Home » 何度でも体験したくなるほどの衝撃「TOMORROW X TOGETHER」のVRコンサートで感じた革新的なエンタメの変動


VRゲーム・アプリ 2024.09.05

何度でも体験したくなるほどの衝撃「TOMORROW X TOGETHER」のVRコンサートで感じた革新的なエンタメの変動

もし推しのアイドルや歌手が、私のためだけにライブを目の前で踊って歌って、見つめてくれたら……。推し活に励むファンなら必ず願う夢。

今回、その夢が叶う瞬間に立ち会うことができました。会場は映画館。座席ひとつひとつに用意されたVRヘッドセットを装着することで、ファンは今までにない距離で推しを愛でられる体験が可能になっていました。

本記事ではメディア関係者向けに行われた「HYPERFOCUS : TOMORROW X TOGETHER VR CONCERT」の試写会をレポート。VRヘッドセット「Meta Quest 3」を映画館で装着して、推しに会いに行く。それが一体どのようなものなのか、実際に体験してきました。

また、取材後の関係者の会見から見えてきた、今後のVRコンサート市場の可能性についても紹介します。


(画像:株式会社HYBE JAPAN提供)

韓国大人気グループとVRコンサートプロ集団が手を組んだ

今回、VRコンサートを行ったのは「TOMORROW X TOGETHER(読み:トゥモロー バイ トゥゲザー)」。韓国を活動拠点とする5人組ボーイズグループで、日本デビューは2020年1月。2024年には自身3度目のワールドツアーを成功させる等、世界的な人気を誇るK-POPグループです。韓国のCIRCLE CHARTによると、2023年のアルバム売上枚数はSEVENTEEN、Stray Kidsに次ぐK-POPボーイズグループ第3位を獲得しています。

恥ずかしながら、取材前の筆者は「グループ名は聞いたことがある」程度の認識でした。取材に向けて友人のK-POPオタクに話を聞いたところ、「TOMORROW X TOGETHERの魅力はなんといっても、韓国グループでの群を抜くビジュアルの良さ」との答えが。そして「ダンスも歌も当然ハイレベルだが、ゴリゴリのK-POPではなく儚さやファンタジー要素があるのが魅力」と教えてもらいました。

確かにリサーチを進めると、美しくもどこか切なげな造形と、ストリングスの主張が強い曲が印象深く、私が持つ「筋肉質で力強いK-POPイメージ」と異なった雰囲気を感じました。そして、まんまとにわかファン状態に。ファンの皆様には敵わないと自覚しつつ、VRコンサートに向けて曲を聞き込みました。


(画像:株式会社HYBE JAPAN提供)

本ライブの制作は、VRコンサートを運営するAmazeVRが担当しました。AmazeVRはこれまで、アメリカを拠点に活躍する歌手ミーガン・ザ・スタリオンやヘビメタルバンドのアヴェンジド・セヴンフォールド、K-POPアイドルグループのaespa(エスパ)などのVRコンサートを次々と各地の映画館で開催してきました。AmazeVRの公式YouTubeチャンネルには、VRコンサート実績の一部が、アーティストのインタビューとともに紹介されています。

また、AmazeVRは「App Store」「Meta Quest ストア」「PICO Store」など、主要なVRヘッドセットデバイス向けに、開催したVRコンサートコンテンツを配信しています(一部有料)。ファンはVRヘッドセットを持っていれば、何度でもお気に入りのVRコンサートを体験することができるのです。

今回、筆者は映画館開催の試写会に参加し、まだ配信されていない最新のVRコンサートを体験してきました。

VR初心者にもやさしい導入設計

まず試写室に入ると、観客席がずらっと並びます。VRコンサート興行時には映画館を使用するため、観客は同じ光景を目にすることになります。


(画像:筆者撮影)

そして各席の目の前にはホルダーに準備された「Meta quest 3」。ヘッドセットの前面にはグループ名を表す「+x+」のシールが貼られ、ファン心をくすぐります。


