バーチャル空間上でアニメを制作できるツール「AniCast Maker」が、VRヘッドセット「Oculus Quest(およびOculus Quest 2)向けにリリースされました。
「AniCast Maker」は従来のような複数人での作業分担を必要とせず、直感的な操作でアニメ制作ができることから、VRクリエイターたちの中で大きな話題となりました。今回はその商用版がリリースされたので、使い勝手などを紹介していきます。
「AniCast Maker」の特徴
「AniCast Maker」は、バーチャル空間にキャラクターやアセット(素材)、カメラを自由に配置し、アバターを使って演技や撮影をすることで、3Dアニメを制作できるツールです。15秒以内のショートアニメ動画を制作でき、SNSなどに投稿できます。
https://www.youtube.com/watch?v=SbCQ9kq8xGo
従来、3Dアニメ制作には、モデリングやボーンの設定・レンダリングなどの専門知識や技術を学ばなくてはいけません。また、必要となるソフトとそれらを実行できるスペックのPCも必要です。しかしAniCast Makerはアセットがソフト内で用意されており、ショートアニメならば制作作業をOculus Questのみで完結できます。
さらにキャラクターの動きは自分が演技を行うことで収録でき、カメラワークも実際に「カメラを手に持って」撮影するなど、直感的にアニメが作れるようになっています。
手軽な演技やカメラ撮影で素人でもアニメが完成する!?
「本当にバーチャル空間上でアニメ制作が出来るの?」と疑問に思う方もいるでしょう。しかし、筆者のように3Dアニメ制作に携わったことのない素人にも制作の仕方が理解でき、短時間でちゃんとアニメを完成できるほど、AniCast Makerは分かりやすくできていました。
アプリを立ち上げたら最初に「MAIN STAGE」でキャラクター・背景・小物・音楽などのアセットを配置していきます。
Questの左右のコントローラーで掴んで置いていくので、まるでジオラマを作っているかのよう。背景は2Dと3Dが用意されており、2D背景はユーザーが用意したものを利用できます。また、そのまま配置するとアセットがずれることがあるので、マグネットツールできっちりとした向きで配置するのも可能です。
必要なものを揃えたら、今度は「ACTOR STAGE」でキャラクターに動きをつけます。キャラクターの視点で動きを追加していくのですが、まさか自分が美少女になって演技することになるとは……。はじめはぎこちなく動き、どうすれば可愛くなるか試行錯誤を繰り返し、ようやく普通(?)な動きとなりました。
キャラクターそのものになって演技するのは新鮮でしたが、自分のやりたいことをダイレクトには反映させられるのは非常に合理的。録画ボタンを押した後は演技に集中できるので、初心者がつまずく要素はほとんどありませんでした。
さらに、1人目のキャラクターを録画後、2人目のキャラクターを録画して同時に動かすこともできます。録画中に表情や手の動きを変えられますが、一度録画した動画の表情や手の調整を再録が出来る「EDIT STAGE」という便利なモードもあります。
次はカメラで撮影する「CAMERA STAGE」。現実ならアクターとカメラマンは分担するのが当たり前ですが、本ソフトでは先に録画したキャラクターの演技を、カメラを動かしながら撮影できます。カメラは複数配置できますが、それぞれの動画をひとつにまとめるなら外部編集ソフトが必要そうです。
最後に「RENDERING STAGE」でアニメを保存したら完成。冗談抜きに、本当にこれだけで完成です。
もちろん15秒という敷居の低さやアセットの選択幅の狭さも完成が早い理由だとは思いますが、ひとつひとつの制作シーンがどれも直感的で、かつユーザーへの負担がほとんどないのが大きいのだと思います。「こういうものを作りたい!」というイメージをダイレクトに反映させ、その熱意が冷めないうちに作りきれてしまうことは、本ソフトの強みです。
WEBサイトや動画で操作のノウハウを学ぼう
直感的に操作できるAniCast Makerですが、ツール内での操作方法の解説は少なめ。起動直後は大まかなチュートリアルが始まり、基礎的なボタン操作はメニューから確認できますが、細かな部分は手探りのままプレイしなくてはいけません。
解決策としては公式ページの説明書か「AniCast Maker」公式YouTubeチャンネルの動画を見るのがオススメです。特にチャンネルでは動画で基礎操作の説明からキャラクターの動かし方、撮影の仕方まで網羅しているので、分からないことがあればこちらを参考にするのが良いでしょう。
#1『動画を作ろう』チュートリアル動画【AniCast Maker】
https://www.youtube.com/watch?v=UK5wmxLHEEI
#2『基本操作の説明』チュートリアル動画【AniCast Maker】
https://www.youtube.com/watch?v=DkWJ6KVplo8
・「AniCast Maker」公式YouTubeチャンネル
アセット数・動画時間は拡張される?
現在ストア内に配信・販売コンテンツは用意されておらず、使用可能なキャラクター素材(アセット)は2キャラクターのみです。しかし、今後はゲーム・アニメとのコラボアセットを追加ダウンロードコンテンツとして配信・販売し、多種多様なIPとのコラボレーションを実現することが明かされています。
現在のシステムでも外部ソフトがあれば本格的なアニメも作れそうですが、Oculus Quest内でカメラを切り替えての編集や、より長いシーンの録画ができれば本ソフトの可能性はさらに広がりそうです。また、VRMなどの3Dモデル用ファイルが使えるようになるか気になるところ。もし実現すれば、完全オリジナルアニメも夢ではありません。
AniCast Maker Showcaseによるとリリース直後をVer1.00とし、今後もアップデートしていくとのこと。「短尺映像コンテンツの二次創作」にフォーカスしていると発表されているため、これらが今後のアップデートで拡張されるかは不明ですが、本ソフトの用途を広げるためにも期待したいところです。
「AniCast Maker」を試してみたまとめ
「AniCast Maker」による脳内のイメージをVR空間で直感的に動画化できるという手法は、今後の3Dアニメ制作において変化をもたらす可能性を秘めています。
特に複数の技術を学ばなければ出来なかったアニメ制作をワンオペでこなせ、必要なツールもOculus Questとソフトウェアのみで十分なのは嬉しいところです。敷居はとても低いので、クリエイティブ経験がゼロに近い人でも制作できるかもしれません。
一方でリリース直後は素材が少なく、Oculus Quest内で制作できる動画も現状15秒まで。今すぐ理想のアニメーションが作れると限らないため、これらを留意した上で購入した方が良いでしょう。コラボ配信タイトルは人気コンテンツが予定されているので、今後の続報にも見守りつつ、ぜひ動画をどんどん作ってみてください。AniCast Makerによって新たな才能が生まれる日も近いかもしれません。
公式サイト:
https://anicast-maker.com/
著作権表記:
『AniCast Maker』
©2021 Avex Technologies Inc./AniCast RM Inc.
Developed by XVI Inc.
※「AniCast」は株式会社エクシヴィの商標または登録商標です。
『ファンズちゃん』
© Dai Nippon Printing Co., Ltd.
執筆:ノンジャンル人生