数多くのスマートグラスが発表されている中、現在業界を先頭でリードしているのがEven Realitiesの「Even G2」です。
原稿表示やAIナビといった機能を持っており、前モデル(Even G1)から、さらなる軽量化・スリム化を遂げています。日本でも購入可能です。
特に注目したいのは、リアルタイム翻訳機能。目の前で話している人の言葉を検出して、グラスに緑色の文字でリアルタイムに翻訳表示してくれます。つまり、お互いに「Even G2」を装着していれば、言葉の壁なく、コミュニケーションが可能になるということです。
先日、同社CEOであるWill Wang氏に取材する機会を得ました。Will Wang氏は英語話者であるものの、日本語話者ではありません。筆者は英語に自信がありませんが「Even G2」のリアルタイム翻訳機能を使うまたとない機会だったため、実戦で試すことにしました。
記者全員がスマートグラスを装着。異様なのに自然
会場ではCEOのWang氏もEven G2を着用しており、驚くべきことに今回は通訳を介さない初めての取材だったそうです。Wang氏だけでなく、会場にいる記者全員がスマートグラスを装着していました。
こちらが日本語で質問し、通訳なしでWang氏が英語で回答するという形で取材が進行しました。文字にすると異様な光景に思えるかもしれませんが、実際は非常に自然な雰囲気で進みました。未来を感じる体験、というよりは眼鏡だけに「もう見えている」状態でした。

(自身もEven G2を付け、通訳なしで取材に応じてくれたWill Wang氏)
脳の普段使わない部分の酷使を実感、CEOも慣れが必要とコメント
まず、相手と向かい合って話をしつつ、目の前に表示された文字を読むというのは、これまでない経験でした。脳の普段使わない部分を酷使しているのをヒシヒシと感じました。 そこでWang氏にEven G2の使い方のコツを聞いたところ、「自分が快適だと感じる距離や高さにディスプレイを調整することがコツ」だそうです。それでも使いこなすには少し慣れが必要で、氏自身も練習したそうです。
また、アイコンタクトの重要性にも触れ、「ずっと画面を凝視して読んでいるわけではない。やはり現実世界での対話を保ちつつ、情報はその手助けとしてそこにあるべき」とコメントしました。 実際私もそうでしたが、相手の答えを理解しようと表示される文章に一生懸命になると、どうしても目線が合わなかったり、アイコンタクトが疎かになってしまいます。
今回の取材現場では多くの人が普段からスマートグラスを使い慣れており、デバイスへの理解がありました。しかしながら、普段の取材で失礼にならないようにするには、やはり相手の顔をしっかりと見て、ディスプレイ上の文章は、時々見るようにする意識や訓練が必要だと実感しました。
操作の慣れに関して、Wang氏はスマートフォン登場時の例を挙げています。「初期のスマートフォンでの文字入力のように、人を見ながら情報を同時に理解するマルチタスクも、少し練習すればすぐに慣れる」と付け加えました。「スマートフォンに対して当初はキーボードの方が簡単だという声もあったが、今では多くの人が会話中にメモを取ったり調べ物をしたりできる。新しいデバイスには練習が必要だが、人々はすぐに慣れて使いこなせるようになる」とのことです。

(※Even G2によるライブ翻訳のイメージ画像。ディスプレイ表示の位置はアプリで調整が可能)
しかしすでに実戦には十分、かつ日常使いできるデザイン
多少の慣れが必要であるとはいえ、一度慣れてしまえば頼もしすぎる相棒になることは間違いありません。実際使ってみたうえで、断言することができます。 私を含めたその場にいた記者の全員が、日本語で質問し、Wang氏の英語の回答を通訳を介さずに文字で理解できていました。回答を踏まえて、日本語で追加質問することもできました。翻訳や文字表示に若干のタイムラグはあるものの、テレビで見るような通訳付きの質疑応答よりもずっとスムーズに会話が進んでいたように感じました。
さらに、Even G2の魅力は日常使いしやすい洗練されたデザインにあります。Wang氏も、「顔にガジェットをつけているように見えるのではなく、メガネをかけて常にファッショナブルに見えるようなデザインを重視している」と語っていました。そのため、あれこれと不要な機能を追加するようなことはしていないと言います。
特にカメラ機能については、カメラがあると入れない場所があることや、周囲への配慮から、現時点では搭載していないそうです。加えてWang氏は「ビジネスの場において、カメラがなくても、音声入力とテキスト出力があれば、すでに多くのことができると私たちは考えている。カメラを搭載しないというのが、まさに私たちの哲学」とはっきりと答えていました。
