Metaは2025年9月末にディスプレイ付きのAIグラス「Meta Ray-Ban Display」を発売した(※日本未発売)。
予約してから店頭でデモを体験しないと購入できないというハードルの高さ、発売直後の情報の錯綜などもあったが、筆者もデモを予約。10月上旬に渡米して、なんとか無事に実機を体験&購入することができた。
本記事では、購入直後の開封と簡単なインプレッションをお送りしよう。
サイズと色でパターンが分かれる
「Meta Ray-Ban Display」は発売当初から、購入にまつわる情報が錯綜しており、筆者も嫌な予感がしていた。記事を公開している11月上旬でも在庫がなくなっていたりと、混乱は続いているようだ。
筆者も類にもれず、購入するまで一悶着も二悶着もあったのだが、その話はPodcast「もぐラジオ」で詳しく話しているので、ぜひそちらをお聴きいただきたい。
記事では、まずモデルについて紹介しよう。
Metaの他のAIグラスと異なり、Meta Ray-Ban Displayのカラーバリエーションは、ブラックとサンド(薄茶色、透明)2色。そしてレンズも専用のTransition (調光)レンズのみだ。

(店頭で2色を撮影。上がブラック、下がサンド。グラス本体だけでなく、ケース、リストバンドコントローラーも色が統一される)
一方、各個人にフィットさせるために2系統のサイズが存在する。
1つ目が、グラスのサイズで、スタンダードとラージの2種類。これは顔の大きさに合わせて購入することになる。サイズが合わないと締め付けがきつかったり、逆にずり落ちてしまう。
そして、2つ目がコントローラーとなるリストバンド「Meta Neural Band」のサイズだ。こちらは手首の太さに応じて3サイズが用意されている。
ということで、「Meta Ray-Ban Display」には、全部で2色×本体2サイズ×バンド3サイズの12パターンがあるというわけだ。
サイズについては、購入のために店頭でのデモが必須となっていることもあり、選択の余地はほぼない。その場でフィットしたものをそのまま購入することになる。
だが……これもまた在庫切れを引き起こす原因になっているようだ。もっとも一般的な「スタンダード&サイズ2」を多めに在庫しているようだが、どうしても欲しいユーザーとの間で、在庫の残っているサイズを買うことも起きているとかいないとか。
ちなみに筆者が購入したのは、「色: サンド、本体サイズ: スタンダード、バンド: サイズ1」だ。デモの際に、本体サイズはラージも試したが、ただでさえ鼻が高い欧米人向きなこともあってズリ落ちやすい。ラージはさらに落ちてくるので選択肢から外れた。
なお、矯正レンズを購入するにはディスプレイを搭載している関係でMeta Ray-Ban Display専用レンズを作る必要があり、追加で100ドル払うことに加え、店頭での購入時点からフレームに組み込まれて手元に届くまで数週間かかる。メガネユーザーだが、翌日には日本に帰らなければならない筆者は、矯正レンズを泣く泣く諦めて購入した。
見た目はほぼRay-Ban Meta
さっそく開封していこう。
こころなしか大きめの外箱を開封していくと、腕に装着するリストバンド型コントローラー「Meta Neural Band」の小箱が現れる。メガネの外箱にしては大きかったのは、このバンドの分だった。
そしてMeta Ray-Ban Display本体。柔らかな革製ケースに入っているため、第一印象は非常に柔らかい。
本体はやや分厚いサングラスといったところ。Ray-Ban Metaなどディスプレイ非搭載のAIグラスと並べるとやや全体的に分厚いことが分かる。人によるようだが、筆者は数時間つけていてみたが、厚みや重さは気にはならなかった。

(どちらがMeta Ray-Ban Displayか分かるだろうか? 右は2025年8月に発売されたOakley Metaだ。左のMeta Ray-Ban Displayのほうがフレームが全体的に分厚い)
ケースは充電ケースを兼ねているほか、グラス使用時は畳むことのできる画期的な機構となっている。空のケースはグラスを使っているときにカバンの中で潰れてしまいそうになるので、地味ながら非常に嬉しいポイントだ。
799ドルとMetaの他のAIグラスと比べても2倍程度の価格ということもあり、クリーニングクロスや充電ケーブルが付属してくる。全体的にリッチな印象を受ける。
そして、コントローラーだ。
腕時計のバンドのような素材で肌触りは良好。ただし、装着する位置、手首に巻くときの方向、そして締め方はシビア。いわゆるキャリブレーション(調整)をすることなく。誰でも使えるということもあって、しっかり装着することが重要だ。
肌触りがいいとはいえ、さすがに長時間つけたあと外すと、跡はついていた。
使用感は良いが……
Meta Ray-Ban Displayで何ができるのか紹介していこう。基本的には、Ray-Ban Metaなど、これまでのMetaのAIグラスでできたことは全部できる。そのため、ディスプレイが加わったことで、何が変わったのかという点がポイントになる。
MetaのAIグラス全般でできることといえば、自分目線の写真・動画撮影、オーディオ、通話、AIをアシスタントにした音声でのリアルタイム通訳や視覚・聴覚の拡張だ。
ディスプレイが加わることで、これらの機能がさらに強化されるとともに、できることが増えている。
・写真/動画
撮影前のプレビューや撮影後の確認が可能に
