2019年5月21日に発売されたPC向けのVRヘッドセットOculus Rift S(以下Rift S)が、アップグレードされることが発表されました。このアップデートの恩恵を受けられるのは、NVIDIA製のRTXシリーズなどTuring世代のGPUと使用した場合です。アップグレードはソフトウェアアップデート形式で配信予定。配信時期は、2019年6月が予定されています。
今回の発表はOculusの公式ブログで行われました。Oculusによると、アップグレードの目玉はパススルー+の性能向上です。パススルー+機能は、VRヘッドセットの前面カメラを利用して、ヘッドセット越しに現実世界を見るシステムのことです。アップグレードによってさらにクリアに安定するとのこと。
(パススルー機能の比較映像。アップグレード後(右)の場合、より映像がクリアかつ安定しているのが確認できる)
また、「パススルー+機能」と同時に、非同期スペースワープ(ASW)機能も性能が強化されるとのこと。ASWは、ディスプレイに表示される映像の遅延を防ぐ機能です。直近の2つのフレームデータから次のシーンを予測。ディスプレイに表示して、遅延のない動きに見せます。
より映像が安定的に
今回発表されたアップグレードには、NVIDIA の新テクノロジー「NVIDIA optical flow」が関係しています。この技術は、マクロブロックの解像度を4倍にするほか、モーションベクター情報の精緻化や適切なオプティカルフローを強調する効果などを有しています。2019年5月現在、「NVIDIA optical flow」はTuring世代のGPUのみがサポートしています。
今回のアップグレードによって「パススルー+機能」は、より映像が安定するほか、カメラの認識機能も向上します。ASWはよりフレームデータの予測機能が向上し、同機能の予測ズレによる歪みやノイズの発生などが軽減されます。
なお、Oculusはブログで「NVIDIA optical flowのSDKには可能性と研究(の余地)がある」と発言。今回のアップグレード以降も、同テクノロジー関連の開発を進めていく事を示唆しています。
パススルー+はARにつながる機能です。記事執筆時点ではこの機能はあくまでもプレイエリアを確定させるために使われており、この機能を使ったアプリ開発などはできませんが、今後SDKの公開などにも期待したいところです。
Oculus Rift Sについて
Oculus Rift Sは、2016年3月に発売されたOculus Riftの改良型モデルです。外部センサーを廃した「インサイドアウト方式」を採用するなど、過去に“使いやすさ”の面で課題とされていた個所を解決しています。価格は49,800円です。
Rift Sでは解像度の改善やレンズの刷新などの光学系の改良、外部センサー不要のトラッキングシステム「Oculus Insight」の採用、装着感の向上などが変更点となります。
(参考)Road to VR
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