(画像:筆者撮影)

席の背もたれの端には、座った時に邪魔にならないよう、充電ケーブル(紫)がマジックテープ(黄色)で止めてありました。


(画像:筆者撮影)

VRコンサート中は、観客が装着したVRヘッドセットに充電ケーブルを取り付け、鑑賞します。

(画像:筆者撮影)

上映開始の際には、映画のスクリーンでVRヘッドセット装着のレクチャー動画が流れます。ヘッドセットを装着すると焦点を合わせるためのセットアップ動画が流れ、続いて手のスキャンも行われます。手のスキャン完了後、右手首にグループ名の書かれた仮想バングルが表示され、VRコンサートへの期待感が自然と高まります。

また、この時点ではパススルー設定(MRモード)になっているので、バーチャルと現実
の境界が浅く、ぐるっと首を回すと試写室内の様子や自分の体がヘッドセット越しに確認できました。


(画像:筆者撮影)

ここまでの導入オリエンテーションは初めてVRヘッドセットを触る方にも分かりやすく設計されており、周りの反応を見ていてもスムーズに装着している方がほとんどでした。

”最前列よりも近い”VRコンサート演出

セットアップが終了するとヘッドセットの映像が切り替わり、星空の広がる空間が目の前に現れます。手元には5つの宝石が映し出され、手を使って触れると、宝石の中から「TOMORROW X TOGETHER」メンバー5人の顔写真が浮かび上がります。これは本VRコンサートのコンセプトである「TOMORROW X TOGETHERと一緒に失われた光のかけらを探しにいく旅」を元にした演出。この宝石の選択によって、本公演の案内役1人を選べる仕掛けです。

(AmazeVRが公開するVRコンサート紹介動画。0:19〜宝石の選択場面が披露されている)

その後は観客全員のセットアップが終わるまで、準備完了ゲージが表示され待機。ほどなくしてゲージが100%に達すると、VRコンサート本編が開始しました。


(画像:株式会社HYBE JAPAN提供)

……近い。すごく近い。VRコンサート初体験の筆者は、思わず、手を伸ばしてしまうほどの臨場感に驚きました。体感としては、腕をまっすぐ伸ばした距離にメンバーが「存在する」と錯覚するくらいです。

視点はグループの目の前に設定されており、首を上下左右に振って、好きなメンバーを見続けられます。VFXを用いたVR空間も非常に高精細で奥行きが感じられ、映画館上映を活かした「5.1chサラウンドシステム」による高品質な音響環境も相まって、非常に没入感がありました。


(画像:株式会社HYBE JAPAN提供)

「TOMORROW X TOGETHER」は激しいダンスも得意なグループ。公演中のダイナミックなキックには、観客が思わずのけぞってしまうほどの迫力がありました。一方で、視点はゆっくりと動きます。AmazeVR CEOのイ・スンジュン(Steve Lee)氏によると「VR酔いを防ぐため、ゆっくりとスムーズなカメラワークを意識した」とのこと。実際、酔いやすい体質の筆者も不調を感じることはありませんでした。


(画像:株式会社HYBE JAPAN提供)

公演中には最初に選択した案内役のメンバーが、応援棒(ライトスティック)を渡してくれたり、手を引いて次のステージに連れていってくれる演出も。応援棒はVR空間で握って振ることができ、手の動きに合わせてキラキラと輝きます。インタラクティブなVRコンサート体験を提供したい制作側の意図が感じられました。

終盤にはメイキングも流れ、メンバーのどんな姿も見たいファンとってはたまらない構成となっています。映像から巨大な空間キャプチャー用のクレーンカメラがギリギリまでメンバーに迫っている様子もうかがえます。


(画像:株式会社HYBE JAPAN提供)

