Googleの発表した「Android XR」を搭載したXRヘッドセット「Project Moohan」(※名称はコード名)。そのプロトタイプ機を体験した、海外YouTuberのMarques Brownlee氏が、レビュー動画を公開しました。
Marques Brownlee氏は、チャンネル登録者数約2,000万人に達する超人気YouTuber。Apple製品を含む、スマートフォンやノートPCといったテック系アイテムの紹介やレビューなどを行っている人物です。
「Project Moohan」は、現実の景色とバーチャルな演出の混合した体験が可能なMRデバイスです。Qualcommの Snapdragon XR2+ Gen 2チップセットを内蔵し、XRデバイス向け新OS「Android XR」で動作します。開発はGoogleとサムスンが共同で行っており、2024年末に正式発表が行われました。リリースは2025年内に行われる予定です。
「Android XR」は、Googleが開発しているXRデバイス向けのOSプラットフォーム。AppleのVisionOSと同等の空間コンピューティングの実現を目的としています。GoogleのAIアシスタントGeminiを標準搭載した、AIの活用を前提としたOSになっているのが特徴です。
実際に使ってみた感想は?
Brownlee氏は、プロトタイプの形状(本体前面)はApple Vision Proに酷似していると報告。一方、ストラップ自体はMeta Quest Proに近く、眉毛の上あたりで重量を支えるデザインになっていると説明しました。ディスプレイの画質と視野の広さには不満を感じなかったそうです。
本体側面(右側)のストラップ部分にはタッチパッドが搭載されており、反対側には、外部バッテリーの差し込み口が設置されています。接続ケーブルの規格はUSB-Cで、付属品以外のバッテリーも使用できるとのこと。本体の上部にはIPD(瞳孔間距離)の調整ボタンがあり、押すことでIPDが自動的に調整されます。
真に興味深いのは、ハードウェアではなくOS
Brownlee氏は、ハード面の完成度を評価しつつ、真に「Project Moohan」を“クール”にしているのは、同ヘッドセットに搭載された「Android XR」であると語りました。UIのデザインはApple Vision Proに近い構成で、基本的な操作はハンドトラッキング(両手操作)とアイトラッキング(視線操作)で行えるとのこと。アプリやブラウザが表示されるバーチャルディスプレイは、画面端を操作することで、大きさを調整できるそうです。
また、Brownlee氏の指摘する「Android XR」の大きな長所のひとつが、Google Playで展開されているアプリを使用できる点です。テスト段階では、スマートフォン向けアプリとタブレット向けアプリの両方が、「Project Moohan」で使用できたとのこと。
「Project Moohan」では、GoogleのAI エージェント「Gemini」が使用できます。ホーム画面の“Geminiボタン”を押すと起動し、質問や要望を音声で伝えられます。また本体カメラと「Gemini」の連携機能も実装されており、カメラに映った物について問いかけることで、回答(物品の名前)が得られます。さらに、バーチャルディスプレイの位置変更なども、直接「Gemini」に指示できるようです。
Brownlee氏はその見本として、「Gemini」の検索機能と「Googleマップ」の“合わせ技”も公開してくれました。デバイスを装着したうえで、現実にあるアルバムの写真を見て「ここに連れて行ってくれる?」とAIに問いかけると、目的地(ヨルダン)の「Googleマップ」が開きます。開いた「Googleマップ」は空間アプリとして使用可能で、選んだ場所をVR内で見ることができます。
また、MR機能を使って現実の物品(靴など)を“サークルマーキング”することで、対象を検索できる機能も搭載されているそうです。指を使って(円で)囲うことで、検索の対象が指定される仕組みになっています。Brownlee氏は、「サークル内に入った腕を検索してしまう」など、現時点では動作が少し不安定だったと前置きしつつも、楽しい体験だったと評価しています。
Brownlee氏は動画の最後、Googleのソフトウェア面での取り組みに、特に感銘を受けたとコメントしています。「Android XR」は同社にとって約10年間ぶりに展開した、全く新しいOSであり、「Project Moohan」の体験は、アイディアに溢れたコンセプトカーに触れているような感覚だったそうです。「Project Moohan」を“軸”として、よりハイエンド(あるいは普及型のモデル)の登場にも期待したいとのこと。
なおBrownlee氏は「Project Moohan」の販売価格をサムスンに質問してみたものの、回答は得られなかったそうです。同氏は、やや高価なモデルとして展開されることを予測しています。
(参考)YouTube