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VTuber 2019.01.01

キズナアイ1stライブ「hello, world」徹底レポ!加速する“バーチャル×音楽”の可能性

2018年12月29日、キズナアイの1stライブ「hello, world」が、Zepp ダイバーシティ東京(2500人規模)にて開催されました。イベントには、キズナアイに加え、DE DE MOUSEさん、sasakure.UKさん、Norさん、Yunomiさん、☆Taku Takahashiさん、MATZさんらプロデューサー陣も登壇。

物販にDJライブ、そして今回の主役・キズナアイによる歌にダンスと盛りだくさんな内容となっていました。物販開始からライブ終演まで現地で取材を行った筆者が当日の模様をレポートとしてお届けします。また、最後にはバーチャルYouTuberの音楽シーンの総括をしていますので、そちらもぜひご一読を!

歌にダンスにMC、キズナアイはすべてに全力!

6月に行われた生誕祭イベント「A.I. Party! ~Birthday with U~」から着々と準備を進めていたのが、今回の1stライブ「hello, world」です。ライブイベントに先駆け、9週連続楽曲をリリース。そして、iTunes storeのエレクトロニックチャートでは全曲1位を獲得したことから、ファンがイベントへ賭ける想いもきっと大きかったことでしょう。

会場のZepp ダイバーシティ東京では、13時から物販が開始。事前の告知動画では、「リングライト10個分買って両指につけるのオススメ!」「『new world』のホイッスルを吹くところで一緒に吹いてね」と紹介していました。

16時半までのあいだ、途切れることなく列が形成され、なかでも目立っていたのがコミックマーケットからハシゴして会場に来ているキズナーの多さ。キズナアイの紙袋を片手に並んでいる様子からは、本当に彼女を好きなことが強烈に伝わってきました。


▲また、物販エリアには、発売予定の新衣装フィギュアも2点展示されていました。

16時半からはいよいよライブに向けて列形成。キャパシティがおおよそ2500人ほどなため、会場入り口には多くの人がライブへ胸を膨らませながら開場を待ち望んでいました。


▲キズナーからキズナアイへ1stライブ開催を祝うフラワースタンドも贈られていました。

17時より開場し、ライブ会場にはMATZさんの姿が。「Wake Me Up」「No Money」などのDJシーンでは定番な楽曲で場を温めると、DE DE MOUSEさんへバトンタッチ。身振り手振りで観客を煽りながら開演前にも関わらず一体感を生み出していました。

10分ほどキズナアイが着付けに時間がかかってしまったものの、DE DE MOUSEさんが場をさらに盛り立て、彼女の登場を待ちます。定刻となると、「Hello,Morning」からスタート。待ちに待ったライブなだけに、キズナアイの姿が見えるやいなやボルテージはマックスに。

普段は白い虚無の空間からエンターテインメントを届けている彼女が、リアルワールドを訪れて別の楽しみをプレゼントしてくれる……、それだけで感動的な光景が広がっていました。

「金曜日のおはよう」「new world」と続き、フロアは熱狂の渦に巻き込まれます。また、「new world」では物販のホイッスルを購入していたキズナーが楽曲に合わせて笛を鳴らしてテンションも上がりまくり。

今回のライブは、キズナアイが楽曲を歌う合間合間にプロデューサーがDJライブを行う、独特な形式で進行していきました。Norさんはアニソンやボーカロイド、MATZさんはEDMと、それぞれプロデューサーの色が出る曲をチョイス。会場は徹頭徹尾、キズナアイによるライブではないことを最初は困惑しているような様子もありましたが、次第に適応してノッていく様子がうかがえました。

キズナアイがMCで「クラブに行ったことがある人~?」と尋ね、ほとんどの観客が手を挙げていませんでした。しかし、会場が揺れるほど熱狂していたのを見るに、エレクトロニックな曲で構成されることの多いDJライブとバーチャルYouTuberは、“電子”という繋がりがあるからこそ盛り上がれたのかもしれません。

これまでリリースしてきた楽曲を、キズナアイはキレッキレのダンスにかわいらしい歌声で次々披露していきます。楽曲の合間には、これまで発表してきた衣装に着替え、そのたびに会場からは歓声が起こっていました。今回のライブのために特注していた新衣装もお披露目し、W&Wの楽曲ではブロンドヘアに! オフショルダーにガチャベルトと、流行りのコーデでキズナーを魅了していました。

MCでは、単独ライブの開催を不安に思っていたことも語られましたが、ファンの笑顔や声を聞いたら安心できたとコメント。また、「これからも一緒についてきてくれますか?」と会場へ向けて発言すると、会場のファンはもちろん「はーい!」と元気よく回答していました。

一通り楽曲を披露し終えると、「ありがとう、キズナアイでした!」と締め、ステージ上から姿を消します。

120秒ほどのアンコールを経て、再びキズナアイが登場。「アーティストの集合写真が撮りたい」とお願いし、会場のファンを巻き込んで写真撮影も行いました。「(現実世界に行けないから)真ん中にスペース空けといて! あとで科学の力でなんとかするから!」と、一緒に撮れないことを悔しがりながらプロデューサーとキズナーでハイチーズ!

