8月27日、株式会社ハコスコは「Insta360新製品 タッチ&トライ」を渋谷ヒカリエで開催しました。同イベントは、ハコスコ社が国内代理店として販売する360度カメラ「Insta360 Pro2」の国内初披露の場として、Insta360のメーカーであるShenzhen Arashi Vision社CEOのLiu Jingkang(以下、JK氏)がセッションの登壇と実機デモ展示に自ら立ち、来場者と交流を行いました。
Shenzhen Arashi Vision社のメンバー。写真中央がCEOのJK氏
「Insta360 Proはザク、Insta360 Pro2はグフ」(ハコスコの藤井代表)
「Insta360新製品 タッチ&トライ」のセッションでは、Insta360のJK氏と株式会社エクシヴィ 代表取締役社長の近藤 GOROman 義仁氏、東京芸術大学美術学部 准教授でメディアアーティストの八谷 和彦氏、ハコスコ社代表取締役の藤井直敬氏の4名が登壇しました
4人でのセッションの前に、ハコスコ社の藤井氏からInsta360新製品の説明が行われました。Insta360のJK氏が説明をしない理由は「JKがシャイだから」と藤井氏。今回のJK氏の来日はプライベートなものとのことです。JK氏が8月25日に開催された「VRクリエイティブアワード」へ参加したことやInsta360 Pro2で東京の風景を撮影していたことが紹介されました。本イベントのデモ展示で使用した東京の8K3Dの360度映像は、JK氏がイベント前夜に徹夜で編集した映像であることも話題に上がりました。
藤井氏はOculus Goの人気によって、これからのVRはハードウェアとユーザーとコンテンツクリエイターが、これまでよりもさらに良いサイクルで発展していくだろうと説明し、良い意味で「VRは曲がり角に来ていてる」と指摘。そういった状況の現在、VRの発展に一番重要なのはクリエイターの存在だとInsta360は考えていると話し、Insta360のミッション「VR映像制作を従来の映像作品と同じくらいシンプルに」が紹介されました。
先日発表されたばかりのInsta360 Pro2ですが、藤井氏は実機で一通りテストを行なったとのこと。見た目は似ている両機ですが「(ガンダムの)ザクとグフぐらい違う(Insta360 ProがザクでInsta360 Pro2がグフ)」と藤井氏は説明しています。
ハコスコ藤井「Insta360 Pro とPro2 は見た目は似てるけど全然違う。ザクとグフぐらい違います」 #insta360 #ハコスコ pic.twitter.com/jVmPcOhknS
— ハコスコ (@hacosco) 2018年8月27日
Insta360 Pro2は最大ビットレートが3倍に
前モデルのInsta360 Proも「今年の猛暑の甲子園球場で撮影しても安定して駆動した」(藤井氏)と、屋外撮影にも耐えられる360度カメラです。ただし、本体マイクによる録音は音割れしやすい弱点がありました。この本体マイクの弱点はInsta360 Pro2で改善がされ、音割れしにくくなった、と藤井氏は説明しました。
また、大きな違いとして指摘されたのがInsta360 Pro2は1枚のSDカードではなく、6個の各センサーごとにmicro SDカードに保存される点です。6個のmicro SDカードに動画を保存することでビットレートを最大120Mbpsまで上げることが可能になりました。Insta360 Proの最大40Mbpsから3倍になり、かつ書き出しエラーも少なくなり安定したとのこと。
ただし、6枚のmicroSDを使うため簡易性は減ってしまいましたが、スペックアップとのトレードオフは避けられない旨が語られました。Sambaサーバーへのサポートにも今後対応し、カメラからUSBケーブルとLANケーブル経由でデータ転送ができるようにするとのことです。
映像の画質の向上に加えて、Insta360 Oneに搭載された同社独自のスタビライゼーション「FlowState」が、Insta360 Pro2に実装されています。藤井氏は待望の「FlowState」実装と話しました。
筆者もJK氏がInsta360 Pro2を持ち歩いて撮影した3D8Kの360度動画(上述したJK氏が徹夜で編集したもの)を体験したところ、自撮り棒を持って歩いた動画でも揺れのほとんど無い映像で、映像の画質の向上も相まって一目でInsta360 Proでは無いと違いが分かるほどレベルが高いものでした。
また、Insta360 Pro2によるライブストリーミングの最大解像度は4Kですが、自動的に8Kの動画がローカルに保存されるとのこと。これも実装されて便利になった機能の1つだと挙げました。
スマホで3D8Kの360度動画を視聴可能なプレーヤー「CrystalView」を体験
そして気になるのが国内価格です。Insta360 Pro2の国内価格は680,000円(税込)であることが明かされました。
Insta360 Proの現在の国内価格は約400,000円(税込)なので、1.5倍以上です。ただ、Insta360 Pro2には遠隔コントロールシステム「FarSight」が付属します。Insta360日本マーケティングマネージャーの李氏によると「コストパフォーマンスはInsta360 Pro2の方が高い」とのこと。