本公演のキム・ホンチャン監督(AmazeVR VFX Supervisor)は「カメラをファンだと思って気持ちを通わせ、コミュニケーションするように」とメンバーに話したそう。メンバーがカメラに向かって回し蹴りするシーンでは「カメラが壊れてもいい」とディレクションし、VRコンサートの肝である”近さ”を強調するための演出にこだわったそうです。

セットリスト全6曲、VRコンサート1時間の体感は……10分(!)それほどの没入感を得られる映像作品に仕上がっていました。特に全員の視線が自分に集まるように感じるクライマックスのシーンは、にわかファンの私でも鼓動が高まるほど。「これは何度でも体験したくなるファンはたくさんいるだろうな」と素直に感じました。

また、他の席に座っているメディア関係者も「想像よりも全然すごい……」「これは友人におすすめしたいね」と話しており、驚いた様子でした。VRヘッドセットデバイスに慣れていない観客層にも響く、満足度の高い体験だったと推測できます。

熱狂的ファンダム×高価格チケット×高稼働率で市場を開拓か

「TOMORROW X TOGETHER」を擁するHYBE(ハイブ)は、韓国最大規模の総合エンターテインメント企業であるSMエンターテインメントとプラットフォーム「Weverse」で連携するなど協力関係にあります。2022年、SMエンターテインメントとAmazeVRは合弁会社を設立しており、こうした協業関係を基盤に今後のVRコンサートはK-POPグループを中心に展開していくと予想されます。

K-POPは熱烈なファン集団”ファンダム”の影響力が絶大です。米大手レコード会社のWarner Records レコード部門担当者のJacqui Bransky氏は、AmazeVRとのセッションでK-POPファンの特徴について以下のように語っています。

「レコードレーベルの視点から補足すると、K-popのファンダムは非常に熱狂的で、常に技術の最先端を行くことで知られています。そのため、このようなプロジェクト(編集注:VRコンサート)に適したアーティストだと言えます」

引用元:2024年6月19日 AWE USA 2024セッション(YouTube動画はこちら)

また、AmazeVRのVRコンサートは映画館を使用するものの、通常の映画チケットに比べて高価格となっています。本VRコンサートチケット価格も税込4,300円と、通常の映画チケットの約2倍。

にもかかわらず、稼働率も高いのもVRコンサートの特徴です。AmazeVRのCEO Steve Lee氏は、2022年夏に開催した歌手のミーガン・ザ・スタリオンとのVRコンサートツアーが「観客動員率は約75%、15%~20%とされる劇場の平均稼働率の約4.3倍だった」と語っています。

K-POPの熱烈ファンダム文化と高価格チケット、高い稼働率が掛け合わされることで、魅力的な市場形成を狙うAmazeVRの思惑が見えてきます。AmazeVRは上映したVRコンサートをMeta Quest向けAmazeVR app等でVRコンテンツとして販売しており、熱狂的なファンの購入も見込めます。


(画像:筆者撮影。試写会に登壇した、AmazeVR VFX Supervisor キム・ホンチャン監督(左)とAmazeVR CEO イ・スンジュン(Steve Lee)氏(右))

VRコンサートがマーケティングの起点となる時代が来る?

1人の消費者として、VRコンサートは今後益々勢いを増していくエンタメであり、マーケティングのキーになるコンテンツだと実感した試写会でした。

実際、先行して体験した韓国のファンからは「最前列のファンではなく、むしろメイクアップアーティストになってメイクができる近さ」「メンバーが私だけをずっと見つめてくれる」「観たら分かるおもしろさ」「もう一度観にいかないと」と興奮冷めやらぬコメントが数多く寄せられたそう。

私も、もし自分の推しのVRコンサートがあったなら、絶対に2回は見に行きます。というのも、あまりに出演者が近すぎて、あらゆる方向から推しを見たい欲が湧いてくるのです。複数人グループなら、なおさら見たい場面も増えます。何度もVRコンサートに足を運ぶ観客が増えれば増えるほど、VRコンサートはマーケティングの材料として魅力的であるコンテンツと認知されるでしょう。

