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VTuber 2018.10.20

バーチャルライブ配信アプリ「IRIAM」実際に試してみた

VTuber(バーチャルユーチューバー)の配信プラットフォームが次々に増え、ユーザー側が「追っかけ」に苦労しつつある今日この頃。筆者がパッと思い浮かぶだけでも、「YouTube」に始まり、「SHOWROOM」や「OPENREC.tv」「ニコニコ生放送」「nicocas(ニコキャス)」「ツイキャス」「17Live」「Mirrativ」「REALITY」「Colon:」等々、数多くのプラットフォームが登場しています。

そんな中、10月3日にVTuber専門の配信プラットフォーム「IRIAM(イリアム)」のiOS版が正式リリースされました。本日はこの「IRIAM」について紹介していきたいと思います。

そもそも「IRIAM」って?
60名を超えるバーチャルYouTuberが参加!
IRIAMのUIと使用感
IRIAMと他の配信アプリとの決定的な違いとは
IRIAMの「超低遅延」は様々な人々の力で実現。今後は3Dも?

そもそも「IRIAM」って?

「IRIAM」は、VTuber事務所「ENTUM」を運営する株式会社DUOからリリースされた、VTUberのライブ配信視聴アプリです。配信を視聴するためのアプリであり、Mirrativなどのように誰もが配信するタイプのものではありません。

IRIAMが発表されたのは2018年5月。ティザー動画ではミライアカリや猫宮ひなたなどのENTUMメンバーが映っていますが、2018年10月現在、実際にリリースされたアプリではLive2Dを使用した2DVTuberのみが配信を行なっています。

60名を超えるバーチャルYouTuberが参加!

IRIAMのリリース予定が告知されたのは2018年9月初旬であり、同時に70名のVTuberの参加が発表されました。その半分はIRIAMと共にデビューした専属の新人VTuber、もう半分はすでに活動を続けている個人系のVTuber達です。

IRIAMのUIと使用感

アプリを開いて最初の画面がこちら。各ライバー達が配信時間順にがズラリと並んでいます。配信時間はIRIAM側でスケジューリングされており、大体20時〜深夜1時あたりまで。1時間刻みで、一斉に配信が行われる形です。複数人の配信者を同時に見る、いわゆる「複窓」での視聴をすることはできません(端末が複数あれば可能です)。

ライバーの画像をタップすると配信画面に移動します。イメージとしては「IRIAM」という建物の中で何人ものキャラクター達がお喋りをしていて、好きなキャラクターの部屋に入る、という感じでしょうか。前述した通り複窓ができないので、別の配信を見たければページを閉じて行ったり来たりすることになります。

配信ページですがの画面上部に表示されているのは左上から順に「配信者の名前」「視聴者数」「視聴者から送られたギフトのポイント総計」になります。

画面下部は、左から順に「コメント機能」「シェア機能」「ギフト(投げ銭)機能」「スター機能」です。スターのボタンを連打すると画面に星が放出されますが、カウントされているわけではないようです。

配信者の中には画面右に放出したスターを食べようとするお茶目な人もいたりしますので、とりあえず端末を持つ親指を持て余したらスターを連打してみるといいかもしれません。ちなみに各配信で初めてスターボタンを押した際には「○○さんがスターをあげました」というテキストがコメント欄に流れます。

こちらは配信者へ送ることができるギフトの一覧です。200円〜10,000円までのギフトが並んでいます。

ギフトを送信すると、送ったギフトによって様々な演出が起きます。例えば花束を送れば、配信者がそれを咥えるような仕草を見せてくれることもあります。

IRIAMと他の配信アプリとの決定的な違いとは

IRIAMには他の配信アプリとは大きな違いがあります。これまでの配信アプリは、ほぼ全てにおいて「動画」を端末に送信する形式でしたが、 IRIAMでは「モーションデータをリアルタイムに端末に送信する」という「モーションライブ方式」というシステムが搭載されており、このシステムによって「低遅延」「低通信量」「高画質」を実現しています。



「モーションデータを送信する」ということについて、もう少し噛み砕いて解説していきましょう。この場合の「モーションデータ」とは、Live2Dのキャラクターをリアルタイムに動かす際に必要な「顔の動き」のデータになります。配信者の顔の動きをカメラに認識させそのデータをモデルに反映することで、キャラクターをリアルタイムで動かす、という流れです。Live2Dで活動する多くのVTuberが利用中の「FaceRig」というアプリケーションも、こうしたシステムで動いています。


(FaceRigのデモ動画より。画面左側がインカメラで、男性の顔の輪郭や眼などをカメラで認識、右側のキャラクターに反映している)

しかしながら、「Facerig上で動いている画面をキャプチャして動画データとして配信プラットフォームに送る」というシステムとなっているため、視聴者側の画面に表示されるまはで早くても数秒のラグがありました。例えYouTubeなどでコメントがほぼリアルタイムに送られていたとしても、それに対するリアクションは5秒以上遅れて返ってくることになります(Mixerなどの超低遅延配信サービスでも、多少は遅れるでしょう。何より使う通信料が大きくなります)。

 一方IRIAMでは、キャラクターのモデルデータがはじめからアプリ内に格納されており、配信者側から送られたモーションデータによってアプリ内のキャラクターが動くシステムになっています。つまり、視聴者が見ているのは「配信」でありながら「動画」ではない、という形です。あくまでキャラクターの動きは各端末にインストールされたIRIAMのアプリによって処理されているのです。

配信者側から視聴者の端末に送られるデータは大きく分けて「モーションデータ」、「音声」、「テキスト(コメント)」の三つのみ。キャラクターの動きは端末で処理されるのでほとんどラグは無く、画質の劣化も起きません。同時に音声とコメントは通話やチャットの速度で行き来することになります。結果として、前述した「低容量」「低遅延」「高画質」が実現されています。

なにより「低遅延」は視聴者が最も強く体感するメリットです。コメントやギフトを送ってからリアクションが返ってくるまでの時間は0.3秒ほど。完全なリアルタイムに限りなく近いと言っていい感覚です(YouTube配信のラグに慣れていた身としては、むしろ早すぎて不気味に思ったくらい)。

IRIAMの「超低遅延」は様々な人々の力で実現。今後は3Dも?

IRIAMのプロダクトマネージャー兼デザイナーである坪田氏のブログによれば、IRIAMが様々な技術者やデザイナー、企画者によって作られたプラットフォームであることがわかります。キャプチャを見るとアルファ版には3Dモデルも映っており、今後のアップデートと共に、ミライアカリや猫宮ひなたなどの3DのバーチャルYouTuberが登場する可能性もあるかもしれません。

筆者自身は高速通信である「5G回線」の登場が配信のラグを解決すると考えていましたが、5G回線が一般に普及するのは2年後(2020年)以降とされています。その登場の前にモーションライブ方式という「工夫」によってここまでのリアルタイム感を得たIRIAMは、数ある配信プラットフォームの中でも特に興味を惹かれるものでした。


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