日本の国技である相撲。相撲ファンではなくとも、日本人であれば相撲を知らない人や、体の大きな力士が激しくぶつかり合う映像を見たことがない人はいないのではないでしょうか。しかし、土俵の上で立合を見られるのは行司だけ、本気でぶつかってくる横綱と立合える人は、力士のみです。
普通の人は、力士に本気で体当たりされれば吹っ飛んでしまうでしょう。先日開催されたニコニコ超会議でそんな相撲をVRで再現したコンテンツが展示されました。
大相撲超会議場所
幕張メッセで4月29日~4月30日に開催された「ニコニコ超会議2017」では「大相撲超会議場所supported by カップヌードル」(以下、超会議場所)が催され、横綱を含めた250名の力士による土俵入り・取組・トークなどを見ることができました。
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会場には巨大モニターが設置され、ニコニコ生放送で放送されている映像が流されます。通常の大相撲の放送と違い、見ているユーザーのコメントが流れ、力士には炎のエフェクトがCGで加えられたり、格闘ゲームのバトル開始画面のような画像が流れるなどデジタルな演出も見どころです。普段相撲を見ない人でも楽しめる演出でブースには、大勢の人が集まっていました。
今年の超会議場所では、VRで相撲が体験できる『大相撲ニコニコVR場所 by Gen8-GENERATE-』(以下大相撲VR)が展示されました。
大相撲VR舞台は現実もVRも土俵
『大相撲VR』は相撲の取組を土俵の中で体験できるVRコンテンツです。ブースの床には土俵の絵が描かれ、パーティションには盛り上がる観客が描かれていて、一目で相撲の体験ができることがわかります。
土俵の中に立ち、VRヘッドマウントディスプレイを被るとVR内にも同じ位置に土俵があります。土俵だけが明るく周りは闇に包まれています。すると闇の中から第69代横綱白鵬関と琴奨菊関が現れます。フォトリアルなCGモデルなので、腕の筋肉も背中も何もかも本物そっくりです。
土俵に入る前に2人とも塩を撒きますが、筆者は土俵の中にいるため塩が顔面に向かってきます。暗い背景に白い塩の対比が美しいと同時に大量の塩が顔にかかると迫力があります。一瞬顔に塩の粒が当たったような錯覚さえ感じました。
まずは行司視点
取組は2回、最初は白鵬関と琴奨菊関の取組です。お互いが仕切り線に手をつき見合ってる間に入り、しゃがんで眺めてみました。力士がぶつかり合う前の態勢を、正面から見ることは立合い相手のみが見られる光景です。ぶつかり合う瞬間に怖くて飛びのいてしまいました。土俵の上でがっぷり組んでからの投げ。自分の目前に琴奨菊関が飛んでくるとまるで車を飛ばされたかのような迫力を感じます。
続いて白鵬との取組を体験
2回目は自分自身が白鵬関と立合う体験です。自分の動きを誘導するように青いシルエットの力士が現れます。白鵬関の動きを真似しながら、青い力士の動きに従い仕切り線の外側で四股を踏みしゃがんで手をつきます。
筆者が前に行こうと腰を上げ、白鵬関の右肩が筆者の左肩にぶつかる瞬間、本当にスタッフに肩を押されたため、目の前の白鵬関が実際にぶつかったように感じました。次の瞬間には力が弱いためスタッフによる演出だと理解しましたが、当たった瞬間は死ぬかもしれないという恐怖感に襲われ体がこわばりました。
ぶつかってきた白鵬関はそのまま筆者の体を突き抜け、振り返ると力士のシルエットを土俵の外に押し出していきました。
VR内での照明の光が力士の筋肉を強調します。また土俵の周りがすべて暗いのも目の前の力士に集中できかつ、相撲ファンにとってはまさに夢みたいな光景でした。
筆者が体験したときは肩を押すのはブースの女性スタッフでしたが、その後、本物の力士が押しており、迫力はさらに真に迫るものになっていたのではないかと思えます。
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力士も体験する一幕も
ファンと力士が触れ合えるイベントとしても素晴らしいコンテンツでした。
『大相撲VR』とは
『大相撲VR』は第59代横綱白鵬関の取組を後世に残すためのプロジェクトとして採用された「Motion Archaive」(制作:Gen8-GENERATE)のニコニコ超会議バージョンです。た。
先端テクノロジーを合わせた映像を制作するクリエイター集団Gen8-GNERATE- が制作する「Motion Archaive」は、スポーツや伝統芸能などの選手や演者を、モーションキャプチャーや身体データをスキャンして3DCGモデルを作り、2次元の映像ではわからなかった角度やこまやかな動きを確認・記録するものです。
制作のGen8-GENERATE-ディレクター髙沢智也氏にお話しを伺いました。
<h3>作られたきっかけ、もともとは白鵬が研究のために< h3=””>
白鵬関は以前から文献や映像で往年の力士や取組を研究する際、ビデオ・写真に映っていない角度からの情報があれば、気づくことがあるのではと感じていたとのこと。360度見ることのできる「Motion Archaive」は力士本人でさえ一瞬の取組で記憶してないこともその瞬間を記録し、検証できるため、採用されたとのことです。
沖縄のモーションキャプチャー専門スタジオに、土俵を作る必要から、本来土を入れることはできないスタジオに8トンの土を入れ土俵を作ったとのこと。
モーションキャプチャーで身体の動きを撮るためには特殊なスーツを着用しますが、白鵬関と琴奨菊関にサイズはなく急ぎ特注したとのこと。頭の動きを取るためには頭部にセンサーをつける必要がありますが、当初髷(まげ)がありできなかったため、センサーを取り付けられるような髪型に床山に現地にきてもらい髷を工夫してもらったとのこと。
「Motion Archaive vol.001 第69代横綱 白鵬 翔 × 琴奨菊 和弘」には全部で17の動きが記録されているとのこと。今回の『大相撲VR』ではそのうち2つのモーションを体験できました。
相撲技術の継承やより深い理解のために
『大相撲VR』を体験してみて、アスリートの最も体が動く時期に、本人がその場で動いてるかのような映像を360度好きな角度から見られることは、今後のスポーツやダンスや、伝統芸能、その他体の動きが関わる技術の継承などにおいて計り知れない価値があると感じました。
3次元データですので今はVR映像での再現ですが、将来技術が進めばロボットに組み込むことも可能になり、誰でも白鵬関本人と変わらないロボットと取組ができるようになるかもしれません。
離れた場所から観戦するしかなかったファンにとっては、対戦相手にならなければ見られない光景を知ることができます。今までの観戦スタイルがかわり、より深くそのスポーツや選手を理解し楽しむことができます。
『大相撲VR』は、後世に残し、選手や演者のための目的のプロジェクトが、エンターテインメントとして一般の人にも演出次第で楽しいコンテンツになっているコンテンツでした。
今後、『大相撲VR』が他イベントで体験できるかは未定ですが、ぜひ機会を増やし多くの人に体験できるようになってほしいものです。