「FarSight」は最大3,000mのリアルタイムモニターが可能で、遅延は0.5秒から1秒程度のこと。モニタリングの解像度はFHDです。
Insta360の“新製品”の発表会でもう1つ説明されたのが、同社独自の再レンダリング技術を使った360度動画視聴プレイヤー向けシステム「CrystalView」です。CrystalViewは同社のブログで今年5月に発表されていましたが、今回のイベントでデモ展示され、多くの体験者から、その高解像度に驚きの声が上がっていました。
筆者が体験したのはiPhone8を使ったモバイルVRゴーグルで、iPhone8程度の性能のスマホであれば3D8Kの360度動画を再生できます。Insta360 Pro2とCrystalViewを組み合わせた3D8Kの360度動画は「現実と同じくらいの解像度」という印象を受けました。
またCrystalViewは、iOS/Androidスマホ、Gear VR、Oculus Go(3D360度動画は6K、2D360度動画は8Kで再生可能)、Picoなどに対応とのこと。さらにSDKの配布についても検討していることが明かされました。
「Insta360のハードウェアはドラクエのようにレベルアップしていく」(GOROman氏)
説明会に続いて行われたセッションでは、insta360製品のユーザーでもある八谷氏とGOROmanこと近藤氏も登壇し、各人からInsta360製品の感想や印象が語られました。
八谷氏はInsta360 Pro2によるライブストリーミングとCrystalViewが特に興味があると話した
『風の谷のナウシカ』に出てくる小型飛行具「メーヴェ」を具現化した(「オープンスカイプロジェクト」)メディアアーティストの八谷氏は、自ら操縦する「メーヴェ」にInsta360 Oneを取り付けて、飛行の様子を映像に収めています。
https://www.youtube.com/watch?v=bNBDmkPI85E
「メーヴェで鳥と一緒に飛んだりすると、ナウシカみたいでとても気持ち良いのですが、実際にどんな感じ方で空を飛んでいるのかを周りにシェアするのが難しかったんです。それがInsta360 Oneのような全天周の360度カメラで撮った映像を使うと、分かりやすく伝えることができるようになりました。YouTubeにアップすると『どんなカメラで撮ってるんですか』とびっくりされることが多いです」(八谷氏)
GOROman氏は「Insta360の製品は発売初期はバグが多かったりするが、ファームウェアのアップデートを早いサイクルで繰り返すことで製品の完成度が上がっていくのが特徴。Insta360 Oneがファームウェアのアップデートで『FlowState』が実装されスタビライゼーションが大きく向上した時は、別のカメラに生まれ変わったように感じた。タダで後継機を手に入れたような感じで、ハードウェアがドラクエのようにレベルアップしていく過程が面白かった。(ソフトウェアがアップデートしていくように)ハードなのに柔らかい、変化していくのを楽しめるカメラ」とユーザーとしての視点も交えてInsta360の特徴について話しました。
来年リリースに向けて5つ以上の新製品を開発している
JK氏はセッション最後での質疑応答で、現在5つ以上の新製品を開発していることを明かしました。これらは来年発売に向けての開発を行っているとのことで、5つ全てが360度カメラであるかは不明です。しかし、JK氏が6K動画撮影できるコンシューマー向けの小型の360度カメラを開発していることについて言及したことから、来年発売に向けて開発中の新製品の中に、360度カメラも入っていることは間違いなさそうです。
今年のCES2018で発表されたプロフェッショナル向けの最上位機種Insta360 Titanについても、JK氏は新情報を明かされました。CES2018では、Insta360 Titanは最大10Kと発表されていましたが、最大11Kに解像度を上げていくとのこと。さらに11Kの再生システムもInsta360 Titanと同時にリリースできるように開発中と話しました。しかし、この11K撮影の開発がチャレンジングで、今は苦戦している最中とのことです。Insta360 Titanは、年末か年明け頃にはサンプルを披露できる目処があると示しました。
そして、JK氏が重要な点と強調をして指摘したのが、自動で360度動画と通常の動画を融合し編集することで、高品質で素晴らしい動画を簡単に作る機能です。このJK氏の発言に似たところでは、GoProなどがテーマを選ぶと自動で動画を編集するアプリをリリースしています。Insta360では、自動編集のシステムも来年のローンチを目指して開発しているとのこと。
上の360度動画は、JK氏は好きな360度映像作家として挙げたロシアの空撮クリエイター集団「AirPano」の360度空撮動画。JK氏は「AirPano」CEOのセルゲイ氏の活動とヘリコプターから撮影した作品からは、大きな刺激を受けていると話しました。
セッション終了後のデモ展示では、デモ体験者からの質問や記念撮影に応じるJK氏の姿が印象的でした。来場者自らが制作したコンテンツをJK氏が体験するという一幕もあり、JK氏およびInsta360が日本のユーザーと市場を好意的に受け止めている印象を受けたイベントとなりました。