイスとしての具体的なスペックも発表された。デュアルディスプレイの 解像度は両目で4320×2160(片目あたり2160×2160)。リフレッシュレート90Hz、Snapdragon XR2 Gen 2搭載など、一見した限りでは、Meta社が昨年発表した、Meta Quest 3の性能と近似している(※Meta Quest 3のディスプレイ解像度は4128×2208、リフレッシュレートは120Hzに対応。PICO 4 Ultraと同じSnapdragon XR2を搭載)。また前機コントローラーの特徴だった大きなリングはカットされ、Meta Quest 3のコントローラーに近しいデザインとなっている。上記のMRモードの強いアピールなども総合してみれば、「PICO 4 Ultra」はMeta Quest 3の競合機であることを意識して生み出されたデバイスであることは間違いないと言ってよいだろう。
新機能「パノラマワークスペース」の可能性
今回の発表会のなかでも特に便利な機能として強く押し出されていたのが「パノラマワークスペース」だ。ユーザーを囲うようにぐるりとバーチャルなアプリを配置でき、日々のマルチタスクの効率化をサポートするという。ウィンドウは最大20個まで。各ウィンドウの大きさは280インチまで拡大可能だ。また、バーチャルの背景と現実の風景を瞬時に切り替え可能で、いつでも周囲の状況を確認できる。
デザインや機能については異なるものの、コンセプト自体は、Apple Vision Proの空間コンピュータの発想と共通するものがある。現実のPC(Windows、Mac両対応)の画面をVR上に表示させる拡張ディスプレイといった機能もあり、そういった点も目指している方向性がうかがえる。
ひとつ興味深かったのは「スマートフォンのミラーリング」という機能だ。ヘッドセットを装着した状態で、スマホの画面をミラーリングし、そのままバーチャル空間の中で操作できるという(iOS、Android両対応)。これまで「VRをやりながら、スマホをいじる」という動作はかなり難しかったため、安定的に利用できるか是非試してみたいところだ。
実は本命は「PICOモーショントラッカー」の方
記者会見当日、メディア関係者たちから明らかに熱い視線が注がれていたのは、VRヘッドセット本体よりも、むしろ「PICOモーショントラッカー」だった。
このデバイスはセンサーを両足に装着し、VRゲームやメタバース内での脚の動きを再現するものだ。あくまで付属品であるはずだが、事前情報の時点で、トラッキング精度の高さと、デバイスとの同期の手軽さという点で注目を集めていた。何より、ソーシャルVR「VRChat」でのユーザーたちからは、身体の動きを同期できる(フルトラッキングできる)デバイスのエントリーモデルになり得るとして、非常に期待されている。

(VRChatユーザーを狙い撃ちするように、モーショントラッキングの精確さをアピール)
現状、フルトラッキングを実現するデバイスとしては、ハリトラやmocopiなど、日本発のデバイスが登場しているが、(プロ仕様のVICONなどに比べれば圧倒的に安価とは言え)いずれも数万円と高価なデバイスであり、「VRデバイスを購入した上でなお余力のある人」向けのオプションというイメージが拭えない。そんな中で、今回のモーショントラッカーの安価さは注目を集めるのも必然と言えるだろう。
PICOは「PICOモーショントラッカー」にかなり自信を持っているようだ。トラッカーには、赤外線センサー12個が備え付けられている。人間の動きを400時間トレーニングデータとして計測し、AIにより動きのパターンを計測&算出しているため、精度が非常に高いという。さらに身体だけでなく、さまざまなモノにくっつけたトラッキングにも活用できる「独立トラッキング」という機能も備えている。
この脚のトラッキングに対する技術への高い関心は、MetaやAppleにはあまり見られないモノであるため、PICO独自の“強み”として発展していくか、期待したいところだ。
「空間ビデオ」機能の実装
多種多様な機能のひとつという位置づけながら見過ごせないのは「空間ビデオ(空間フォト含む)」の撮影と表示だ。空間ビデオは、撮影した時の視点で、立体感を感じられる映像のことである。現状では「iPhone 15 Pro」以降のモデルには対応しているが、iPhoneに撮影されただけの空間ビデオは、スマホからではその立体感を確認できないため、視聴に対応しているデバイスが必要となっている。
空間ビデオの表示と撮影が可能なXR関連デバイスでは、Apple Vision Proがあり、表示のみであればMeta Quest 3、カメラとXRデバイスが直結しているものとしてXREAL Airシリーズがあるが、「PICO 4 Ultra」がそこに加わり、いよいよXRデバイスの空間ビデオ機能実装は本格化しはじめている。気になるのは、スマホから撮影した空間ビデオの共有などを、フォーマット変換なく可能なのかという点。こちらは後に実機で検証したい。
また、CANON社との提携も発表され、、3D・VR映像撮影システム「EOS VR SYSTEM」で撮影した動画が、「PICO4 Ultra」で視聴可能であることも告知された。撮影用の機材が非常に高価なため一般への普及はまだ先になるだろうが、映像制作企業やクリエイターによるVR動画コンテンツの今後の制作に影響を与えることになりそうだ。
実際に試してみた
この日は「PICO 4 Ultra」のMRモードを利用したゲーム体験(Angry Birds VR: Isle of Pigs)と、「PICOモーショントラッカー」を利用したメタバース体験(VRChat)に参加した。
実機を触った初見の感想は、VRとMRのどちらの役割も安定的に果たしているヘッドセットであるというものだ。現実もVRのどちらもディスプレイの見え方に大きな破綻や問題はなく、日常生活でも問題なく利用できそうである。コントローラー無しのハンドトラッキング操作や、MRモード時のバーチャルなオブジェクトの表示なども自然なものであり、違和感があって使いづらいわけではなかった。
また、映像の見え方、VRゲームの体験についてはMeta Quest 3と大きな違いを見つけるのが難しいと思ったのも正直な感想だ。長時間、両方をじっくり検証すれば細かな違いは浮かび上がるかもしれないが、体験会の短い時間ではハッキリと感じられなかったし、細かな違いを見つけたとしても、それが決定的な差になるとは言えないだろう。
こうなってくると、Meta Quest 3との決定的な違いとなるのは「PICOモーショントラッカー」との組み合わせが可能であるという点だろう。現地でVRChatのアバターで体験してみたが、驚いたのはペアリングの手軽さだ。モーショントラッカーを両足につけ、VRヘッドセット越しにトラッカーを見つめればペアリングが完了。これまで様々なトラッキングツールがスマホアプリやPCの専用アプリを一度介さなければならなかったこと考えると、この手軽さは大きいメリットだ。
また当初、2個のトラッカーだけで本当に両足の動きを追従可能なのか、という疑問を抱いていたが、実際に試してみると「2個で十分」に感じた。片足上げ、ジャンプ、足を曲げて座るなど、細かなアクションがアバターに再現できている。激しい動きでも大きなズレを感じないため、アクションリズムゲームなどでも活用できるだろう。VRChatだけでなく、様々なアプリに対応していけば、PICO4 UltraはMeta Questシリーズとはまた違った用途のデバイスとなっていきそうだ。
ただし、他にも特筆すべき機能やアプリなどが用意されている可能性もある。Mogura VR編集部では「PICO 4 Ultra」のより詳細なレビュー記事を制作する予定だ。
(参考)PICO新商品発表会