ただ、カメラ機能に関して全く可能性がないわけではなさそうです。記者から「脱着可能なカメラが欲しい」という要望を伝えられたところ、検討するという回答が得られました。カメラに限らず、必要に応じて付けたり外したりできる周辺デバイスが登場すれば、さらに便利になるのは言うまでもありません。
2年後まで描かれたロードマップ、有料アプリのリリースも視野に
今後の展望に関する質問では、最近一般公開された「Even Hub」について尋ねるものが多数を占めました。「Even Hub」ではすでに数百ものアプリが承認待ちになっており、活発に開発がおこなわれているようです。
「今のところEven Hub上のアプリはすべて無料だが、持続していくため、また洗練されたアプリの開発者は当然料金を請求すべきであり、プラットフォーム内での収益を上げられるようにしていく」とWang氏は述べました。有料に値するアプリが現れれば、Even Realities側からアプリ開発者に提案していくつもりだそうです。
また、Wang氏によれば「Even Hubは、元々スマートフォン上に存在するサービスと接続するための橋渡しとして機能すると考えており、今後はスマートフォン上の既存アプリとの連携も予定している」とのことです。スマートフォンを開かず、スマートグラスで選択肢を選ぶだけになる未来も近いかもしれません。
機能に対する要望として、筆者から「私のように英語が堪能でない人が他の場で使う場合(相手がEven G2を付けていない取材)、「原稿表示(英語の質問)」と「ライブ翻訳」を同時に使いたい」と伝えました。私の問いに対しWang氏は「それも私たちがロードマップ上で計画していることの一つだ」と回答しました。さらに「Even Hub」上で開発者が自らそのような機能を構築する可能性もあるといいます。これらの機能が実装されれば、さらに使い勝手が良くなることは間違いないでしょう。
記者からの質問の多くがすでに今後の予定にあることに驚きました。Wang氏によると2年間のロードマップをすでに描いており、来年と再来年に何を作るか考えているそうです。この驚異的なスピード感を支えているのが、Even RealitiesがDiscord上に設けているフィードバック用チャンネルです。
様々なチャンネルで日々活発な意見交換が行われており、ソフトウェアリーダーや複数のプロダクトマネージャーは毎日、Wang氏自身も1日おきにこれをチェックしているそうです。ユーザーの要望を迅速に把握し、それを明確なロードマップに反映させるという、その積極的な姿勢が印象的でした。
競合が出てくる中、Even Realitiesの目指す方向
近年スマートグラス市場は非常に盛り上がっており、Rokidなどの競合製品が次々と現れています。
競合が現れていることに対してWang氏は「カテゴリーのリーダーであれば、競合が現れるのは運命。平和的に受け入れている」といいます。iPhoneを引き合いに出し「iPhoneが本質的にそのカテゴリーを定義したからこそ、どのスマートフォンもiPhoneに似ている」と語りました。また、競合が現れることが必ずしも悪いことではなく「それは本質的に、この業界における私たちのリーダーシップを認めているということ」だと言います。
その上で、Even Realitiesの目指す方向を明確にしていました。「現状に満足することなく、最高のチームで継続的に最高の製品を作り続ける必要がある。G3を作り、G4を作り、G5を作り、繰り返しのたびにより良いものにしていく」とWang氏は力強く語っていました。さらには「今はG2が最も高度な体験ができる、見た目も最高のスマートグラスで、フォロワーもいる。しかし、来年G3を発売した時には、皆さんは再び『おお、Even Realityは今度はここまで来たか!』と衝撃を受けるだろう」と話していました。
リアルタイム翻訳機能はバッチリ!
実戦でEven G2を試した結果、リアルタイム翻訳機能は成功しました! 海外取材レポートで実践できることが分かったので、今後の取材でも使うのは間違いありません。
また、CEO Wang氏への取材や、垣間見えたロードマップから、スマートグラス市場を牽引する同社の強みが明確になりました。特に、Discordユーザーだけでなく、取材の場での要望まで、ユーザーからのフィードバックを迅速に開発に取り入れる姿勢は特筆すべき点です。
Even G3、G4といった今後の進化に期待は高まります。しかし、まずはEven G2が日本国内でどのように広がっていくのか、注目したいと思います。


