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ゲーム・アプリ 2017.08.01

ARアプリで「自然災害」を疑似体験 デモ動画が公開

大震災などの自然災害は、ときに数時間でその場の環境を一変させてしまう恐ろしいものです。先日の7月7日にも、記録的な豪雨で大きな被害を残した「九州北部豪雨災害」が発生しています。

自然災害に対し、日ごろから防災の知識を付けることは有効な手段のひとつ。しかしそれを頭で分かっていつつも、なかなか訓練などの具体的な行動に移せないものです。災害を自分で目の当たりし、身近に感じることではじめて災害への意識が高まるかもしれません。

今回、そんな自然災害のうち「浸水被害」を目の前で疑似体験できるARアプリのデモ動画が公開されました。

室内での表示例(愛知工科大学板宮研究室と研究棟のエレベーターホール)

動画を見てみると、浸水は座っている人の肩の位置、デスクの上に置いてあるPCモニターまで水面が挙がっているようです。

エレベーターの方では、ボタンの位置がほとんど見えない状態となっています。小さい子どもであれば、頭まですっぽり水面に隠れてしまうレベルです。

さまざまな水害をシミュレート

本アプリの開発者は、VRとARの防災教育への応用を行っている板宮朋基(@t_itamiya )氏。グーグル社のARプラットフォーム「Tango」の機能を用いて、自分がいる場所の水位変化をリアルタイムで確認できる浸水疑似体験アプリです。

マンションの一室での表示例

板宮氏にお話を伺ったところ、本アプリを用いれば、スマートフォン1つで自宅や出先といった場所を問わず「今いる場所で水害に出くわしてしまったら……」という状況を疑似体験できるのとのこと。足元から徐々に水位が上がってくるアニメーション表現や、水位設定、1時間後や3時間後といった時間指定の選択が可能です。

また「雨量」の表現も可能とのことです。天気予報で「50ミリ」と聞いても筆者のような一般人は、「どのくらい降るのか、どう影響するのか」がピンと来ません。自分の目で実感することで、水害に対する意識が持てるのではないでしょうか。

小学校で行われた避難訓練の様子

アプリ開発に込めた思い

本アプリの開発経緯についてお聞きしたところ「従来の気象警報に加えて『あなたの家は1時間後にこうなります』と具体的なイメージを伝えられれば、いち早く避難するきっかけになるかもしれない。差し迫った危機を『ひとごと』としてではなく『わがこと』として実感してほしい」という、防災への思いがあるとのことです。

板宮氏は2年前から従来型のスマートフォンを用いたAR災害疑似体験アプリを開発し、小学校の避難訓練や自治体主催の防災訓練で実用を行っていました。

しかし、従来のスマホは端末位置の把握や、壁や一定の高さ以上の物体に水面が表示されないようにするための「オクルージョン処理」が現実的なものではなく、ARを活用した水面表現に限界がありました。そこで、6月に発売されたTango対応のスマートフォン「ZenFone AR」を使用したことにより、物体の位置の把握、オクルージョン処理といった上記の問題点を改善、リアリティある浸水表現が可能になったとのことです。

本アプリは今後、9月に茨城県内の小学校で予定されている避難訓練での実用と、自治体の防災部門や消防局など公的機関向けにアプリの販売を予定しています。

また、防災イベントで利用希望に関しては、端末レンタル、またはスタッフ込みの2パターンが用意されているとのことです。詳細は板宮氏に問い合わせることも可能とのことです。

煙と空気の境界である「中性帯」を認識

なお、板宮氏は火災発生時の疑似体験アプリの開発も行っています。煙は高温で吸ってしまうと一酸化中毒になってしまうため、煙を避けて姿勢を低く避難する重要性を実感として学ぶためのアプリです。こうした身の回りに起こりうる災害を体験を経験しておくことで、いざという時に焦らず迅速に行動できるのではないでしょうか。


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