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イベント情報 2018.05.02

日産やBMWのVR導入事例も紹介、日本HP主催の産業向けVRイベント

コンピュータ関連メーカーである日本HPは、4月25日にVR導入をテーマとしたイベント「HP ZVR World Tour2018 Featuring Virtual Reality」を虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)で開催しました。同イベントにはツール制作会社から産業メーカー、導入支援のコンサルティング会社まで多様なプレイヤーが集まり、それぞれがVRの特徴や導入方法などを話し合いました。

VRが登場したこれから10年間で社会は大きく変わる


(HP社のスコット・ローリング氏)

HP社のWorld Wide VR GTM Managerであるスコット・ローリング氏は、現在が大きな変革期にあることを指摘。「これからの10年間で起こる変化は、これまでの100年で起きた変化よりも大きいものになるだろう」とし、今まさにVRに対して取り組む、もしくはVRに向き合わないと「(この大きな変化に対して)乗り遅れてしまう」と、VRの重要性を語りました。

そしてローリング氏はイベントに集まった参加者に対して「今こそVRが皆さんの事業にどう影響していくかを考えるべきだ」と呼びかけました。また、ローリング氏は今後のVRデバイスに起きる進化として、デバイスの小型化、高解像度化、アイトラッキング機能、バイタルデータ(生体情報)のインプットなどを挙げました。

続いては自動車メーカーなど向けに展開されているVRアプリケーションとして、エヌビディア合同会社の エンタープライズマーケティング シニアマネージャである田中秀明氏が、同社のフォトリアルのコラボレーティブ・バーチャルリアリティー環境「Holodeck」を紹介。Holodeckでは、複数人が同時に同じVR空間に入り、フォトリアルなマテリアルを見ながらデザインの確認をしたり、会議を行うことが可能であると説明しました。

また田中氏は、産業用、特に車などの莫大なポリゴン数のマテリアルの場合は、ワークステーションに同社の「Quadro P600」などのプロファッショナル向けのグラフィックボードQuadroシリーズを使用することを推奨しました。筆者が講演後に「Holodeckを会議システムをメインで利用する場合にグラフィックボードのスペックがハードルになるのでは」と質問したところ、産業用ということでQuadroシリーズを推奨したがソーシャルVRのような使用方法であれば「GeForce GTX 1080でも十分に動かせます」と田中氏から回答を得ました。

日産でのVR導入はトライアンドエラーの連続

実際に導入しているメーカーとして、日産自動車株式会社のグローバルデザイン本部 デザインリアライゼーション部 主担の磯聡志氏もイベントで登壇しました。同社のVR/ARへの取り組みは2004年からと、10年以上前から国内大手テクノロジーメーカーと協力して行ってきた歴史があることを話しました。最近の動きでは、2016年からAutodesk社の自動車向け3Dソフト「VRED」を利用しています。


(写真左:株式会社エドガ代表取締役の米本大河氏 右:日産自動車株式会社の磯聡志氏)

磯氏によれば、「Quadro P600」などの高性能なグラフィックボードが登場したことで産業向けのハイエンドなVRでも、安価で安定的に動作可能な環境が整ってきたとのこと。VRを活用することにより、デザイナーはクリエイティブな業務に多くの時間を充てられるようになること、上司へのデザインの確認と承認といった意思決定のプロセスがスピードアップするなどの利点を話しました。

日産自動車のようなグローバル企業にとっては、世界を駆け巡って多忙な役員に対して直感的に説明できるVRは有効的なようです。磯氏は同社のCEOにVRヘッドセットに装着してもらいプレゼンテーションを行ったこともあると話しました。

一方VR導入で苦労した点としては、VRソリューションの品質を改善するのに時間が掛かった点を挙げました。1年間ほどトライアンドエラーを繰り返してもVRの品質が上がらなかった時期があったことを話し、PCやGPUなどの周辺環境の進化によって解決されることもあるので粘り強く取り組んでいく重要性も示しました。

また、磯氏の直前に行われたセッションでは、建築・設計デザイン向けのVRアプリ「SYMMETRY(シンメトリー)」の説明が、開発元のDVERSE社のCEOの沼倉正吾氏から行われていました。この説明を見た磯氏は即座に「SYMMETRY(シンメトリー)を導入しようかと思います」と発言。東京モーターショーの展示でVRを活用しているなど、同社のVRへの積極的な姿勢をイベントでも印象に残る形で見せていました。

(国内VRスタートアップのDVERSE社のSYMMETRY(シンメトリー)。6,000以上もの採用実績があるとのこと)

BMWはUE4でバーチャルドライブを実現

(Epic Gamesのテクニカルマーケティングマネージャのクレイグ・バール氏)

同じく自動車メーカーへのVR活用を話したのは、Epic Gamesのテクニカルマーケティングマネージャのクレイグ・バール氏です。バール氏は、CADデータや3dsmaxに同社のゲームエンジンUE4が対応していることから、非ゲームの分野でUE4が活用されることが多くなっていると述べました。

上掲のスライドはBMWの取り組みです。HP社のスコット・ローリング氏は「VR内で販売セールスも行われるようになるのではないだろうか」と語るなど、VRの可能性は大きく広がっていることが分かります。ゲームや動画といったコンシューマー向けのサービス以外でも、VRとその進化の可能性が大きく注目を集めていること、そして着実にVRの導入事例が積み上がっていることがうかがえるイベントとなりました。


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