2020年7月末、Oculus Quest(オキュラス クエスト)向けのVRFPS「In Death: Unchained」がリリースされました。本作は、2018年にPCVR版などが発売された「In Death」のQuest版。VRゲームとしてはやや珍しい、ローグライグ系のハードコアな作品です。
プレイヤーは、死後の世界で弓を片手に、果てのない死闘を繰り広げます。テンプル騎士や悪魔が敵で、中世(ゴシック)調のステージが舞台という、キリスト教をベースにした宗教的な世界観が特色。日本語に非対応ですが、明確なストーリーや長いテキストが無いので、遊ぶ分には支障はほとんどありません。
肝心なのは折れない心
ゲームは、拠点となる「SANCTUARY」に降り立ち、そこからステージ(全3種類)を巡っていくというのが、基本的な流れ。初起動時にはチュートリアルが表示され、移動や攻撃(弓の引き方)の方法が一通り説明されます。
操作方法を示す映像やボタンハイライトが表示されるので、苦手な人でも数回、試行錯誤すれば上手くいくかと思います。
(チュートリアルの様子。一通りのことは説明してくれます)
ステージ途中で死亡すると、それまでの進行状況がすべて消失する仕組みです。コンティニューも無く、プレイ中は常に周囲を警戒する必要があります。ゲーム自体の難易度が高く、筆者も慣れないうちは、すぐ死んでは最初からやり直すという“苦行”を味わいました。
敵は騎士やゾンビといった近接攻撃タイプと、弓兵のような遠距離攻撃タイプに大別されます。プレイヤーが使用できる近接武器は無いので、基本的に、ある程度距離をとりつつ、対処していくのが理想です。
(近づかれたり、遠距離攻撃されたりした場合は、避けるか盾を使います)
ただ弓には照準器がないので、慣れるまでは接近戦を強いられます。撃つための動作は現実の弓術と一緒(矢を弓につがえて弦を引く)ですが、長時間プレイしていると、割と疲れるのが正直なところ。ある程度遊ぶと、比較的ピストルに近い感覚で扱えるクロスボウがアンロックされるので、こだわりがない場合は、そちらの使用をオススメします。
(アンロック武器のクロスボウ。腕も楽なのでこちらをオススメ)
とはいうものの、慣れが必要な分、矢が当たるようになってきた際の気持ちよさは格別。自分のスキルの上昇を、しっかりと体感できます。筆者が遊んでいる時も「壁」を越えたと感じた瞬間が、攻略面を含めて何度かありました。ヘッドショットを決めたときの効果音が心地よいのも、地味に高ポイントです。
ユニークな移動システム
本作には、とてもユニークな移動方法が実装されています。それは光る矢を進みたい場所に打ち込み、そこにワープするというもの。原則、撃った場所ならどこでもワープできるので、慣れてくるとマップを縦横無尽に動き回われます。屋根伝いに道中スキップも可能です。
投げて短距離ワープできる結晶もあり、主に緊急回避に使用します(ジャンル違いですが「アーマード・コア4」のクイックブーストのような挙動です)。
(ワープ用の結晶。使用制限はなく、何度でも使用可能。)
オプション画面からスティック操作での移動も設定可能です。筆者的には、チュートリアルが終わってすぐにONにした方が良いと思います。弓を構えたままでも、移動可能になるからです。ちなみに移動速度自体は遅め。そのせいか長い時間スティック移動を使っても、ほとんど酔いませんでした。
変幻自在の自動生成マップ
ステージは、プレイごとに毎回自動生成されます。なので、ステージのかたちを覚えて突破するのは不可能。状況に臨機応変に対応しなくてはなりません。各ステージの最後にボスがいるという構成は共通で、倒せばクリアです。
各マップの途中には、塔のような場所があり、セーブポイント兼ショップとなっています。敵からドロップするゴールド(周回ごとに1から集める)で、回復薬などのアイテムが買えます。ここでゲームを終了すると、次に起動した際、同じ場所から再スタートできます。
