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Oculus Go 2018.09.07

一体型VRヘッドセット「Oculus Go」と「Mirage Solo」比較 その違いは?

2018年5月、一体型VRヘッドセット「Oculus Go」と「Mirage Solo」の2機種が発売されました。同時期に発売された一体型VRヘッドセットですが、それぞれ価格や性能など、様々な違いがあり、「どちらが良いのか?」「どちらを買うべきか?」といったことを簡単には決められません。

本記事では「Oculus Go」と「Mirage Solo」の違いの紹介、スペック比較などを行います。「Oculus Go」はコンテンツの数も多く、フレンド機能なども充実していて入門者用である一方、性能と価格が高い「Mirage Solo」はコンテンツの数が少なく、高い性能を活かしたコンテンツもまだこれからといった、開発者・上級者用といったところですが、それぞれの違いを細かく見ていきましょう。

目次

0.そもそも、一体型VRヘッドセットとは?

1.ハードウェアとしての比較
スペック比較
3DoFと6DoFの違い
ディスプレイ
大きさ・重さ・装着感・つけ方
価格と購入方法
操作感

2.「何ができるのか」ソフトウェアの比較
プラットフォーム
友達と遊べる「Oculus Go」
360度写真/動画の閲覧方法
Mirage Soloの6DoFはどこまで活かされているのか
設定のしやすさ、使いやすさ

3.結局どっちを買うべきなのか?

そもそも、一体型VRヘッドセットとは?

一体型ヘッドセットとは、スマートフォンやPCを使わず、単体でVR体験ができるデバイスです。ケーブルを接続する必要がなく、起動も非常に早いため、「VRを体験したい」と思ったときに装着すればすぐに体験できます。PCの接続などが必要なVRヘッドセットに比べ、圧倒的に手軽にVRを楽しむことができます。

Oculus Go

Oculus GoはOculusが2018年5月1日(日本時間5月2日)に発売を開始した一体型ヘッドセットです。スマホ向けに展開されていたVRヘッドセット「Gear VR」と同程度の機能と性能を備えています。Gear VRでは、Gear VR本体とGalaxyのフラッグシップ級のスマホを揃えて使う必要がありましたが、Oculus Goではこれ1台で体験できるようになりました。

Mirage Solo


(画像右下は同社の180度カメラ「Lenovo Mirage Camera with Daydream。付属品ではないので注意)

Mirage Soloは、レノボ・ジャパン株式会社(以下、レノボ)が国内向けに、2018年5月11日に発売を開始した一体型ヘッドセットです。メーカーはレノボですが、このデバイスの技術開発にはGoogleが深く関わっています。前面に2つ見えるカメラが特徴的です。

ハードウェアとしての比較

スペック比較

Oculus GoとMirage Soloのスペックは以下の通りです。

 

Oculus Go

Mirage Solo

トラッキング

3DoF
(回転のみ)

6DoF
(回転・上下左右前後)

手の動き

コントローラーでのポインタ操作

コントローラーでのポインタ操作

ディスプレイ解像度

2560×1440 5.5インチ
WQHD液晶パネル

2560×1440 5.5インチ
QHD液晶パネル

リフレッシュレート

60Hz 、72Hz
(コンテンツにより変化)

75Hz

プロセッサ

Snapdragon 821

Snapdragon 835

ストレージ

32GBと64GBの2モデル

64GB

ヘッドホン、マイク

両方内蔵

ヘッドホン:外付け
マイク:内蔵

バッテリー持続時間

1時間半〜2時間(ゲームプレイ時)
2時間〜2時間半(動画視聴時)

3時間

サイズ

190mm×105mm×115mm

204mmx270mmx180mm

重量

468g

645g

接続

micro-USB

USB type-C

SDカードスロット

なし

あり(Miscro SD)

対応プラットフォーム

Oculus Store
(モバイル向け、Oculus)

Daydream(Google)

価格

32GBモデル:23,800円
64GBモデル:29,800円
(いずれも税込)

56,268円(税込)

