2025年2月7日から11日まで、XRアート&カルチャーの祭典「NEWVIEW FEST 2024」が渋谷PARCOと404 NOT FOUND | SHIBUYA SAKURA STAGEにて開催されました。
本記事では会場の模様とNEWVIEW AWARDS 2024の授賞式の模様をお伝えします。
そもそも「NEWVIEW FEST 2024」とは?
株式会社STYLY、株式会社パルコ、株式会社ロフトワークの主催するXR表現の探求プロジェクト「NEWVIEW(ニュービュー)」が、2024年度の集大成として開催するリアルイベントです。
本イベントの特徴は、展示作品のほぼ全てがApple Vision Proでの体験を前提としていること。マルチプラットフォーム「STYLY」で制作・配信されているアートやコンテンツを、渋谷の会場で直接体験できます。
会場には、グローバルXRアワード 『NEWVIEW AWARDS』 の2024年度ファイナリスト等の作品の常設展示がありました。また、アワードの授賞式やApple Vison Proを用いた観客一体型の空間VJパフォーマンスイベントなども行われました。
でんぱ組.incの想像以上に大スケールなARコンテンツ&アサヒビールの構想する未来の1人飲みを体験
SHIBUYA SAKURA STAGE内「404 NOT FOUND」会場では「NEWVIEW SCHOOL JAPAN」第6期生による卒業展示が行われていました。
NEWVIEW SCHOOL JAPANとは、2019年から開講しているXR表現について学べるカリキュラムです。人気VRクリエイターを招いた特別講義や、STYLYを用いた作品制作などが行われ、今期の6期まで継続しています。2024年度は、Apple Vision Proを用いた空間コンピューティングをテーマに、8月から12月までの期間で実施されました。
本会場では作品概要のパネル展示がある他、下記についての「Apple Vision Pro」での体験も可能でした。新たな音楽体験空間をクリエイトするプロジェクト「Hyper Music Venue」で最優秀賞を受賞した、Hajime Takashi氏の「でんぱ組.inc LIVE at 宇宙渋谷ドーム」の体験と、アサヒビール株式会社が実験的に制作する、Apple Vision Pro向け没入型体験アプリ「Vision Brew Journey」の体験です。
Hajime Takashi氏の「でんぱ組.inc LIVE at 宇宙渋谷ドーム」は、華やかな星が舞い、UFOや宇宙船のような物体が飛び交う宇宙的な渋谷のスクランブル交差点で、巨大化したでんぱ組.incメンバーが代表曲「Future Diver」を歌って踊るというコンセプトの作品でした。
生身のでんぱ組.incメンバーが、現実ではありえないような渋谷スクランブル交差点を舞台に、現実ではありえないサイズ感でサイリウムの光の海の中で歌い踊る様子を体験できる作品でした。でんぱ組.incのコンセプトをしっかり感じられるものでありつつ、同時にXR作品でしか体感でき得ないスケールの大きさと面白さを感じられます。
こちらはHyper Music Venueへの応募を前提として、元々はスマートフォン向けかつ体験時間が15秒から30秒以内であることを条件に制作された短い作品でしたが、今回はそれをApple Vision Proでも体験できるような形にアップデートしたとのことです。

(現実側のビールを認識してその部分だけカメラ入力に切り替わっている様子)
アサヒビール制作のVision Brew Journeyについては、自宅にいながらにして開放的な野外のVR空間での“ひとり家飲み”体験を提供する、という趣向のアプリでしたが、単なる「リラックスできる3D空間をVRで体験できるアプリを作ってみた」いうことだけに留まらないものでした。
ビール缶を認識して手元の部分だけはリアル側の映像が見えるようにして、Vision Proの付け外しなくビールを手に取れるような工夫があったり、空間内で、YouTube等の動画も楽しめるようになっていたり、「どうすれば”VR飲み”をより快適に行えるか?」ということに対する真摯な追求が見られたところが印象に残りました。

(「Vision Brew Journey」アプリ内でYouTubeが見られるモニターを起動している様子)
クリエイターたちがVision Proで表現する新たな世界

渋谷パルコ B1F「GALLERY X」では、XRクリエイティブアワード「NEWVIEW AWARDS2024」ファイナリストの作品をApple Vision Proで体験できる他、各品の体験映像や作品概要がモニターでも鑑賞できるようになっていました。
