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VRゲーム・アプリ 2024.08.14

殴りまくってぶっ飛ばせ! VR対戦アクション「ブレイゼンブレイズ」をしばらく遊んで感じた奥深さ

3vs3のチームで戦うVR対戦アクション「ブレイゼンブレイズ」。2019年発売の「東京クロノス」を皮切りに、「ALTDEUS: Beyond Chronos」「DYSCHRONIA: Chronos Alternate」などのVRゲームを手掛けてきた、MyDearestが送り出す最新作だ。

これまではアドベンチャー形式の「物語」によってプレイヤーを魅了してきた同社だが、最新作となる今回は、対戦アクションゲーム。ニューヨークやパリをモチーフにした都市を縦横無尽に飛び回り、さまざまな武器を駆使して敵チームと戦う、オンラインマルチ対戦ゲームだ。大人数のバトルロイヤルではなく、1チーム3人の「3対3」が基本となる。

その勝利条件は、至ってシンプル。
殴って、ぶっ飛ばして、全滅させる。それだけだ。

とはいえ、この説明だけでは、真新しさや物珍しさは感じられないかもしれない。「マルチプレイができるオンライン対戦ゲーム」なんて今や星の数ほど存在しているし、それはVRの分野においても同様だ。定番のFPSゲームのほか、リリースから3年が経った今もアクティブユーザー数を増やしているVR鬼ごっこ「Gorilla Tag」のような人気作もある。

では、「ブレイゼンブレイズ」の魅力とは、どのような点にあるのだろうか。順を追って見ていこう。

縦横無尽に展開するハイスピードアクション!そして何より、“殴る”のが楽しい!

「ブレイゼンブレイズ」は、一言で説明するなら「殴りゲー」だ。このゲームを構成する諸要素を極限まで削ぎ落としていった結果、おそらく最後に残る特徴の1つが、「殴る」という単純明快な動作である。

殴って戦うゲームといえば、まずボクシングが思い浮かぶ。実際、腕を使った動きなのでVRにも取り入れやすいのか、ボクシングを題材にしたVRゲームも少なくない。そのなかには有酸素運動を目的にしたものだけでなく、反射神経やフィジカルが必要な、本物志向の「ボクシング」をリング上で味わえるタイトルもある。

一方で、「ブレイゼンブレイズ」は、決して「ボクシング」ではない。

まず、戦う場所がリングではなく街中だし、そもそも拳以外の武器の使用も認められている。詳しくは後述するが、銃や剣、鉤爪や盾、さらには爆弾を得意武器とするキャラクターまでおり、性能もさまざまだ。ボクシングにおける「ガード」のような動作もない。

また、プレイヤーが操作するキャラクターはみな腕にガントレットを装備しており、そこからの噴射による高速移動や多段ジャンプも可能だ。このガントレットによるブースト噴射は複数回行えるため(キャラによって回数に違いがある)、二段ジャンプのみならず、空中で軌道を変えながらのジグザク移動もできる。多段ジャンプで空中へと逃れたり、逆に建物の上から急降下して強襲をかけたりと、文字通り縦横無尽に動き回れるわけだ。

実際の対戦では、6人のプレイヤーがそうやって地上と空中を移動しながら、拳を振るい合う。武器も使うが、いずれにしても、自身の腕を動かすことに変わりはない。現実では、両手に握りしめたコントローラーを前に突き出すようにして、相手に向かって拳を繰り出す。銃や剣をメインウェポンとするキャラクターもいるが、トドメを刺すのは、決まって己の拳だ。

慣れないうちは、がむしゃらに腕を振り回すだけになるかもしれない。思うように空中移動ができず、ヒットアンドアウェイで戦う余裕もなく、無策に突っ込んで袋叩きに遭うかもしれない。

「初心者でも楽しくプレイできるの?」と不安に感じる人もいるかもしれないが、そこは安心してほしい。ロックオン機能を使えば、初心者でも結構パンチが当てられる。楽しく殴れる。相手に攻撃が当たり、打撃音が響き、コントローラーが振動し、握りしめた手のひらに「殴った」感触が伝わる。気持ちいい。スカッとする。そうやって体を動かすことが、楽しくて仕方がない。

「殴る」という、リアルでは格闘技くらいでしか認められない行為も、ゲームでならば許される。しかもVRなら、その感触も間接的に味わえる。殴った拳は痛まないし、殴られた相手も痛くない。

ただし、1つだけ注意点がある。夢中になりすぎて、リアルの部屋の壁や家具をうっかり殴ってしまわないように気をつけてほしい。結構、痛いぞ。

殴るだけじゃない! 銃や剣、そして爆弾も!? 多彩な武器を使う「ランナー」たち

「相手を殴り、体力を削って、吹っ飛ばしてトドメを刺す」という爽快感が魅力の本作だが、登場するキャラクターたちの武器は、彼ら彼女らの拳だけではない。「ランナー」と呼ばれる個性豊かなキャラクターたちが持っている多彩な武器と、その性能の違いも、「ブレイゼンブレイズ」の魅力だ。