記念撮影を終えると、キズナアイからは「なにか聴きたいものはないかな?」と尋ねられます。すると、会場からは「アブラハム!」との声が。「アブラハムは雰囲気ぶち壊しでしょ!」と、ごもっともな発言で返答します。

「ちょっと前にある楽曲のショートバージョンを公開したよね?」と告げると、会場からは「おおっ!?」と期待するような反応が起こります。その楽曲「AIAIAI」をここで初披露してくれるというサプライズが待っていました。楽曲が始まると、ライトもAIと点灯する仕掛けが。

中田ヤスタカさんらしいテクノポップのかわいらしさ溢れる曲で、それはキズナアイと非常にマッチしていました。そして、アンコール最後の楽曲は「Hello, Morning (Pa’s Lam System Remix)」。すべての始まりだった「Hello, Morning」からライブがスタートし、「Hello, Morning」で終わる……、言葉では言い表せない感情で会場中を包み込んだことでしょう。

すべての楽曲を披露し終えたキズナアイは「キズナアイでしたー!」と最後にあいさつし、次の大阪会場へ向かっていきました。

バーチャル×音楽はまだまだ可能性を秘めている?

ここからは、バーチャルYouTuberの音楽シーンを追い続けてきた筆者による2018年の総括をお送りいたします。今思えば2018年は、バーチャルな存在が音楽に可能性を見出した年でもありました。

特に顕著になってきたと感じたのが、「A.I. Party! ~Birthday with U~」が開催された6月あたりから。それまで音楽に特化したバーチャルYouTuberと言えば、富士葵やかしこまりを筆頭にごく一部だけでした。6月は音楽オンリーのYuNiの登場やキズナアイがオリジナル楽曲を披露したことなど、業界を取り巻く環境としてはやはり大きな転機だったと言えるでしょう。

その後、天神子兎音なども有名コンポーザーから楽曲提供され、オリジナル曲を歌い始めます。この流れは次第に加速していき、歌ってみたを投稿するバーチャルYouTuberやYuNiのように音楽だけに注力するバーチャルYouTuberも日を追うごとに増え続けていきました。

歌の需要が増えてくるにつれ、今度はライブ展開なるものも告知されるようになりました。たとえば、「ニコニコ超パーティー」では総勢11名ものバーチャルYouTuberが登場し、歌を披露するというシーンもあり、彼女たちの姿を一目見ようと多くのファンが駆けつけていたのが今でも思い出されます。VRアイドル「えのぐ」も、クオリティの高いVRライブを数多くこなしてきているのも印象的です。

そして、2018年は輝夜月によるcluster上でのイベントを皮切りに、リアルとバーチャルどちらの音楽イベントも可能性を秘めていると感じた瞬間でした。YuNiのVRライブでは、YuNiが歌詞に合わせて目の前に現れるアッと驚くような演出。キズナアイの1stライブは、人間とバーチャルな存在との調和のとれた共演。

このふたつ以外にも多くの音楽イベントを体験してきましたが、そこから見えた景色として、バーチャルは現実世界では体験できないような演出面での施策が増えるに違いありません。Oculus Questのようなスタンドアローン型のデバイスも増えることで、VRイベントの選択肢も2019年は増えていくはずです。

そしてリアルは大規模なイベントだと人間と手を取り合うようなシーンが増えていくように感じています。これは、2019年の1月に行われる「Kaede Higuchi 1st Live “KANA-DERO”」で、樋口楓がバンドと共演することも踏まえての予想になります。

また、キズナアイのライブへ訪れた観客を見てみると、ボーカロイドのグッズを身に着けていた来場者もうかがえたように、やはりどこかで人間と魂を宿したバーチャルな存在が立ち並ぶ姿を見たい人も多いのかと思われます。もちろん、筆者もそういった景色を見てみたいという願望も含めての意見なのですが。

さて、イベントではなく、2019年におけるバーチャルYouTuber全体の音楽シーンはどうなるのか。年末に行われたV紅白歌合戦で登場したバーチャルYouTuberが着実に伸びているのを見ると、見つけられていない原石が多く眠っていると誰しもが感じたでしょう。バーチャル×音楽は可能性の塊で、そしてまだ始まったばかり。そのことから、計測できないほどの伸びしろがまだまだあるはずです。

寂しくなる話題の連続で落ち込むことの多かった年末でしたが、それ以上に未来ある出来事も数多くありました。これからなにが起こるかわからない、だからこそ面白い業界ではあるので、ぜひとも後悔のないよう、最後まで自分の推しを推しまくっていただきたいです。


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