指を使った操作で撮影前に2xまでズーム可能
撮った写真と動画の閲覧・メッセージ
メッセージを見て音声入力で返す。操作で通話をかける、写真を送るなど
対応しているメッセージアプリは、メッセンジャー、WhatsApp、InstagramのDMのみ・電話
電話帳から連絡先を探して通話・リアルタイム字幕/翻訳
目の前にいる人を見ると、フォーカスして字幕表示
英語からスペイン語など翻訳も可・地図
目的地を検索して指定し、歩いている方向に対して3Dでガイド表示・ミニゲーム
リストバンド型のコントローラーでの操作は上々だ。もう少し反応速度が速いと嬉しいが、この手のコントローラーで頻発する誤操作は驚くほど少ない。いきなり製品化したデバイスで、限られた操作ではあるが、デバイスとしての出来の良さを感じる。
そして600×600という解像度の割には表示面積を活かして画素密度は高く、表示はかなりくっきりと見える。
処理能力についてはまだまだだ。UIを操作している時だけでなく、動画撮影直後や動画再生時など明確に動作が重くなってもっさりとなるタイミングは比較的あった印象だ。
また、スマホとのBluetooth通信でやりとりをしているため、メッセージの送信などはBluetoothの具合にも影響を受ける。スマホを別途イヤホンなどに繋いでいるときは注意したほうがいい。
気になる点はあるものの、おおむね快適でストレスなく使えるという意味で、ハードウェアとしての完成度は高く、使用感は良いと言える。
特に、筆者の印象に残った機能は、メッセージ、字幕表示そして地図だ。メッセージと地図はスマートフォンを取り出す回数が明らかに減るほどしっかりと役割を果たす。そして、字幕表示は、精度が高く、表示スピードが速いため、米国滞在中は常に使いたいと思うほど。
機能が一般的に使えるようになれば、文字通り「スマホ代替」の未来が見えてくることは間違いない。それを感じさせるハードウェアであり、機能であり、ユーザー体験を実現しているという点でMeta Ray-Ban Displayは評価できる。
しかし、最も気になったことがある。
それは、本当にこのデバイスをちょっと触って感じた便利な生活が本当にMeta Ray-Ban Displayで日常的に実現するのか? という点だ。
まず気になるのはメッセージ関連の機能。目線を手元に落とすことなく、メッセージのやりとりも通話もできるのは非常に便利だし、スマホを開く回数が減るのは間違いない……。
だが、対応しているのは、Metaのファミリーアプリと呼ばれる3つのアプリのみ。メッセンジャーとWhatsApp、InstagramのDMだ。確かに数多のメッセージアプリの中でこれらを使わないことはないが、SMS、LINEもXのDMもDiscordもLinkedInもない。SlackもなければTeamsもない。
筆者は色々なやりとりで比較的メッセンジャーを使っているので、まぁいいかと使ってみた……が、MetaのAIグラスは日本に未展開、つまり日本語入力に対応していないので、英語の入力しかできない。
メッセンジャーアプリは、国・地域(文化圏)や世代、用途によって多様化しているし、全てのやりとりを1つにまとめるのではなく、複数使うのが当たり前だ。日常的に使っているメッセージアプリの多くが対応して初めて「便利」と思えるようになるだろう。
ちなみに写真や動画の機能拡張も興味深いが、筆者がMetaのAIグラスで最も気に入っているのは「撮りたい瞬間にスマホを取り出さずに撮れること」だ。見え方をプレビューしながら、ズームを調整しながら、撮りたいわけでない。それならスマホを取り出した方が速くて楽だし、性能も良いからだ。
そして、公称6時間とされているバッテリーはディスプレイを使えば使うほど早く減っていく。Metaの他のAIグラスはバッテリーの持ちが改善されたモデルが登場して、1日中はずさなくても良いくらいになってきたが、Meta Ray-Ban Displayはまだ途中ではずさないとならない。
AIグラスを未来を感じるためではなく、実用目的で購入するなら半値のRay-Ban MetaやOakley Metaの方が適している人は多いだろう。
ディスプレイは非常に重要だし、ほとんど形状に影響を与えることなく実現するには、高い技術がなければならない。そういう意味ではMeta Ray-Ban Displayは第一世代機なのだ。
筆者は、Ray-Ban Metaの前世代機、Ray-Ban Storiesを思い出した。爆発的に売れたRay-Ban Metaとできることはほぼ同じだったが、カメラの解像度やバッテリーの持ちなど、性能が足りず、使い勝手もかゆいところに手が届いていなかった。それ故に、面白いメガネの範疇にとどまっていた。
その2年後に進化したデバイスRay-Ban Metaが登場して一気に広がったことを考えると、Meta Ray-Ban Displayも将来性に期待といったところだろうか。
Meta Ray-Ban Displayは、ディスプレイ付きAIグラスのハードウェアとしての完成度と、そのポテンシャルを十分に示している。
一方、開発者キットが登場する予定がまだ不透明なことから、メッセージアプリを始めとするアプリ不足の状態が現行世代で打開されるのかは分からない。
筆者のひとまずのインプレッションの結果はここまでとなる。日常的に使用してみて、また感想は変わっていくかもしれない。
ディスプレイ搭載AIグラスの時代はまだ始まったばかりなのだ。










