戦国武将と男の娘。
一見、何の関わりもない二つの存在が、バーチャルの世界で深い関りを見せています。
戦国武将VTuber「織田信姫」と、男の娘VTuber「犬山たまき」。この二人の関係は「信たま」と呼ばれ、日本の多くのVTuberファンに親しまれています。
一方、2019年のVTuber界には、中国旋風が加速。
人気VTuberの生配信には、5万人近い視聴者が集まることも少なくありません。
では、日本で盛り上がる「信たま」は、中国でも受け入れられるのでしょうか。受け入れられるためには、いったい何が必要なのでしょうか。
本記事では、「信たまとは何か」そして「中国で人気となるための要件は何か」を一つずつ紐解きながら、その可能性を探っていきます。
「信たま」とは何か
信たまの歴史
信たまの起源は、2018年11月11日に遡ります。
この日、織田信姫が投稿した動画に、犬山たまきが反応。Twitterへのリプライと共に、YouTubeにコメントを残しました。
すると、犬山たまきのコメントを織田信姫がまさかの固定表示。
当時、VTuberとしてデビューしてから日が浅く仲間を探していた犬山たまきは、この対応に甚く感激。以降、まるで親鳥を見つけた雛鳥のように、常に織田信姫を追いかけるようになります。
信たま人気の理由
ではなぜ、信たまは国内で大きな人気を集めているのでしょうか。
二人が大人気VTuberだからというのはもちろんですが、多くの人を惹きつけているのは、二人のその関係性です。
織田信姫への愛を全身全霊で表現する犬山たまきと、辛辣に突き放しつつも叱咤激励を続ける織田信姫。
https://www.youtube.com/watch?v=mxSJ7yVnRaM
毎月11日には「出会って〇か月記念配信」を欠かさない犬山たまき
https://twitter.com/oda_nobuhime/status/1108508783049793537
辛辣なコメントを添えながらも、しっかりと犬山たまきグッズを購入し宣伝する織田信姫
二人のやりとりは、ファンが見えないところでも行われているようです。連夜に及ぶDMでのやり取りは、犬山たまきによって毎日のように無断公開されています。
https://twitter.com/norioo_/status/1084906592171057152
また、犬山たまきの配信では、本人が涙ながらに織田信姫への愛を語る場面も度々見られます。
https://www.youtube.com/watch?v=o_PsGVtRBk8
1:24:49~
しかし、織田信姫は頑なに、犬山たまきとのコラボを認めようとはしません。
このような、交じり合いそうで交じり合わない「もどかしさ」が、VTuberファンたちの「おせっかい」を誘発。話題が話題を呼ぶ形で、人気が広がっています。
信たま人気の特徴
VTuberファンたちの「おせっかい」は、二次創作という形で表現されています。
さらに、
・二次創作を、漫画家の佃煮のりお先生(犬山たまきのプロデューサー)が率先して行ったこと
・信たまの二人に、二次創作に負けない強い人格があること
が、二次創作の活性化に、拍車をかけています。
https://twitter.com/norioo_/status/1078949505733603329
佃煮のりお先生による二次創作マンガ
https://twitter.com/donguri_suzume0/status/1087660844056436736
信たま二次創作イラストを多く公開している「ユルサレン反省」先生
その結果、人気イラストレーターたちも二次創作に参加。
信たまのファンアート数は上昇を続け、織田信姫単独でのファンアートをも超える勢いとなっています。
信たま人気の影響
では、信たま人気は世間にどのような影響を与えているのでしょうか。
まず、信たまをきっかけに二人のファンは増加しています。
しかし、信たまの影響はVTuber界だけに留まりません。
Twitterの人気アカウント「坊主」さんが主宰した「理想のカップル選手権」において、「犬山たまきと織田信姫」が世間のあらゆるカップリングを抑え、入選してしまったのです。
理想のカップル選手権
最優秀賞
出川とデヴィ夫人金賞
唐揚げと白ご飯入選
松岡修造と太陽蘭と新一
新井貴浩と夏帆
香澄と有紗
犬山たまきと織田信姫
— 坊主 (@bozu_108) February 8, 2019
そしてなんと、そのリプライ欄には二人を祝福する「#信たまてぇてぇ」のハッシュタグが並ぶという、驚きの事態となりました。
このように、ファンが中心となって広がった「信たま」は、二人のファンからVTuberのファン全体へ、そしていま、VTuberのファンを超えて日本中へ、さらなる広がりを見せています。
では、「信たま」は日本を越え、海外で人気を得ることができるのでしょうか。
中国で人気になる要件とは何か
中国VTuber文化の特徴
いま、VTuberが盛り上がっている国といえば、中国です。
この中国には、VTuberの需要と供給に大きなアンマッチがあります。
先日放送された中国のVtuber文化に関する体験番組「ぼくの考えた最強の中国Vtuber」によると、中国のVTuber数は約330名と、日本の約20分の1。
一方で、中国の二次元文化のファンは、日本の約10倍いると言われています。(bilibili動画とニコニコ動画のユーザー数比較)
この需要と供給の違いが、「一次創作が充実する日本」と「二次創作が充実する中国」という文化の違いを生んでいます。
中国で人気になる要件
では、中国で人気になる要件とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
同番組では、「二次創作のしやすさ」と「言語を超えた可愛さ」の2点が重要であると説明しています。
二次創作のしやすさとは、
・キズナアイの「ぴょこぴょこ」のような、特徴的な外見
・神楽めあの「手〇キ」のような、印象的(?)な場面
・bilibili動画への本人投稿や独占配信をはじめとする、ファンとの交流
言語を超えた可愛さとは、
・一度聞いたら耳から離れない、特徴的な声
・言語を超えて親しまれる、歌やGame
・絶叫などの非言語リアクションや、中国でも馴染みあるスラングの多用
などがあたります。
信たまは中国人気の要件を備えているか
では、信たまはこれらの要件を満たしているのでしょうか。
順に確認していくと一点、名場面(音や画の素材)の供給が不足してしまっていることがわかります。
信たまの二人は正式コラボを行っておらず、文字での交流が中心となっています。そのため、どうしても言語を超えた二次創作の素材が不足してしまっているのです。
今後、信たまが中国で受け入れられ、多くの二次創作が投稿されるためには、文字だけではなく、音や画でも信たまの活動を推進する(=コラボする)ことが求められます。
「信たま」は海を越えるか
以上をまとめると、次のことがわかります。
① 信たまは、2019年年初より国内VTuber界で人気に
② 一方、中国VTuber市場は日本の約10倍のポテンシャル
③ 中国で人気になるためには、音・画を中心とした二次創作素材の提供がカギ
④ 信たまが中国で流行るためには、音・画の素材を提供する(=コラボする)ことが求められる
果たして信たまは、海を越え巨大な中国市場にアプローチすることができるのか。
それは、織田信姫が犬山たまきとのコラボを認めるか否かに懸かっている、とも言えるでしょう。
今後も二人の動向から、目が離せません。
織田信姫
Twitter:https://twitter.com/oda_nobuhime
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCGcD5iUDG8xiywZeeDxye-A
bilibili動画:https://space.bilibili.com/80387576
犬山たまき
Twitter:https://twitter.com/norioo_
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC8NZiqKx6fsDT3AVcMiVFyA
bilibili動画:https://space.bilibili.com/12362451
僕の考えた最強の中国Vtuber