(体験機のApple Vision Pro)
プレス向けの体験会ではApple Vision Pro複数人での体験が可能なセッション体験(の一部)を行うことができました。著者がこの時、体験できたのは下記3つです。
「標識共生 : Symbiosis of signage(OUGA氏)」
https://newview.design/works/symbiosis-of-signage/
「Bloom in Motion(JACKSON kaki氏)」
https://newview.design/works/bloom-in-motion/
「Carrousel du Style(建野みどり氏)」
https://newview.design/works/carrousel-du-style/
どの作品もVision Proの特性(コントローラなしで視線+素手でVR内のオブジェクトをつかめる)を生かしながら、かと言って機器の機能におもねりすぎることもなく、自身のやりたい表現をVision Proによって実現させている様子でした。
特に建野みどり氏の「Carrousel du Style」は、テキストでの説明が特別なくとも体験者が何をすべきか、何を楽しめばいいのかが直感的にわかりやすい作品でした。真ん中の女性のモデルに、アクセサリーや洋服を自分の手でつかんで着せることで、自分だけのコーディネートを完成させることができます。
しっくり来るコーディネートが見つかるまで、生身の人間が何度も服を着替えるのも、人型の3DモデルをUnity上で3Dモデルの服を着替えさせるのも、どちらもそれなりの労力を要するものですが、このぐらい手軽に、客観的な自分の身体に対してとっかえひっかえ納得行くまで様々なコーディネートを試せたら、今まで以上にどんなに気軽に楽しくコーディネートを楽しめるだろう…と、未来への夢が膨らみます。
人とアイテムのモデル以外は現実の空間が背景になるので、自分が行く先々の様々な場所でファッションショーを楽しめるところも素敵です。
急速に成長するクリエイターたちの才気 NEWVIEW AWARDS 2024 CEREMONY
7日17:00からは渋谷PARCO9FSUPER DOMMUNEにて、「NEWVIEW AWARDS 2024 CEREMONY」が行われました。
NEWVIEW AWARDS は、次世代クリエイターの発掘を目的にほぼ毎年実施されている企画で、過去には、VRChatクラブワールド「GHOSTCLUB」で有名なVRクリエイターの0b4k3(おばけ)さんも表彰されています。今年は「Visions that weave context. – 情報と人の関係を編み直す展望 -」をテーマとして、Apple Vision Proのコンテンツを募るSpatial Computing部門、場所性を活かしたAR作品を募るSite-specific AR部門の2部門を設けて実施されました。
その結果、10ヶ国95作品の応募があり、事務局による審査を経て19作品がファイナリストとして選出されています。国内外から選ばれた6名の審査員による審査会を経て、各部門から1作品ずつGOLD PRIZEを受賞する作品が選出・表彰される他、NEWVIEW FEST 2024スポンサーによる賞と、各審査員から贈られる個別の賞の発表も行われました。

GOLD PRIZEとして発表された作品は下記の2作品でした。
・Spatial Computing 部門:「RESORACLE ─ Heartbeat Verification System ─ by Megumu Hanayama」
・Site-specific AR 部門:
「Immersive Novel by カミエナ」
GOLD PRIZEの受賞者には賞金5,000USDが贈られ、企業賞を受賞した受賞者は賞を贈った各社とコラボレーションを行う権利が得られるとのことです。
印象的だったのは、Spatial Computing 部門 GOLD PRIZEを受賞したMegumu Hanayama氏は元々サウンドアーティストとして活動していて、XR作品の制作に着手するようになったのは「NEWVIEW SCHOOL 2024」の受講を通してだったとのこと。そこから、たった1年以内でSTYLYやUnity等の制作ツールを使いこなせるようになり、さらには本アワードでGOLD PRIZEを受賞するという流れには驚きです。