(画像:株式会社HYBE JAPAN提供)

AmazeVR マーケティング責任者であるCorey Kim氏は先述のWarner Recordsとのセッションの最後に、VRコンサートの未来を語っています。

「音楽のストリーミングが過去10年間で最大のイノベーションだったように、イマーシブな音楽体験が次の革新的な波になると考えています。ファンは単に音楽をストリーミングして聴くだけでなく、音楽の中に入り込むことができるようになります。(中略)アーティストのプロモーションの一環としてVRコンテンツを制作しています。将来的には、ミュージックビデオがアーティストのブレイクやファン獲得の重要なツールだったように、イマーシブな音楽体験が最初の接点となり、そこからアルバム購入やライブツアーへとつながっていくと考えています。」

「私たちは、今後2〜3年の間にトップアーティストの多くがVRコンサートを行うようになると考えています。これはストーリーテリングの一部になるでしょう。アーティストは単に音楽を聴いてもらうだけでなく、ファンに体験してもらい、理解してもらい、対話してもらいたいと考えているからです」

アイドルグループのリアルコンサートにも参加経験のある筆者ですが、VRコンサート体験はリアル開催とはまったくの別物に感じました。観客全員とアーティストの一体感を楽しむ物理的な興奮とは違った、完成された世界観に自分を加えてもらうような特別感。にわかファンの私でさえ、本試写会を終えてもまだ「TOMORROW X TOGETHER」の動向を追っています。これぞVRコンサートが持つ特別感の威力です。

また、ファンの国籍も問わないコンテンツでもあります。VRコンサートには字幕が表示されるため、国境を問わず同じ世界観をファンに提供でき、マーケティングの一環として強力な一手になり得ます。

一方、VRメディアに関わる立場として、「”体験しないとわからないVRヘッドセットの魅力”を音楽やアイドルといった身近な切り口で提供できるVRコンサートは、VR業界の裾野を広げる一助にもなるのでは?」とも感じました。VR普及には未体験の消費者にこそVR体験が必要です。VRコンサートは音楽エンタメ業界だけでなく、VR業界全体に新たな風を吹かせる力がありそうです。

■「HYPERFOCUS : TOMORROW X TOGETHER VR CONCERT」概要

・公式サイト:https://www.txt-vrconcert.com/

・実施期間・都市/劇場:
9/6(金)〜9/26(木)東京 / T・ジョイ PRINCE 品川
9/6(金)〜9/29(日)東京 / 渋谷シネクイント、109 シネマズプレミアム新宿
10/4(金)〜10/20(日)名古屋 / 109 シネマズ名古屋
10/4(金)〜10/17(木)大阪 / T・ジョイ梅田
10/25(金)〜11/7(木)福岡 / T・ジョイ博多、横浜 / 横浜ブルク 13
11/15(金)〜11/28(木)大阪 / T・ジョイ梅田
11/15(金)〜12/1(日)東京 / 渋谷シネクイント、109 シネマズプレミアム新宿
※上映スケジュールは各劇場もしくはローソンチケットのサイトより要確認

・ チケット料金(全席指定):
4,300円(税込)※109 シネマズプレミアム新宿は 5,000円(税込)
※チケットに関するお問合せはローソンチケットインフォメーションまで。
※入場特典等の詳細は公式サイト要確認。


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード

CONSULTING / DEVELOPMENT

コンサルティング・開発サービス

Moguraの知見を、あなたのプロジェクトに

mogura_next

Moguraの知見を、あなたのビジネスに
編集長の久保田を筆頭に、XR/メタバースなどバーチャル領域を知り尽くす専門チームが、リサーチからコンサルティング、企画、開発までを一貫支援。
Mogura VRで培った豊富な情報力と業界ネットワークを強みに、企業・行政機関の成果につながる最適な解決策をご提案します。