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業界動向 2019.04.04

被害者の視点からVRで訴えかける“人身売買”の現実

人身売買は世界中で発生している犯罪であるにもかかわらず、見過ごされがちになってしまう犯罪と言われています。2017年のILO(International Labour Organization)の調査結果によると、4,030万人が被害を受け、そのうちの4分の1の被害者は性的被害を受けた未成年者であり、女性被害者の99%は性産業を強制されていると推定されます。

人身売買について学ぶVR教育プログラム

このような状況を打破すべく立ち上げられた財団、Radical Empathy Education Foundation(REEF)は、教育プログラム「One Generation Education System」の一環としてVR教育プログラム「RAPPED: A VR Detective Story」を制作しました。「RAPPED: A VR Detective Story」では、人身売買の被害者・ターゲットとされる可能性のある人について学ぶことができます。

「RAPPED: A VR Detective Story」では、体験者は14歳の少女リサになり、オンラインで出会った少年に人身売買へ導かれていく様子を体験します。ストーリーが進むごとに、リサの過去が明らかにされていき、虐待を受ける状況に身を置く可能性のある人の背景について学んでいきます。また、犯罪者がどのような手口で被害者を人身売買へと陥れていくかについても体験できるとのこと。

犯罪の可能性は身近なところにも潜んでいる

人身売買は世界の特定の場所だけで起る犯罪として認識されがちですが、現実にはほぼ毎日、世界中の様々な都市で発生しています。人身売買の被害者になる人に大きく共通する特徴はなく、兄弟や友達、クラスメイト、自分自身ですら被害者になる可能性があります。

REEFの代表であるBilly Joe Cain氏は、海外メディアのVRScoutのインタビューでプログラムについて次のように語っています。

私がRadical Empathy Education Foundationを始めたのはある出来事がきっかけでした。昔、とある友人が、私の子供たちをターゲットにして、ゆっくりと戦略的に人身売買へと誘いこもうとしていたことが発覚しました。彼は性犯罪者だったのです。幸いなことに、初期の段階で子供たちが話してくれたことで発見できましたが。多くの場合は気づくのが遅すぎて手遅れになってしまうことが現状です。この事件により私は何かをしていかなければいけないと決意し、プログラムに取り組み始めました。

ビデオゲーム業界で長年の経験を積み、街づくりシミュレーション「シムシティ」やFPAゲーム「バトルフィールド」などを配信するEA(Electronic Arts)で勤務し、海外ヒット作「Wing Commander: Prophecy」のデザイナーを務めた経歴を持つCain氏は、この出来事をきっかけにREEFを立ち上げることとなりました。

「RAPPED: A VR Detective Story」の体験者は「人生が変わるような経験」「凄まじかった」「とても辛い」「息をのむような経験だった」との感想を述べているとのこと。ある体験者は特に心に残ったストーリーとして、“恋人によってひどい処遇を受けた女性”の母が、娘と一緒に過ごす時間を増やし、娘をケアしていくことを涙ながらに決意する、というストーリーを挙げました。

現在Cain氏は、アメリカ中を巡りながらVR経験のデモンストレーションを行い、他団体や学校などでの活動を広げていくよう取り組んでいます。

(参考)VRScout
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