このスペック表で注目したいところは、

・体験の内容に直接影響する「トラッキング」
・全く異なる「プラットフォーム」
・倍程度差がある価格

この3つです。プラットフォームや価格については後ほど比較するとして、まずはハードウェア面から見ていきましょう。

3DoFと6DoFの違い

この2つのVRヘッドセットは、トラッキング方式が大きく異なっています。VRヘッドセットには、ユーザーの位置情報をVRコンテンツ内に反映させるトラッキング機能が搭載されています。トラッキング機能には大きく分けて「3DoF」「6DoF」の2種類があります。

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(画像左:3DoF……頭の回転だけを追随する。 画像右:6DoF……3DoFに加えて前後左右と上下の動きに対応する)

3DoFは、頭の前後左右への傾きや首の振りに対応しています。Oculus Goやスマートフォンを装着するタイプのVRゴーグルなどが3DoFに属します。頭の回転しか反映されないため、VRの中で大きく身を乗り出したり、移動することはできません。

一方6DoFは、3DoFの頭の動きに加えて上下左右前後の体の動きに対応しています。PC向けのVRヘッドセットOculus RiftやHTC VIVE、そしてPlayStation 4と接続するPlayStation VR(PSVR)などは全て6DoFです。なぜなら理由は明白、姿勢など現実の動きがより忠実にVRでも反映されたほうが「VRにいる感覚」は強くなり、その没入感がさらに増すからです。Mirage Soloには、Googleの技術技術「World Sense」が採用されており、Oculus Riftなどのように外部センサーを置いていなくとも、前面のカメラを使って非常に精度の高いトラッキングを実現しています。

一体型VRヘッドセットの中でも、Oculus Goは3DoF、Mirage Soloは6DoFとなっています。Oculus Goは自由に動くことはできず、頭の回転のみを追随します。一方のMirage SoloはVR内で自由に動くことが可能です。

ディスプレイ

Oculus Goは、WQHD(2560×1440)のLCD液晶パネルを内蔵し、リフレッシュレートは60Hz 、72Hz(コンテンツにより変化)で描画します。視野角は110度、新型のフレネルレンズが使われています。

Mirage Soloは、QHD(2560×1440)のLCD液晶パネルを内蔵し、リフレッシュレートは75Hzで描画します。視野角は110度、フレネルレンズが使われています。

双方とも解像度は同じ、リフレッシュレートはMirage Soloの方が高めです。ただし数字の上ではあまり大きな違いがなく、それぞれの液晶パネルの品質などは不明です。「Oculuis Goの方が鮮明」「Mirage Soloの方がきれいに見える」と体験者によって意見がまちまちなので、気になる人は実機を試したほうが良いでしょう。

大きさ・重さ・固定方法・装着感

Oculus Goのカラーはライトグレー。頭に固定するバンドはゴム製で、全体的にコンパクトな作りです。前面部分はやや金属的。一方Mirage Soloは白を基調としており、灰色と黒を組み合わせ、特に前面はカメラがあることもありツルッとした質感になっています。


(並べてみた状態。Oculus Goは全体的に小ぶりだ)

Oculus Goの重量は468g。サイズは190mm×105mm×115mmと、現行のVRヘッドセットの中では小型です。顔面との接触部分はメッシュ状のニットとナイロンを使っており、肌触りは良好。幅広で眼鏡も入りやすくなっていますが、さらに眼鏡とレンズの接触を防ぐための補助パーツも同梱されています。固定方法はゴムバンドを採用しています。装着感は良好で、あまり重さを感じさせません。

Mirage Soloの重量は645g。サイズは204mmx270mmx180mmです。Oculus Goよりもやや重めですが、重心が考慮されているのか、スマートフォンを装着するタイプのVRゴーグルと比べて特に重いと感じるほどではありません。固定方法は、PSVRのように額と後頭部のベルトで固定する仕組みです。頭に装着し、後頭部のダイヤルを回すことで固定します。また、ヘッドセット底部にあるボタンを押しながらディスプレイ部分を前後させ、ピントを合わせることができます。