また、Site-specific AR 部門 GOLD PRIZEを受賞したカミエナ氏は、元々インディゲームクリエイターとして活動していたとのこと。従来の自身の経験や視座を生かしつつ、そこにVision Proの持つリアルアイムな場所性の要素を大いに取り入れてゲーム性とストーリー性のある作品を構築していたところには、実現可能性の高い未来の潮流を感じました。
評価すべきNEWVIEWの変わらない理念、そして次なる課題
著者のNEWVIEWのイベント参加は2019年以来でしたが、その間XR業界内では様々なトレンドが勃興し、国内の潮流の変化もあり、そしてコロナ禍もありました。
ただ、今回NEWVIEW FESTに参加して感動したのは、良い意味でそういったトレンドや潮流、社会情勢に左右されすぎず、初期からのNEWVIEWプロジェクトの理念や気概が今日に至るまで貫かれていると感じられたことです。
私が今回のイベントを通じて感じたNEWVIEWプロジェクトの理念や気概、それはアーティスト個人の能力や表現を、XR技術によって拡張すること、それから既存のXR関連企業やクリエイターに限らない企業や個人を巻き込んで、これまでにない新たな潮流を生み出そうとしている点です。
プログラマーや3Dモデラーとしての素養が元々ある訳ではないクリエイター・アーティストもXR作品に挑戦できる機会を提供するため、STYLYという制作ツールとプラットフォームを用意し、NEWVIEW SCHOOLというXR表現を学べる場とNEWVIEW FESTという発表の場を設け、それらがきちんと功を奏している、そのことは、NEWVIEW SCHOOL生による卒業展示やNEWVIEW AWARDS 2024のファイナリストの作品群を見れば明らかなことで、実際個々のアーティスト達が元々専攻している表現を礎に完成させたXR作品は新鮮な作品ばかりでした。
個々人の実現したい表現がはじめにあり、そこに芸術的な視座も伴っていて、しかもそういった個人の表現が、「企業にとって経済的な価値を帯びるエンタメ足り得るか?」ということよりも先行して重視される、そんな企業主催の場の存在そのものが、2025年の日本にとって大きな意義と将来への可能性のあることだと感じました。
また、特にコロナ禍の時期は「気軽に外出できない」という社会情勢も相まって「インターネット上のバーチャル的空間にどう人を引き込んで行くか」という方向性での発展が全体的に目覚ましかったですが、それに対してNEWVIEWは「コロナ禍以後の再び外出の規制がなくなった社会で、かつ、VRヘッドセットや空間コンピュータの内蔵カメラの画質の全体的な向上を背景としながら、現実空間を生きる生身の人間に対して、どのようにXR技術・表現をまとわせていくか」という試みを加速させようとしている印象で、コントローラレスで、軽量なデバイスであるところのApple Vision Proのみを今回の体験機に選んでいるところからもそれを感じられました。
ただ、そういったNEWVIEWの根本的な姿勢や、その姿勢の元で生まれた作品群が素晴らしかっただけにややもったいないと感じたのは、展示スペースと体験機、両者共にかなりの制限があり、かつほとんどの作品体験が予約制で、「渋谷でふらっと展示会場を通りがかって興味を持った人が気軽にXR作品を体験できる」という雰囲気ではなかったように感じられた点です。
作品概要のパネルや、モニターを使っての作品映像の展示はありましたが、特にApple Vision ProやVRを経験したことのない人が、実際の体験なしに、あれらの展示パネルや映像からのみで作品の本質的な面白さを想像できるかというと、なかなか難しいところではないでしょうか。仮に体験機やスペースを増やすこと自体が難しかったとしても、なんとかもう少しそれぞれの作品世界を立体的に感じられるような施策が欲しいところでした。
また、体験機のApple Vision Proはコントローラレスかつ軽量で自由に動き回れるというところに大きなアドバンテージがあり、その点を大いに生かした作品も見受けられましたが、今回の展示スペースではそこまで自由には動き回れず、鑑賞者側はその恩恵を感じにくかったという点も惜しく感じられました。
しかし、そういったもったいなさを感じつつも、この規模のイベントを、多数の企業を巻き込みながらリアルイベントとして継続的に開催出来ているということ自体に最大の価値があるというのはもちろんで、NEWVIEWはプロジェクトとして現状やれる最善を尽くした結果、今回はこの形の展示になったのではないかという可能性についても想像はできます。が、それでもなお、NEWVIEWの今後に期待します。この新しい景色がいつか日常の風景になる日まで。