たとえば、メインビジュアルでも大きく描かれている「RIOT(ライオット)」は、バランスタイプのランナーだ。

連射性能の高いSMGで相手を牽制しつつ、距離を詰めてぶん殴ることもできる。アルティメット(いわゆる必殺技)を発動するとブーストゲージが無限になるため、相手を逃さず一気に距離を詰められる。あるいは、囲まれたときの離脱手段として使うのもひとつの手だ。回復スキルも持っているため、初心者向けのランナーと言えるだろう。

ガタイの良い「LEGACY(レガシー)」は、防御タイプかつパワー型のランナーだ。

敵からの攻撃を遮る大きなシールドをいつでも出せるほか、一度だけ攻撃を防ぐバリアを味方全員に付与可能。移動時のブースト回数が少ないため小回りは効かないが、体力が多く、ある程度は敵の攻撃に耐えられる。敵のガントレットを一時的に使えなくするアルティメットも持っているので、距離さえ詰められれば、一対一では競り勝ちやすいはずだ。

SKYBOLT(スカイボルト)」は、射撃武器を得意とする中距離タイプのランナー。

連射可能なライフルを両手に2丁装備でき、離れた距離からじわじわと相手の体力を削ることができる。敵の位置を捕捉する索敵スキルも便利で、アルティメットを発動すれば、ホーミング弾の一斉掃射で相手を追い詰められる。FPSに慣れている人ほど使いやすく感じるランナーかもしれない。

ほかにも、斬撃を飛ばせる剣使い「VELVET(ベルベット)」に、雷の力で自らを強化して手数で攻める「LEVIN(レヴィン)」、爆弾とお茶目な言動を振りまきながら笑いを届ける戦闘マシンなコメディアン「SUNSHINE(サンシャイン)」がいるのだが、ここでは「CHILLOUT(チルアウト)」に尺を割いて紹介したい。

シンプルな殴り合いに見えて、戦略の幅広さと奥深さがある対戦ゲーム

ところで、筆者は遠距離武器が好きだ。「スプラトゥーン」ではリッター4Kを、「Apex Legends」ではロングボウやチャージライフルを好んで使っている。が、決して得意というわけではない。遠距離武器を使う理由は、純粋に「好きだから」だ。

ここまでの説明のとおり、「ブレイゼンブレイズ」は、「拳で殴る」ことを主軸に据えた対戦ゲームである。RIOTやSKYBOLTのように銃を使うランナーもいるものの、射程距離はそこまで長くない。ランナーによってはブーストで一気に詰められるような距離だし、たとえ銃による攻撃で相手をスタンさせたとしても、トドメを刺すためには接近して殴る必要がある。「遠距離からチクチクと狙い撃って勝利する」ようなタイプのゲームではないのだ。

そんな本作の特性も考慮すると、SKYBOLTよりも射程距離の長い遠距離キャラは、さすがにすぐには出ないだろう……と踏んでいたのだが、意外とあっさり出てきたので驚いた。それが、CHILLOUTちゃんである。

しかも、彼女のメインウェポンは、まさかの「弓矢」。弓に氷の矢を番えて、引き絞れば引き絞るほど飛距離が伸びる。放たれた矢は放物線を描いて飛ぶため、銃よりは当てるのが難しい。最大まで引き絞ってしばらく溜めると、一直線に飛ぶチャージショットを放つことができる。その飛距離は、マップの端から端まで。紛れもない遠距離タイプである。

この「弓を引き絞り、狙いを定めて、矢を放つ」という一連の動作に、気づけばハマってしまっていた。「弓を射る」という動き自体、VRでは意外と体験したことがなく、刺激的に感じられたのかもしれない。銃弾と比べて癖のある矢の軌道も慣れればおもしろく、最近はもっぱらCHILLOUTを使ってしまっている。

ただ、遠距離タイプのCHILLOUTは体力が少なく、近距離タイプのランナーに距離を詰められるとボコボコにされやすい。とくれば当然、そうされないような位置取りがFPS同様に重要になってくるわけだが、「ブレイゼンブレイズ」のステージはそこまで広くない。うまく高所を確保したとしても、建物を崩されてしまえばおしまいだ(ステージ上の建造物は殴って倒壊させることができる)。ステージ自体も徐々に崩壊して足場がなくなっていくので(いわゆるエリア収縮)、遠距離タイプは立ち回りがなかなかに難しい。

そういう意味では、高所の少ないステージではCHILLOUTは真価を発揮しづらく、また、遠距離から狙い撃つにしても、相手のランナーの性能を考慮した立ち回りが不可欠になる。思いのほか考えることが多い……のだが、見方を変えるとそれは、ゲーム自体の戦略の幅が広いと言い換えることもできる。

敵だけでなく、仲間のランナーとの組み合わせによっても、立ち回りは当然変わってくる。LEGACYがいれば防御スキルによるカバーが期待できるし、SKYBOLTがいれば、中〜遠距離からの連携で敵を追い詰められるかもしれない。「体力が少ない遠距離タイプ」というキャラ性能を逆手に取って、囮として場をかき乱すのも楽しそうだ。