大きな違いは装着機構。ゴムバンド(Oculus Go)とプラスチックのベルト(Mirage Solo)と異なります。ゴムバンドが巻き付く分、Oculus Goはしっかりと固定されますが、きつくしすぎると頬に跡ができるようなことも。Mirage Soloは固定が甘くなりがちな一方で、顔面への圧力は少なく、比較的余裕をもって体験できます。また、プラスチックのベルトがあるMirage Soloは寝転がっての使用が難しく、寝転がって「Netflix」などを大画面で観たいという人にはOculus Goを推奨します。両機種とも眼鏡をつけた状態での体験はほぼ問題なく可能です。

価格と購入方法

Oculus Goは、ストレージの容量が32GBと64GBの2モデルが販売されています。日本では32GBが23,800円、64GBが29,800円(いずれも送料、税込)です。

Mirage Soloは、ストレージの容量が64GBの1モデルのみ販売されています。日本では56,268円(税込)です。6DoFの機能がある分、パワフルなプロセッサを搭載しており、Oculus Goと比べたときに価格は倍程度差が開いています。性能で比較したときに、Mirage Soloの方ができることが多い分、高くなっていると考えるのが良いでしょう。

なお、国内に代理店のあるMirage Soloはヨドバシカメラなどの家電量販店(店頭、オンライン)、Amazon.co.jpなどのオンラインストアで購入できますが、Oculus Goは日本国内に店舗がなく、Oculus公式サイト(日本語)からの直接購入でなければ正規価格で入手できません。Amazon.co.jpで出品されているOculus Goは非正規の業者が売っている並行輸入品なので定価と比べて割高、かつ破損時の保証などがないのでご注意ください。

操作感

Oculus GoとMirage Soloはいずれもリモコン型のコントローラーで操作します。背面のトリガーボタンの有無など差があります。コントローラーは3DoFで回転のみ反映されます。Oculus Goのコントローラーは乾電池で動きますが、Mirage SoloはUSB-Type Cでの充電式です。

(それぞれ左がMirage Solo、右がOculus Goのコントローラー。Mirage Soloの方は平べったくかなり軽い。Oculus Goのコントローラーは中に電池が入っているためやや重くなるが、丸っこくて握りやすい。どちらかと言うとMirage Soloはテレビや家電のリモコン風、Oculus Goはしっかり握って使うことを想定しているように思える。こういったところからも思想の違いが見てとれるのは面白い)

「何ができるのか」ソフトウェアの比較

ここまでハードウェアの比較をしてきましたが、最も重要になるのはそれぞれのデバイスで「何ができるのか」という点でしょう。Oculus GoとMirage Soloは対応するコンテンツストアも全く異なっています。それぞれ見ていきましょう。

プラットフォーム

対応プラットフォームはいわゆるコンテンツストアに影響します。Oculus GoはメーカーであるOculusが運営する「Oculus Store」からコンテンツをダウンロードします。Oculus Storeでは、1,000以上のコンテンツがリリースされています。

一方、Mirage SoloはGoogleの「Daydream」というプラットフォームに対応しており、Daydream専用コンテンツをAndroid向けのGoogle Playストアからダウンロードします。Daydream専用コンテンツは200以上のコンテンツがリリースされています。

Netflixなど両プラットフォームに共通のアプリもありますが、「YouTube VR」のようにいずれかにしか対応していないアプリも多くあります。対応状況の一例は以下の通りです。

 

Oculus Go

Mirage Solo

Netflix VR

DMM VR

×

YouTube VR

×(※)

Rez Infinite(※※)

×

ブラウザ

(※「YouTube VR」は、YouTubeの動画をVR内の大画面で見たり、360度動画を自分の周囲に全天球表示して見ることのできるVR専用アプリです。Oculus Go向けには配信されていませんが、標準搭載の「ブラウザ」からYouTubeにアクセスすることで動画再生時に大画面で表示したり、全天球表示が可能です)

(※※「Rez Infinite」は、2016年のPSVRリリース時に同時発売されたVRシューティングゲームです。数々の賞を受賞・またはノミネートされており、美しいグラフィックに加え、サウンドとの一体感ある体験ができるVR作品です)

