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ガジェット 2026.11.06

ソニーの小型空間再現ディスプレイ『ELF-MN1』の本当のポテンシャルとは?【実機体験レポ】

10月28日、空間再現ディスプレイ『ELF-MN1』が発表された。画面サイズは6インチと小型で、メガネやヘッドセットを装着せずとも、3Dコンテンツを裸眼で立体視できるという。

ソニーはこれまで「ELF-SR2」などの裸眼立体視デバイスを提供しているが、これは医療や建築といった専門領域での利用を想定したデバイスで、価格もおよそ55万円と気軽に手を出せるものでは無かった。その点『ELF-MN1』は、現状推定で税込5万4,000円と、一般ユーザーにも手の届きやすい価格だ。ようやく裸眼立体視デバイスが世間にも広く普及する可能性が出てきたと言えそうだ。

著者はソニー本社の先行体験会に参加。そこで本機そのものの性能と、クリエイターによる様々な活用事例に触れてきた。見えてきたのは『ELF-MN1』の価値は「気軽に裸眼立体視できる」だけではないという点だった。

裸眼立体視デバイスをもっと身近に

『ELF-MN1』は、ソニーの空間コンテンツソリューション群「XYN」のハードウェアラインアップにあたる製品として開発された。この「XYN」は、クリエイターや開発者向けに空間コンテンツ制作支援を行うための様々なハード・ソフトをこれまで提供している。今回のデバイスの設計を手がけた石橋氏によれば、今機の制作は顧客からのリクエストがきっかけだったという。

「過去機種であるELF-SR1、SR2は主にBtoB向けの商品でしたが、初めて見た瞬間に『おっ』と心を掴むような、そんな体験の力を持っておりました。また、我々もコンテンツの魅力をよりよく伝えるために、体験を重視したハードウェア、ソフトウェアの設計のノウハウも蓄積してまいりました。この心を掴む体験をより多くのお客様に届けたい、そう考えるきっかけとなったのがお客様の声でした。体験されたお客様からは、空間再現映像への感動・驚きとともに、「もっと身近に楽しみたい」という声をいただいておりまして『ご自身で空間再現ディスプレイに自分で作った世界観を表示して楽しみたい』という声をいただいておりました。そのために仕様を大きく見直し、価格、サイズ、手に取りやすく、同時に購入してすぐに楽しめるコンテンツも合わせて届けたいと考えました」

そうして『ELF-MN1』は、バーチャルな世界観と日常の世界を近づけるデバイスとして開発された。

視線認識センサーを活用し、リアルタイムに映像を生成

『ELF-MN1』は裸眼で立体視ができるデバイス。そうは言っても、一体どういう仕組みなのかは、すぐにピンとくるものではない。断っておくが、このデバイスは、ホログラム技術のように映像が空間上に浮き出るものではない。自分の顔(正確には目)の位置に合わせて映像表示が変わるので、オブジェクトが浮き出ているかのように見えるといった方が正しい。

仕組みとしては、デバイスの中にある視線認識センサーが、見る人の瞳の位置を常に捉えて、その視線に合わせた立体映像をリアルタイムに生成・表示するというものだ。その際に画面の表面にある微細なレンズによって、左右の目に別々の映像を届けている。これによって、映像が奥行きを持っているかのように感じられるのだ。

さらに、高精細なディスプレイを使用して1視点ごとの高い解像感を実現しているため、細部まで鮮明にリアルな表現が可能になっているという。また視線認識センサーにIRセンサーも搭載されており、暗い環境でも瞳の位置を正確に捉えられるそうだ。デザイン面に関してはシンプルさを徹底しており、クリエイターがカスタマイズできる幅を出来る限り広げている。

使用には他デバイスとの接続を前提としており、WindowsPC、iOS、Androidスマートフォンに対応。USB Type-Cケーブルを直接接続し、デバイスに対応するアプリを起動することで使用できる(※別途コードによる給電が必要)。

クリエイター・企業との協走でコンテンツを拡充

体験できるコンテンツの幅も気になるところだが、現状の「ELF-MN1」では、ソニー公式の専用アプリというものは用意されていない。クリエイター・開発者向けのSDKやデジタルキャラクターの3Dモデル等は頒布されるため、基本的にはこれからクリエイター・企業と協力してコンテンツを拡充していく予定とのことだ。

つまり、現時点では、3Dについての技術・知識のある開発者に向けた製品であることは踏まえておいた方が良い。なお、SDKに関しては、Unity用のプラグインとOpenXR APIに対応したランタイムでの開発が可能だ。

まず、クリエイターやアプリケーションのパートナーがコンテンツを作り、SNSで発表してもらう。それによってデバイスの認知度を向上していくという流れが、ソニーの目指すものだという。今回の発表会では、パートナー企業のコンテンツとして、Gugenkaの「HoloModels」をはじめ、HIKKYの「Deskrium」、「STAYRESIDENT」の「Fenestra」、Animationの「animates」が展示に登場。さらに、Voxelkei氏、坪倉輝明氏、YORIMIYA氏、オレンジ氏といったXR領域の最前線で活躍しているクリエイターのコンテンツも公開された。

『ELF-MN1』の真のポテンシャルとは?