――と、ここではCHILLOUTを例に考えてみたが、このような戦略と立ち回りの考え方は、ほかのランナーにももちろん当てはまる。つまり、本作は一見するとシンプルな「殴りゲー」なのだが、ランナーの選択と組み合わせ、相手のチーム編成やステージによって立ち回りが変わる、戦略の幅広さと奥深さを持ったゲームでもあるわけだ。

立ち回りと戦い方を左右する要素としてはほかにも、ステージ内に配置されているアシストアイテムや、バトル前に1つだけ選んで持ち込めるサブウェポンの存在も外せない。

アシストアイテムには強力なものもあり、サブウェポンも、装備するランナーとの組み合わせによっては相手の虚を突ける。「CHILLOUTに近距離戦を挑んだら、強力な近接武器で返り討ちに遭った」「追い詰めたと思ったら、たまたまそこにあったアシストアイテムで一発逆転された」なんてことがあってもおかしくはない。

このゲーム、単純明快な殴りゲーに見えて、なかなかに奥深いのだ。

疲れるから、楽しい

まだリリース間もないながら、PvPのオンライン対戦ゲームとしての奥深さと歯ごたえを感じている本作。しかし一方で、「ブレイゼンブレイズ」というゲームならではの魅力を一言で言い表すのであれば、やはり「自分の拳で相手を殴って吹っ飛ばせる」という爽快感が一番大きいようにも思う。

これは「実際に自分の体を動かしてゲームをするのは楽しい」という、VRゲームの多くに当てはまるだろうゲーム体験の魅力を言い換えたものでもある。――殴ることは、楽しい。自分の体を動かすのでそれなりに疲れはするものの、それも含めて充実感がある。

いや、むしろ、疲れるからこそ、楽しい。

テレビゲームならボタン1つで、パソコンゲームならワンクリックで済む動作を、VRゲームでは、プレイヤー自ら「動く」ように強いられる。「わざわざ自分で動かなければならない」という制約そのものが、心躍るゲーム体験になる。それこそ、「弓を引き絞る」という動作それ自体に、筆者がハマってしまったように。


(この「引き絞る」動作も、続けていると意外と疲れてくる。それどころか、ほかのランナーを使うときよりも疲労感は大きいかもしれない)

そんな「疲れる」ゲーム体験を程よいペースで味わえるのも、「ブレイゼンブレイズ」の魅力だ。

というのも本作、(ゲームモードにもよるが)1回の試合時間はそこまで長くない。5分程度でサクッと遊べて、次の試合までの待機時間も若干発生するため、長時間にわたってハードに動き続けるような状況は発生しない。「いい感じに動けた」という適度な疲労感と充実感が、勝っても負けても得られるため、ついついそのまま次の試合へと向かってしまう。

加えて、このような程よいペースで夢中になれるゲーム体験は、VRゲームにありがちな「酔い」の問題の解消にも繋がっているように思う。

そもそも本作は、ハイスピードで空間を動き回るVRゲームでありながら、驚くほどに酔いにくい。この「酔いにくさ」はプレイヤーの多くが声を揃えて口にしていることであり、どちらかと言えばVR酔いに弱い筆者も、今のところプレイ中にダウンしたことはない。最初の頃は「あっ、酔いそう」と若干の兆候が発生することもあったが、それもマッチングの待機中に回復してしまうくらい微々たるものだった(※もちろん個人差はあります)。

今ではVR酔いの気配もまったくなく、夜な夜な30〜60分ほどプレイしてから寝るのが習慣になっている。体を動かすとはいえ、ほかのフィットネスゲームや「Beat Saber」ほど激しい運動ではないため、プレイ後はちょうどいい疲労感を感じられる。そういえば、本作を遊ぶようになってから、それとなく寝付きがよくなったかもしれない。

カジュアルに遊べる対戦ゲームとして、VRゲームの定番タイトルになるか

バーチャル空間を高速で移動しながら、自分の体を動かし、相手を殴って、吹っ飛ばせる。現実ではできないことをできる爽快感と、適度な疲労感を伴う充実感を味わうことができ、しかも酔いにくいオンラインマルチ対戦VRゲーム。それが、「ブレイゼンブレイズ」だ。

公式のアナウンスによれば、今後のアップデートで新しいランナーや武器の追加も予定しており、ゲームシステムの改善も並行して行われているらしい。現時点でも十分に楽しくプレイしているが、新しいゲームモードの追加などによって、まだまだ「化ける」可能性もあるゲームだと感じている。

「ブレイゼンブレイズ」は現在、Meta QuestストアとSteamストアで配信中。UIのわかりやすさや操作性も含めて抜群に遊びやすいので、対戦型VRゲームの定番タイトルになってもおかしくないように思う。以前からVRコンテンツを楽しんでいる人はもちろん、VRヘッドセットを手に入れて間もない人にもおすすめしたいタイトルだ。


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