8月7日(金)にバトルロイヤルゲーム「Fortnite(フォートナイト)」にて行われた米津玄師さんの「パーティーロイヤル」。ゲーム内に設営されたステージの大型スクリーンに3Dアバターの米津玄師さんが登場し「感電」や「パプリカ」などが披露されました。
今回のバーチャルライブには多くのプレイヤーが参加。Twitterでは「#米津玄師xフォートナイト」が一時的にトレンド1位となっています。
当日ライブを観た方に感想を聞いてみました。
「室内で飛び跳ねたり走り回ったりできないので、ゲームの中だけでもそれが解消できたのは嬉しかった。ライブステージのように汗臭くなかったのも良かったです」(20代女性Aさん)
「20分はさすがに短すぎると感じた。ただずっとスクリーンに注目している必要はなく、好き勝手に動き回れる点は良かったと思う。ライブ中はアイテムを投げて遊んでいました」(30代男性Bさん)
「中学生の息子と一緒にライブを体験しました。本人はサビの部分でキャラが飛び跳ねたりするのが楽しかったみたいです。米津玄師も(中学生の間で)人気なので、ライブにあまり行った事のない若い世代は楽しいのかもしれません。私はやはりライブでみたいと思っちゃいましたが(笑)、子どもはすんなり世界に溶け込んで楽しんでいたので、不思議でした」(30代女性Cさん)
Cさんによれば「Fortnite」自体が中高生の間で流行しており、時間のあるクラスの友人たちはライブに参加していたそうです。
今回のバーチャルライブをどう捉えるのか。Mogua VR News編集部がお送りする番組「もぐラジオ」では、編集長のすんくぼと副編集長の水原由紀がその内容を深く掘り下げました。本記事では、その一部を抜粋・編集してお届けします。
野外ライブの雰囲気を感じさせる工夫
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すんくぼ:
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水原くんはあのライブを見てどうだった?
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水原:
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自分はライブというより、ドライブインシアターやパブリックビューイングのような印象を受けました。特設ステージに巨大なスクリーンが設置されていて、みんなでそれを見るスタイルですね。
「Lemon」や「感電」、あとは「砂の惑星」といった曲がMVとともに披露されたんですが、会場側にホログラムでフォートナイトのキャラクターが出てきて踊るとか、光の雨が降るとか、といった演出もありました。
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すんくぼ:
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今年5月くらいかな、フォートナイトでスティーブ・アオキといった海外のアーティストが同じようなスタイルでライブを実施してたね。米津玄師は日本人アーティストとしては初か。
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水原:
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告知されたとき、編集部では「いきなりぶっ込んできたな……」って盛り上がってましたね。“コロナ以前”だとDJ Marshmello(マシュメロ)やTravis Scott(トラヴィス スコット)もバーチャルライブをやっていましたが、日本人としては初、しかもビッグネームっていう。
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すんくぼ:
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会場の雰囲気はどう?
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水原:
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雰囲気が結構良くて。ログインした際はちょっと離れた場所に出てきて、少し歩いて会場に向かうんです。会場に近づくにしたがって徐々にライブの音が聞こえてくるんですが、海外の野外フェスの空気があって良かったですね。
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すんくぼ:
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会場に近づくほどに音圧やが上がっていって、「早く行かなきゃ!」とテンションが上がってくるっていう、あの感じね。
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水原:
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あれは良かったですね。
今回のライブが及ぼす影響とは?
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すんくぼ:
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僕らは普段からVTuberなどの分野を紹介している関係で、VRライブやバーチャルライブについても情報を追いかけてる。現場の試行錯誤をよく見ているので、そういう目でみると、今回のようにスクリーンに動画が映るバーチャルライブは「もう少し他の表現も可能だったんじゃないのか?」と思うところがあるよね。
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水原:
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確かに、観客の目の前に登場するような演出はありませんでしたね。ステージ上に降りてきてMCするとかはなかったはず。
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すんくぼ:
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技術的にも演出的にも言いたいことはある……けど、僕がまず驚いたのは、今回のイベントがこれだけ多くの人に注目されていて、「すごい!」といった感想も聞こえてくることかな。
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水原:
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VTuberによるバーチャルライブでは、現場をどのように盛り上げるのかがとても意識されていますし、参加者とのコール・アンド・レスポンスやリアルタイムっぽく見せる処理など、随所に工夫が見られます。それと比べると、今回はその手の演出はなかったですね。MarshmelloやTravis Scottのときのライブは、かなり大がかりな(に見える)演出が多々ありましたが。
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すんくぼ:
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いきなり海の中のシーンが現れたりしてね。僕は見れなかったんだけどすごかったらしい。それぞれのアーティストの世界観が考慮されているリッチな作りだと思う。
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水原:
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今回のケースの場合、おそらくコロナウイルス拡散以降、ライブやステージ制作時間も大きく変化したことが原因のひとつで、単に「サボった」かと言われるとそうではないだろうな、と。
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すんくぼ:
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ちょうど先週、DiploというDJのFortniteバーチャルライブに参加したのだけど、演出がほとんど同じだったんだよね。変な言い方だけど、“使いまわし感”はあったかなと。ただ、コロナ以降、今回のようなスタイルは色んなアーティストに当てはめやすいものだったんじゃないかな。
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水原:
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「なぜワンオフでゴリゴリに作り込まなかったのか?」を考えると面白いかもしれませんね。リアルライブの開催が難しい状況の中で、さまざまなアーティストが参加しやすいよう汎用性のあるスタイルを採用したんじゃないかと。「〇〇×Fortnite」のようなコラボレーションを楽しむ方法としてはアリじゃないかな、と思います。あと、あまりに凝った演出だと、バーチャルライブ初心者の方には理解しづらいものになっていたかもしれませんし。
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すんくぼ:
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以前、Mogura社が主催で行ったバーチャル空間での展示会で、参加者の方から「一歩も動けませんでした」という感想をもらったことがあったんだよね。「十字キーを操作すれば移動できる」「ログインすればVR空間に入れる」といったゲームに慣れ親しんだ人間からすると当然に思えてしまう知識や文脈も、これまで全く触れたことのない方には伝わらないものだと実感した瞬間だった。
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水原:
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YouTubeだったかな、360度動画を配信してるサイトが取った統計だと「大半の人は前180度しか見ない」みたいな話もありますし、下手に全方向で演出を出すと見るべきところが分からなくて混乱しちゃうんですよね。多分。演出を凝らすほど(処理負荷が)重いという問題もあるし。
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すんくぼ:
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「Fortnite」はPS4やSwitch、スマートフォン(※対談当時)などさまざまなデバイスに対応しているので、すべての機種で安定的に動かせるようにしなければいけないと考えると、そういった問題点はあるよね。
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水原:
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個人的には、米津玄師さん独自の、より凝った演出は見たかったですけどね。「平面スクリーンかあ~」って思った部分は少なからずあります。本人にもステージ上に3Dアバターで出てきてほしかったし、できたら初回はリアルタイムMCなんかも見たかった。期待値を上げすぎたのかもしれませんが、そこまで作り込んだものを楽しみにしていたというのはあります。本人をステージに上げたら絶対にヘッドショットする人が出てくると思うけど(笑)
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すんくぼ:
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今回のライブ、SNSでは「未来を感じた」「こういったライブが増えればいいのに」といったポジティブな意見も多く見られたよね。VTuberのVRライブのように、リッチな演出も続々実現するようになってきているので、よりそんなライブを見やすい方向になってほしい。
※今回の対談の詳しい様子は「もぐラジオ」にて収録されています。