(※写真では忠実に立体的な表示が見られないため、一部写真は2Dモードで撮影した)

改めて『ELF-MN1』に触れた所感を紹介していこう。まず興味深かったのは、正面だけではなく様々なアングルから眺めることで、キャラクターや背景の見え方が変わってくる点である。PCやゲーム機で3Dキャラクターを見る際は、通常コントローラー等を操作して、角度を調整する必要があるが、このデバイスであれば、自分の見ている位置を変えるだけで、奥行き感を感じながら別側面を見られる。いろんな角度からオブジェクトを見回す体験を気軽に実現しており、初めて観賞する人であれば新鮮な驚きがあるはずだ。

先述のとおり、ホログラム形式のような技術のデバイスではないため、キャラクターが現実の空間にまで飛び出してくるような表現とはとても言えないが、3Dオブジェクトの立体感・奥行き感というものは確かに感じられる。体感としては、Meta QuestやApple Vision Proなどで鑑賞可能な「空間ビデオ」を見ているときの感覚に近いかもしれない。iPhoneの写真機能に「空間シーン」と呼ばれる簡易な立体演出モードがあるが、あのモードよりも立体度・奥行き度ははるかに高い。写真や動画では、その感覚というのが(技術の都合上)どうしても伝わりづらいところがもどかしいところだ。

また『ELF-MN1』の視線認識センサーの機能も確認できた。これにより、3Dキャラクターがどのような角度でもこちらに視線を合わせてくれるのだが、この表現には驚かされた。3Dキャラクターが本当に“いる”ように感じられたからだ。鑑賞者の目の位置に合わせてリアルタイムに3Dオブジェクトの表示を変化させる技術こそが、この『ELF-MN1』の真価ではないだろうか。自分のお気に入りの3Dアバターやアニメキャラクターを『ELF-MN1』にアップロードして、いつまでも眺めていたいと思う人は決して少なくないはずだ。キャラクターと自分の目が合うという、シンプルにそれだけの体験がここまで感動が大きいとは思わなかった。

そのため、今回のデバイスは間違いなく、3Dキャラクターが動き回ったり、コミュニケーションをとったりしてくれるサービスと相性が良い。実際、Gugenkaの「HoloModels」は、この用途での利用で相性が抜群だ。すでに、ラブライブ!や初音ミク、VTuberなどの3Dデジタルフィギュアが多数展開されているため、それらをこの『ELF-MN1』にアップロードすれば、気軽に観賞が可能だ。

またキャラクターと一緒に学習や作業の時間を共にするタイプの支援ゲームにも活用可能だ。今回、作業支援ゲーム「Fenestra」のキャラクター「フェネストラ」を『ELF-MN1』に表示するデモも公開されていた。これならPCで作業をしながら横目にキャラクターの様子を見てホッとするといったルーチーンを作れるかもしれない。他にも、Animation制作のAIキャラクター会話ツール「animates」でも、リアルタイムに応答してくれるAniの姿を見られ、コミュニケーションデバイスとしても活用できる点には汎用性の高さを感じられた。

クリエイターによる挑戦的な表現が、デバイスの価値を変える

今回、クリエイターの展示も目を引くものが多かった。YORIMIYA氏の作成した時計アプリでは、『ELF-MN1』を“自宅に飾るガジェット”として捉えた時の見栄えの良さ、生活になじむオシャレさが前面に出ており、日々の暮らしの中にこのデバイスがあることの良さをポジティブに意識させるものだった。

また、坪倉輝明氏のように『ELF-MN1』を電話ボックスのように見立てて、3Dアバターがボックスの中に本当にいるかのように魅せる演出は、「キャラクターを表示する」というシンプルな機能にストーリー性を付加できているように見えて、興味深かった。

また、オレンジ氏はPCとデバイスを直接接続してVRChatのサブモニターのように利用するという、離れ業的なコンテンツを披露。モニターに表示されているVRアバターはNPCではなく、実際にバーチャル空間にいるVRChatユーザーなので、本当にこちらに向かって手を振って話しかけてきてくれた。フレンドに色々なポーズをリクエストすれば、その場でその姿を立体視できる。このようなかたちでVRChatユーザーにとって嬉しい機能が生まれるとは予想外だった。

中でも今回印象に残ったのは、Voxelkei氏の展示コンテンツだ。『ELF-MN1』をゲームモニターとして利用し、シューティングゲームを駆動させていたが、このゲームの操作に何と視線認識センサーが活用されていたのである。ゲームの戦闘機は、こちらの顔の位置に合わせて移動するので、様々な角度からゲームを見るという体験が可能だった。さらに、ボス戦では戦闘シーンのアングルが変わり、より没入感のある映像に。視線センサーと裸眼立体視という二つの要素をうまく活かしたコンテンツとなっていた。他にも、3Dガウシアンスプラッティング技術で再現した空間を球体のガラス瓶の中に閉じ込め、アクアリウムのように展示するコンテンツもあり、3Dキャラクターを呼び出すだけではない用途として注目すべきものだった。

クリエイターの展示を見る限り、『ELF-MN1』はアイデア次第で様々な用途で利用できる汎用性の高いデバイスになり得る。現状、今回登場したようなデモンストレーションのアプリがどれだけ登場し、正式にリリースされるかが、継続的なデバイス展開にとって大きな鍵となりそうだ。また、3Dコンテンツ制作に馴染みのないユーザーにとっても、このデバイスのビジュアル的な面白さは、実際にみればすぐに分かるものだ。

今後、展示会やイベントなどで見かける機会が増えれば「これを自宅でも使ってみたい」と思う人も少なくないはずだ。何より、これまで業務用としての価値が大きかった裸眼立体視ディスプレイが、いよいよ手が届く価格になったことが大きい。まずは、実際に体験して、どのようなかたちで活用できそうか、どんなアプリなら生活で利用できそうかを想像するところから始めて見るのが良いだろう。

公式サイトはこちら:https://www.sony.jp/spatial-reality-display/products/ELF-MN1


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