ライトノベルが原作で2017年春にアニメも放送された人気作品「エロマンガ先生」。イラストレーター・エロマンガ先生こと引きこもりの紗霧と暮らす、高校生でライトノベル作家でもある和泉正宗の物語です。
9月21日から千葉・幕張メッセで開催されている東京ゲームショウでは、VR体験『目覚ましVR!エロマンガ先生』のデモ版が展示されています。展示されているのは、株式会社シーエスレポーターズ・Gugenka(グゲンカ)ブースです。
このコンテンツはその名称から思い浮かぶ通り、スマートフォンVRを使ってエロマンガ先生こと紗霧と添い寝できるというもの。内容を聞くと、「これまでもスマートフォン向けに多くあった耳かき系VRアプリのようなキャラクターVR物なのだろう」と思ってしまいがちです。しかし、この『目覚ましVR!エロマンガ先生』ではこれまでにない新たな技術が使われており、これまでのスマートフォンVRとは一線を画した体験ができました。
本記事ではその様子をレポートしていきます。
扉を少しだけ開けた紗霧の口から「兄さん……」
体験はスマートフォンをオリジナルのVRゴーグルに装着して行います。
体験は、原作やアニメでもおなじみの紗霧の部屋の扉の前からスタートします。扉は閉まっていますが、ドアノブをじっと見つめるとノックをして、わずかに開く扉。紗霧がこちらを伺いながら「兄さん……」と話し始めます。
声はまさにアニメのそのもの。つい高ぶる気持ちに、もっと扉の奥を覗き込もうと近づくと……
近づくと……
衝撃が走ります。
なんと実際に近づけるのです。
恥ずかしそうにこちらを見る紗霧に色々な角度から見ることも、その奥にある部屋の様子を見ることもできます。ついつい何度も近づいたり離れたりしてしまいました。
ARを使って実現した“動けるスマホVR”
スマートフォンをVRゴーグルに入れて体験するいわゆるスマホVRでは、動けない、というのが常識でした。
スマホVRでは、スマートフォンのジャイロセンサーを使い、360度の頭の回転がトラッキングされます。Oculus RiftやHTC ViveのようなハイエンドのVRデバイスのように、位置のトラッキングはありません。自分の周りを見回すことはできても、前に出たりしゃがんだりといった動作ができませんでした。
スマートフォンのVRアプリは様々なものが登場していますが、たとえばもう少しキャラクターの表情をよく見ようとキャラクターに近づくことはできませんでした。近づこうとしても距離は一定のままです。
『目覚ましVR!エロマンガ先生』では、動くことができます。これまでのスマートフォンVRにはなかった仕組みが採用され、動くことが可能になっています。その秘訣が、つい先日一般向けにもリリースされたiOSのARKitという仕組みです。最新版のiOS 11から実装されているARKitでは、iPhoneやiPadの背面カメラを使い、空間を一部(水平面のみ)認識し、空間における自己(スマートフォン)位置を推定します。この機能を自社技術にて応用し、VRでの位置トラッキングを実現しています。
開始前には、床(地面)にVRゴーグルを置いてキャリブレーション(設定)を行います。
iOSのARKitはiOS 11にアップデート可能な機種のうち、iPhone 6s以降で動作します。『目覚ましVR!エロマンガ先生』はiPhone 6s以降であれば、動き回ることができるようになります。iOS以外でもAndroidもARCoreと呼ばれる同様のAR機能を公開しており、2017年中には幅広い端末に適用されます。シーエスレポーターズでは、今後ARCoreへの対応も取り組んでいくとのこと。特殊なデバイスを使うことなく、手元のスマートフォンで体験できるVR体験の質がより向上することが期待されます。
『目覚ましVR!エロマンガ先生』は、添い寝できる(!)フルバージョンが2018年に発売予定です。iOS、Android向けに配信予定です。