友達と遊べる「Oculus Go」

Oculus Go向けの機能として特筆しておきたいのがいわゆるソーシャル機能です。VRを体験しているときはつい孤独になりがちなものですが、Oculus Goでは、

・Facebookアカウントとの連動
・通話機能
・通話でけではなく、友達とVR内アバターで“会う”ことが可能な公式アプリ「Rooms」
・一緒にアーティストのライブやスポーツの試合を見れる公式アプリ「Venues」
・Facebookへの実況投稿

などなど、VR体験中に友達とコミュニケーションをとれる機能が充実しています。一方Mirage Soloにはこういったソーシャル機能はサポートされておらず、いくつかのアプリでのみ「アバターでのコミュニケーション」ができる程度にとどまります。

360度写真/動画の閲覧方法

Insta360やRICOH THETAなど、手軽に使える360度カメラが増えてきました。VRヘッドセットを持っているのであれば、その写真や動画をVRで見るにこしたことはありません。

Oculus Goでは「ギャラリー」機能を通した数種類の閲覧方法があります。Facebookに投稿すればそのコンテンツは簡単に見ることができます。また、ペアリングしたスマートフォンにあるコンテンツを見ることも、Micro USB経由でPCから転送したものを見ることも可能です。3D再生にも対応しています。

Mirage Soloでは、Googleフォトにアップロードした場合、「フォト」アプリで見ることができます。また、Micro SDカードに写真や動画を入れた場合、同じ「フォト」アプリからの視聴が可能です。

Mirage Soloの6DoFはどこまで活かされているのか

ところで、ハードウェアの比較で紹介した「6DoF」というMirage Soloの特徴はどの程度のアプリで活かされているのでしょうか?

実は、ストアでは「WorldSense対応」というカテゴリーのアプリでしか6DoFの機能を活かすことができていません。YouTubeなどの360度動画は、「カメラの視点が固定」されているため、たとえ6DoFのデバイスでも動くことはできないのです。

また、WorldSense対応のアプリでも気をつけなければいけないことがあります。それは「約1m四方にしか動けない」ということ。安全性を考慮した設定ですが、何mも歩いていけるMirage Soloの6DoFという特長をかなり制限してしまっています。体を傾けるなどのちょっとした動きやその場での立ったりしゃがんだりといった動きに使われているアプリがほとんどでした(開発者モードではこの移動範囲の制限を解除することができます)。

設定のしやすさ、使いやすさ

最後は「設定のしやすさ」について比較します。

Oculus Goは初期設定の時点でスマートフォンとペアリングをして、スマートフォンで操作をしながら進みます。いわゆる設定事項はスマートフォン側からほぼできます。Wi-Fiパスワードもスマートフォンから設定できるため、ヘッドセットをはずしたり被ったりしなくて良い点は配慮が行き届いています。

一方、Mirage Soloは初期設定も含め、全ての操作をVR内で行う必要があります。また、DaydreamはAndroidをベースにしているため、設定等もVR内でAndroidの設定画面そのものを操作することになります。

結局どっちを買うべき?

Oculus Goは、「VRのデバイスを持っていない」人も安心して使える、言うなればエントリーレベル(入門向け)の機器になります。一方でMirage Soloはその性能のポテンシャルは高いものの、その性能を活かしたアプリはまだ少なく、どういったアプリが体験できるのかをよく吟味する必要があります。また、開発者モードにしないと機能に制限がかかっているため、開発者ないし上級者向けのデバイスと考えられます。

また、Oculus Goには容量が32GBと64GBの2モデルが存在します。価格は6,000円異なっているため、どのような用途でVRを体験したいかによって選ぶとよいでしょう。VRのコンテンツ(特にゲーム)は、どうしても容量が重くなりがちなので、ゲームをたくさん遊びたいという場合は64GBをオススメします。

今後、両デバイスともアップデート等により、使い勝手などが大幅に変更される可能性があります。コンテンツに関しても毎週新しいものが増え続けているため、今後これらの評価はどんどん改善されていく可能性も秘めています。両デバイスの最新情報は、Mogura VRでも、引き続きお伝えしていきます。


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