(宝箱の前で必要なゴールドを支払えばアイテムを購入できます)
初期状態では、石造りの教会とステンドグラスなどで構成される第1面「Purgatory」にしか入れません(ステージクリアによる進行は別)が、ボスの一定数撃破など条件を満たすと、後半マップにも“直接”入れます。
ステージが進むと難易度は上がるので、より高いプレイヤースキルが求められます。敵は増え、高低差は増し、建物の形状も複雑になっていくので、前後左右だけではなく、上下にもしっかりと気を配らなくてはなりません。
(ボスのAnakim the Abominable。本体は鈍重ですが、周囲の弓兵が厄介)
(より神々しく、より高低差の激しい第2面「PARADAISE LOST(失楽園)」。飛行する敵も現れます)
奥深さを生み出す“トロフィー”システム
「In Death: Unchained」のコア要素が、ゲーム内の“トロフィー”システムです。「〇〇を何体倒した」「ボスを無傷で撃破した」「初めて死んだ」などのアチーブメント(英語表記)が用意され、達成すれば様々なアンロック要素が解禁されます。
弓やクロスボウには、“通常弾”のほかに、様々な効果を有する特殊な矢が存在あるのですが、アチーブメントを達成すると、ステージや敵、セーブポイントの宝箱から入手可能に。爆発矢「Cataclysm」や、広範囲にビーム砲撃のような攻撃を可能とする「Tempest」は特に強く、ゲームチェンジャーと言えるほど。
(死亡後に表示されるリザルト、解除した実績とスコアが表示されます)
このように書くと「リトライを続けているうちに簡単になっていくんだな」と思う人も多いでしょう。残念ながら、それほど甘くはありません。一部アチーブメントを達成すると、新たな敵がステージに現れるようになるのです。
例えば、盾持ちのテンプル騎士や巨大な黒いテンプル騎士、弓を連射してくる“強化弓兵”など。進捗率が上昇すると、できること(戦い方)は増えるのですが、併せて難易度も“対抗して”くるので、緊張感は保たれるワケです、
個人的にはマンネリを防ぐ良い案だと思います。ただ序盤は苦労、中盤からは無双、といった作品が好きな人には好ましくないかもしれません。
(アチーブメント達成による、スキンのアンロック)
総評:相乗効果の生み出す中毒性
「In Death: Unchained」は、弓系の武器だけで戦うシンプルなゲームながら、驚くほどに中毒性の高い良作です。(プレイヤーの)実力を高めたいという欲求とアチーブメント達成という目標を噛み合わせ、何度もプレイしたくなるモチベーションを作り出すことに成功しています。オンライン対応したスコアボードも良いスパイスです。
今回プレイしたのはQuest版ですが、グラフィックの美しさも褒めたい点のひとつ。さすがにPC版と比べると描写は劣りますが、同ヘッドセット向けのタイトルとしては、十分に合格点以上。起動時やステージで流れる讃美歌のようなBGMも、良い雰囲気を醸し出しています。
(スコアと一緒に表示されるキルリスト。中々に壮観)
決して万人向けの作品ではありません。高い難易度はもちろん、死んでまたやり直すというプロセスは人を選びますが、苦労を乗り越えた先には、大きな達成感が待っています。挑戦を恐れない、コアなゲーマー向けの作品と言えるでしょう。
チャレンジを求める人にオススメしたい「In Death: Unchained」は、Oculus Storeで販売中。価格は、2,990円(税込)です。記事執筆時点(2020年8月)では詳細は不明ですが、DLCも配信予定。続報にも期待したいところです。
ソフトウェア概要
ゲーム名 |
In Death: Unchained |
開発元・パブリッシャー |
Superbright |
対応ヘッドセット |
Oculus Quest |
プレイ人数 |
1人 |
価格(税込) |
2,990円 |
公式サイト |
執筆:井文